2023年12月29日金曜日

塩分を減らそう!

  高血圧などにつながる塩分の取り過ぎは、年代にかかわらず気を付けたいことです。厚生労働省は2024年度からの国民健康づくり計画「健康日本21(第三次)」で、約十年かけて一日当たりの食塩摂取量を現状の10.1グラムから、7グラム未満に引き下げる目標を掲げています。

2023年12月22日金曜日

冬の乾燥は気管の大敵〜乾燥とせき、加湿器の話〜

冬に長引くせきについて教えてください

 冬は空気が乾燥する季節です。湿度が低い環境では、さまざまな感染症を引き起こすウイルスの活動が活発になります。また、空気が乾燥すると、感染を防ぐ人体の働きが低下します。

2023年12月14日木曜日

飛蚊症(ひぶんしょう)

<飛蚊症とはどのような病気ですか>


 白い壁を見ていると、視界の中で、点や糸状、輪のような黒い影・物体が飛んでいるように見えることがあります。これが飛蚊症です。眼球内の硝子体に何らかの原因で濁りが生じ、明るい所を見たときに濁りの影が網膜に映るために起こります。

2023年12月8日金曜日

胆のうポリープ

 <胆のうポリープについて教えてください>

 胆のうポリープは、胆のうの粘膜から胆のうの内側に発生した隆起のことで、検診や人間ドックで腹部超音波検査を行った際に、約5~10%の頻度で発見されます。

2023年11月23日木曜日

介護保険サービスと精神科特定疾病

<介護保険で定められている精神科特定疾病について教えてください>

 公的介護保険制度は、40歳以上の人が全員加入し、介護や支援が必要な状態になったときに所定のサービスが受けられるというものです。公的介護保険制度の被保険者は、65歳以上の「第1号被保険者」と、40歳から64歳までの「第2号被保険者」に分けられます。

2023年11月18日土曜日

隠れ脳梗塞(無症候性脳梗塞)

<隠れ脳梗塞について教えてください>

 脳ドックを受けたり、けがなどで脳の検査をしたりしたときに医師から、脳梗塞があると言われてドキっとした、という経験をされた方も多いのではないでしょうか。俗に「隠れ脳梗塞」というように、自分には思い当たるような症状がないのにもかかわらず、検査時に偶然見つかる脳梗塞をそう呼びます。正しくは「無症候性脳梗塞」といいます。

2023年11月9日木曜日

双極性障害(そううつ病)

<双極性障害について教えてください>

 双極性障害は、気分が落ち込んで、気力が湧かず憂(ゆう)うつな「うつ状態」と、うつ状態とは逆に気分が高揚し、発言や行動が活発で抑制が利かなくなりがちな「そう状態」を繰り返す病気です。およそ100人に1〜1.5人の割合でかかる可能性があります。

2023年11月3日金曜日

胃がんの原因、ピロリ菌

<ピロリ菌の検査と除菌治療について教えてください>

 ほとんどの胃がんはピロリ菌の感染に起因します。ピロリ菌を除菌することで、胃がんのリスクを軽減でき、胃がんは「予防できるがん」と言われるようになっています。ピロリ菌の除菌治療は保険適用となっており、1週間の経口薬による治療です。

2023年10月27日金曜日

帯状疱疹

 [帯状疱疹(たいじょうほうしん)について教えてください]

 帯状疱疹は、子どもの頃にかかった水ぼうそうウイルス(水痘・帯状疱疹ウイルス)が背骨に近い神経に長期間潜んでいて、加齢や疲労、ストレスなどにより免疫機能が低下したときに、ウイルスが再び目覚めて発症し、潜んでいた神経の領域に沿って痛みを伴う水疱(すいほう)が出現する病気です。

2023年10月19日木曜日

脂質異常症、放置しないで!

  健康診断で「脂質異常症」を指摘されているのに、症状がないからといって放置している人はいませんか?
 最近、初めて脂質異常症を指摘されたという人も増えているそうです。コロナ禍の外出自粛で体を動かす機会が減り、運動不足で体重が増えたことも原因の一つとされています。

2023年10月14日土曜日

強迫性障害

<強迫性障害とはどのような病気ですか>

 汚れが気になっていつまでも手を洗う、戸締まりが心配で何度も玄関に戻る──。強迫性障害は、そういった過剰な心配が自分の意思に反して繰り返し浮かび、それを打ち消すために繰り返し同じ行為をしてしまう病気です。

2023年10月6日金曜日

高血圧に注意 家庭で血圧を測ろう!

