2017年7月26日水曜日

抗リウマチ薬『メトトレキサート』と残薬の問題について


ゲスト/佐川昭リウマチクリニック 佐川 昭 院長

メトトレキサートとはどのような薬なのでしょうか。
 リウマチと診断されたら、なるべく早期に「抗リウマチ薬」で治療をはじめます。抗リウマチ薬には、大きく分けて経口剤のメトトレキサートをはじめとする「従来型合成抗リウマチ薬」と注射製剤の「生物学的製剤」があり、これらを組み合わせて治療します。
 メトトレキサートは、世界的に最もよく使用されている抗リウマチ薬で、多くの患者さんではじめに使われる薬剤(第1選択薬)です。ほかの抗リウマチ薬と組み合わせて使うときの基本薬でもあり、リウマチ治療の中心となる重要な薬です。約7割の患者さんに、関節の痛みや腫れが軽くなる効果がみられ、最終的には3〜4割くらいの患者さんは、ほぼ完全に痛みや腫れがなくなる「寛解」という状態になります。有効率や長く継続できる患者さんの割合は、抗リウマチ薬の中では最も高い薬剤です。また、症状が良くなるのに加えて、関節の軟骨や骨の破壊を抑えることも分かっています。
 間質性肺炎、血球減少症、肝機能障害、感染症などの副作用がありますが、定期的な検査と自覚症状から、リウマチ専門医であれば診断は可能です。また、軽度な副作用の大部分は、葉酸製剤の服用で抑えることができます。

リウマチ治療薬の「飲み残し」「使い残し」が問題になっていると聞きました。
 リウマチ治療薬に限らず、薬の飲み残しは「残薬」といわれ、治療が狙い通りに進まないリスクをはらむだけでなく、医療費の圧迫要因にもなっています。薬を飲み残してしまう理由や状況はさまざまですが、リウマチ治療薬については、メトトレキサートやステロイド薬、骨粗しょう症薬、葉酸製剤などは毎日服用するタイプの薬ではなく、1週間のうち数日だけ服用するなどの「飲み方が複雑」なタイプの薬が多いことが原因と考えられます。
 残薬を少なくするための工夫としては、「薬の一包化(一度に飲む複数の薬を一つの袋や包みに入れること)」や、日付ごとに薬を入れられるポケットが付いた「お薬カレンダー」を用いることなどが挙げられます。また、「かかりつけ薬局」「かかりつけ薬剤師」を上手に利用することも大切です。別の薬局で同じ薬をもらったことに気づかず、飲み切れずに余らせたり、薬同士の飲み合わせが悪くて体に有害な副作用が起きたりといった問題を防ぐことができます。

2017年7月12日水曜日

ストレスって何だろう?


ゲスト/医療法人社団五稜会病院  中島 公博 理事長

ストレスという言葉を毎日のように新聞やテレビで目や耳にしますが、ストレスとはどのようなものなのですか。
 私たちの周りにはいろいろなストレスがあります。仕事のストレス、家事や育児のストレス、上司や同僚、友人、家族との人間関係で感じるストレスもあるでしょう。お金がなかったり、体の調子が悪かったりしてもストレスになりますし、まぶしかったり、うるさかったり、暑かったり、寒かったりするのもストレスです。
 ストレスを感じると、私たちの体は胸がドキドキしたり、血圧が上がったり、変化が起こります。また、イライラした気分になったり、不安になったりもします。こうした変化は確かに不快なものですが、見方を変えれば、例えば胸がドキドキするのは、心臓が筋肉にたくさんの血を送って体を動かしやすくし、「不快さを解消するための行動」を起こしやすくしているとも考えられます。
 このように、私たちはストレスを感じることで自分の持っている力を発揮し、ストレスになっている出来事や問題に対応していきます。そして、それらを解決することで達成感や満足感を感じ、自分自身が進歩・成長する機会にもなっているのです。
 社会生活の中でストレスは避けられないものです。ストレスを感じるということは、社会の中で生活をしている証拠でもあると思います。ストレスを進歩・成長のチャンスと考え、ストレスと上手に付き合っていくことが大切です。

ストレスと上手に付き合うコツを教えてください。
 自分では解決が難しいストレスや強いストレスが長く続くと、心身の調子が悪くなり、自分の力を十分に発揮できなくなってしまう場合もあります。そうなると、ストレスに上手に対応することもできなくなります。
 ストレスと上手に付き合うには、自分の周りにあるストレスがどのようなものか整理したり、ストレスの影響がどの程度出ているかをチェックしたりするのが役に立つと思います。現在、企業で行われているストレスチェック制度もそのための仕組みです。
 自分一人では解決が難しいストレスがある場合は、周りの人の力を借りたり、専門家に相談したりするのも積極的な問題解決の方法です。心身に激しいストレスがかかっていると感じる時は、まず心身の調子を整え、本来の力を回復させることが問題解決の近道になることもあります。医療機関も上手に利用するといいでしょう。

2017年7月5日水曜日

オーラル・フレイル


ゲスト/医療法人社団アスクトース 石丸歯科診療所 近藤 誉一郎院長

最近「オーラル・フレイル」という言葉を耳にしますが、どういう意味なのでしょうか。
 「人は足から老いる」とよくいわれますが、最近では「人は口から老いる」ともいわれるようになってきました。「フレイル」とは「虚弱」を意味します。滑舌の悪さや食べこぼし、飲み物にむせるといった口周りのトラブルが、実は高齢者の体が弱っていく最も早いサインであり、そうした不調をまとめて「オーラル・フレイル=口腔機能の虚弱・低下」と呼んでいます。日本歯科医師会では、全身の虚弱を予防するために、できるだけ早い段階でオーラル・フレイルに対処することを国民運動にしようと提唱しています。
 歯・口の健康状態が悪いと、かむ力や舌の動きも悪くなり、食べ物をおいしく味わえなくなります。また、滑舌が悪くなったり、口もとの「見た目」に自信が持てなくなったりすると、家に閉じこもりがちになり、さらなる老化につながるケースもあります。
 最近の研究では、「残っている歯の本数が多いこと」や「歯がなくなったら、入れ歯やブリッジなどの義歯治療を行うこと」が、認知症発症リスクや転倒リスクを減らすのに関連することが明らかになっています。また、日本人の死亡原因では肺炎が増え、第3位となっていますが、食べ物やだ液が誤って気管から入って起きる「誤嚥性肺炎」にもオーラル・フレイルが関与しているといわれています。口腔の健康が、全身の健康と寿命に大きく影響していることが分かっているのです。

オーラル・フレイルを予防するにはどうしたらいいですか。
 オーラル・フレイルのはじまりは、硬いものが食べにくい、液体でむせる、口が乾くなど、ほんのささいな症状です。自分がしっかり食べ物をかめているか、また、食卓を囲む時、家族にオーラル・フレイルの兆候がみられていないか、注意してみることです。
 歯や歯茎に異常がなくても、半年〜1年に一度は歯科医院で定期検診を受けることも重要です。かかりつけの歯科医であれば、患者さんの歯や歯茎だけでなく、口腔機能の変化にもすぐに気付くはずです。軽微な症状のうちに対処すれば、元に戻したり、機能を維持したりできる可能性は高いです。
 オーラル・フレイルの研究は現在も進んでいますので、今後も注目してみてください。しっかりかみ、しっかり食べ、しっかり動き、しっかり社会参加して、いつまでも健康に長生きしましょう。

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