2011年7月25日月曜日

「予防歯科」

ゲスト/庄内歯科医院 庄内 淳能 院長

歯科医の正しい利用の仕方を教えて下さい。

 歯が痛い、歯茎が腫れる、詰めものが外れたなどのトラブルが生じてから歯科医を受診する人が多いと思いますが、本来であれば、それらの症状が現れる前に歯科医を訪れることがベストです。どんな病気でも最良の治療法は、病状が発生する前に防ぐことです。歯も例外ではありません。例えば、歯を失う最大の原因となる歯周病は自覚症状が乏しい病気です。歯茎の腫れや出血などの症状が現れてからでは、長期の治療や痛みを伴う治療が必要になる場合があります。
 そのような事態にならないためにも、まずは口腔(こうくう)内の環境をリセットすることから始めましょう。小さな虫歯から初期段階の歯周病、噛(か)み合わせまで、口の中の状態を診察してから、プランを立てて治療を進めます。患者さんの通院間隔にもよりますが、治療期間は大体半年から1年くらいが目安となります。
 口腔内をリセットするために重要なことは「痛くないから」「生活に支障がないから」といって、治療を途中でやめずに、完全に治癒するまで通い続けることです。歯に対する意識を痛くなってから治療するという従来の考えから、「予防のために歯科医院へ行く」という考えに変えていきましょう。

どのようなアフターケアが効果的ですが?

 口腔内のリセットが完了し、治した歯を守るためにはメンテナンスが大切です。
 自己メンテナンスで一番効果的なのはブラッシング。歯を一本一本丁寧に磨き、歯や歯茎を傷つけないように、10~15分程度かけて磨きます。食後と寝る前の1日4回行うことで、虫歯や歯周病、口臭などを防ぐことができます。歯科医院では必ず医師や衛生士が患者さんの歯の状態に合わせたブラッシング方法を指導してくれるので、覚えていくようにしましょう。
 また、口腔内を清潔に保つため、半年に一度、あるいは誕生日など決められた日をメンテナンスの日と定め、歯科医院でプロによるブラッシングを受けることをお勧めします。自分では落としきれない歯と歯の間、歯と歯茎の間の汚れを除去すると同時に、プロのブラッシング技術を知ることでご自身のブラッシング方法の改善にも役立つでしょう。現在では、ブラッシングだけを行ってくれる歯科医院も増えているので、利用してみてはいかがでしょうか。

「目の屈折矯正手術(レーシック)」

ゲスト/ 広域医療法人社団メディカルドラフト会 錦糸眼科 矢作 徹 医師

目の屈折矯正手術について教えてください。

 目の悪い方が視力矯正する方法としては、メガネやコンタクトレンズが一般的ですが、それらの着用にわずらわしさを感じ、裸眼で過ごしたいとの理由から、近年レーシックというエキシマレーザー装置を用いた矯正治療を選択する方が増えています。レーザー治療は角膜をレーザーで削り、角膜の屈折率を変え、網膜にピントを合わせて視力を矯正する手術です。手術といっても麻酔は点眼で行い、両眼15〜20分程度で終了するのが一般的です。ほとんどの場合、治療は日帰りで行い、当日は裸眼で帰宅することができます。
 現在にいたるまで数多くの症例が報告されている屈折矯正手術は、視力に悩む方にとって生活をより快適に変えてくれる新しい選択肢の一つですが、メリットだけではなくリスクも伴います。治療を希望される方は、カウンセリングや診察で十分に説明を受けて、治療の良い面だけでなく、起こり得る合併症や副作用についてもよく理解し、納得した上で治療に臨むことが大切です。
 手術は万人に共通して可能ということではなく、目の状態によっては治療が不適応となることもありますが、レーザー装置の進歩により、数年前では手術が難しかった方でも治療できるケースが増えています。まずは一度詳しい検査を受け、ご自身の目の状態を十分に知った上で手術を検討することをお勧めします。

術式など治療を受ける前に知っておきたいことを教えてください。

 屈折矯正手術にはいくつかの種類があります。レーザーの種類と照射のパターンにより料金は異なりますが、料金が高いほど見え方が良いというわけではありません。例えば、軽度の近視の方の場合、レーザーの性能の差が術後視力に影響を与えることはそれほど多くはありません。また、同じエキシマレーザーを用いても通常の照射方法に比べ、患者さん個々の目の状態に応じたカスタム照射で微細なゆがみを補正した方が見え方の質は上がることが一般的です。ただし、カスタム照射は角膜の切除量が増えるため、角膜の薄い方や強度の近視の方に対してはお勧めできません。近視の度数だけでなく角膜の厚さや形状などにより、個々の目に適した方法がありますので、初診検査時に医師に詳しくお尋ねください。
 治療費は自由診療となり、当院では両眼で15万〜33万円です。なお、費用は医療機関により異なります。