  「健康診断で血圧がちょっと高めだったけれど、特に不調もなく元気だし問題ない」と思っている皆さん、本当に大丈夫でしょうか?今回は、非常に身近で、でも、放っておくと怖い「高血圧」についてまとめました。

<高血圧はどうして怖い?>

 高血圧は初期の糖尿病や高脂血症と同様、当初は症状をほとんど訴えません。

2023年9月28日木曜日

コンタクトレンズ、正しく知って!

<コンタクトレンズの正しい使い方について教えてください>

 目の中に直接入れるコンタクトレンズは医療機器の一つで、法律では「高度管理医療機器」に分類されています。視力矯正のためのレンズだけでなく、瞳の大きさや色を変えて見せる度なしのカラーコンタクトレンズも十数年前から高度管理医療機器です。

2023年9月21日木曜日

赤ら顔と「酒(しゅ)さ」

<赤ら顔の原因について教えてください>

 いわゆる赤ら顔にはいくつかの種類と原因があります。生来からの赤ら顔、顔の皮脂の多い部分に生じる「脂漏性皮膚炎」、アレルギー体質と皮膚のバリア機能低下などを伴い生じる「アトピー性皮膚炎」、「ニキビ〈尋常性ざ瘡(そう)〉」、「化粧品などによるかぶれ〈接触性皮膚〉」などが考えられます。

2023年9月14日木曜日

複雑性PTSD(心的外傷後ストレス障害)

「複雑性PTSD」について教えてください

 生命の危険を伴う犯罪や災害、事故などの体験がトラウマ(心的外傷)となり、時間が経過しても突然記憶がよみがえって、不眠や過剰な警戒心などの症状を示す精神的な後遺症をPTSD(心的外傷後ストレス障害)と呼びます。

2023年9月7日木曜日

アレルギー性鼻炎を合併するぜんそく

<アレルギー性鼻炎を合併するぜんそくについて教えてください>

 ぜんそくは、気道に慢性的な炎症が生じ、気道が狭くなり過敏になることで、繰り返し起こるせき、喘鳴(ぜんめい)、呼吸困難などを主な症状とする呼吸器疾患です。原因はさまざまですが、アレルギー素因が危険因子の代表格です。

2023年8月24日木曜日

春だけじゃない!秋の花粉症・アレルギー症状にも要注意

<秋の花粉症やアレルギー症状について教えてください>

 秋に、鼻水が出たりくしゃみが出たり、目がかゆくなる。実は、こんな悩みを抱える人は多く、10月ごろになると、花粉症の症状とともにせきが長く続いて来院される患者さんが増えてきます。

2023年8月17日木曜日

せん妄

[せん妄について教えてください。]

 せん妄とは、身体疾患または全身状態の変化によって起こる、興奮や幻覚、不眠、認知機能低下などを呈する「一過性の意識障害」です。代表的な症状として「ぼんやりして話のつじつまが合わない、反応が鈍い」「場所や時間が分からなくなる」「怒りっぽい、興奮する」「見えないものが見えると言う」などがあります。

2023年8月10日木曜日

ヒスタミン食中毒

[ヒスタミン食中毒について教えてください]

 ヒスタミン食中毒は、ヒスタミンが高濃度に蓄積された食品、特に魚類及びその加工品を食べることにより発症するアレルギー様(食物アレルギーの症状とよく似た)食中毒です。

 ヒスタミンは、食品中に含まれるアミノ酸の一種であるヒスチジンに、ヒスタミン産生菌と呼ばれる細菌の持つ酵素が作用することでつくられます。

2023年8月3日木曜日

サルコペニアって何?

<ライターコラム>加齢などにより筋肉量が減り、全身の筋力が低下した状態を「サルコペニア」といいます。2016年からは「疾患」に位置付けられ注目を集めています。進行すると、歩く、立ち上がるなどの日常生活の基本動作に支障を来し、転倒や骨折のリスクが高まります。

2023年7月27日木曜日

MCI(軽度認知障害)と認知症

[MCIと認知症について教えてください]

 一人で歩いて外来を受診される90歳代の患者さんも珍しくなく、高齢化社会を実感します。近年、「物忘れが増え、自分は認知症ではないか?」と心配して受診される方が増えています。脳ドックでも、以前は脳卒中の予防が主な受診動機でしたが、認知症の予防や早期発見を目的とされる方が多くなっています。

2023年7月20日木曜日

女性の更年期障害とかかりつけ医の重要性

[女性の更年期障害について教えてください]

 閉経の前後それぞれ5年、およそ45〜55歳が更年期です。女性ホルモンのエストロゲンの分泌が急激に低下することにより、暑くないのに汗が噴き出すホットフラッシュや、動悸(どうき)などの血管運動神経症状、気分の落ち込みやいらいら、倦怠感(けんたいかん)、不眠などの精神神経症状などが現れます。

2023年7月13日木曜日

矯正歯科治療はなぜ必要?

