2006年12月27日水曜日

「新型インフルエンザ」について

ゲスト/つちだ消化器循環器内科 土田 敏之 医師

新型インフルエンザについて教えてください。

 中国、東南アジアを中心に発生している鳥インフルエンザは、新型インフルエンザと呼ばれています。従来のインフルエンザとはタイプが違い、平成15年(2003年)11月以降、タイなどの東南アジアにおいて256人が感染し、152人の死亡者がでています。(2006年11月1日現在)感染者、死亡者ともに若年者に多く、高齢者に少ないのが特徴です。ヒトは、このウイルスに対する免疫を持っていません。新型インフルエンザが世界中で流行すると、数百万人が死亡すると試算されています。  インフルエンザ感染の有無は、迅速診断キットで確認することになりますが、新型インフルエンザのキットは一般病院には用意されておらず、通常のインフルエンザ検査を行いますが、偽陰性で感染を見逃す可能性があります。治療は抗インフルエンザウイルス薬の内服が主になります。日本では、病院、国、都道府県で2500万人分の抗インフルエンザウイルス薬の備蓄を目標として、昨年から準備しています。

新型インフルエンザは予防できますか。

 予防としては、ワクチンがもっとも効果的です。ベトナムで発生した鳥インフルエンザに感染した患者から採取したウイルスをもとに作ったプロトタイプワクチンが来春までに実用化されます。しかし、鳥からヒトに感染したウイルスから作られたワクチンが、今後世界中で大流行する可能性のある、ヒト同士で感染する新型インフルエンザにどこまで効果があるか現時点では不明です。今のところこのワクチンで感染予防を期待しつつ、感染してしまったら抗ウイルス薬で治療するといったことになります。  しかし抗インフルエンザウイルス薬にも耐性ウイルスが確認されており、万能ではありません。 ただし、耐性ウイルスのために経過が悪化していった例は認められていませんので、しばらくは安心して使えると考えられます。また、抗インフルエンザウイルス薬による副作用の可能性がある異常行動については、その多くは2日以内に起こるので、服薬して48時間は患者を1人にしないようにすると安心です。

2006年12月20日水曜日

「不眠」について

ゲスト/メンタルケアさっぽろ西口クリニック 鈴木 将覚 医師

不眠に悩む人が多いそうですが。

 必要な睡眠時間は人それぞれですが、たいていの場合は6~8時間程度が適切です。一般的に「不眠」と呼ばれる睡眠障害には、主に4つのタイプがあります。寝ようと思っても寝つきが悪く、なかなか眠れない入眠困難。夜中に何度も目が覚めてしまい、再び寝つくのが難しい中途覚醒(かくせい)。朝早く目が覚めてしまい、眠れなくなってしまう早朝覚醒。十分な睡眠時間をとったつもりでも、ぐっすり眠った実感がない熟眠感の喪失。  人によって、さまざまな形で現れる睡眠障害ですが、日本人の約20%が不眠に悩んでいるといわれています。時々眠れない程度で、社会生活に影響がなければ心配ありません。しかし、不眠に悩む日が週に3回以上あり、それが続くようであれば、睡眠障害として対策を講じる必要があるでしょう。睡眠障害を放っておくと、日中眠気に襲われ、仕事や学業に集中できない、一日の疲れがとれず体力、免疫力が低下し、風邪などにかかりやすくなるなどの悪影響が懸念されます。

不眠を解消するにはどうしたら良いですか。

 不眠の原因としては、日中のストレス、悩み、環境の変化、体調不良、うつなどの精神的な病気などが挙げられます。不眠の原因を解消することも大切ですが、日常生活の中でリズムを作り、良質の睡眠を得られるようにすることも重要です。運動による適度な疲労感や睡眠前のリラックス、寝室や寝具の環境なども見直してみましょう。 
 それでも十分な睡眠がとれなかったら、心療内科・精神科などの専門医を受診してください。治療としては、睡眠導入剤、抗不安薬などの処方が中心になります。「睡眠薬に頼るのは怖い」という人も多いでしょうが、最近はさまざまなタイプの睡眠薬があります。「睡眠薬はクセになる」「睡眠薬を飲み続けると認知症になる」などは間違った知識です。適切な時期に適切な睡眠薬を服用することは、決して怖いことではありません。むしろ、睡眠薬を嫌って「寝酒」に頼りすぎアルコール依存症になったり、不眠が続いて体調を崩すほうが問題です。

