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2023年7月13日木曜日

矯正歯科治療はなぜ必要?

[なぜ、矯正歯科治療が必要なのですか?]

 歯並びやかみ合わせは、顔の印象を決める大きな要因の一つです。診療の現場でも、歯並びやかみ合わせが悪く「口を開けて笑うことができない」「人前で話したくない」など、見た目のコンプレックスから矯正治療を始める人が多いのが実状です。

2022年11月23日水曜日

これからの矯正歯科治療

 ゲスト/E-line矯正歯科 上野 拓郎 院長


銀色の矯正装置が目立たないように治療する方法はあるのでしょうか。

 近年、日本でも正しいかみ合わせや歯並びが機能面や健康面、審美面でいかに重要であるかということが一般的にも知られるようになってきました。

 歯科矯正が広く受け入れられ始めた要因として、矯正器具の著しい進歩が挙げられます。かつては、歯の前面にギラッと光っていたメタルの矯正器具。確かに目立ちますので、特に成人の方には抵抗感があるものでした。しかし、現在では歯に近い白色のワイヤーや、透明なプラスチックやセラミックなどのブラケットによって、口元を目立たせないで治療することができます。また、歯の裏側(舌側)から治療する「見えない矯正治療」も普及しています。女性や接客業、営業職など、見た目の印象が気になる人にとっても、抵抗なく治療が始められるようになりました。スポーツをする人の口のけがの危険性や、部活動などで管楽器を演奏する人の吹きにくさが少ないことも、歯の裏側から治療するメリットです。


最新の矯正治療について教えてください。

 矯正治療の進歩は目覚ましいです。まず裏側から治療するブラケットのサイズが従来の半分以下の大きさになり、装着時の違和感が軽減されました。小型化によって清掃性が良くなり衛生的で、話しにくさを訴える患者さんも少なくなりました。表側のブラケットでは、ワイヤーとの摩擦の少ないものが開発され、締め付け感が少なく、治療期間も短縮できるようになりました。

 「アンカースクリュー」と呼ばれるねじを歯茎の骨の部分に入れ、歯を動かす時の固定源とする方法も登場しています。効率よく歯を動かすことができ、治療期間の短縮が期待できるほか、従来では手術が必要とされていた症例でも手術を回避できるケースが増えています。また、透明で着脱可能なマウスピース型の矯正装置を使う「アライナー矯正」も注目されています。着脱可能な手軽さと目立ちにくいのがメリットですが、ブラケットほど大きく歯を動かすことができないため、歯並びがひどい重症例には向きません。

 万能な治療法はなく、どのような方法、装置を選択するかは、患者さん一人一人の歯の状態や年齢、環境などが関わってきます。矯正治療を専門とする歯科医とじっくり相談し、納得の上で治療を始めることが何よりも大切です。


2022年7月27日水曜日

噛(か)むことについて

 ゲスト/E-line矯正歯科 上野 拓郎 院長


近年、子どもたちの噛む力が弱くなっているといわれています。「よく噛むこと」はなぜ大事なのですか。

 噛まなければ飲み込めないような食べ物が多かった昔と違い、やわらかい食べ物があふれる現代。カレーライスやハンバーグ、麺類など、よく噛まなくてもすぐに咀嚼(そしゃく)でき、飲み込めるようなメニューが食生活の中心になり、子どもたちの噛む回数は減っています。

 診療で長年子どもの歯をみてきた実感として、乳歯の時期から「よく噛んで食べる」習慣が身に付けられていないため、歯や歯を支える歯肉、歯槽骨、歯根膜などの成長が滞ったり、また、顎(あご)の骨や口周りの筋肉が十分に発達せず、歯並びに悪影響を及ぼしてしまうケースが増えています。口腔の健全な発育には、幼少期から噛む力を鍛えることが非常に重要なのです。

 よく噛むことのメリットは驚くほど多いです。顎の骨や口周りの筋肉の正しい成長を促すことのほか、食べ物をよく噛むことで出るだ液は、消化を助けることはもちろん、口の中をきれいにする作用もあり、むし歯や歯周病、口臭の予防にもひと役買います。噛むことで脳の満腹中枢が刺激され、早食いや食べ過ぎを抑えて肥満予防にもつながります。ほかにも、近年さまざまな研究からよく噛むことで脳のいろいろな部分が刺激され、脳を活性化させることが分かってきています。


噛む力を鍛えるには、どうしたらいいですか。

 まず、きちんと噛めるかみ合わせであることが重要です。常に上下の前歯が開いている開咬(かいこう)では前歯で噛み切ることができませんし、極端な上顎(がく)前突(出っ歯)や下顎前突(受け口)でもスムーズに噛めません。