[なぜ、矯正歯科治療が必要なのですか?]

 歯並びやかみ合わせは、顔の印象を決める大きな要因の一つです。診療の現場でも、歯並びやかみ合わせが悪く「口を開けて笑うことができない」「人前で話したくない」など、見た目のコンプレックスから矯正治療を始める人が多いのが実状です。

2023年7月6日木曜日

下血と血便

[下血と血便の違いについて教えてください。
また、それらの原因となる病気にはどのようなものがありますか]

 胃や腸から出血した血液の色は、時間の経過とともに赤から黒へと変化します。米国では肛門から遠い胃などからの出血による黒い便を下血と呼び、肛門に近い部位からの出血による赤い便を血便と呼んで明確に区別しています。

2023年6月29日木曜日

神経性痩せ症

[神経性痩せ症とはどのような病気ですか]

 食行動に異常を来す病気を「摂食障害」と呼びます。多くは思春期に起こり、患者の9割以上が女性です。大きく分類すると、明らかな低体重でも本人にその認識がなく、極端に食事を制限したり食べ吐きを繰り返したりする「神経性痩せ症」と、大量にむちゃ食いしては、体重増加を抑えるために、吐いたり下剤を乱用したりする「神経性過食症」に分けられます。 

2023年6月22日木曜日

高齢者の関節リウマチ診療

[高齢発症の関節リウマチについて教えてください]

 免疫機能の異常が原因で関節に炎症が起き、放置すると軟骨や骨の変形が進む病気が関節リウマチです。関節リウマチは若年から高齢者まで幅広い年齢に発症する病気ですが、近年、日本人の平均寿命が延びて高齢者が増えるにつれ、発症年齢及び患者さん全体の年齢層も徐々に高齢化しています。

2023年6月15日木曜日

人工膝関節置換術の手術支援ロボット

[支援ロボットを使う人工膝関節置換術について教えてください]

 膝(ひざ)の関節の軟骨がすり減ったり、炎症が起きたりして出る膝の痛み。悪化して日常生活に支障が出たら、人工膝関節へ置き換える手術が治療の選択肢に入ります。2019年、支援ロボットを使う人工膝関節置換術に公的医療保険が適用され、ロボットを導入する病院が増えてきました。

2023年6月8日木曜日

アルコール依存症【後編】

[アルコール依存症の治療について教えてください]

 アルコール依存症は、お酒の飲む量やタイミングなどをコントロールできなくなった状態をいいます。意志や性格の問題ではなく、お酒を飲む人なら誰にでも起こり得る身近な病気であることと、不治の病ではなく、適切な治療を継続すれば回復可能な病気であることを知ってほしいです。このことを理解するのが、予防や治療の大切な第一歩です。

2023年6月1日木曜日

アルコール依存症【前編】

[アルコール依存症について教えてください]

 アルコール依存症は、お酒の飲み過ぎで問題が起こっているのに、自分ではお酒の飲む量や時間、状況などをコントロールできなくなった状態をいいます。「今日は1杯だけ」と決めても、気がつくと何杯も飲んでいたり、飲んでは寝、目覚めたら飲むを繰り返す「連続飲酒」をするのが典型的な行動です。

2023年5月25日木曜日

紫外線と日焼け止め(サンスクリーン剤)

 宮の森スキンケア診療室 上林 淑人 院長

「紫外線の怖さと紫外線対策について教えてください」

 晴天の日は、日差しの強さを感じる季節になってきました。そこで、気になるのが紫外線です。日焼けや皮膚炎の原因となる紫外線は、波長の長さによってUV-AとUV-Bに分かれます。UV-Bは、皮膚の浅いところに作用し、赤く炎症を起こしたりシミの原因となったりします。長期的には皮膚がん発生のリスクを高めます。UV-Aは、皮膚を黒くし、皮膚の深く真皮にまで作用しシワやたるみの原因となります。

2023年5月18日木曜日

気管支ぜんそくの吸入薬について

 白石内科クリニック 干野 英明 院長

「気管支ぜんそくの吸入薬について教えてください」

 気管支ぜんそくは、さまざまな原因によって気管支に炎症が起きて、その内腔(ないくう)が狭くなることによって起こります。治療薬としては、少量で効果が得られ、全身への副作用が少ないという点から、直接気道へ薬剤を入れる吸入薬が治療の中心となっています。吸入薬にはステロイド薬、β2刺激薬、抗コリン薬など、いろいろな種類があります。

