2021年12月22日水曜日

苦痛の少ない内視鏡検査

ゲスト/やまうち内科クリニック 山内 雅夫 院長


胃内視鏡検査、大腸内視鏡検査について教えてください。

 これまで、胃内視鏡検査は口から入れる経口内視鏡を用いるのが一般的でした。しかし、最近は「経鼻内視鏡検査」という鼻から挿入する方法で検査が行われることも増えてきました。経鼻内視鏡は以前からありましたが、近年は著しく性能が良くなり、導入する医療機関が急増しています。

 経鼻内視鏡は弾力性のあるしなやかなチューブで、直径は5mm台と一般的な経口内視鏡に比べて細く、スムーズに挿入することができます。画像もクリアな高画質で、視野が広く、ごく小さな病変も発見することが可能です。

 経口内視鏡は挿入時、舌の付け根の舌根という部分に内視鏡が触れることで、検査の最中に「オエッ」という吐き気をもよおすことがあるなど、患者さん の負担が大きかったのですが、経鼻内視鏡では鼻から挿入した内視鏡は鼻腔(びくう)を通って食道に入るため、嘔吐(おうと)感や痛みがほとんどありません。また、検査中に医師と会話できることも、患者さんと医師双方にとって大きなメリットになっています。

 大腸内視鏡というと、どうしても辛く苦しい検査を想像してしまう方が多いと思いますが、こちらも器具や技術の進歩により、従来に比べて検査は楽になってきています。多少の圧迫感はあっても、痛みを抑えて検査を終えることができます。また、鎮痛剤を用いることで、眠っている間に治療が終わるケースもあるようです。


内視鏡検査を受けるべき年齢や頻度について教えてください。

 大腸がんのリスクが高くなる40代以上は、胃がんのリスクが高くなる年代でもあります。「検査が怖い」「以前すごくきつかった」など、大腸や胃の内視鏡検査を苦手とするために、がんなど重篤な病気の発見が遅れてしまう例も少なくありません。がんや潰瘍など、食道や胃、十二指腸、大腸、小腸などの疾患は、早期発見・早期治療が完治への近道です。そのためには、定期的な検査が重要です。

 それぞれの内視鏡検査を受けるのに適切な時期や間隔は、病歴・経過や家族や近親者の病歴などにより個人差はありますが、基本的には40歳になったら「まずは一度」、50歳代以降では1年〜数年ごとに検査されることをお勧めします。


2021年12月15日水曜日

高齢者のうつ病

 ゲスト/医療法人社団 図南会 あしりべつ病院 山本 恵 診療部長


高齢者のうつ病について教えてください。

 高齢者のうつ病は「老年期うつ病」とも呼ばれ、他の年代のうつ病とは区別されることがあります。基本的に、診断基準は全ての年代で共通ですが、発病の原因として高齢者特有の誘因があります。

 老年期は抑うつ状態、うつ病が起こりやすい年代です。老年期は「喪失の季節」ともいわれるように、いろいろなものを失う時期です。体力が衰えたり健康を損なったりすること、定年退職や子どもの独立などにより「役割」を失ってしまうこと、親族や配偶者、友人との死別、老いてからの一人暮らしといった喪失体験や社会環境の変化が、うつ病の誘因になることがあります。

 高齢者のうつ病には、次のような特徴がみられます。①認知症と間違われやすい…高齢者が抑うつ状態やうつ病になると、認知症と間違われることが少なくありません。「もの忘れ」「受け答えがちぐはぐ」「反応が鈍い」などの症状から認知症だと思っていたら、実はうつ病だったということがあります(逆の場合、両方の場合もあります)。②自殺率が高い…日本の自殺者の約4割は高齢者です。老年期の自殺の背景にはうつ病が潜んでいることが多いです。③妄想が出やすい…「周囲の人に迷惑をかけている」「取り返しのつかない罪を犯してしまった」と思い込む罪業妄想、実際には預貯金などがあっても「お金がない」「財産がなくなり、今日の生活もできない」と訴える貧困妄想、疾患がないのに「不治の病にかかっている」と信じて疑わない心気妄想などが代表的です。④不安や焦燥感、身体症状が強い…若い人(他の世代)のうつ病だと意欲の低下や気分の落ち込みが前面に出るのに対し、高齢者の場合は不安や焦りが強く、また、頭痛やめまい、肩こり、腹痛、しびれ、ふらつきなど身体(心気)症状を伴うケースが多いです。いくら治療をしても体の調子が良くならない時は、うつを疑って見ることも大切です。


高齢者のうつ病にはどんな治療や対策が有効ですか。

 治療の柱の一つは、他の世代のうつ治療と同じく、抗うつ剤を中心とした薬物療法です。ただし、高齢者は老化に伴う身体機能の低下もあって、若い人に比べて副作用が出やすいので、服薬量や薬の飲み合わせなどに注意を払う必要があります。また、カウンセリングなどの精神療法、庭・畑作業といった精神作業療法(リハビリ)など、薬以外の選択肢も重要になります。同じうつ病であっても、患者さんの病状・回復状況などに応じて必要となる治療やアプローチは変わってきます。