「関節リウマチの診断と治療」

ゲスト/北海道内科リウマチ科病院 谷村 一秀 院長

関節リウマチとはどのような病気ですか。

 関節リウマチは原因不明の自己免疫性疾患です。自分自身を攻撃するリンパ球が、全身の関節や臓器に流れ、炎症を引き起こします。全身のいろいろな関節に腫れ、痛み、こわばりが生じ、進行すると軟骨や骨が破壊され、関節が変形し、日常生活に支障を来すようになります。また、微熱や倦怠(けんたい)感などの全身症状や肺、腎臓などの関節外臓器の症状を伴うこともあります。つまり、関節リウマチは単なる関節の病気ではなく、全身性の疾患なのです。
 関節リウマチは病態の解明とともに、診断と治療法が進歩し、発症早期の患者さんでは適切な治療によって、関節破壊をほぼ完全に防ぐことが可能となってきています。なかには治療を中止しても病気が再燃しない状態になる方もいます。また、病気が進んだ患者さんでも、日常生活レベルの大幅な改善がみられています。

関節リウマチの診断と治療について教えてください。

 関節を侵す病気はたくさんあり、関節リウマチの診断は慎重に行うべきですが、同時に、可能な限り発症の早期に診断することも重要です。専門医による十分な問診と診察、検査から総合的に判断しますが、これまで実施されてきた血液検査、レントゲン検査のほか、最近では関節エコー検査やMRI(磁気共鳴画像装置)検査が有用と考えられています。通常の検査では検出できない炎症を発見できる関節エコーや、関節エコーでも検出できない病変を見つけられるMRIは、早期診断に利用するだけでなく、より正確に病状を評価し、それに基づいて治療を強化することで、患者さんの予後を改善することも期待できます。
 関節リウマチの治療は、長期的に計画された治療が必要です。治療の中心は薬物療法で、関節の炎症を抑え、関節破壊の進行を防ぐことが目標です。抗リウマチ薬の投与を開始し、改善に乏しければ、痛みだけでなく関節破壊の進行も抑制できる生物学的製剤の導入を検討します。関節リウマチは全身の病気なので、薬物治療のみでなく、一般内科や整形外科、リハビリ科など診療科を超えた医療連携、チーム医療による診断、検査、治療が何よりも重要となります。
 手首、足首、特に手指の関節に原因不明の腫れ、こわばりなどのある方は、関節リウマチの疑いがありますので、一度専門医を受診されることをお勧めします。

「最新の糖尿病治療薬」

ゲスト/医療法人社団 青木内科クリニック 青木 伸 院長

最新の糖尿病治療薬について教えてください。

 糖尿病治療薬の最近の進歩は目覚ましいものがあります。飲み薬では、高血糖の時にだけすい臓からインスリンを分泌させ、正常血糖へ下げる「DPP-4阻害薬」があります。この薬は理論的には低血糖を起こさず治療できる新薬です。糖尿病の平均血糖の指標であるHbA1cを下げる効力は1.0%前後。この薬と同じ系統の注射薬も登場し、「GLP-1受容体作動薬」と呼ばれています。この注射薬のHbA1cを下げる効力は1.6%前後。現在は1日1回の注射が必要ですが、将来的には1週間に1回で済む注射薬も出る予定です。この系統の注射薬は、すい臓のインスリンを出す細胞を保護し、インスリンの分泌を弱らせない作用も持ち合わせているといわれています。
 一方、インスリン注射薬に眼を向けると、「持効型インスリン(1回の注射で24時間効果を持続する長時間作用型インスリン)」があります。飲み薬の治療が効かなくなる症例でも、飲み薬をそのまま服用しながら、1日1回の持効型インスリンの注射を加えると血糖が改善する症例もあります。「混合型インスリン」は、持続型インスリンと超速効型インスリンの合剤ですが、超速効型インスリンの含有率が50%〜70%の製剤が最近使用できるようになりました。食後血糖の高い症例を治療するのに便利なインスリンです。

糖尿病の治療について教えてください。

 糖尿病の治療が良好といえる目安はHbA1cが6.5%以下になっている場合です。糖尿病の患者さんの約半数が高血圧と脂質異常症(高脂血症)を合併しているといわれています。糖尿病を合併した高血圧の治療はとても重要で、血圧の治療目標値は130/80mmHg以下です。自宅で簡易血圧測定器を使用して治療に役立てる方法もあります。この場合使用する測定器は、指先や手首に巻くタイプのものではなく、上腕に巻くタイプのものをお勧めします。脂質異常症の治療目標値は、LDL-コレステロール(悪玉コレステロール)が120mg/dl以下です。以上のようなさまざまな基準値を長期間保てば、眼底出血(失明)、腎臓の悪化(透析)、足の潰瘍・壊疽(えそ)による足の切断など糖尿病に由来する重症の合併症にならなくて済みます。それ以外にも脳梗塞(こうそく)、心筋梗塞などの予防にもつながります。

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