2023年5月11日木曜日

不眠症の治療に使われる睡眠薬について~後編~

医療法人 五風会 さっぽろ香雪病院  林 千尋 (薬局長)  前編はこちら→

不眠症の治療について教えてください。

 不眠症の治療は、睡眠薬による治療だけではありません。間違った睡眠習慣を改めることや、睡眠に関する正しい知識を伝える「睡眠衛生指導」も治療の柱となります。

 ●睡眠時間は人それぞれで、長さにこだわる必要はない ●就寝時間にこだわり過ぎずに、眠くなってから床に就く ●夜遅くまでパソコンやスマホを使わない ●夕方以降はカフェインを摂取しない ●睡眠薬代わりの寝酒は不眠のもとになる ●毎日同じ時刻に起床する ●目が覚めたら日光を取り入れて、体内時計のスイッチをオンにする──

2023年4月27日木曜日

不眠症の治療に使われる睡眠薬について~前編~

医療法人 五風会 さっぽろ香雪病院  林 千尋 (薬局長)

不眠症はどのような病気ですか

 不眠症には大きく分けて3種類のタイプがあります。①寝付きが悪い「入眠障害」、②夜中に何度も目が覚める「中途覚醒」、③朝早く目が覚め、その後眠れない「早期覚醒」です。ほかに、深く眠った感覚が得られない「熟眠障害」もあります。

2023年4月20日木曜日

運動で長生きしよう!

琴似駅前内科クリニック 髙柳 典弘 院長

健康長寿を支える生活習慣の中で運動がもたらす効果について教えてください

 座っている時間を減らして毎日散歩をするだけで、何年間も寿命を延ばせるかもしれない──。米国・ハーバード大学の研究チームが、中年期の成人11万人以上を30年間追跡した研究で、その可能性を示しました。

2023年4月13日木曜日

防ごうオーラルフレイル

ライターコラム

 全身に影響を及ぼす口腔(こうくう/オーラル)の健康が注目されている中、特に高齢者の口腔機能が衰える「オーラルフレイル」予防が重要視されています。
<滑舌が悪くなる><食べこぼしや飲み物でむせる>といった口周りのトラブルは、高齢者の体が弱っていく最も早いサインです。本人や周囲がオーラルフレイルのサインに気付き、早い段階で対処することが大切です。

2023年4月6日木曜日

不眠症

医療法人社団 正心会 岡本病院 瀬川 隆之 医師

不眠症について教えてください。

 日本では5人に1人の割合で不眠の訴えがみられます。そのうち日中の眠気などで生活に支障を来している場合には「不眠症」と診断されます。平均的な睡眠時間は、25歳で7時間、45歳で6.5時間、65歳では6時間程度です。適切な睡眠時間は人それぞれなので、これより短くても日中に支障がなければ問題ありません。

2023年3月23日木曜日

北海道の花粉症とぜんそく、果物アレルギーの関係

医療法人社団 大道内科・呼吸器科クリニック 北田 順也 副院長

北海道の花粉症について教えてください

 北海道の花粉症は、4月中旬〜5月下旬がピークの季節です。本州に多いスギ花粉はわずかで、ハンノキ、シラカバなどカバノキ科の花粉症が主体です。その頃にはしつこい鼻水や鼻詰まり、くしゃみ、目のかゆみなどの花粉症の症状とともに、咳(せき)が長く続いて来院される患者さんが増えてきます。

2023年3月16日木曜日

認知症デイケアの役割

平田 沙緒里 デイケア科科長(作業療法士)

認知症デイケアではどのようなサービスが提供されますか

 認知症デイケアは、精神科病院・診療所に併設される通所医療施設です。認知症の方であれば、通常のデイケア(通所リハビリ)やデイサービス(通所介護)のご利用が可能ですが、認知症の方に対する専門的なサービスとして認知症デイケア(重度認知症患者デイケア)もご利用いただけます。

2023年3月9日木曜日

癖になりやすい便秘薬、なりにくい便秘薬

福住内科クリニック 佐藤 康裕 院長

便秘薬が癖になることはありますか

 大腸に強い刺激を与えることでぜん動運動を起こし、排便を促すタイプの便秘薬は「刺激性下剤」と呼ばれ、「くせになりやすい」便秘薬です。<寝る前に1回飲めば、翌朝にはすっきり出せる>とうたわれる薬や漢方便秘薬の多くは刺激性下剤であり、代表的な成分はセンナ、ダイオウなどの生薬です。

