2009年1月28日水曜日

「急性冠症候群」について

ゲスト/北海道大野病院附属駅前クリニック 古口 健一 医師

急性冠症候群について教えてください

心臓は、全身の筋肉や臓器に血液を送るポンプの役割を果たしていますが、心臓自体も血液を必要としています。心臓の筋肉(心筋)への流入血液が減少し、ポンプ機能を担うために必要な酸素消費量をまかなえなくなって、引き起こされる病気を総称して虚血性心疾患と呼びます。
心臓を取り巻いている冠動脈が動脈硬化や痙攣(けいれん)のために狭くなり、酸素の需要・供給バランスがくずれた状態が狭心症で、血栓などで完全にふさがり心筋が壊死(えし)してしまった状態を心筋梗塞(こうそく)症といいます。
 最近では、心筋梗塞に移行しやすいと考えられる狭心症を「不安定狭心症」といい、進行して急性心筋梗塞へ、さらに心臓突然死に至る一連の病態を「急性冠症候群」と呼んでいます。

予防や治療方法について教えてください。

動脈硬化とは、血管が硬くなり内側に脂肪などがたまって血管が細くなってしまうものをいいます。原因は老化、体質、食生活などです。血管の内腔が狭くなるため、血液が流れにくくなり、硬化がさらに進み血栓ができてしまうと血管が詰まって一時的に流れが止まります。この現象が冠動脈で起きると虚血性心疾患、脳動脈で起きると脳卒中になります。
冠動脈疾患の危険因子としては、喫煙、高血圧症、高脂血症、糖尿病、肥満、ストレス、過労などが挙げられます。メタボリックシンドロームの予防、健康的な食生活、ストレスの軽減など、日常生活での取り組みが予防につながります。
急性冠症候群は一刻を争う事態なので、救急車などで直ちに救急病院へ入院し、治療を開始する必要があります。薬物療法としては、抗凝血薬、抗血小板薬、血管拡張薬の投与を行います。急性心筋梗塞の場合や、薬物投与の効果がない不安定狭心症の場合は、冠動脈造影を行い、冠動脈に高度の狭窄(きょうさく)を発見した場合は、カテーテルによる冠動脈形成術を行います。カテーテル治療には、経皮的冠動脈形成術(PTCA)や、ステント術(PCI)を行いますが、場合によっては、外科手術の冠動脈バイパス術を行います。

2009年1月21日水曜日

「リウマチの診断と治療」についてお話を伺いました。

ゲスト/佐川昭リウマチクリニック 佐川 昭 医師

リウマチの診断について教えてください。

リウマチクリニックを初めて訪れる患者さんは、関節のこわばり、痛み、腫れなどの自覚症状があり、不安に思っている方がほとんどです。医師としては、初期のリウマチを見逃さないよう慎重に診断する必要があります。初期リウマチの発見は難しいものです。初診時の流れとしては、まず、患者さんの話をよく聞いて、「リウマチ」を疑う症状を見つけます。症状が持続的でしつこければ、より疑いが強くなります。本人持参の資料、メモ、検診表などを見て、丁寧に診察します。診察では特に「腫れ」に注目します。握力も大事な診断基準です。診断基準表に記入し、診断の目安をつけます。腫れの具合が分かるよう写真撮影や、その時点で異常がなくてものちに比較が可能なレントゲン撮影も欠かせません。
 MRIやエコーも可能な限り積極的に行います。血清検査はとても有用です。基準値以下でも症状が持続する場合は注意深く観察します。また、不明、未確定で重要と思われるケースについては、多方面から意見を聞き、検討を重ねます。

リウマチの治療について教えてください。

リウマチの完治は難しいですが、良い薬が出ているので、進行させずに上手に付き合っていくことができる場合が多いです。そのためには、早期発見・治療が肝心です。
具体的には、関節破壊を予防するためにできるだけ早くから抗リウマチ薬を使用します。炎症や痛みがある場合は、ステロイド薬や非ステロイド性抗炎症薬を使用する場合もあります。
最近では、インフリキシマブやエタネルセプトなどの生物製剤が出て、リウマチ治療に効果をあげています。症状を和らげるだけでなく、関節の破壊を食い止める効果があり、発症以前と変わらずに生活できる場合もあります。ただし、肺炎など感染症にかかりやすくなる、高価であるなどの問題点もあります。納得できるまで医師に相談するとよいでしょう。
平行して、リハビリや湿布、関節注射、病気を正しく理解するための教育なども必要に応じて行います。関節の変形や脱臼などが起こった場合は、外科手術を行うこともあります。

