2007年11月28日水曜日

「肛門痛」について

ゲスト/札幌いしやま病院 樽見 研 医師

肛門痛とは、どのような病気ですか。

 直腸肛門部や周辺に明らかな病変がないにもかかわらず、肛門周辺に痛みを感じることがあります。肛門周辺に痛みを感じる病気としては、裂肛(切れ痔)、痔ろう、肛門周囲膿瘍(のうよう)、直腸がんなどがありますが、これらの病気に共通しているのは、排便時に痛みを伴う、腫れ、出血、便秘や下痢などほかの症状があるということです。それらがなく単に「肛門周辺だけが痛い」という症状で受診する人が増えていますが、このようなケースを肛門痛と呼んでいます。特に50代以上の女性に多く、たいていの場合痔ではないかと疑って病院を訪れます。問診や触診、エコーなどを行い、ほかの病気の可能性を否定します。女性の場合は婦人科系、男性の場合は泌尿器科系の病気が隠れている場合もあるので、慎重に診断します。

肛門痛の症状と治療法を教えてください。

 肛門痛の痛みの感じ方は人それぞれで、ズキンズキンとする、ピリピリする、重苦しい、肛門に違和感があるなどです。原因としては、肛門周辺の神経痛であると考えられます。肛門痛は、消炎鎮痛剤やぬり薬の効果があまり望めません。いつまでも痛みがなくならず、慢性化することも珍しくありません。
 ストレスが原因であることも多いので、比較的効果があるのは、抗うつ剤、安定剤などの服用です。心療内科によるアプローチで症状が改善することもあります。神経ブロック注射や理学療法が有効なケースもあります。また、受診したことで、がんなどの重大な病変がないと分かり、安心した途端に痛みが消失することもあります。
 日常生活の中では、同じ姿勢で座り続けたり、患部を冷やしたりすると痛みが出やすくなります。神経痛ですから、入浴などで患部を温めると痛みが緩和されることが多いです。運動不足の改善や、ストレス解消のために趣味を持つなど、生活環境を変えただけで、うそのように治まることもあります。ただし、大きな病気が隠れている可能性もあるので、自己診断は禁物です。肛門に痛みを感じたら、早めに専門医を受診してください。

2007年11月21日水曜日

「大腸がんとメタボリックシンドローム」について

ゲスト/琴似駅前内科クリニック 高柳 典弘 医師

大腸がんの原因について教えてください。

 大腸がん罹患(りかん)者は、ここ数年急激に日本で増加しており、2005年度の統計ではがん死亡数の男性4位、女性1位になっています。食生活などの環境因子の影響が大きな病気で、日本人における大腸がん増加の原因は、生活習慣の欧米化が関与していると考えられています。  最近の多くの研究により、大腸がんの危険因子として肥満が関与していることが分かってきました。肥満には、皮下脂肪型の肥満と内臓脂肪型の肥満がありますが、大腸がんの危険因子となる影響が大きいのは、内臓脂肪型肥満です。肥満に加え、高血糖、高血圧、高脂血症を重複して発症するメタボリックシンドロームが大腸がんの発症に関係していると考えられるようになってきました。発がんのメカニズムとして、メタボリックシンドロームの病態の基盤にもなっている「インスリン抵抗性」という状態が主な要因としてあげられます。

インスリン抵抗性について教えてください。

 インスリンの作用は血糖値を下げるだけではなく、脂質やタンパク質の代謝、細胞の増殖など全身の臓器でさまざまな作用を発揮しています。このインスリンの作用が弱まった状態が「インスリン抵抗性」です。運動不足や肥満によりインスリン抵抗性が引き起こされ、その分過剰なインスリンが血液中に増えます。過剰なインスリンはインスリン以外の細胞増殖因子も増やし、これによって細胞が死なないで増え続ける状態を引き起こし、腫瘍(しゅよう)の発生につながるといわれています。  大腸がん予防法として「身体活動」が一番予防効果が高いということが分かりました。「身体活動」とは、生活の中で体を動かすことの総称で、スポーツだけでなく、家事や労働といった日常生活のなかでの活動すべてが含まれています。身体活動によって肥満を予防・改善し、さらにインスリン抵抗性も改善していくことが、大腸がんにおける予防効果をもたらします。 40歳以上で肥満をはじめ、メタボリックシンドロームが気になる人は、積極的に大腸がん検診を受けることを お勧めします。