2023年3月2日木曜日

視力検査で分かること

ふじた眼科クリニック 藤田 南都也 院長

視力検査について教えてください

 眼科では、さまざまな治療の折に視力検査を勧めます。“目は心の窓”という言葉がありますが、視力検査からもいろいろなことが分かります。眼科での視力検査では、「視力」といっても裸眼の視力だけではなく、近視、遠視、乱視など屈折異常や、矯正レンズを当てた状態で良好な視力を得られるかどうかの検査まで行います。

2023年2月23日木曜日

パニック障害

医療法人 耕仁会 札幌太田病院 斉藤 一朗 診療部長

パニック障害とはどのような病気ですか

 パニック障害は、心臓や血管などに特に異常がないのに、突然起きる動悸(どうき)や胸痛、息苦しさ、吐き気、発汗、手足の震えなどのパニック発作が繰り返される病気で、「このまま死んでしまうのではないか」という恐怖感を伴います。不安障害の一種で、国内の患者数は1996年に約3千人でしたが、2017年には8万3千人にまで増えています。

2023年2月16日木曜日

膝関節周囲骨切り術によるスポーツ復帰

 医療法人知仁会 八木整形外科病院 薮内 康史 医師


膝関節周囲骨切り術について教えてください


 中高年になると膝に痛みを感じる人が増えてきます。その多くは変形性膝関節症によるものです。膝の関節軟骨がすり減り、関節内に炎症が起きたり、関節が変形して痛みが生じます。症状が進むと、歩けば膝が痛く、正座や階段の上り下りが難しくなります。末期になると安静時にも痛みが取れず、歩行困難になるなど日常生活に支障を来します。

 鎮痛剤の服用や関節内注射などの保存的治療では痛みを軽減できても、病気の進行は食い止められません。一方、外科的治療は一度手術を受けて回復すれば、痛みをほとんど忘れて生活できる可能性が高いです。手術治療は膝の変形を矯正して痛みを解消する「骨切り術」があります。

 近年注目されている骨切り術とは、膝周囲の骨〈脛(けい)骨や大腿(だいたい)骨〉を矯正することで脚の並びを変えて、膝の傷んだ部分に負担のかからない脚へと矯正する手術です。例えば、日本人に多いO脚変形では膝の内側がすり減るため、自分の骨を切って変形を矯正することで、内側に偏っている荷重ストレスを外側に移動させ、軽度のX脚へと矯正します。いくつか術式がありますが、最近では、脛骨(すねの骨)の内側から骨を切って広げ、時間とともに骨に置き換わる人工骨を挿入し、金属プレートで固定する方法が多くなっています。


骨切り術のメリットについて教えてください


 最大の利点は、自分の関節を温存することができるため低侵襲で、他の手術法と比較して術後の日常生活に対する制限がほとんどないことです。回復すれば、術前の痛みが取れ、人工関節では制限のある「跳んだり走ったり」の激しいスポーツ活動も可能となります。自分の膝を残したい、まだまだマラソンや登山、スキー、テニス、ゴルフなどのスポーツを楽しみたい、という人に適した手術法です。膝が痛くてスポーツを諦めかけている方は、骨切り術で今後の人生が変わるかもしれません。漁業や酪農業のような身体を積極的に動かす職業の方にとっても良い手術になり得ます。

 また、人工関節は技術の進歩とともに耐久性は向上していますが、その寿命は一般的に20〜30年程度と考えられていますので、若い患者さんにも骨切り術が勧められます。

2023年2月9日木曜日

マインドフルネス〜関節リウマチの痛みやストレスを軽減するために〜

 佐川昭リウマチクリニック 古崎 章 院長


テレビや雑誌などで目にすることが多くなった「マインドフルネス」という言葉。
関節リウマチの医療現場でもマインドフルネスが注目されていると聞きましたが。

 

 関節リウマチなどのリウマチ性疾患は、関節を構成する滑膜という組織で炎症が起き、全身の関節に腫れやこわばり、痛みが生じる病気です。炎症が慢性化し、痛みがなかなか取れないと訴える患者さんも多いようです。痛みの経路は、記憶などに関連する脳のさまざまな部位から影響を受けることが分かってきており、ストレスなどの心理的問題で慢性痛が起きたり、慢性痛が増悪することがあるのは、このためだと考えられています。リウマチ性疾患には、痛みだけでなく全身倦怠感(けんたいかん)や睡眠障害、気分の落ち込みなどの症状もあり、普通の生活ができないことにストレスを感じることが多いようです。また、病気や将来への不安や悩みがストレスとなって痛みなど病気の症状を増悪させているケースも少なくありません。

 ストレッチやヨガ、ピラティスなどでストレスを解消・軽減することが、心の不安や気分の落ち込みを改善したり、関節リウマチの慢性痛などの症状を緩和する場合があることが多数報告されています。ストレス解消・軽減法の一つとして最近注目されているのがマインドフルネスです。