2009年1月14日水曜日

「ぜんそくや慢性の咳(せき)の吸入薬」について

ゲスト/白石内科クリニック 干野 英明 医師

ぜんそく、慢性の咳の吸入薬について教えてください。

ぜんそくはさまざまな原因による気道局所の炎症や気管支内腔の狭さくによって起こります。治療薬としては、より少量で効果が得られ、全身への副作用がより少ないという点から、気道へ直接薬剤を吸入することが中心となります。吸入薬の種類としては、ステロイド薬、β2(ベータ ツー)刺激薬、抗コリン薬、クロモグリク酸ナトリウムなどがあります。中でもステロイド薬は、ぜんそく治療における最も効果的な抗炎症薬で、早期に開始するほど効果があるといわれています。吸入ステロイド薬は、ぜんそく発作が起きた時に使うのではなく、毎日使用することによって発作が起こりにくくなります。また、吸入ステロイド薬の中には妊娠中も安全に使えるものがあります。

吸入ステロイド薬に副作用はありますか。

主な副作用は、声がかれる、口腔・咽頭カンジダ症が発生することです。声がかれる場合は一度薬剤を中止するか、起きにくいタイプのものに変えます。吸入後は、必ずうがいをすることが大切です。吸入ステロイド薬にβ2刺激薬を追加することもあります。β2刺激薬は気管支拡張作用があり、吸入ステロイド薬と併用すると効果が増します。β2刺激薬には、短時間作用型と長時間作用型があり、短時間作用型は発作が出た時に使用します。しかし、これに頼って使用回数が多くなると、ふるえが現れる振戦、動悸(どうき)、頻(ひん)脈などが出現します。吸入ステロイド薬と併用するのは長時間作用型です。現在使われている吸入薬は、大別するとドライパウダー吸入と定量噴霧吸入があります。ドライパウダー吸入は自分の吸う力で薬剤が気管に入ります。定量噴霧吸入は噴霧と吸気のタイミングをうまく同調させないと効率良く薬剤が入りません。吸入薬治療を開始してから症状が落ち着いてきた場合、いつまで続けるかは個人差もあり、一概にいえませんが、中止後に再発することも珍しくありません。
慢性的な咳の中に、ぜんそくの前段階ともいわれる咳ぜんそくがあり、女性に多い傾向があります。3割ほどの人がぜんそくに移行しますが、吸入ステロイド薬によって予防することができます。
吸入薬にはそれぞれ特徴があり、使用する場合には医師に相談の上、自分に合ったものを処方してもらいましょう。吸入薬治療を開始したら自己判断で中止しないことが大切です。

2009年1月7日水曜日

「多焦点眼内レンズによる白内障治療」について

ゲスト/大橋眼科 大橋 勉 医師

白内障の眼内レンズについて教えてください。

白内障は瞳の後方にある水晶体が濁って起きる視力障害です。なかでも加齢に伴う老人性白内障が最も多いとされています。治療には点眼薬が投与されますが、最終的には手術が必要になります。現在、日本で多く行われている手術法は、水晶体を包んでいる袋の中の濁りを取り除き、その袋の中に人工レンズを挿入する方法です。
 現在、日本で使われている眼内レンズは、ほとんどが「単焦点眼内レンズ」です。遠く、あるいは近くの一カ所に焦点を合わせたレンズで、濁りがなくなるため、見やすく視界が明るくなりますが、裸眼でどこでもよく見えるというわけではありません。焦点が遠くにある場合は、読書や縫い物など手元の作業時には視界がぼやけ、老眼鏡が必要になります。逆に近くに焦点を合わせた場合は、外を歩いたり、運転する時に眼鏡が必要になります。

多焦点眼内レンズについて教えてください。 

多焦点眼内レンズは、遠距離、中距離、近距離など複数に焦点が合うように設計されています。今までの単焦点眼内レンズに比べると、遠くにも、近くにも眼鏡なしで焦点が合いやすくなります。日本では認可されたばかりで、まだ症例数は少ないですが欧米では増加傾向にあります。
多焦点眼内レンズでの見え方に脳が慣れるには、年齢や個人間の差はありますが、一般に数カ月程度かかるといわれています。また、単焦点眼内レンズに比べ、遠くも近くも焦点が合いやすいですが、自由にピントを変えることができる見え方とは異なります。場合によっては眼鏡が必要になることもありますが、ひん繁にかけ外しする煩わしさからは解放されます。
単焦点レンズよりは見え方が劣ったり、暗い場所では光が散乱して見えるハローや、光の周辺に輪が掛かって見えるグレアを感じる場合もあります。夜間に車の運転が多い場合などには向いていません。どちらのレンズにするかは、医師と話し合い、ライフスタイルを考慮して選択することをお勧めします。当院では昨年8人の白内障患者に対して多焦点眼内レンズの移植術を行いました。

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