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2019年7月24日水曜日

おしり(肛門)から血が出たら

ゲスト/札幌いしやま病院 河野 由紀子 医師

血便などおしりの出血があるとき、どんな病気が考えられますか。
 「便に血が付いた」「おしりを拭いた紙に血が付着した」「排便後に血がポタポタと落ちた」「便器が真っ赤になるほど多量に下血をした」という「おしりからの出血」を訴えて大腸や肛門の専門病院を受診される患者さんはとても多いです。出血の状態(色、出血量など)やそれに伴う症状によって原因(病気)をある程度推測できます。
 考えられる第1の可能性は「痔」です。排便の後、便器や紙に真っ赤な血が付く場合、その量がある程度多く、ほとばしるように出るときには内痔核(いぼ痔)が疑われます。また、排便のときに痛みがあり、さらに出血を伴う時には裂肛(切れ痔)の可能性が高いです。裂肛は放っておくとやがて慢性化し、傷口が深くえぐれて潰瘍になるケースもあります。潰瘍部分が悪化すると、肛門が狭くなる肛門狭窄になり、排便に大きな支障をきたすようになるので注意が必要。早期受診こそが痔を早く確実に治す近道です。
 第2の可能性は、大腸の内壁が袋状に突出し、その血管が弱くなって出血する「大腸憩室出血」です。突然、多量に出血するのが特徴で、腹痛、下痢を伴わないことが多いです。第3の可能性は、大腸への血液循環が悪くなって起こる「虚血性大腸炎」です。突然、腹痛が起こり、しばらくして下痢、下血が起こる急激な発症の病気です。これらの病気による出血(下血)は、食事をやめて便が通らないようにし、腸の安静を保つようにするなどの内科的治療で回復することが多いですが、憩室出血の場合は止血処置が必要となることもあるので早期受診、早期診断が大切です。
 便に粘液を伴った血が混じっている場合は、大腸の粘膜に潰瘍やただれができる「潰瘍性大腸炎」や、潰瘍性大腸炎と同じく炎症性腸疾患と呼ばれ、小腸や大腸に潰瘍を形成する「クローン病」も疑われます。このほか、「大腸がん」や「大腸ポリープ」、さまざまな細菌による腸炎なども、おしりからの出血を伴う病気です。
 このように、おしりの出血の後ろには、痔以外にもいろいろな病気が隠れていることがあります。命にかかわるような重い病気のサインが隠されていることもあります。大切なのは、自分で判断しないこと。おかしいなと思ったら、迷わず専門医の検査を受けましょう。「おしり」を診察されることを恥ずかしく思い、来院しにくいと感じるかもしれませんが、専門医は十分に承知しています。どうか安心してください。

2019年2月6日水曜日

おしり(肛門)の痛み

ゲスト/札幌いしやま病院 碓井 麻美 医師 

おしりに痛みがあるとき、どんな病気が考えられますか。
 おしりの痛みといえば、痔を思い浮かべる人が多いと思います。痔とは肛門に起こる良性の病気の総称です。その中で頻度が高いのが、痔核(いぼ痔)・裂肛(きれ痔)、痔瘻(あな痔)の3大疾患です。
 痔核と裂肛は、排便時と排便後しばらくの間痛みがある、おしりから出血するなどはっきりとした自覚症状があるケースが多いです。また、痔瘻は皮膚に孔(あな)を形成することが多く、痛みや発熱が生じるのが一般的です。ただ、痔瘻の中でも特殊なタイプであり、皮膚から深い位置の膿瘍が原因の痔瘻(深部痔瘻、複雑痔瘻)は、頻度が少なく自覚症状も軽いケースが多いため、比較的診断が難しいです。おしりを専門的に診る肛門外科以外の診療科では、しばしば見逃されることが多い病気です。
 同じ痔核でも、肛門の内側の粘膜にできる内痔核と肛門の皮膚部分にできる外痔核とでは、痛みの種類や症状は異なります。また、痔以外にも肛門周囲膿瘍、肛門周囲炎、おしりの奥の筋肉のコリなど、おしりや肛門周囲に痛みや違和感を感じる病気がたくさんあります。
 重要なのは早期に受診して、痛みの原因と現在の病状を正確に把握することです。専門医による的確な診断の後に、治療方法、タイミングなど患者さんのライフスタイルに合わせた治療を行います。

「おしりの病院」を受診するコツを教えてください。
 肛門外科など「おしりの病院」に行くのをためらう理由は、「おしりを見せるのが恥ずかしい」「手術をしなければならないのが嫌」などが多いように思います。知ってもらいたいのは、おしりの病気の多くが薬による治療が可能です。当然ですが、来院される患者さんすべてに手術を勧めるわけではありませんので、安心して受診してください。ですが、おしりの痛みを放っておいて悪化した後では、本当に手術しなければならなくなることもあります。症状が軽いうちに受診することが大切です。
 おしりの病気に限りませんが、今抱えている痛みについて、医師や看護師にできるだけ具体的に伝えることが、適切な診断・治療につながります。病院に行く前に「いつから、どのぐらいの時間痛むのか」、また、「どこが、どんなときに、どんなふうに痛くなるのか」をメモに控えておき、診察時に伝えるのも上手な受診の仕方です。

2018年8月22日水曜日

肛門周囲のかゆみやただれ

ゲスト/札幌いしやま病院 川村麻衣子 医局長

おしりの周りのかゆみやただれについて教えてください。
 おしりの周りがただれる、かゆい、ジクジクしたりヒリヒリしたり違和感がある場合は、肛門周囲の皮膚の病気が考えられます。多くは皮膚に炎症を起こしています。
 肛門周囲の環境というのは便や腸の粘液にさらされ、また通気性も悪いので、かゆくなったり炎症を起こしたりしやすいものです。かゆみや炎症を引き起こす要因としては、軟便や下痢便、便秘、ストレス、アルコールや香辛料などが挙げられますが、おしりをきれいにしようと思ってトイレットペーパーやタオルでこすり過ぎていることが皮膚炎の直接の原因となっている患者さんも多く見受けられます。ゴシゴシとこすり皮膚を傷つけ、雑菌などに感染し、さらに症状を悪くさせるというのは、肛門に限らず皮膚病を悪化させるパターンの一つです。
 近年、温水洗浄式便座が普及し、肛門周囲の衛生環境に役立っていますが、過度の洗浄は逆に皮膚を傷つけたり炎症を悪化させたりするので注意が必要です。強い水流で長く洗うと、肛門の粘膜を傷つけるばかりでなく、雑菌などから皮膚を守ってくれるバリア機能も低下するからです。
 そのほか、痔核(いぼ痔)やカンジダなどの真菌というカビの種類の菌の感染といった、ほかの病気が隠れている場合もあります。的確な診断が必要となりますので、自己判断せずに専門病院を受診してください。