 マインドフルネスとは、瞑想(めいそう)などにより「今、この瞬間」だけに意識を向けた心の状態をつくる訓練や、その状態のことをいいます。いくつかのプログラムが開発されていますが、一般的なのが呼吸に集中しながらの瞑想です。座禅を組むなどして、呼吸に意識を集中させます。そのほかに、風や波の音に耳を澄ます瞑想や、全身から手や足先へ細かい感覚を意識するボディースキャン瞑想などがあり、いずれも自分の思考や状況を客観的に捉え「今、この瞬間」に集中する癖をつけるのが目的です。

 マインドフルネスによる瞑想を実践している時の脳の状態は、脳神経科学者などによって研究が進められており、ストレス解消のほか医療現場でうつ病などの治療プログラムに取り入れられつつあります。また、リウマチ性疾患の痛み、睡眠障害、気分の落ち込みなどの症状が緩和・改善されたという海外の報告も増えてきています。

 リウマチ性疾患に対しては炎症を取り除くための治療が第一ですが、炎症が落ち着いても痛みなどの症状が残っている場合に、ストレス解消法の一つとして日常生活にマインドフルネスを取り入れてみるのもよいかもしれません。

2023年2月2日木曜日

慢性硬膜下血腫

 西さっぽろ脳神経外科クリニック 笹森 孝道 院長


慢性硬膜下血腫とはどのような病気ですか


 転んで頭を打ったり、強くぶつけたりした時、頭の中に出血する場合があります。けがをしてすぐに出血が起きた場合は、「急性の出血」あるいは「血腫」などといいます。一方、けがをしてすぐの検査では異常がなかったのに、受傷してから1~2カ月ほどたってから徐々に頭の中に血がたまってくる病気があり、これを「慢性硬膜下血腫」といいます。

 慢性硬膜下血腫は、50歳以上の中高年に多い病気で、お酒をよく飲む方、肝臓の悪い方、病気治療でいわゆる「血液をサラサラにする薬」を服用している方がかかりやすいとされ、軽いけがの後でも発症することがあるので注意が必要です。冬季の北海道では、特に雪道の転倒事故に気を付けてください。

 慢性硬膜下血腫は、出血が少ない場合はほぼ無症状です。ある程度、血がたまってくると脳を圧迫し、さまざまな症状が出てきます。頭痛や頭の重だるい感じが代表的な症状です。治療前には自覚症状を訴えていなかった患者さんでも、治療後には「頭が軽くなった」という方が多いようです。

 圧迫が進むと、足元がおぼつかなくなるなど歩行障害が出ることも多いようです。物忘れや記憶障害、言語障害が出てくることもあり、高齢者の場合、認知症と間違われるケースもよくみられます。また。高齢者は圧迫による頭痛などの症状を自覚していない例もあり、そのまま寝込んでしまっていることもあるので、家族など周りの人が注意する必要があります。


治療について教えてください


 無症状であれば、よほど圧迫が強くない限りは経過観察をします。内服薬を使用して様子をみる場合もあります。ここ最近では、血腫の治癒を促進する効果のある漢方薬を使うケースも増えています。

 圧迫が強い時や症状が出ている時は、手術を行います。脳外科の手術というと大変怖いイメージを持っている方も多いと思いますが、硬膜下血腫の手術は局所麻酔で行うもので、心身への負担も少なく、高齢者でも受けることができます。過度に恐れる必要はありません。

 頭を打っても軽いけがであれば、慌てて病院に行かなくても問題のないケースがほとんどですが、1カ月以上経ってから頭痛や、先に挙げたような症状が出てきた時は、我慢しないで脳外科医を受診するようにしてください。

2023年1月26日木曜日

不安症・不安障害

 医療法人五風会 福住メンタルクリニック 菊地 真由美 院長


不安症・不安障害とはどのような病気ですか


 不安や恐怖は本来、危険やストレスが迫っていることをいち早く察知して対処するための、生きていく上で欠かせない情動です。ところが、何らかの原因で不安や恐怖が持続的に過剰になってしまい、日常生活に支障を来す程度になってくると「不安症・不安障害」の可能性が出てきます。