 日常生活の中では、食物繊維が豊富な歯ごたえのある食材を選ぶなど、かみごたえのある食べ物を意識してメニューを考えてください。食材を大きく切ったり、薄味にしたりするなど調理法を工夫することで、噛む回数を増やすことができます。また、食べ物が口の中に入っている時に水やお茶で流し込んでしまうと、噛む回数が極端に減ってしまうので注意が必要です。遊びながらやテレビを観ながらの「ながら食べ」は、噛まずに飲み込む要因にもなるのでお勧めできません。

 楽しく食事できる雰囲気づくりも大切です。家族で、ゆっくり味わいながら食事をし、楽しみながらよく噛む習慣を身に付けさせてあげてください。

2022年5月25日水曜日

開咬(かいこう)

 ゲスト/E-line矯正歯科 上野 拓郎 院長


開咬について教えてください。

 開咬は、奥歯で噛(か)んでも前歯は噛んでおらず、常に前歯が開いた状態になることをいいます。前歯は外側からは唇(くちびる)の力、内側からは舌の力によって押され、力のバランスのとれたところに並びます。このバランスが崩れたとき、開咬になることがあります。幼少のころからの「指しゃぶり」や食べ物を飲み込むときに舌が出るなどの「舌癖」、蓄膿(ちくのう)症などの呼吸器系の慢性疾患による「口呼吸」などが、バランスを崩す要因となります。

 開咬は口が閉じづらいため、無意識のうちに口元に力が入り、緊張して見えがちです。審美面だけでなく、きちんと発音できない、前歯で食べ物を噛み切ることができない、奥歯や舌を使って食べ物を噛み切る悪い癖がつきやすいなど、機能面での問題も大きいです。また、前歯が噛み合わないので奥歯に過剰な負担がかかり、破損や歯周病が進むなど奥歯の寿命に影響する場合もあります。


どのように治療しますか。

 開咬は治療が難しい噛み合わせの一つです。その理由は、舌の悪癖が関与しているケースが多いからです。矯正治療で一度は前歯がしっかり噛んだとしても、悪癖が残っていると後戻りしやすいです。治療とともに悪癖を取り除く訓練をすることが重要です。

 開咬の原因が悪癖にある場合、早い段階での治療が何よりも大切です。軽い開咬であれば、矯正装置を装着せずにMFT(口腔筋機能療法)という口元の筋肉トレーニングだけで矯正できるケースもあります。一方、大人になってからでは、顎の骨を切る外科的手術が必要になることもあり、治療に時間がかかり負担も増します。

 歯科矯正技術は日々驚くほど進歩しています。近年、「歯科矯正用アンカースクリュー」と呼ばれるネジを歯茎の骨の部分に入れ、歯を動かす時の固定源とする方法が登場し、開咬の治療も大きく変わりました。効率よく歯を動かすことができ、治療期間の短縮が期待できるほか、従来では手術が必要とされていた症例でも手術を回避できるケースが増えています。

 受診の目安は、前歯が4本永久歯に生え替わった時期です。乳歯から永久歯への移行を、より自然に、正しく美しい歯並びに誘導することが可能です。歯並びの検診を受けるつもりで、矯正歯科医を訪ねてみてください。

2022年2月16日水曜日

開咬(かいこう)

 ゲスト/E-line矯正歯科 上野 拓郎 院長


開咬について教えてください。

 開咬は、奥歯で噛(か)んでも前歯は噛んでおらず、常に前歯が開いた状態になることをいいます。前歯は外側からは唇(くちびる)の力、内側からは舌の力によって押され、力のバランスのとれたところに並びます。このバランスが崩れたとき、開咬になることがあります。幼少のころからの「指しゃぶり」や食べ物を飲み込むときに舌が出るなどの「舌癖」、蓄膿(ちくのう)症などの呼吸器系の慢性疾患による「口呼吸」などが、バランスを崩す要因となります。

 開咬は口が閉じづらいため、無意識のうちに口元に力が入り、緊張して見えがちです。審美面だけでなく、きちんと発音できない、前歯で食べ物を噛み切ることができない、奥歯や舌を使って食べ物を噛み切る悪い癖がつきやすいなど、機能面での問題も大きいです。また、前歯が噛み合わないので奥歯に過剰な負担がかかり、破損や歯周病が進むなど奥歯の寿命に影響する場合もあります。


