2014年4月16日水曜日

長引くせき


ゲスト/白石内科クリニック 干野 英明 医師

せきの診断について教えてください。
 せきは患者さんにとってつらい症状であり、日常の診療でもせきを主要な症状として来院される方が非常に多くみられます。診断においては、せきの経過をよく聞き取ることが重要です。せきの期間、発熱や痰(たん)の有無、ゼーゼーすること(ぜん鳴)がないかなどを確認します。せきの持続期間が3週間未満の場合は急性咳嗽(がいそう)、3週間以上8週間未満であれば遷延性咳嗽、8週間以上のものは慢性咳嗽と分類されます。
 急性咳嗽では、感冒を含む気道の感染症が疑われます。その多くはウイルスによるもので、ほかにマイコプラズマ、百日咳菌、肺炎クラミジアなどがあります。せきの持続時間が長くなるにつれて感染症の頻度は低下し、慢性咳嗽では感染症そのものが原因となることはまれです。

長引くせきではどのような病気が疑われますか。
 慢性咳嗽の中ではせきぜんそくが多く、そのほかに副鼻腔気管支症候群、胃食道逆流によるせき、アトピー咳嗽、薬剤性のせき、喫煙に伴うせきなどがあります。
 せきぜんそくは、気管支ぜんそくの前段階ともいえる状態で、3割ぐらいの人が5年以内に気管支ぜんそくに移行します。せきは夜間から明け方に悪化しやすく、受動喫煙や温度変化で悪化することがあります。治療は吸入ステロイドや気管支拡張剤などを使います。
 副鼻腔気管支症候群は、痰を伴うせきと後鼻漏や鼻汁など副鼻腔炎の症状があります。治療にはマクロライド系抗菌薬や去痰剤を用います。胃食道逆流によるせきの治療は、胃酸分泌抑制薬や消化管運動機能改善薬などの内服です。アトピー咳嗽は、症状はせきぜんそくと似ていますが、気管支拡張剤が無効であり、ヒスタミンH1受容体拮抗薬を投与します。気管支ぜんそくへの移行がないため、せきが治まれば治療を中止できます。薬剤性のせきは、高血圧治療薬として使用されるACE阻害薬によるものが挙げられます。通常は、服薬中止後4週間以内に軽快します。喫煙に伴うせきは、喫煙により慢性気管支炎や肺気腫といった慢性閉塞性肺疾患(COPD)に進行する可能性があり、禁煙が重要です。
 そのほかにも、症状はせきだけであっても重大な病気が隠れていることがあり、肺結核、肺がん、間質性肺炎などの疾患も鑑別診断としては重要です。

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