どのような治療がありますか。
  医師の処方する塗り薬や飲み薬で、数日で快方に向かうことがほとんどですが、治療で最も重要なことは、日常生活でのおしりのケアです。肛門の清潔を心掛けるのはもちろんですが、前述の通り、きれいにしようと思ってこすり過ぎることは厳禁です。温水洗浄式便座は、水圧を一番低く設定し、5〜10秒以内の短時間で洗浄することをお勧めします。最初は物足りなさが残るかもしれませんが、これらが習慣になると、それで十分だと思うようになってくるでしょう。
 市販薬など手持ちの軟こうを塗っておくという人も多いですが、肌や体質に合わないものを塗ると逆効果。かぶれたり、さらにかゆくなります。おしりは今後一生において、毎日使う場所。おしりの悩みは、すぐに専門医に相談して解消することが大事です。

2018年3月14日水曜日

痔の原因と予防

ゲスト/札幌いしやまクリニック 西尾 昭彦 院長

痔について教えてください。
 痔とは肛門部分の疾患の総称で、痔核(いぼ痔)、裂肛(切れ痔)、痔瘻(あな痔)の3つで外来患者さんの約8割を占めます。
 痔核はいぼができる場所によって、外痔核と内痔核に分類されます。外痔核は肛門の皮膚部分に血栓(血豆)ができるなど痛みを伴います。便秘で力んだり、重いものを持ったりした時に起こります。内痔核は肛門の内側の粘膜にできます。肛門の出口から数センチのところに「クッション」と呼ばれる柔らかい部分があり、水道の蛇口のゴム栓のような役割を果たしていますが、このクッションが腫れたり緩んだりした状態をいいます。トイレが長いことなどで、肛門部分の血液の流れが悪くなり、うっ血をきたすことが主な原因です。痔核ができると肛門は、便と痔核の区別ができなくなり、残便感からトイレが長くなりがちで、さらに痔核が大きくなるという悪循環になります。根治療法として、切らずに治す注射療法と外科手術があります。
 硬い便が肛門の内側の皮膚を傷つける裂肛は、痔の中でも痛い病気の代表格です。裂肛も「痛いからトイレを我慢する→便が硬くなる→切れる」という悪循環になります。繰り返し切れて傷が硬くなると、慢性の状態に移行してしまい手術が必要になるケースもあります。
 肛門の内側の皮膚と、その奥の直腸の粘膜のつなぎ目には、「肛門小窩」というくぼみがあります。このくぼみから入った細菌が炎症を引き起こし、肛門や直腸周囲に膿瘍をつくるのが痔瘻です。治療は、膿瘍のうみが外に出る際につくられるトンネル(痔瘻管)を切除する手術が必要です。

痔の予防法はありますか。
 痔核はトイレを短くすること、裂肛は便が硬くならないようにすること、痔瘻は、下痢をしないことが予防で重要です。良い便を短い時間で出すためには、規則正しい食生活、食物繊維や発酵食品の摂取、適度な水分補給を心掛け、腸内フローラのバランスを整え、おなかの状態を良好にしておくことです。
 それでもおしり・おなかの調子が悪い時は、早めに病院で受診することをお勧めします。痔核の約8割や急性期の裂肛は手術せずに治ります。痛い思いや恥ずかしい思いをするケースはほとんどないことを知ってもらえればと思います。

2017年9月20日水曜日

子どものおしりの病気


ゲスト/札幌いしやま病院 河野 由紀子 医師

肛門科を受診する子どもの比較的よくみられる病気について教えてください。
 新生児から乳児期によくみられるのが、おしり(肛門)の周囲の皮膚炎です。オムツの部位に一致して赤みや湿疹、ただれが生じます(オムツかぶれ)。尿や便に含まれるアンモニアや酵素などが原因となって起こる炎症です。対策としては、オムツを長時間つけたままにせず、頻繁(ひんぱん)に交換して清潔を保つことが基本です。炎症部位はこすったりしないよう、ぬるま湯に浸したコットンなどで汚れを取り除きます。それでも症状が治らない時は専門医に診てもらうのがいいでしょう。
 痔(じ)は大人の病気と思われがちですが、実は子どもの痔も珍しくありません。0歳から幼稚園・小学校低学年の時期までによく見られるのが裂肛(切れ痔)で、特に女児に多い傾向があります。排便習慣が確立していない子どもの場合、入園や入学で環境が変化すると自宅以外でトイレを我慢してしまい、便秘がちとなって硬い便がおしりを傷つけます。また、この年代は食事の好き嫌いが顕著になるので、食物繊維の摂取不足からも便秘になりやすいです。裂肛になり排便時に痛むと、さらに排便を我慢するようになり、便が硬くなって、よりおしりを傷つけやすくなる悪循環に陥ってしまいます。
 裂肛の治療は、座薬や軟こうで痛みを和らげながら、根本の原因である便秘の解消を図るのがポイントになります。野菜や海藻、寒天など繊維質の多い食材を取ること、朝起きて、朝食を取り、トイレに行くという生活のリズムを作ることなど、生活習慣の見直しをアドバイスしていきます。便秘の改善のために下剤を処方する場合もありますが、おなか(腸)に刺激を与えずに便性を整える薬から用います。
 生後1カ月から1歳までの乳児、特に男児に多いのが乳児痔瘻(じろう)です。肛門の内側から入った細菌が感染を起こし、肛門周囲の皮膚の下にうみがたまります。症状は肛門周辺の左右どちらかの側方が、赤く腫れて痛むなどです。大人の痔瘻は手術が必要ですが、乳児は成長とともに自然に治るケースが多く、うみを抜く処置をすれば痛みはなくなります。
 肛門科と聞くと、手術されるのか不安で、子どもを受診させるのをためらう人もいますが、子どもの痔の検査・治療は「手術をしない」「痛くない」ものがほとんどです(成人の検査・治療もほぼ同様です)。子どものおしりのことで悩んだら、気軽に相談してください。