どのように治療しますか。

 開咬は治療が難しい噛み合わせの一つです。その理由は、舌の悪癖が関与しているケースが多いからです。矯正治療で一度は前歯がしっかり噛んだとしても、悪癖が残っていると後戻りしやすいです。治療とともに悪癖を取り除く訓練をすることが重要です。

 開咬の原因が悪癖にある場合、早い段階での治療が何よりも大切です。軽い開咬であれば、矯正装置を装着せずにMFT(口腔筋機能療法)という口元の筋肉トレーニングだけで矯正できるケースもあります。一方、大人になってからでは、顎の骨を切る外科的手術が必要になることもあり、治療に時間がかかり負担も増します。

 歯科矯正技術は日々驚くほど進歩しています。近年、「歯科矯正用アンカースクリュー」と呼ばれるネジを歯茎の骨の部分に入れ、歯を動かす時の固定源とする方法が登場し、開咬の治療も大きく変わりました。効率よく歯を動かすことができ、治療期間の短縮が期待できるほか、従来では手術が必要とされていた症例でも手術を回避できるケースが増えています。

 受診の目安は、前歯が4本永久歯に生え替わった時期です。乳歯から永久歯への移行を、より自然に、正しく美しい歯並びに誘導することが可能です。歯並びの検診を受けるつもりで、矯正歯科医を訪ねてみてください。

2021年6月23日水曜日

子どもの矯正治療

 ゲスト/E-line矯正歯科 上野 拓郎 院長


子どもの矯正治療について教えてください。

 「矯正はいつ始めればいいですか」と聞かれることがよくあります。矯正治療に年齢制限はありませんが、あごの骨が成長途中にある子どものうちに行うのがベストでしょう。成長する力を利用することで、正しくかめるように骨格を誘導し、スムーズに歯並びやかみ合わせを改善できるからです。将来の抜歯や手術を回避できる可能性も高くなります。また、この時期の矯正治療は使用できる装置の選択肢が豊富で、一人ひとりに合った治療法を選べるというメリットもあります。ただし、矯正治療を始めるのに適切な時期は、歯並びの現状、歯やあごの骨の発育状況などによって変わってきます。まずは矯正治療を専門とする歯科医に診てもらうことが第一歩です。

 小学校の入学時(上下前歯が乳歯から永久歯に生え変わる時期)に一度受診し、歯並びやかみ合わせを点検することをお勧めします。この時期にかみ合わせを見ると、お子さんの将来の歯並びが予測できます。はっきりと外観から分かる症例だけでなく、一般の方の目にはほとんど分からない不正咬合の兆候もみることができます。治療が必要かどうか、治療を始めるのに最適な時期はいつ頃かなど、お子さんの歯並びの現状と将来の見通しの説明を受けるチャンスと考え、気軽に相談してみてください。

 矯正治療は専門性が高く、また治療期間は長期にわたるので、理想の治療を受けられるよう、納得のいくまで話し合える矯正歯科医を見つけることが大切です。治療の相談時に診療システムや実績、費用などクリニック自身の説明を十分にしてくれること。お子さんに必要な検査や分析、診断をしたうえで治療の方針や計画を示してくれることなどがポイントになると思います。

 新型コロナウイルスの影響による受診控えが歯科領域でも目立ちます。歯科クリニックでは新型コロナ流行以前から口の中に入る器具をその都度滅菌したり使い捨てを採用したり、飛沫防止のため吸引装置を使ったりするといった標準予防策を徹底しています。加えて、患者さんごとに座席を消毒する、フェイスガードを着用しての治療、予約を制限して接触機会を減らす─など可能な限りの感染対策を講じ、患者さんたちが安心して受診・治療してもらえるよう不断の努力を続けています。感染リスクよりも、口腔内の治療を中断・放置する不利益の方がずっと大きいことを理解してもらいたいです。自己判断で受診を控えず、必要な時に適切な受診をしてください。


2021年1月20日水曜日

矯正歯科治療のメリットとリスク

 ゲスト/E-line矯正歯科 上野 拓郎 院長


矯正歯科治療のメリットとリスクについて教えてください。

 矯正歯科治療の目的は、歯並び、かみ合わせの改善にあります。歯並びが悪いと、歯磨きが隅々までできず、虫歯や歯周病の原因になります。しっかりとかんで食べられないので、胃腸など消化気管にも大きな負担がかかります。また、審美面で劣等感を抱くことも考えられます。実際に正しい歯並び、かみ合わせになると、口元を隠さずに笑顔を見せるようになり、表情が驚くほど明るくなります。さらに、正しいかみ合わせでよくかむということは、脳の発達や認知症の予防にも良い影響を及ぼすという研究結果もあります。かみ合わせを直し、歯並びをきれいに整える矯正歯科治療が、機能面、健康面、審美面で、いかに重要であるかが、日本でも広く認知されてきたように思います。矯正歯科治療に恥ずかしさや後ろめたさを感じることなく、堂々と矯正器具を装着する人が増えているのはうれしい限りです。

