2023年6月29日木曜日

神経性痩せ症

[神経性痩せ症とはどのような病気ですか]

 食行動に異常を来す病気を「摂食障害」と呼びます。多くは思春期に起こり、患者の9割以上が女性です。大きく分類すると、明らかな低体重でも本人にその認識がなく、極端に食事を制限したり食べ吐きを繰り返したりする「神経性痩せ症」と、大量にむちゃ食いしては、体重増加を抑えるために、吐いたり下剤を乱用したりする「神経性過食症」に分けられます。 

 神経性痩せ症状の原因は心理的ストレスなど複合的ですが、ダイエットが発症のきっかけになることも多いです。体重増加への持続的で過剰な恐怖に陥っている状態で、拒食はその恐怖からの回避であり、過剰な運動や自己嘔吐(おうと)は肥満恐怖を軽減するための行為です。無理なダイエットの反動として過食に走り、拒食と過食の繰り返しで病気が長期化する方も少なくありません。

 低体重が進むと脳機能が低下し「飢餓症候群」を呈します。思考力や判断力が低下した状態で、さらに強迫性が強まり、情緒不安定になります。また、低体重や低栄養による体の影響は深刻なものが多く、低血圧、骨密度の低下、無月経などの症状が出るほか、うつを伴うケースもあり、放置すれば衰弱死や自殺に至る恐れもあります。

[神経性痩せ症の治療について教えてください]

 飢餓症候群による認知機能の低下などで、精神療法の効果が得られないことが多く、まずは健康な最低限の体重まで戻すことが治療成功のために重要です。体重が極端に落ちてしまっている場合、入院治療が必要になるケースも多いです。

 神経性痩せ症から回復するためには、自身が病気であることを認識・理解し、病気の正しい知識を持って、考え方や行動パターンを変えていかなくてはなりません。治療は、基本的な栄養療法や心理教育のほか、体重への過度なこだわりなどの“考え方の癖”を修正する認知行動療法、家族全体をカウンセリングの対象とする家族療法、薬物療法などを行います。医師以外に、心理士や看護師、管理栄養士などによるチーム医療が必要です。また、家族への心理的支援と心理教育、ペアレント・トレーニングが非常に大切です。そして、家族もチーム医療の一員とするような連携が欠かせません。

 神経性痩せ症は、適切な治療と支援によって回復が可能な病気ですが、時間と労力、忍耐力が必要です。


医療法人 耕仁会 札幌太田病院
太田 健介 院長 


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