2007年2月28日水曜日

「前立腺の病気」について

ゲスト/元町泌尿器科 西村 昌宏 医師

前立腺の病気について教えてください。

 前立腺はクルミ大の大きさで膀胱(ぼうこう)の出口にあり、尿道を取り巻いている男性特有の臓器で、精のう腺とともに分泌液を出す働きをします。代表的な病気のひとつが前立腺肥大で、50歳過ぎから肥大が進み、やがて尿道を締め付け、尿が出づらくなります。60代で約6割、70代で約7割の人が肥大症といわれています。症状としては、夜間トイレに行く回数が多くなる、尿に勢いが無い、尿がすぐ出ない、少ししか出ない、時間がかかる、残尿感があるなどです。「年だから仕方がない」と放っておくと膀胱の働きが弱くなり、尿管や腎臓に悪影響を及ぼすこともあります。就寝中に3回以上トイレに起きるようになったら赤信号です。  診断は、問診、触診のほか、尿の波形や尿流量を測定したり、画像診断を行います。尿をためた状態で受診すると、検査が1度で済み、効率的です。治療としては、初期であれば薬物療法、症状が進んでいる場合は前立腺部分の尿道を広げる手術をします。根本的な治療ではありませんが、尿道から前立腺に熱を加える高温度治療法は半年から2年程度効果が持続します。

前立腺がんについて教えてください。

 近年、日本で患者数が急増し、死亡数も増えているのが前立腺がんです。原因は高齢人口の増加と、日本人の食生活が欧米型に移行していることが挙げられます。初期症状はほとんどなく、自覚症状が出たときには進行していたり、転移していたりというケースがあります。
 一方で進行が遅く、薬物治療の効果が高いという側面もあります。早期に発見すれば、いたずらに恐れる病気ではありません。
 初期症状は前立腺肥大症と似通っており、受診が遅れてしまう場合があります。50歳を過ぎて排尿に勢いが無いなど変化が出てきたら、前立腺がんの検査を受けることをお勧めします。検査は直腸からの触診、超音波、MRIなどの画像診断が有効ですが、それ以前に血液検査でスクリーニングが可能です。治療は進行状態や年齢などによって、薬物、放射線、手術のいずれか、あるいは組み合わせて行います。

2007年2月21日水曜日

「肌のアンチエイジング」について

ゲスト/緑の森皮フ科クリニック 森 尚隆 医師

肌のアンチエイジングについて教えてください。

「アンチエイジング」とは「老化・加齢に対抗する」という意味で、最近では老化が医学的に解明されつつあり、新しい学問分野にもなっています。皮膚のアンチエイジングに関してですが、皮膚の老化の原因としては、加齢よりも紫外線の影響が大きいということが分かってきています。また、皮脂量の低下による皮膚の乾燥、肌の弾力成分であるコラーゲンやエラスチンの減少、活性酸素による細胞の酸化、たばこの害なども要因としてあげられます。
 特に冬になると肌が乾燥し、皮脂や汗などの分泌の低下、血流や新陳代謝の低下で、皮膚の水分保持力、保護機能、弾力などが低下し、皮膚の老化の原因であるしわやたるみが出現します。また、皮膚の入れ替わり(ターンオーバー)がうまく行われず、しみの原因にもなります。

肌の老化を改善する方法はありますか。

できてしまったしみには、ピンポイントで照射するレーザー治療が可能ですが、最近はカメラのフラッシュのように顔全体を照射し、全体のしみが同時に改善される「フォトセラピー」が主流になってきています。この治療はしみだけでなく、赤ら顔、小じわ、毛穴の開きなども同時に改善するという総合的な肌の若返りが期待できます。
また、皮膚の弾力に必要なコラーゲンを増生させる治療法として、赤外線領域の波長の光を照射し、コラーゲンを自分の力で増生させ、皮膚を引き締め、しみやたるみを改善する方法もあります。ほかにも、最近注目されている治療法として、肌のリセット(入れ替え)を目的に極細針で皮膚に無数の穴を開け、薬剤を皮膚に直接吸収させるマイクロニードルセラピー、ヒアルロン酸やコラーゲンを直接くぼんだ部分に注入して溝を平らにする注入法などがあります。このような治療法のほとんどは痛みも少なく安全で、治療後すぐにメイクや洗顔が可能です。
しかし、これらの治療は、保険の適用外になりますから、効果や料金などについて、医師とよく話し合い、納得してから治療することをお勧めします。