 一方で、ほかの疾患の治療と同様に、矯正歯科治療にもリスクが生じる可能性もあります。より良い結果を導くための一時的なリスクです。例えば、矯正装置によって歯を動かす際の痛みや不快感です。これらは数日から1週間でなくなることがほとんどです。治療のどの段階で、どのような痛みや不快感があるのか、そして、どのように対処すればいいのかを事前に理解しておけば、過度に怖がる必要はありません。矯正装置があることで歯磨きがしにくくなるため、むし歯や歯周病になりやすいというのもリスクの一つですが、これも徹底したブラッシング指導などで患者さんのセルフケア意識を高めながら、プロによる定期的なチェックやクリーニングなどを組み合わせることで回避できるケースが多いです。

 歯科矯正治療は命にかかわる、緊急性の高い治療ではありませんが、時間もお金もそれなりにかかりますし、治療するご本人の強い意志、努力と根気が求められることも多いです。通院日を守る、歯みがきをきちんと行うなど、患者さんと主治医が二人三脚で進むことで、初めてゴールにたどり着けるのだということを、ぜひ覚えておいてほしいと思います。

 大変な治療を乗り切った後、その分得られる価値は大きく、歯並びやかみ合わせが良くなって人生観が変わり、元気になっていく方を私は何人も見ています。苦労や努力した時間が、残りの多くの人生の時間を輝かせるのが矯正歯科治療です。

2020年12月9日水曜日

矯正歯科治療のメリットとリスク

 ゲスト/E-line矯正歯科 上野 拓郎 院長


矯正歯科治療のメリットとリスクについて教えてください。

 矯正歯科治療の目的は、歯並び、かみ合わせの改善にあります。歯並びが悪いと、歯磨きが隅々までできず、虫歯や歯周病の原因になります。しっかりとかんで食べられないので、胃腸など消化気管にも大きな負担がかかります。また、審美面で劣等感を抱くことも考えられます。実際に正しい歯並び、かみ合わせになると、口元を隠さずに笑顔を見せるようになり、表情が驚くほど明るくなります。さらに、正しいかみ合わせでよくかむということは、脳の発達や認知症の予防にも良い影響を及ぼすという研究結果もあります。かみ合わせを直し、歯並びをきれいに整える矯正歯科治療が、機能面、健康面、審美面で、いかに重要であるかが、日本でも広く認知されてきたように思います。矯正歯科治療に恥ずかしさや後ろめたさを感じることなく、堂々と矯正器具を装着する人が増えているのはうれしい限りです。

 一方で、ほかの疾患の治療と同様に、矯正歯科治療にもリスクが生じる可能性もあります。より良い結果を導くための一時的なリスクです。例えば、矯正装置によって歯を動かす際の痛みや不快感です。これらは数日から1週間でなくなることがほとんどです。治療のどの段階で、どのような痛みや不快感があるのか、そして、どのように対処すればいいのかを事前に理解しておけば、過度に怖がる必要はありません。矯正装置があることで歯磨きがしにくくなるため、むし歯や歯周病になりやすいというのもリスクの一つですが、これも徹底したブラッシング指導などで患者さんのセルフケア意識を高めながら、プロによる定期的なチェックやクリーニングなどを組み合わせることで回避できるケースが多いです。

 歯科矯正治療は命にかかわる、緊急性の高い治療ではありませんが、時間もお金もそれなりにかかりますし、治療するご本人の強い意志、努力と根気が求められることも多いです。通院日を守る、歯みがきをきちんと行うなど、患者さんと主治医が二人三脚で進むことで、初めてゴールにたどり着けるのだということを、ぜひ覚えておいてほしいと思います。

 大変な治療を乗り切った後、その分得られる価値は大きく、歯並びやかみ合わせが良くなって人生観が変わり、元気になっていく方を私は何人も見ています。苦労や努力した時間が、残りの多くの人生の時間を輝かせるのが矯正歯科治療です。