2017年3月22日水曜日

便秘


ゲスト/札幌いしやま病院 石山 元太郎 理事長

便秘について教えてください。
 食生活の欧米化と、高齢化で悩む人が多いのが便秘です。日本人の約15〜20%が罹患(りかん)していると考えられ、近年、増加傾向にあります。性別では女性に多いですが、年齢とともに男性の割合が増え、80歳以上では男性の方が多くなります。
 便秘の定義はあいまいですが、基本的には3日以上排便のない状態で、排便回数の減少、排便困難感、残便感などの不快な症状が出現し、日常生活に支障をきたしている状態を指すのが一般的です。
 便秘は、大きく二つに分けられます。原因がはっきりしている「続発性便秘」と、原因の分からない「原発性便秘」です。続発性便秘には、抗うつ薬や抗不安薬など、腸管のぜん動運動を妨げるような薬剤を長期間服用することによる「薬剤性便秘」や、糖尿病や神経疾患などの内科的疾患による「症候性便秘」があります。特に注意が必要なのは、「器質性便秘」と呼ばれているもので、その代表例は大腸がんです。
 大腸がんは、血便や便が細くなるといった症状が出ることで知られていますが、当院で大腸がんが見つかったケースでは、約15%の方に「急に便秘になった」という訴えがありました。最近、便の出方が変わったという時は、単なる便秘と自己判断せずに、一度、大腸内視鏡検査を受けることをお勧めします。

便秘薬などについて教えてください。
 市販薬に多い刺激性下剤は、大腸を刺激して排便を促しますが、習慣性があるため、以前効果のあった量を飲んでも効きづらくなることがあります。また、市販薬を漫然と使い続けると、大腸の粘膜が黒く変色し、大腸の筋力が低下した「大腸黒皮症」という状態になることもあります。これが大腸がんの発生に関与しているという報告もあるので、服薬の管理が必要です。
 近年、注目されているのが「便排出障害型便秘」です。これは、肛門の近くまで便がきているのにそこから排出できないというタイプの便秘です。加齢による排便反射の低下や、女性では直腸ポケットと呼ばれる直腸と膣の間の壁が弱くなってできる“便だまり”が邪魔をして便秘となっている場合が多いです。その他にも便秘にはさまざまなタイプがあるので、まず専門医に相談し、正確な診断を受けることです。適切な方法で、便秘の解消に努めてください。

2016年10月12日水曜日

痔核の治療と手術の適応


ゲスト/札幌いしやま病院 碓井 麻美先生

痔核の治療について教えてください。
 痔は、肛門付近で起きる病気の総称です。このうち外来で最も多いのが「痔核」で、いわゆる「いぼ痔」のことです。いぼができる場所によって、「外痔核」と「内痔核」に分類されます。
 肛門の皮膚部分にできる外痔核は、便秘で力んだり、重い物を持ったりして急に腹圧をかけることによって起こることが多く、痛みがあります。入浴で肛門部を温めて血行を良くし、排便の調整や座薬、軟膏などの投薬で、数日で軽快するのが一般的です。特に痛みが強い場合は、簡単な手術で痛みが軽快することもあります。
 一方、肛門の内側の粘膜にできる内痔核は、排便時のいきみなどによって肛門の出口から数センチのところにある柔らかい部分(クッション)が腫れにより本来あるべき位置からずれ落ちた状態です。出血を伴うことが多く、さらに、このクッションが肛門の外まで出てきた状態を「脱肛」といいます。患部に薬を塗るなどの方法で治療しますが、脱肛を繰り返すなど重症化したケースでは、切らずに治す注射療法(ALTA注射療法)や外科手術(当院では肛門形成術)を行うこともあります。

手術の適応について教えてください。
 「病院に行くと、すぐに手術される」などの恐怖心、不安感から受診をためらっている人も多いのではないでしょうか。そんなことはありませんので、安心して診察を受けてもらいたいと思います。痔核は、がんなどと違って悪性の病気ではないので、必ず手術が必要なものではありません。当然ですが、来院される痔核の患者さんすべてに手術を勧めるわけではありません。
 症状が軽い場合は、手術をせずに生活習慣の改善指導と投薬(座薬、軟膏、内服薬)で治療を行い、経過を観察します。初診の方の半数以上は、これらの治療で病状が改善します。薬を数週間使用しても症状の改善が見込めない場合や、痛みや出血などで排便や日常生活に支障をきたしている場合に、初めて注射や手術による治療を検討することになります。
 重要なのは、早期に受診して現在の病状を正確に把握することです。その上で、数ある治療の選択肢の中から、医師とじっくり相談して、患者さん一人ひとりの悩みやライフスタイルにあった最適最善な治療法を見つけることです。

2016年6月22日水曜日

裂肛(れっこう)


ゲスト/札幌いしやまクリニック 西尾 昭彦 院長

裂肛とはどのような病気ですか。
 痔とは、肛門およびその周辺に起こる病気の総称です。肛門疾患で多いのは、痔核(じかく)、裂肛、痔瘻(じろう)の3つで、外来の約8割を占めます。痔核はイボ痔、裂肛は切れ痔、痔瘻はあな痔とも呼ばれます。
 便秘気味の若い女性に多くみられるのが、肛門内側の皮膚(肛門上皮)が切れる裂肛です。痔の中でも痛い病気の代表です。症状は排便時の痛みが主で、出血はないか、あっても少量です。一度裂けた傷は排便の度に延ばされるため治りにくく、痛みが続くようになります。痛みが嫌で排便を避けるようになると、便がますます硬くなり、症状を悪化させるという悪循環が生じます。
 繰り返し切れて慢性化すると、傷が深くえぐれて潰瘍化していきます。炎症性の肛門ポリープと呼ばれる突起物ができたり、傷の縁の皮膚が盛り上がって肛門が狭くなったりして、排便時の苦痛が増します。トイレの中で気が遠くなるという患者さんもいるほどです。