 高齢者のうつ病は、単に「年のせい」で元気がないことなどと混同されがちですが、頻度の高い病気です。そして、治る可能性の高い病気です。本人に自覚がなくても、生活を共にしている家族や周囲の方が異変に気付くことがあります。「いつもと違う」「様子がおかしい」などと感じたら、心配していることを伝え、相手を急かさず、できるだけ安心させるような言葉をかけながら医療機関の受診を促してください。他の病気、診療科と同じように、治療していない期間が長くなるほど、症状はひどくなり治療が難しくなります。早期受診・治療がなによりも大切です。


2021年12月8日水曜日

緑内障のレーザー治療「選択的レーザー線維柱帯形成術(SLT)

 ゲスト/月寒すがわら眼科 菅原 敦史 院長


緑内障とはどのような病気ですか。

 緑内障は日本人の失明原因として最も多い進行性の病気です。主に眼圧が上がることで視神経に損傷が起きて発症します。最近は眼圧が正常範囲にもかかわらず視神経が障害される「正常眼圧緑内障」も増えています。40歳以上の20人に1人が発症するとされ、長い時間をかけて視野が狭くなります。やっかいなのは、重症化するまで自覚症状がないこと。気付いた時には治療が難しくなっているケースも少なくありません。

 進行してしまうと日常生活に不便を感じるようになりますが、早期に発見し、治療を継続することで進行を食い止められれば、不自由なく視力・視野を維持できます。自覚症状のない段階で病気を見つけるためには、目の定期検診が何よりも重要です。


緑内障の治療について教えてください。

 緑内障の治療は、症状が進行しないよう「眼圧を下げる」ことが目的です。方法としては、点眼薬による治療、レーザー治療、外科手術の3つがあります。

 一般的には点眼薬の投与から治療を開始します。複数の点眼薬を使うこともあります。すべての人に起きるわけではありませんが、「充血」「まつげが伸びる」「目の周りが黒ずむ」などの副作用が出ることもあり、継続的な使用が困難な患者さんもいます。また、毎日忘れずに点眼することは難しく、患者さんの4分の1以上が点眼開始から約3カ月で治療を離脱してしまうという報告もあります。

 点眼薬が使えない、継続できない場合など、点眼薬による治療の代わりになりうるのがレーザー治療「選択的レーザー線維柱帯形成術(SLT)」です。点眼薬との併用で治療効果を高める例も多いです。日帰りでの外来治療が基本となるSLTは、短時間で終わり痛みや合併症リスクの少ない低侵襲な治療法で、繰り返し治療を受けられることもメリットです。ただし、実施する医療機関が限られていること、SLTの適用となる患者さんでも約2〜3割の方には治療効果が十分に出ないケースがあることなど欠点もあります。点眼薬、レーザー治療で十分に眼圧が下がらない場合は外科手術が検討されます。

 大切なのは、信頼のできる眼科医とよく相談した上で、自分の病状やライフスタイルに最も合った治療法を選び、継続していくことです。

2021年12月1日水曜日

口腔機能低下症

 ゲスト/医療法人社団アスクトース 石丸歯科診療所 内山 喬博 副院長


口腔機能が低下した状態とはどういうことなのでしょうか。

 最近、以前に比べて「食べ物が口に残る」「食事の時にむせるようになった」「薬などが飲み込みにくくなった」「口の中が乾く」「食べこぼしをするようになった」「滑舌が悪くなった」などと感じている方はいらっしゃいませんか。これらはお口が元気をなくしてきているサインで、専門的には口腔機能低下といいます。

 お口が元気をなくす要因としては、加齢や全身のさまざまな病気もありますが、入れ歯や銀歯などが合わなくなっていることや歯周病で歯がぐらついていることなど、口の中に原因があることが多いです。

 お口が元気でなくなると、好きなものが食べられなくなったり、食べにくい野菜や肉などを避けたりするようになり、栄養の偏りやエネルギー不足を引き起こします。結果、元気が出なくなり、疲れやすく病気にもなりやすくなります。また、口の乾燥や汚れで口臭が発生したり、話しにくくなったりすることで、人と会うことに不安を感じ、外に出掛けることを億劫に感じて家にこもりがちになってしまうケースも目立ちます。

 このようにお口の健康は全身の健康に大きく影響を及ぼします。歯科医院では、簡単な検査でお口の健康度・元気度を調べることができるので、上手に利用してほしいです。


どのような検査や治療を行うのですか。

 〈舌についた汚れの量〉〈お口の乾燥状態〉〈かむ力〉〈舌と唇の動き〉〈舌の力〉〈かめているか〉〈飲み込めているか〉、これら7つの項目について歯や舌の状態のほか、唾液、発音などを調べ、3項目以上に問題がある場合、口腔機能低下症と診断されます。

 治療は、口腔機能低下症を引き起こしている原因を見つけ、それを取り除くことでお口の健康を取り戻していきます。例えば、入れ歯や銀歯が合わないことが原因と分かったら、調整したり作り直したりします。また、歯周病が原因なら、歯石を取るなど歯垢を除去する治療をして歯周病の進行を食い止めます。お口周りや舌の筋力をアップする口腔体操を指導し、かむ力や飲み込む力のトレーニングも行います。口の中以外に原因があると考えられる場合は、患者さんのかかりつけの内科と連携して対策を立てることもあります。

 繰り返しになりますが、お口の健康が全身の健康につながります。お口の元気の衰えを年のせいとあきらめて放置せず、気になることがあれば早めにご相談ください。