 ある患者さんは、人前で話したり注目を浴びたりする状況で過度に緊張してしまうので、職場での会議がひどく苦痛になり、欠勤するなどして緊張する場面を避けるようになってしまいました。また別の患者さんは、夜間にテレビを見てくつろいでいる時に突然、動悸(どうき)と発汗、胸痛、窒息感に襲われ、「このまま死んでしまうのではないか」という強い恐怖から救急車を呼び、病院に搬送されましたが、検査や診察の結果、身体的にはまったく異常が見つかりませんでした。その後も同様の発作に何度も襲われ、いつ発作が起こるか不安で仕方がなくなり、発作が起こった時に助けを求められない状況を避けるようになってしまいました。

 DSM-5という精神疾患の診断基準によると、不安症・不安障害には分離不安症、社会不安症、パニック症、広場恐怖症、全般性不安症などが含まれています。日本における不安症・不安障害の生涯有病率は約4%といわれており、決してまれな病気ではありません。


治療について教えてください


 治療法は、薬物療法と認知行動療法などの精神療法を併用するのが一般的です。薬物療法では、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)がよく使われます。不安症・不安障害では、脳の扁桃体(へんとうたい)という部位の働きが過剰になっていると考えられ、SSRIにはこの過剰な働きを抑える作用があります。その他、ベンゾジアゼピン系抗不安薬なども使われています。

 不安症・不安障害には、「不安」症状そのものと、不安により日常生活における「行動」が障害されるという2つの側面があります。不安を“ゼロ”にしようともがけばもがくほど、かえって不安は増強しやすいものです。加えて、完全主義的な傾向からいろいろな行動を、症状が消失してから着手しようと先送りにしがちです。一般に、不安症・不安障害の人は、成功したい、より良い成績を収めたい、より健康でありたいという気持ちが強いことが多いのですが、その希求とは裏腹に、実際には回避行動により「こうありたいと思う姿」から遠ざかってしまいます。不安を持ちながらも、今できる“ほどほど”のことから少しずつ普段の行動を取り戻していくことが、回復への足掛かりとなります。

2023年1月19日木曜日

冬も気を付けたいあせも

 宮の森スキンケア診療室 上林 淑人 院長


あせもについて教えてください

 汗は汗腺という組織で分泌され、汗管という通路を通って皮膚の表面に出てきます。汗管を通ることのできる汗の量はある程度決まっており、通りきらない量の汗をかくと汗が詰まって皮膚内に取り残されます。皮膚のやや深い所(表皮内)で汗が詰まると、汗の刺激で炎症が起こり、強いかゆみを伴う赤い発疹が生じます。これを「紅色汗疹(こうしょくかんしん)」と言って、あせもの一種です。額や首の周り、胸、背中など汗をかきやすく、蒸れやすい部位に現れます。

 汗の詰まりが皮膚の表面近く(角層)で起きると、直径数ミリの透明な水膨れがポツポツと現れます。これがいわゆるあせもで、正式には「水晶性汗疹」といいます。水晶性汗疹は、かゆみの症状がなく、数日で自然に消えてしまうことがほとんどで、特に治療の必要はありません。

 あせもと聞くと、汗をかく機会が増える夏の病気だと思われがちですが、実は冬にも多い肌トラブルです。厳しい寒さやウォームビズの実施などで、冬場は厚着になりますが、暖房の効いた学校や職場、電車など意外と暖かくて汗をかいてしまうことが多いからです。


冬場のあせも対策と、治療について教えてください

 汗を小まめに拭き取り、皮膚を清潔に保つことが大切です。汗を吸収・蒸発させやすい綿素材の肌着を着るのも効果的です。一方、熱を発生させる効果のある機能性肌着(ヒートインナー)は、場合によっては余計に汗をかき、また汗の吸収が悪く、肌と衣類との間が蒸れやすいので、汗をかきやすい人は避けた方がいいでしょう。

 特に注意が必要なのは乳幼児です。乳幼児の肌は、乾燥しやすく、刺激に敏感で、汗をかきやすいという特徴があります。風邪をひかせないようにと暖房を強めに設定し、暖かい服をしっかりと着込ませることが、結果として、乾燥して敏感になっている赤ちゃんの肌に汗の刺激が加わりあせもが発症するケースが目立ちます。暑すぎない程度に暖房を抑え、必要以上に厚着・重ね着させないことが大切です。

 あせもの治療は、ステロイド外用薬など炎症を抑える塗り薬が主体となります。かゆみを我慢できず、思わずかきむしってしまい重症化するなど、症状が長引くケースも多く見られます。たかがあせもと侮らず、症状の軽いうちに、しっかりと治療を行うことが重要です。