裂肛の治療について教えてください。
 裂肛の治療は、便を軟らかくして排便を楽にする内服薬や、排便時の痛みを抑えるための塗り薬、肛門に注入する座剤、軟こうなどの外用薬が中心です。
 傷の治療を行いながら、生活習慣を改善して便通を整えることも裂肛治療では大切です。朝食をきちんと取る、水分や食物繊維を十分に取る、便意を我慢しない、適度な運動をするなど、便秘を防ぎ、硬過ぎず軟らか過ぎない“質の良い便”を出す生活を心掛けてください。
 傷が深い、肛門が狭いなどの慢性化した裂肛になると、薬などの保存治療では治らず、外科治療が必要になります。肛門周囲の痛みだけが取れる硬膜外麻酔をして、硬く狭くなった肛門の括約筋を正常な状態になるまでマッサージをして引き延ばす治療です。マッサージの時間は10秒程度で、入院の必要もなく、翌日の排便から痛みがなくなるケースがほとんどです。
 さらに重症例になると、2~3日入院してマッサージに加えて潰瘍やポリープの切除が必要な場合もあります。
 恥ずかしさから受診をためらわれている方も多いようですが、切らずにすむ治療により、痛みのない快適な生活を取り戻せることが多いことを知ってほしいと思います。

2016年2月26日金曜日

妊娠・出産とおしりの病気


ゲスト/札幌いしやま病院 川村 麻衣子 医局長

妊娠中や出産後に痔(じ)になりやすいのはなぜですか。
 妊娠、出産を経験すると、痔になったり、痔を悪化させたり、おしりの病気に悩まされる女性は少なくありません。
 妊娠で悪化する痔で最も多いのは痔核(いぼ痔)です。妊娠による子宮の増大で、肛門周辺の血管が圧迫されて、うっ血するのが主な原因です。また、同じく子宮の増大による腸管の圧迫や、女性ホルモンのバランスの変化などにより、これまで便秘体質ではなかった人でも便秘がちになることが多く、結果、硬くなった便を出そうと強くいきんで、肛門の出口付近が切れる裂肛(切れ痔)も発症しやすくなります。
 出産に伴うものでは、分娩時のいきみで痔が悪化するケースが多いです。妊娠中に腫れぼったくなっていた痔核が、分娩時にさらに腫れて、脱肛気味になることもよくあります。また、出産後は赤ちゃんの世話による睡眠不足やストレスで便秘がちになることに加え、母乳育児では体内の水分が母乳に吸収されるため、便が硬くなりやすくなり、痔を発症しやすい傾向にあります。

予防法や対処法について教えてください。
 妊娠中の便秘対策は、こまめな水分補給を意識したり、食事内容を見直して、豆類・きのこ類・野菜類など食物繊維が豊富な食材を取るように心掛けましょう。また、排便時にはトイレットペーパーで強く拭くのではなく、勢いを弱めたトイレシャワーなどを使い、少ない刺激で洗い流しましょう。肛門周辺を清潔に保ち、長い時間力むような動作をしないこと、血行を良くするために、入浴や半身浴をして体を温めたり、体調が良い時は、ウォーキングなど適度な運動をすることも便秘の予防に有効です。
 妊娠中は、痔の手術治療は原則としてできませんので、主に座薬などによる保存治療と便秘改善などの生活指導が中心となります。痔の市販薬を自己判断で使うのは控え、医師に相談して妊娠中、出産後でも使える薬を処方してもらうと安心です。産後、痔の症状は少しずつ改善していくことが多いですが、ある程度以上悪い状態のものは、今後のために通院による治療や手術・入院による治療をお勧めするケースもあります。この次の妊娠、出産の時、さらに悪化することが十分に予想されるからです。手術の方法も年々改良されてきて楽に、短期間で完治するようになっています。

2015年9月24日木曜日

裂肛(れっこう)


ゲスト/札幌いしやま病院 西尾 昭彦 院長

裂肛とはどのような病気ですか。
 痔とは、肛門およびその周辺に起こる病気の総称です。肛門疾患で多いのは、痔核(じかく)、裂肛、痔瘻(じろう)の3つで、外来の約8割を占めます。痔核はイボ痔、裂肛は切れ痔、痔瘻はあな痔とも呼ばれます。
 便秘気味の若い女性に多くみられるのが、肛門内側の皮膚(肛門上皮)が切れる裂肛です。痔の中でも痛い病気の代表です。症状は排便時の痛みが主で、出血はないか、あっても少量です。一度裂けた傷は排便の度に延ばされるため治りにくく、痛みが続くようになります。痛みが嫌で排便を避けるようになると、便がますます硬くなり、症状を悪化させるという悪循環が生じます。
 繰り返し切れて慢性化すると、傷が深くえぐれて潰瘍化していきます。炎症性の肛門ポリープと呼ばれる突起物ができたり、傷の縁の皮膚が盛り上がって肛門が狭くなったりして、排便時の苦痛が増します。トイレの中で気が遠くなるという患者さんもいるほどです。

裂肛の治療について教えてください。
 裂肛の治療は、便を軟らかくして排便を楽にする内服薬や、排便時の痛みを抑えるための塗り薬、肛門に注入する座剤、軟こうなどの外用薬が中心です。
 傷の治療を行いながら、生活習慣を改善して便通を整えることも裂肛治療では大切です。朝食をきちんと取る、水分や食物繊維を十分に取る、便意を我慢しない、適度な運動をするなど、便秘を防ぎ、硬過ぎず軟らか過ぎない“質の良い便”を出す生活を心掛けてください。
 傷が深い、肛門が狭いなどの慢性化した裂肛になると、薬などの保存治療では治らず、外科治療が必要になります。肛門周囲の痛みだけが取れる硬膜外麻酔をして、硬く狭くなった肛門の括約筋を正常な状態になるまでマッサージをして引き延ばす治療です。マッサージの時間は10秒程度で、入院の必要もなく、翌日の排便から痛みがなくなるケースがほとんどです。
 さらに重症例になると、2~3日入院してマッサージに加えて潰瘍やポリープの切除が必要な場合もあります。
 恥ずかしさから受診をためらわれている方も多いようですが、切らずにすむ治療により、痛みのない快適な生活を取り戻せることが多いことを知ってほしいと思います。

