2003年6月25日水曜日

「高血圧」について

ゲスト/秀愛会内科・消化器化クリニック 高梨 良秀 医師

高血圧について教えてください。

 血圧とは、血液が血管の壁に与える圧力のことをいい、心臓が収縮したとき動脈に掛かる血圧を最大血圧、心臓が拡張したときに動脈に掛かる血圧を最小血圧といいます。最大・最小血圧の一方でも正常値より高ければ高血圧と判断されます。高血圧状態が長く続くと血管や心臓に負担が掛かり、動脈硬化が進行し、脳出血、脳梗塞(こうそく)、心筋梗塞、大動脈瘤(りゅう)破裂、腎不全など命にかかわる合併症を引き起こすことになります。高血圧が恐ろしいのは、自覚症状に乏しく、中にはまったく出ない方がいることです。これといった症状が無いまま、ある日突然命を奪われるという危険があるのです。高血圧の原因は、遺伝的要素のほか、塩分の取り過ぎ、肥満、ストレスなど生活習慣が大いに関係しています。たかが高血圧と考えず、日常的な健康管理に気を配り、合併症を防ぐ必要があります。

高血圧や合併症は、どのように防げばいいのですか。

 高血圧の治療としては、早期であれば食事や運動など生活習慣を改めることで改善することがあります。それでも血圧が下がらなければ、投薬による治療が加わります。定期的に受診し、医師の指示に従って処方してもらってください。薬の減量、中止を自己判断で行うのは危険です。何より大切なのが、自身の血圧を正確に知ることです。日本人の場合、上が120~130、下が80以下が血圧の理想的な値と見なされています。血圧はさまざまな要因で変動し、病院へ行って外来で血圧を測っても、本来の血圧より高めに出てしまうことがあります。正確な血圧を知るためには、家庭での血圧測定が参考になります。さまざまな血圧計が販売されていますが、上腕で測定するものがより正確です。毎日2回、決まった時間に測定し、測定前の最低5分はできるだけ安静にしましょう。測定値は記録し、かかりつけの医師に見せ、治療計画の判断材料にします。さらに正確な血圧を計る24時間血圧計もあります。1日を通して血圧の変動をモニターするので、行動と血圧の関係、薬の効果などを詳しく知ることができます。血圧が心配な人は、1度測定してみるとよいでしょう。

2003年6月18日水曜日

「PMTC」について

ゲスト/宇治矯正歯科クリニック 宇治 正光 歯科医師

最近よく耳にするPMTCについて教えて下さい。

 「プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニング」の略で、特別な技術を持った歯科医師や歯科衛生士が、専用の器具や機械でフッ素入りの歯磨き剤ペーストを用いて、歯と歯の間、歯と歯茎の間など、自分自身の手では十分に磨けないところまで、徹底的にきれいにすることです。歯こうや歯石はもちろん、お茶やタバコによる着色を落とし、治療済みの詰め物が変色していれば詰め直しを行うので、終了後は見違えるほど美しい歯になります。また、今までに経験したことのない「ツルツルとした歯」を実感できます。歯の表面がツルツルになることにより汚れづらくなります。さらに、クリーニング後はフッ素によるコーティングを行うので、歯こうや歯石が付きにくくなり、虫歯や歯周病を予防することができます。

どのような場合、PMTCを利用すればいいのですか。

 毎日、隅々まできちんと歯の手入れを行っているつもりなのに、虫歯ができたり、歯周病になってしまった、という経験は誰にでもあると思います。家庭でのケアでは、どうしても行き届かない個所があり、口腔(こうくう)内を完ぺきに清潔に保つことは不可能です。ホームケアの努力を無駄にしないためにも、口腔内の検診を兼ねて年に1回程度のPMTCをお勧めします。特に、自分自身で上手に歯磨きを行えない子どもや、自身での口腔内健康管理が難しい人、過去に虫歯や歯周病になり治療を終えた人、1日10本以上タバコを吸う人、口の中をすっきりとさせたい人、より美しく健康的でありたい人、今まで予防処置や歯磨き指導を受けたことが無い人には、ぜひ経験してもらいたいと思います。また、結婚式を前に美しい口元を演出するために、ホワイトニングよりも短時間で済むPMTCを受ける人も多くいます。所要時間は1時間程度で、痛みや苦痛はほとんどありません。PMTCを行うには、特別な技術と器具が必要ですから、事前に行っているか、また健康保険適用外の治療になるので料金などを、歯科医に問い合わせることをお勧めします。