2007年2月14日水曜日

「ピロリ菌と胃疾患の関係」について

ゲスト/やまうち内科クリニック 山内 雅夫 医師

ピロリ菌について教えてください。

正式にはヘリコバクター・ピロリという胃粘膜に生息するらせん形の細菌で、胃・十二指腸潰瘍(かいよう)、胃炎、胃ガンの原因であることが明らかにされています。1983年、オーストラリアのワレン及びマーシャル博士によって、初めて分離・培養され、両博士はこの功績により2005年のノーベル賞を授与されました。発見以前は、強酸性の胃の中では細菌は生存できないと考えられていましたが、ピロリ菌にはアンモニアを産生する力があり、胃酸を中和して胃の中でも生存できることがわかりました。
ピロリ菌は、乳幼児期の免疫機能が不完全な時期に感染すると、慢性的な持続感染になり、成人以降に新たな感染は少ないと考えられています。日本では若い人の感染率は低いのですが、40歳以上では約80%もの人が感染しています。幼少時の衛生環境の差によるものと推測されます。
ピロリ菌に感染すると、まず胃粘膜に炎症が起こり(活動性胃炎)、この状態が長期間持続すると胃粘膜の委縮(委縮性胃炎)が進行しますが、この委縮性胃炎は前ガン状態と考えられています。ピロリ菌感染者の一部に胃、十二指腸潰瘍が発症しますが、胃潰瘍患者の80%、十二指腸潰瘍の95%がピロリ菌陽性です。

ピロリ菌の除菌について教えてください。

胃・十二指腸潰瘍の主要な原因がピロリ菌であることが分かってきてから、治療法は大きく変わりました。除菌療法といい、ピロリ菌を駆除するために2種類の抗生剤を1週間内服し、加えて胃酸分泌を強力に抑制するプロトンポンプ・インヒビターを併用する方法です。この治療法によって、大部分の胃・十二指腸潰瘍の再発を防ぐことができます。もっとも、胃・十二指腸潰瘍の中にはピロリ菌が関与していないもの(鎮痛剤による潰瘍など)もあり、この場合は除菌療法の対象外です。
 ピロリ菌感染の有無は、内視鏡検査で胃粘膜を採取して調べる方法のほか、尿素呼気試験、血清抗体測定、便中の抗原測定などがあり比較的簡単に分かります。なお、近年、委縮性胃炎に対しても胃ガン予防の見地から、除菌療法をしたほうが良いという意見もあります。

2007年2月7日水曜日

「眼の老化予防」について

ゲスト/ふじた眼科クリニック 藤田 南都也 医師

眼の老化について教えてください。

眼の老化は、光刺激によるものと、眼内の血管の変化によるものが主な原因です。
光は波長によって色が違って見えます。可視光線の中でも、短波長でエネルギーの高い、紫から青色の光が有害光とされています。また、可視光線よりも波長が短い光が紫外線(UV)です。紫外線は、その波長により、さらに紫外線A、紫外線Bなどに分類されます。
紫外線Bは眼の表面の角膜に吸収されるので、スキーなどで雪による照り返しや、長時間の屋外作業など、浴びる量が多ければ角膜炎や翼状片(よくじょうへん)などの原因となります。角膜炎は、角膜に炎症が起こり、激しい目の痛みと視力低下などの症状を引き起こします。翼状片は、長時間戸外で作業をしている人に多い疾患で、黒目の横に濁りが生じます。
紫外線Bより有害な紫外線Aは、水晶体に含まれる透明なタンパク質を傷つけ、それが徐々に蓄積して水晶体の濁りである白内障を引き起こす原因になります。空気が薄く紫外線の強いネパールやチベットなどの高地に住む人は、白内障の有病率が高いことが分かっています。
また、有害な青紫色の光は、そのエネルギーにより、水晶体をも透過して、視力にとって最も大切な網膜の中心にある黄斑(おうはん)という部分が変性し視力が低下する黄斑変性症の原因になることも判明しています。

予防や対策について教えてください。

晴れた日には雪面の反射もあり、まぶしく感じることも多いこの季節、スキーや雪道のドライブ時は、サングラスを着けて目を紫外線から守る必要があります。ただし、UVカットの表示があるものでも、紫外線Bしかカットしないものが多いので、過信は禁物です。つばの広い帽子やフードのついた上着、春以降は日傘なども効果的です。
また、テレビやOA作業時のモニター画面から出る青色光が眼にとって有害ですので、長時間の視聴やOA作業の際には、眼の保護が必要です。
血管の変化やその他の加齢による老化を防止するには、バランスのとれた食事を心掛けたり、眼の健康に役立つサプリメントをとる、適度な運動をしてストレスをため込まないなど、生活習慣の見直しが大切です。

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