2015年3月18日水曜日

痔瘻(じろう)


ゲスト/札幌いしやまクリニック 石山 元太郎 理事長

痔瘻とはどのような病気ですか。
 肛門周囲に痔瘻管と呼ばれる細菌のトンネルができる痔瘻は、肛門疾患の中でも厄介な病気の一つです。痔核(いぼ痔)に次いで多い肛門疾患で、当院の外来患者の約15%を占めます。男性に多いのが特徴で、その割合は女性の5〜6倍といわれています。痔核や裂肛(切れ痔)は症状がかなり進行しない限り手術は行いませんが、痔瘻はいったんできてしまえば、ほとんどの場合手術しないと完治しません。
 肛門から約2センチ入った部位には、肛門小窩(しょうか)というくぼみがあり、肛門腺という分泌組織につながっています。下痢を繰り返したり、体調を崩して抵抗力が弱まったりすると、肛門小窩から入った便中の細菌が肛門腺で炎症を起こし、これが広がって肛門周囲に膿(うみ)のたまりをつくることがあります。これを肛門周囲膿瘍(のうよう)といいます。このような状態になると、肛門周囲が腫れて、熱をもって激しく痛みます。膿瘍が破れて膿が出ることもあります。
 放置すると、肛門小窩と膿の出口を結ぶトンネルが形成されます。この状態が痔瘻です。また、膿瘍を繰り返しているうちに、トンネルが枝分かれし、アリの巣のように深く、複雑な痔瘻へと進行していく場合もあります。
 頻度は少ないですが、痔瘻は完治させずに放置しておくと、痔瘻がんになるケースもあります。肛門部に違和感を感じたら、早めに専門医を受診することが重要です。

痔瘻の治療について教えてください。
 根本的に治すには手術が必要です。この際、不用意に肛門の筋肉を損傷すると、肛門の変形や機能低下を来す恐れがあります。そのため、痔瘻の手術は痔の手術の中で最も難しいとされ、特に深部の複雑な痔瘻は複数回の手術が必要になることもあります。
 長期の入院が難しい場合は、シートン法と呼ばれる治療法によって外来通院で治療することも可能です。シートン法は、麻酔下でゴムひもを痔瘻管に通し、生体の異物反応を利用することで、ゴムとともに痔瘻管を少しずつ体の外へ押し出していくという治療法です。肛門の変形・機能低下のリスクが低い、再発率が低いなどいろいろな長所がありますが、治癒まで数カ月を要するため、お尻にゴムひもを装着したまま生活しなければならないという短所もあります。

2014年9月17日水曜日

便秘


ゲスト/札幌いしやまクリニック 樽見 研 院長

便秘の原因について教えてください。
 便秘とは、便の排せつが困難になって便が長い期間体内に滞っている状態をいいます。毎日便が出ないといけないと考えている方も多いようですが、排便間隔は個人の環境、体質、生活習慣などによりさまざまです。何日以上便が出ないと便秘なのかと定義づけることは難しいのですが、3日に1回未満もしくは週2回未満の排便回数が便秘の判定の一つの目安となります。便秘症と呼ぶ場合は、おなかの張りや腹痛、残便感、便が硬いなどの不快な症状が出現し、日常生活に支障を来たすため治療の対象になってくるという意味合いが含まれてきます。
 便秘はまず一過性便秘と徐々に進行して慢性化していく慢性便秘に分けられます。一過性便秘は生活環境の変化などで一時的に便秘になることで、自然に改善するので問題にはなりません。慢性便秘で特に注意が必要なのは器質性便秘と呼ばれているものです。これは腸に便の通過を妨げる病気が隠れているために発生する便秘であり、その代表例は大腸がんです。
 器質性便秘以外の慢性便秘は、腸の機能が低下したために起こることが多く、機能性便秘と呼ばれています。機能性便秘はさらに、便意を我慢していることがきっかけでなる直腸性便秘、結腸の緊張が緩んでいてぜん動運動が弱くなってしまうことが原因で起こる結腸性便秘、常用している薬が原因となっている薬剤性便秘などに分類できます。

便秘の治療について教えてください。
 器質性便秘を除いては、食事療法と薬物療法、生活習慣の改善などが治療の基本となります。規則正しい排便習慣を取り戻しながら、便の量を増やし、また軟らかくすることが大切です。食物繊維を多く摂取するように心掛け、下剤を使うのであれば刺激のないタイプを用います。市販の便秘薬の多くには刺激性下剤が含まれているので、連用すると習慣性もあり、自己判断による安易な使用は勧められません。
 結腸性便秘の改善方法は運動することです。特に腹筋運動や骨盤内の筋肉を鍛えるような運動が効果的です。また、1日30分くらいのウオーキングもお勧めです。
 長期間便秘が改善しない場合は、大腸がん以外にも深刻な病気が隠れているケースもあります。一度専門医を受診し、便秘の原因をきちんと見極め、適切な対処を行うようにしましょう。

2014年4月9日水曜日

便失禁


ゲスト/札幌いしやま病院 石山 元太郎 副院長

便失禁とはどのような症状ですか。
 排便の抑制がきかず、無意識のうちに、または、意思に反して便が排せつされることが度々起こる状態を便失禁と呼びます。知らず知らずのうちに下着を汚してしまうような便失禁や、排便を我慢しようと意識しているにもかかわらず、トイレに間に合わず漏らしてしまう便失禁があります。60歳以上の高齢者に多く、男女を問わず起こります。
 原因はさまざまで、過去に受けた肛門手術や脊髄損傷などの外傷、加齢による肛門括約筋の筋力低下、女性であれば出産時の会陰切開や吸引分娩(ぶんべん)などによる括約筋の挫傷などが挙げられます。
 診断の際は、まず適正な検査を行い、便失禁の病態を客観的に評価します。その上で最も効果的と思われる治療法を選択します。