2006年12月13日水曜日

「冬期間の痛み」について

ゲスト/円山リラクリニック 森田 裕子 医師

冬期間に生じる「痛み」について教えてください。

 痛みの種類には、急性のものと、神経痛など慢性のものがありますが、どちらも冬期間は増える傾向にあります。まず急性の痛みの原因として多いのは、転倒による打撲やぎっくり腰などのほか、雪道を歩くことによって筋肉に緊張を強いられたり、滑って不自然な力が入るなどです。また、慢性的な痛みの原因としては、寒さによる冷えによって、もともと持っていた関節リウマチ、変形性関節症、神経痛、頭痛などの症状が悪くなることが考えられます。
 骨折などの外傷は整形外科の受診をお勧めしますが、筋肉の凝りやリンパ管や血行の不良、原因がはっきりしない痛みに関しては、「痛みの治療」をするペインクリニックを受診するか、かかりつけの医師に早めに相談することをお勧めします。早めに治療を始めることにより悪化を抑えることが重要です。

痛みの治療法について教えてください。

 神経ブロック治療や中国鍼(はり)を使用した鍼治療、鍼に低周波通電を行って刺激を与える鍼電極低周波治療、体の内部まで温めて血行を良くすることにより痛みを和らげる光線療法、漢方薬の処方などもあります。神経ブロックとは痛みの伝達に関係する知覚神経や交感神経の周辺に局所麻酔薬を注射する方法です。その注射により、痛みを一時的に遮断し、交感神経の緊張を緩めることで血流を改善し、局所にたまった老廃物の排せつを促して痛みを軽減させる治療法です。これらの治療を個々の症状や痛みの原因に合わせて行います。
 自身でできる痛みの緩和法としては、急性の痛みには冷やしたり湿布することなどがあり、慢性の痛みには蒸しタオルやカイロで温めることなどがあります。
 冬期間の外出では、滑らない靴をはく、つえを活用する、体を冷やさない服装をすることなども大切です。特に、冬に外出機会が減って筋力が低下してしまうと転倒することも多くなるので、軽いストレッチを行ったり、ショッピングモールなどの暖かい場所で多めに歩くなど、日常の中で適度に体を動かすことも効果的です。

2006年12月6日水曜日

「加齢黄斑(おうはん)変性症の光線力学療法」について

ゲスト/大橋眼科 大橋勉 医師

加齢黄斑変性症とはどんな病気ですか。

 視野の中央がよく見えない、暗く見える、ゆがむといった症状が現れたら、加齢黄斑変性症が疑われます。人間の眼(め)は、角膜、水晶体、硝子体(しょうしたい)を通って、網膜の上に像を結んで物を見ます。その中心部は黄斑部と呼ばれ、物を見るために最も重要な部分です。この黄斑部に異常な老化現象が起こり、視力が低下する病気が加齢黄斑変性症です。原因は、健康な状態では存在しない新しい異常血管が、黄斑部の脈絡膜(網膜より外側に位置し、血管が豊富な膜)から発生し、網膜側に伸びてきます。この新しい血管は新生血管と呼ばれ、血管壁が大変もろいため、血液や血液成分が黄斑組織内に滲出(しんしゅつ)し、黄斑機能を妨げます。出血や滲出物によって、視力の低下や、物がゆがんで見えるなどの症状が出現します。放っておくと高度の視力障害や、最悪の場合失明することもあります。

治療法について教えてください。

 治療の一つとして、最近注目されているのが光線力学療法(PDT)です。光に対する感受性を持つ光感受性物質(ベルテポルフィン)を、ヒジの静脈から注射し、それが新生血管に到達したとき、非熱性の半導体レーザーを当てて、その光感受性物質に化学反応を起こさせます。そうすることによって、強い毒性のある活性酸素が発生し、新生血管の血管内皮細胞が破壊され、血管が閉塞(へいそく)します。この治療で使用するレーザーは通常のものと異なり、新生血管周囲の組織への影響は少なく、視力への影響は軽度です。しかし、まれに網膜出血が増加することがあります。一度傷ついた網膜は元に戻りませんが、新生血管をつぶすことによって病気の進行を止めることができます。初回の治療には2泊程度の入院が必要で、状態に応じて数回の治療が必要な場合もあります。もちろん、治療は健康保険が適用になります。
 加齢性黄班変性症は、早期に治療するほど効果が期待できます。視力の異常を感じたら、すぐに専門医を受診してください。道内で光線力学療法を実施している施設は少ないので、主治医によく相談してください 。

(眼科PDT研究会http://www.pdti.jp/参照)

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