2014年4月9日水曜日
便失禁
ゲスト/札幌いしやま病院 石山 元太郎 副院長
便失禁とはどのような症状ですか。
排便の抑制がきかず、無意識のうちに、または、意思に反して便が排せつされることが度々起こる状態を便失禁と呼びます。知らず知らずのうちに下着を汚してしまうような便失禁や、排便を我慢しようと意識しているにもかかわらず、トイレに間に合わず漏らしてしまう便失禁があります。60歳以上の高齢者に多く、男女を問わず起こります。
原因はさまざまで、過去に受けた肛門手術や脊髄損傷などの外傷、加齢による肛門括約筋の筋力低下、女性であれば出産時の会陰切開や吸引分娩(ぶんべん)などによる括約筋の挫傷などが挙げられます。
診断の際は、まず適正な検査を行い、便失禁の病態を客観的に評価します。その上で最も効果的と思われる治療法を選択します。
便失禁の検査、治療について教えてください。
検査は、肛門括約筋の状態をみる超音波検査や、肛門の筋力を計る肛門内圧検査などが一般的です。そのほか、バリウムを肛門から入れ、排せつする際の便の流れをみる排便造影検査、直腸の容量を計るリザーバー機能検査、直腸・肛門の感覚機能検査などがあります。
治療は便失禁の原因によりさまざまですが、通常はまず食事や規則正しい排便習慣の指導が行われます。便が軟らかいと漏れやすいので、便の硬さを調節する薬を使う場合もあります。また、自宅で行う毎日10分程度の括約筋を強めるトレーニング(骨盤底筋体操)や、外来で医師と一緒に行う、肛門の中にセンサーを入れて中の圧を見ながら括約筋をトレーニングするフィードバック療法も効果的です。
自分では訓練できない内括約筋を、低周波の電気刺激で鍛える治療法もあります。低周波電気刺激療法と呼ばれるもので、電気刺激により肛門管組織の血流量を増やし、括約筋の筋力をアップさせます。1回の治療時間は5分ほどですが、繰り返し行うことで効果が出ます。また、腰のあたりに電気刺激装置を埋め込み、排便をコントロールする神経である仙骨神経を刺激し、便失禁を改善する仙骨神経刺激療法(SNM)という最新治療もようやく厚生労働省で認可が下り、治療選択肢の拡大が期待されています。
肛門手術や会陰切開などが原因で括約筋に断裂がある場合には、入院して肛門括約筋を手術で縫合する括約筋形成術を行うのが一般的です。
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