便失禁の検査、治療について教えてください。
 検査は、肛門括約筋の状態をみる超音波検査や、肛門の筋力を計る肛門内圧検査などが一般的です。そのほか、バリウムを肛門から入れ、排せつする際の便の流れをみる排便造影検査、直腸の容量を計るリザーバー機能検査、直腸・肛門の感覚機能検査などがあります。
 治療は便失禁の原因によりさまざまですが、通常はまず食事や規則正しい排便習慣の指導が行われます。便が軟らかいと漏れやすいので、便の硬さを調節する薬を使う場合もあります。また、自宅で行う毎日10分程度の括約筋を強めるトレーニング(骨盤底筋体操)や、外来で医師と一緒に行う、肛門の中にセンサーを入れて中の圧を見ながら括約筋をトレーニングするフィードバック療法も効果的です。
 自分では訓練できない内括約筋を、低周波の電気刺激で鍛える治療法もあります。低周波電気刺激療法と呼ばれるもので、電気刺激により肛門管組織の血流量を増やし、括約筋の筋力をアップさせます。1回の治療時間は5分ほどですが、繰り返し行うことで効果が出ます。また、腰のあたりに電気刺激装置を埋め込み、排便をコントロールする神経である仙骨神経を刺激し、便失禁を改善する仙骨神経刺激療法(SNM)という最新治療もようやく厚生労働省で認可が下り、治療選択肢の拡大が期待されています。
 肛門手術や会陰切開などが原因で括約筋に断裂がある場合には、入院して肛門括約筋を手術で縫合する括約筋形成術を行うのが一般的です。

2013年8月7日水曜日

裂肛(れっこう)について


ゲスト/札幌いしやま病院 西尾 昭彦 院長

裂肛とはどのような病気ですか。
 痔(じ)のなかで裂肛(切れ痔)は女性に多い病気です。裂肛を引き起こす原因の多くは便秘で、硬い便や太い便を無理に出そうとすることによって肛門上皮(便が通過する部分の肛門の皮膚)が裂けてできます。症状は排便時の痛みが主で、出血はないか、あっても少量です。一度裂けた傷は排便の度に伸ばされるため治りにくく、痛みが続くようになります。痛みが嫌で排便を避けるようになると、便がますます硬くなり、症状を悪化させるという悪循環が生じます。
 裂肛の症状が進み慢性化すると、傷が深くえぐれて潰瘍化していきます。肛門ポリープと呼ばれる突起物ができたり、肛門が狭くなったりして、排便時の苦痛が増します。また、肛門の括約筋がけいれんを起こすことで、さらに痛みがひどくなる場合もあります。トイレの中で気が遠くなるという患者さんもいるほどです。

裂肛の治療について教えてください。
 裂肛の治療は、便を軟らかくして排便を楽にする内服薬や、排便時の痛みを抑えるための塗り薬、肛門に注入する座薬、軟こうなどの外用薬が中心です。市販薬もありますが、裂肛に合うもの合わないものがあるので、一度専門の医療機関を受診し、正しい診断の下で適した薬を処方してもらうべきでしょう。
 傷の治療を行いながら、生活習慣を改善して便通を整えることも裂肛治療では大切です。朝食をきちんと取る、水分や植物繊維を十分に取る、便意を我慢しない、適度な運動をするなど、便秘を防ぎ、硬すぎず軟らかすぎない“質の良い便”を出す生活を心掛けてください。半練り状の便で、息むことなく、すんなりと排便できる状態が理想です。
 傷が深い、肛門が狭いなどの慢性化した裂肛になると、薬などの保存治療では治らず、手術治療が必要になります。硬くなった肛門の括約筋を切開する手術が一般的ですが、当院では麻酔をした上で肛門に指を入れ、括約筋が正常な状態になるまでマッサージして引きのばす治療も行っています。その際、肛門ポリープがあれば、同時に切除します。入院の必要も、痛みもなく、短時間で治療できるというメリットがあります。
 恥ずかしさから受診をためらわれている方も多いようですが、治療により痛みのない快適な生活を取り戻せることをぜひ知ってほしいと思います。

2013年1月7日月曜日

痔核(じかく)の最新手術


ゲスト/札幌いしやま病院 石山 元太郎 副院長

痔核とはどのような病気ですか。
 痔(じ)と呼ばれる疾患のうち、最も多いのが痔核(いぼ痔)です。通常肛門は、便やガスが無意識のうちに漏れたりしないように、括約筋という筋肉で閉じられています。しかし、これだけでは不十分なため、肛門の出口から数センチ入ったところに、肛門クッションと呼ばれる柔らかな盛り上がり(血管の集まり)があり、これによって括約筋が強い力で収縮しなくても便などが漏れない仕組みになっています。肛門クッションは、ちょうど水道の蛇口に付いているゴム栓のような役割を果たしているのです。排便時に強くいきむなど、肛門に負担がかかることが度重なると、徐々に肛門クッションが腫れて、本来あるべき位置からずれ落ちた状態になります。これが痔核です。
 初期段階であれば薬や生活改善で症状は良くなりますが、痔核が脱出するようになった場合には手術などの治療が必要となります。

痔核の手術について教えてください。
 昔の手術は、痔核を残らず切り取っていました。そうすると肛門クッションもなくなってしまうため、肛門のべとつきや排便障害などの後遺症に悩まされる人も多く、30年ほど前から行われなくなりました。近年の手術は、肛門クッションの重要さが広く知られてきたために、肛門クッションを残す方法を取っています。また、専用の器具を使い、痔核そのものではなく、近くにある直腸粘膜を切除することで痔核をなくす方法も登場しています。
 硫酸アルミニウムカリウムタンニン酸(ALTA)を痔核に注射するという、切らずに治す方法もあります。治療後の痛みがほとんどなく、長期間の入院も必要ありません。ただし、誤ったやり方で注射してしまうと重大な合併症を引き起こす危険性があります。また、全ての痔核に有効ではなく、その適応を厳密に選択しなければ再発することがあります。
 現在、最も新しい術式であり、再発の可能性がほとんどなく、肛門本来の機能を温存するという観点からも有効と考えられているのが「肛門形成術」です。ずれ落ちた肛門クッションを括約筋から剥離し、本来あるべき位置と思われるところに戻して括約筋に固定するという方法です。術後の痛みや出血も少なく、入院期間を大幅に短縮できるというメリットもあります。