2007年11月14日水曜日

「乳歯列の反対咬合(こうごう)矯正治療」について

ゲスト/E-line矯正歯科 上野 拓郎 歯科医師

反対咬合の矯正時期について教えてください。

 反対咬合(受け口)の治療は、矯正治療の中でも長くかかるものです。反対咬合はもともとの骨格が影響している場合が多く、成長とともに症状も変化するため、一般的には永久歯が生え始める7歳前後から、長い場合は成長が止まる18歳頃までの継続的な矯正治療が必要となります。
 きちんと最後まで治療することが大切ですが、小学校高学年や中学生になると、面倒くさがって治療を中断してしまう場合があります。反対咬合の場合は、骨の成長とともに症状が顕著になることも珍しくありませんので、中学生や高校生の成長期の検診・治療はことのほか重要です。反対咬合をそのままにしておくと、発音やそしゃくに影響する場合も多く、また審美面で劣等感を抱くことも考えられます。成人してからの治療では、外科手術が必要となるケースも多いのが実情です。

乳歯列のころからの治療法もあるそうですね。

 反対咬合は、3歳児の歯科検診で指摘されて受診する人が多いです。また、親族に反対咬合の人がいる場合が多く、保護者が早いうちから注意を払うため、早めに専門医を受診するケースが多くなっています。これまでは、永久歯に生え替わるまでは、「様子をみる」ということが多かったのですが、樹脂製のマウスピース状の器具が開発され、早めに矯正治療が開始できるようになりました。寝ている間に器具を歯にかぶせ、口の周囲の筋肉、舌の機能を利用して改善します。ごく単純な形状のため幼児でも比較的抵抗なく受け入れることができます。 
 治療の開始時期が早いほど効果が期待できますが、これだけで治るか、さらに永久歯になってからの治療が必要かは、ケースバイケースです。ここ2、3年で急速に広まっている治療法なので、気になる人は矯正専門医にぜひ相談してください。従来の矯正治療に比べ、本人の負担が少ないのも魅力ですが、上手に使えなかったり、期待したほどの効果が得られない可能性もあります。また、この治療法が合わない症状という場合もあります。医師と十分に話し合って納得をしてから治療することをお勧めします。

2007年11月7日水曜日

「皮膚の血管病変」について

ゲスト/緑の森皮フ科クリニック 森 尚隆 医師

皮膚の血管病変について教えてください。

 寒い地方の人に多く見られる『赤ら顔』や『毛細血管拡張症』。原因として、室内と屋外の温度差による皮膚表面の急激な温度変化が挙げられます。顔はほかの体の部位に比べ毛細血管が多く、肌の真皮層には縦横に毛細血管が走っており、ほおは火照りやすく表皮を通して流れる血管が見えるのが赤みです。『赤ら顔』は、精神の動揺によっても反応し、何かを意識した瞬間に顔全体が真っ赤になるなど体の中からの影響によるものもあります。また、『酒さ(しゅさ)』といって中年層の顔面、特に鼻を中心として生じる毛細血管拡張症を伴う赤みもあり、症状が進むとニキビ状の丘疹や膿疱(のうほう)が見られるようになります。誘因としてストレス、アルコール、刺激性食品、紫外線などがあり、血管拡張とともに毛包脂腺系が刺激され形成されます。  また、先天性に小さな動脈、静脈、毛細血管の拡張が見られるのが『赤アザ』です。代表的なものは、ほぼ平らな「単純性血管腫」と、いちごのように盛り上った「いちご状血管腫」があります。単純性血管腫は自然消失することがあまりないのですが、いちご状血管腫は生後まもなく発症し、ほとんどが学童期までに自然消失します。しかし、消失後ぶよぶよとしたシワを残すことがありますので、早めの治療をお勧めします。また、首や胸などに点在する小さな赤い点は「老人性血管腫」といい、中年以降に多くできるものです。

治療方法について教えてください。

 皮膚の血管病変は、レーザー治療の対象となります。赤みの色や性質によって治療に使われるレーザーは異なりますが、最新の色素レーザーは皮下出血や二次性色素沈着、カサブタなどの副作用があまり気にならなくなりました。また、毛細血管拡張症や赤ら顔にはフラッシュ光という新しい光の技術を用いる「フォトセラピー」もあります。マイルドに治療を進めることができ、同時にしみや毛穴、小ジワのケアにもなる複合的な肌の治療法です。レーザーやフォトセラピーのどちらの治療も、ノーダウンタイムといって、カサブタを作らずテープやガーゼなど保護する必要もなく、すぐに化粧が可能です。このような治療のほとんどは、保険適用外の自費治療です。

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