2003年6月12日木曜日

「慢性肝炎」について

ゲスト/やまうち内科クリニック 山内雅夫 医師

慢性肝炎について教えて下さい。

 肝炎ウイルスの感染が持続し、肝機能異常が6カ月以上続く状態です。進展すると肝硬変に移行し、やがて高率で肝ガンを合併します。日本ではおよそ20%がB型肝炎ウイルス、約70%がC型肝炎ウイルスによるものです。B型慢性肝炎のほとんどは出産時あるいは乳児期の母子感染によるものです。乳児は免疫が無いためウイルスが体内に残り、無症候性キャリアとなりますが、免疫機構が発達する思春期になるとウイルスの存在を認識し、ウイルスを排除しようとしてウイルスを含む肝細胞まで攻撃してしまう~これが肝炎の原因です。このようにして発症した肝炎患者の約90%はやがて治癒しますが、残りの約10%は肝炎が持続し、慢性肝炎となります。輸血や性行為などによって成人がB型肝炎に罹患(りかん)した場合には、一過性の急性肝炎を起こしますが慢性化しません。なお現在、日本ではB型肝炎の母親から生まれた子どもに対しては予防接種がなされており、やがてB型慢性肝炎はほとんど無くなると考えられています。C型肝炎はB型肝炎と同様に血液を介して感染しますが、感染力は弱く、母子感染や性行為で移ることはまれです。過去に行われていた予防接種の注射針の使い回しや輸血などが主な原因です。C型肝炎ウイルスに感染すると、まず急性肝炎を発症しますが、その後高い割合(約70%)で慢性肝炎へ進行することが特徴です。

症状、治療法について教えてください。

 初期にはほとんど症状が無く、慢性肝炎がかなり進行してから、疲れやすい、食欲不振などの自覚症状が出る程度です。血液検査の結果、GOT(AST)、GPT(ALT)の値が高ければ肝臓障害があると見なされ、原因を調べます。B型慢性肝炎ではHBs抗原、HBe抗原など、C型慢性肝炎ではHCV抗体、HCV-RNAが陽性となります。一部のC型慢性肝炎にはインターフェロンが有効ですが、発熱、血小板減少、食欲不振、うつ状態など強い副作用が出る場合があります。最近では抗ウイルス薬のリバビリンを併用することで、より高い治療効果が期待されています。B型慢性肝炎にはインターフェロンの効果は低いのですが、経口抗ウイルス薬のラミブジンの有効性が注目されています。また強力ミノファーゲンC、ウルソなどの肝庇護剤や漢方薬も使われます。いずれにしてもまだ、慢性肝炎の治療法は確立していないというのが実情です。しかし、完治しない場合でも、慢性肝炎の進行を遅らせ、肝硬変への進展、肝がん発生の防止のため治療を継続し、禁酒を守るなど、日常生活の中で注意を払いながら長く付き合っていくことが必要です。

2003年6月4日水曜日

「腰部脊(せき)柱管狭窄(きょうさく)症」について

ゲスト/つつみ整形外科クリニック 堤 正樹 医師

腰部脊柱管狭窄症について教えてください。

 腰部脊柱管狭窄症の疾患になると、歩行時に腰やでん部から足にかけて、引きつるようなしびれと痛みを感じます。そのまま歩き続けると症状がひどくなりますが、座るなどして少し休むと痛みが去ります。歩き出してしばらくすると、また痛みがぶり返すというのが典型的な症状です。これを間歇性跛行(かんけつせいはこう)といいます。足にしびれを感じるため、腰部の疾患と思わない人もいるのですが、原因は腰にあります。50歳代以降の人に多く、放っておくとだんだん痛みが強くなることもあり、歩ける距離が短くなってきます。背骨の中心にある脊柱管と呼ばれる神経の通る孔が、骨の変形などによって狭くなり、脊柱管内の神経を圧迫するのが原因です。まれに先天性の人もいますが、ほとんどが加齢によるものです。男性、女性とも同じ程度に発症します。似た症状を示すものとして、末梢に血液が流れず強い痛みを生じる下肢の閉塞(へいそく)性動脈硬化症があります。閉塞性動脈硬化症の場合、専門医に正確に診断してもらう必要があります。

予防法、治療法を教えてください。

 残念ながら自分で予防することはできません。腰や足の痛みは日常生活に大きく影響します。放っておいても自然に治癒するものではないので、なるべく早くに整形外科の専門医を受診してください。治療方法としては、ビタミン剤や血行改善剤などの内服、キセノン光線などの理学療法があります。また、前傾姿勢をとると痛みが軽減するため、前傾の姿勢に固定する特殊なコルセットを装着する場合もあります。これらの治療でも改善されない場合は外科手術となります。神経を圧迫している骨や靭帯(じんたい)などを除去して、ズレを修復し、孔を広げる手術を行います。十分に経験を積んだ専門医による脊椎(せきつい)手術は危険が少なく、入院期間も2~4週間で済みます。痛みが無くなると日常生活は大変楽になります。腰痛、足のしびれに悩んでいる人は、我慢せず、専門医に相談することをお勧めします。

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