2012年7月13日金曜日

女性の痔(じ)と直腸ポケット


ゲスト/札幌いしやま病院 川村 麻衣子 医師


女性の痔について教えてください。
 痔は男性に多い病気と思われがちですが、実は女性こそ痔を招く原因を抱えています。例えば、便秘症。便が硬くなり、無理に排便しようと肛門を傷付けることがあります。妊娠や出産も痔の原因の一つ。妊娠すると便秘を起こしやすく、また肛門周辺がうっ血しやすくなります。出産時の息みも、肛門に大きな負担をかけます。このように女性の場合、痔の原因は女性特有の身体機能が関連していることが多いのです。痔は「痔核(いぼ痔)」「裂肛(切れ痔)」「痔ろう(あな痔)」の3種類に分けられますが、女性に最も多くみられるのは裂肛です。排便時の痛みや出血、排便後にじんとした痛みが続くなどの症状があります。
 痔は女性にとっては医師にも相談しにくい病気です。しかし「恥ずかしい」と思って受診をためらっていると、症状は進行してつらくなるばかりです。また、お尻からの出血は大腸がんなどの病気が隠れている場合もあります。お尻に出血や痛みなどの症状があらわれたら、自己判断せずに専門医を受診することをお勧めします。

直腸ポケットとはどのような病気ですか。
 直腸に起因する女性特有の排便障害で、直腸膣壁弛緩(しかん)症とも呼ばれます。排便時に息むと、直腸と膣の間の壁(膣壁)が、膣方向へポケット状に膨らみ、便が引っ掛かって通りが悪くなります。症状は、肛門の直前で便が止まってしまう、肛門の周りを指で圧迫しないと便がでない、残便感があるなどで、ひどい便秘の人は直腸ポケットの疑いがあります。生まれつき膣壁が薄い、出産による膣壁の広がりや加齢による筋肉の衰えなど、先天的、後天的、両方の原因が考えられます。治療は、まず食生活や生活習慣の改善によって便秘を解消することです。便が柔らかくなれば排便がしやすくなります。それでも改善しなければ、下剤を服用する方法もあります。
 ポケットが大きいと、通常の便秘治療では排便障害が改善されません。その場合は、手術によってポケットを縫い縮める方法も有効です。ポケットそのものは良性疾患ですが、習慣的に下剤に頼っていると、大腸がんなどの病気を見落とす危険もあります。便秘で悩んでいる人は、原因を知るためにも、一度専門医に相談することをお勧めします。

2012年4月18日水曜日

遺糞(いふん)症

ゲスト/札幌いしやまクリニック 樽見 研 医師

遺糞症とはどのような病気ですか。
 遺糞症とは4歳ぐらいから学童期の排せつ機能が自立すべき年代での排せつ障害で、トイレではなく下着の中や床の上など、本来排便してはいけない場所や状況で排便をしてしまうことをいいます。国際的な診断基準では、4歳以上になっても不適切な場所での排便を月に1回以上認め、それを3カ月以上繰り返す状態と定義されています。
 遺糞症の原因としては、慢性的な便秘のほか心理的ストレスが挙げられますが、一般的には便秘を伴うことが多いです。便秘を放置すると排便時に苦痛を感じて排便を我慢するようになります。あるいは、遊びに夢中になるなどして便意を我慢することを続けます。その結果、排便反射が弱くなり、便意を感じにくくなっているため、気付かないうちに便を漏らしてしまうのです。また、肛門を締める筋肉の機能が低下している場合もあります。
 子どもに便秘が起こる原因としては、排便時に緊張して便が出にくくなることや、排便時に肛門を傷つけてしまい、痛みを感じた経験から排便に恐れを持つことなどが考えられます。また、幼稚園への入園、小学校への入学など環境の変化やトイレに行きたくないなどのストレスがきっかけとなって、便秘や遺糞症が起こることも多いです。

遺糞症の治療について教えてください。
 便秘が遺糞症の原因となっている場合には、下剤やかん腸を用いて直腸にたまった便を排せつさせます。一方、子どもの生活習慣の改善も大切で、治療の基本は排便のリズムを取り戻させることになります。毎朝食事をしたら排便を行うといった排便習慣を付けさせることによって、規則的な排便を促します。
 直腸に便をためないようにしていると、次第に直腸の排便反射が戻ってきて、1日分の便量で便意を感じるようになり、自分で排便ができるようになります。1回の治療・指導で可能な子もいれば、数カ月かかる子もいます。
 また、家族など周囲の人間は、子どもが便を漏らしたからといって、いきなり叱りつけてしまうと、かえって逆効果になります。叱らず、焦らず、様子を見ながら排便を促すようにしましょう。子どもが余計なプレッシャーを感じないようにしてあげることが大切です。幼いころのトイレトレーニングの不足、早すぎるトイレトレーニングは、子どもに過度のストレスを与えてしまうケースもありますので注意が必要です。

2011年8月22日月曜日

女性の痔(じ)と直腸ポケット

ゲスト/札幌いしやま病院 川村 麻衣子 医師

女性の痔について教えてください。

 痔は男性に多い病気と思われがちですが、実は女性こそ痔を招く原因を抱えています。例えば、便秘症。便が硬くなり、無理に排便しようと肛門を傷付けることがあります。妊娠や出産も痔の原因の一つ。妊娠すると便秘を起こしやすく、また肛門周辺がうっ血しやすくなります。出産時の息みも、肛門に大きな負担をかけます。このように女性の場合、痔の原因は女性特有の身体機能が関連していることが多いのです。痔は「痔核(いぼ痔)」「裂肛(切れ痔)」「痔ろう(あな痔)」の3種類に分けられますが、女性に最も多くみられるのは裂肛です。排便時の痛みや出血、排便後にじんとした痛みが続くなどの症状があります。
 痔は女性にとっては医師にも相談しにくい病気です。しかし「恥ずかしい」と思って受診をためらっていると、症状は進行してつらくなるばかりです。また、お尻からの出血は大腸がんなどの病気が隠れている場合もあります。お尻に出血や痛みなどの症状があらわれたら、自己判断せずに専門医を受診することをお勧めします。