2023年1月12日木曜日

帯状疱疹ワクチン

 白石内科クリニック 干野 英明 院長


帯状疱疹(ほうしん)とはどのような病気ですか。


 近年、「帯状疱疹」になる方が増えています。帯状疱疹は、体や顔の左右どちらかに痛みを感じ、水膨れのある発疹が出ます。半月ほどでかさぶたになって治りますが、「帯状疱疹後神経痛」と呼ばれる痛みが続くこともあります。帯状疱疹は過去に水ぼうそうにかかった時、神経の中に水痘(すいとう)・帯状疱疹ウイルスが潜伏し、加齢や疲労などで体の抵抗力が下がった時に再び活性化することで発症します。水ぼうそうの経験がある方なら、誰でも罹患(りかん)リスクがあります。80歳までに約3人に1人が帯状疱疹を発症するといわれています。

 増加傾向にある理由は、高齢化や2014年に水痘ワクチンが小児対象に定期接種化されたことで、ウイルスに暴露する機会が減り、それに伴って帯状疱疹への抵抗力が弱まったことなどが考えられます。


帯状疱疹ワクチンについて教えてください。


 予防のための帯状疱疹ワクチンには生ワクチンと成分ワクチン(サブユニットワクチン)の2種類があります。どちらも適用は50歳以上となっています。

 生ワクチンは1回の接種で済み、副反応は発熱や局所の発赤程度で済むことが多いようです。ただし、抗がん剤やステロイドを使っている方、リウマチなどで免疫を抑制する薬を使っている方などは再感染のリスクがあるため接種できません。

 成分ワクチンは、遺伝子組み換え技術を用いて作られたものです。ウイルスそのものではなく、感染時にウイルスの表面に発現するたんぱく質の一つを人工的に合成したものと、「アジュバント」と呼ばれる物質・成分を組み合わせた最新のワクチンです。アジュバントとは、ワクチンと一緒に投与して、その効果を高めるために使用される物質です。人工的に合成したたんぱく質に対して効率よく抗体が産生され、ウイルス感染を抑制できます。8週間以上の間隔を置いて合計2回接種します。生ワクチンと比べ、発熱や倦怠感(けんたいかん)などの副反応が強い傾向があります。

 帯状疱疹の発症予防効果は、生ワクチンでは約50%、成分ワクチンでは(50歳以上で)97%という結果が出ています。また、成分ワクチンの予防効果は約9年間持続することが確認されていて、成分ワクチンは副反応が強く起こる可能性はあるものの、効果は非常に高いといえます。

 自治体によってはワクチンの接種費用の補助が出るようです。かかりつけの医療機関にお問い合わせください。

2023年1月5日木曜日

社交不安症

 医療法人 北仁会 いしばし病院 内田 啓仁 医師


社交不安症とはどのような病気ですか


 社交不安症(SAD)は多くの人から注目される行動に不安を感じ、顔が赤く火照る、脈が速くなる、息苦しくなる、おなかが痛くなるなどの症状が現れる病気です。例えば、公式な席であいさつをする、会議で指名され意見を言う、よく知らない人に電話をかける、外で他人と食事をするといった状況で症状が出ることが多いようです。

 恥ずかしいと思う場面でも、多くの人は徐々に慣れてきて平常心で振る舞えるようになりますが、SADの人は「恥をかいたらどうしよう」「変に思われるかもしれない」という不安感を覚え、そうした場面に遭遇することへの恐怖心を抱えています。SADのため、他人との関わりがつらくなり、不登校やひきこもりなど社会生活に支障を来すケースも少なくありません。

 SADは10〜20代に発症することが多く、症状が慢性化してくると、うつ病やアルコール依存症など別の精神疾患との合併が問題となります。心の病気か、性格の特性か、一見しただけでは見分けがつかないのもSADの特徴で、「内気」「人見知り」「引っ込み思案」などと思い込み、診療の機会を失ったまま過ごしている人も多いようです。


治療について教えてください


 治療法は大きく2つあり、薬物療法と精神療法です。薬物療法では、不安や恐怖を感じる原因とされる脳内物質のバランスを保つ薬・SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)を用います。抗不安薬やβ遮断薬などを併用し、不安時の身体症状の緩和を図る場合もあります。

 精神療法では、物事の受け止め方のゆがみや偏りを修正していく「認知行動療法」や、不安が生まれる状況にあえて飛び込んで段階的に身を慣らしていく「暴露療法」などが有効です。同時に、適度な有酸素運動などの生活指導や呼吸法、リラックス法など不安状況への対処法も指導します。

 SADは次第に認知されてきましたが、まだ十分に知られていない病気です。何より重要なのは、SADは「治療できる病気」ということです。治療により長年の苦痛から解放され、人生が大きく変わる患者さんもたくさんいます。不安の頻度が多かったり、社会生活への影響が大きい場合は、思い切って専門医を受診し、適切な治療を受けることをお勧めします。

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