直腸ポケットとはどのような病気ですか。

 直腸に起因する女性特有の排便障害で、直腸膣壁弛緩(しかん)症とも呼ばれます。排便時に息むと、直腸と膣の間の壁(膣壁)が、膣方向へポケット状に膨らみ、便が引っ掛かって通りが悪くなります。症状は、肛門の直前で便が止まってしまう、肛門の周りを指で圧迫しないと便がでない、残便感があるなどで、ひどい便秘の人は直腸ポケットの疑いがあります。生まれつき膣壁が薄い、出産による膣壁の広がりや加齢による筋肉の衰えなど、先天的、後天的、両方の原因が考えられます。治療は、まず食生活や生活習慣の改善によって便秘を解消することです。便が柔らかくなれば排便がしやすくなります。それでも改善しなければ、下剤を服用する方法もあります。
 ポケットが大きいと、通常の便秘治療では排便障害が改善されません。その場合は、手術によってポケットを縫い縮める方法も有効です。ポケットそのものは良性疾患ですが、習慣的に下剤に頼っていると、大腸がんなどの病気を見落とす危険もあります。便秘で悩んでいる人は、原因を知るためにも、一度専門医に相談することをお勧めします。

2011年3月16日水曜日

「痔の基礎知識」

ゲスト/札幌いしやまクリニック 樽見 研 院長

痔(じ)とはどのような病気ですか。
 痔とは肛門と肛門周辺の病気の総称です。痔は大きく分けて3種類があります。最も多いのが「痔核(いぼ痔)」です。肛門周辺の粘膜の下には、血管が集まって肛門を閉じる働きをするクッションのような部分があります。肛門への負担が重なると、クッション部分がいぼ状に腫れ、出血を起こしたり、肛門の外に出てきたりします。これが痔核です。痔核にはできる場所により、直腸側にできる内痔核と、肛門側にできる外痔核があります。固くなった便の排せつによって、肛門の出口付近が切れて起こるのが「裂肛(切れ痔)」です。裂肛が慢性化してしまうと傷口が潰瘍状になり、強い痛みが排便後も続く場合があります。直腸と肛門の境目のくぼみに細菌が入り込み、膿(うみ)のトンネルのようなものをつくるのが「痔ろう(あな痔)」です。進行すると肛門の周りが腫れて激痛が続き、高熱を伴う場合があります。
 痔は決して特別な病気ではなく、年齢、性別に関係なく誰にでも起こり得ます。また、最近、増加している大腸がんや肛門がんは、痔と似ている症状があらわれるため、痔だと思い込んでしまったばかりに、がんの早期発見が遅れることがあります。痔の症状が現れた場合は、自己判断をしないで、できるだけ早めに医師に相談することが重要です。

痔の診断、治療について教えてください。
 診断は、問診で痛みの状況や出血などを確認した後、視診や触診、指診で痔の状態を診ていきます。加えて、肛門鏡を使った検査を行い、それらの結果を基に総合的な診断をします。痔の治療方法は症状に応じてさまざまです。比較的症状が軽い場合は、ライフスタイルの改善や、外用薬・内服薬の投与などによる治療が可能ですが、症状が重い場合は外科的治療を必要とすることがあります。
 痔は生活習慣と大きな関係があります。痔の発症や再発を防ぐには、お尻の負担となる便秘や下痢に気を付けることが大切です。また、仕事で一日中立ちっぱなしだったり、椅子に座りっぱなしだったりなど、長時間同じ姿勢でいることもよくありません。そのほか、バランスの良い食生活を心掛ける、正しい排便習慣を身に付ける、辛いものやお酒はほどほどにするなど、お尻の健康を保ち、痔を予防するための生活を心掛けましょう。

2010年9月22日水曜日

「大腸がん」

ゲスト/札幌いしやまクリニック 樽見 研 院長

大腸がんとはどのような病気ですか。
 以前は欧米人に比べ、日本人には大腸がんは少なかったのですが、近年は急激に増加しています。原因としては、食生活の変化が挙げられます。日本人は昔と比べ、動物性の脂肪やタンパク質を非常に多く取るようになり、一方で食物繊維の摂取量は減少しています。このような大腸がんリスクファクターの増加によって、大腸がんによる死亡者数は、かつて日本人に多かった胃がんの死亡者数に追いついてきています。特に女性のがんの部位別死亡人数は大腸がんがトップになっています。
 大腸がんは、ポリープなどの前がん病変の段階で発見できれば、簡単に治療できますが、一般的には自覚症状がないため、無症状の時期に発見することが非常に重要となります。早期発見のために定期的な検査を受けることが一番の予防といえます。
 お尻から出血した場合、その多くは痔(じ)によるものと考えられますが、大腸がんのように重大な病気が隠されていることもあります。自己判断せず、必ず専門医を受診して、正しい診断と適切な治療を受けてください。

大腸がんの検査と治療について教えてください。
 大腸がんの早期発見を目的とし、がん集団検診では便潜血(せんけつ)検査を推進していますが、精度が高くないのが欠点です。もっとも正確に診断できるのが、肛門からスコープを挿入して大腸を見る内視鏡検査です。この検査が不安で受診しないという人もいますが、最近の内視鏡は高性能で、医師の技術も高くなっていますから、以前に比べ苦痛は小さくなっています。40歳以上の人は、2〜3年に1度は内視鏡検査を受けることをお勧めします。
 大腸がんの治療は早期の場合、大腸切除せずに内視鏡を使ってがん病巣のみ切除する内視鏡的治療が可能なものもあります。進行がんの場合は、以前は下腹部を切開する開腹手術しかありませんでしたが、現在は、症例によって小さな創(きず)ですむ腹腔鏡下手術が行われています。術後の痛みも少ないため、回復が早く、その結果として早期退院、早期社会復帰が可能となります。
 大腸がんは、その発生に食生活の内容が大きな影響を与えています。動物性脂肪を控え、ビタミン類や食物繊維を豊富に取るバランスの良い食生活を心掛けるなど、今までの生活習慣を見直すことも大腸がんの予防には大切なことです。

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