2020年2月12日水曜日

矯正歯科におけるデジタル化技術の進展

ゲスト/E-line矯正歯科 上野 拓郎 院長

近年、矯正歯科分野でもデジタル化が進んでいると聞きますが、どのようなものがありますか。
 ここ数年、矯正歯科治療はデジタル技術によって急速に進化しています。
 一つは、被ばく量が少なく、より鮮明な画像が得られる「デジタルレントゲン」の普及と、口腔内を立体(3D)画像で診断できる「歯科用CT」の登場です。歯科用CTを用いた検査では、歯やあごの骨の位置だけでなく、厚さや密度、かみ合わせのほか、目には見えない歯根や埋伏歯の位置なども詳細に把握できるようになりました。
 もう一つは「口腔内3Dスキャナー」です。治療に必要な歯型を取る際、従来はガムのように軟らかく口の中で固まる<印象材>を使いますが、その味やにおいに不快感を持つ患者さんも少なくありません。また、口を一定の時間開け続けなければならず、吐き気をもよおす患者さんもいます。そのようなストレスや苦痛、負担を感じることなく、簡単に歯型を取れる最新機器が口腔内3Dスキャナーです。スティック状の装置を口に入れ、歯を2、3周なぞるだけで、口腔内を精確に撮影・計測し、時間にして数分で歯型の精細なデータを取ることができます。装置は光学カメラのため被ばくの心配がなく、撮影された画像はデジタルデータとしてモニターに再現されます。
 歯科用CTや口腔内3Dスキャナーで得た画像は、それぞれのデータをリンクさせることで、一人一人の歯並びをさまざまな側面から診断できるので、より患者さんの口腔状態に適した理想的な治療計画を立てられます。効率的な歯の動かし方を計画できるので、ワイヤーを使った矯正方法でも、マウスピースを使った矯正方法でも、結果として、少ない通院回数、短い施術期間で、歯に必要以上の負担をかけない安全に配慮した治療が可能になりました。
 画像データのデジタル化により、口腔外科や歯科技工所と必要なデータを共有できることも大きなメリットです。治療の連携がスムーズに行えますし、取得した歯型のデータなどをそのまま歯科技工所で利用するため、手作業の誤差を排し、技工物の精度にも貢献しています。
 「3Dプリンター」を使って矯正治療に必要な器具を成形する取り組みも始まっています。今後、矯正歯科治療のIT化、デジタル化はさらに発展していくはずです。最新のデジタル技術で得られる情報を読み解き、的確に治療に結び付けられるよう知識と技術の研さんを続け、より高品質で患者さんの満足度の高い矯正治療の提供を目指すべきです。

2019年9月11日水曜日

舌側矯正

ゲスト/宇治矯正歯科クリニック 宇治 正光 院長

矯正に対する最近の傾向について教えてください。
 近年、歯のかみ合わせと全身の健康状態やQOL(生活の質)との関係が、注目されるようになりました。それに並行し、口もとの美しさや歯並びに対する関心が高まり、歯の矯正治療が広く認知されてきました。矯正治療は子どものものと思われがちですが、最近は大人になって行う人も増えています。
 先日、30代の女性から「長年、歯並びの悪さがコンプレックスで矯正治療を考えていますが、装置を表からにするか、裏からにするか迷っている」との相談を受けました。この女性に限らず、歯列の凸凹や、上顎(がく)前突、下顎前突、さらにあごの左右のずれを気にする方は多く、よくこのような相談を受けます。
 咬合(こうごう)の大切さを認識し、歯列やあごの骨のずれを治す矯正治療を受けようとする前向きな姿勢を隠す必要はありませんが、人知れずに治療したいという気持ちも分かります。特に社会人で、接客業など人前で話をする機会の多い方はそう考えるでしょう。思春期のお子さんが矯正装置を気にする心情も理解できます。そういう場合は、着けていても目立たない舌側矯正を選ぶ方もいます。

舌側矯正について教えてください。
 舌側矯正は、歯の裏側に矯正装置を入れます。表からは装置が目に付かないので、見た目にはまったく違和感がありません。他の人に気付かれることなく治療を行うことができる「見えない矯正治療」といえます。ただし、内側にあることから、表側からの矯正(唇側矯正)と比較すると、装着時の違和感など劣る部分もありました。しかし、近年これらの問題点を改善した舌側矯正装置「STb」が普及しています。
 「STb」は、従来の裏側に用いていたブラケットと比べると装置が非常に薄く、そして小さくなりました。それにより「話しにくい」「食事がしづらい」「舌が痛い」「歯が磨きにくい」といった今までの舌側矯正の不快感が飛躍的に改善されました。また、歯の痛みもほとんどなく、治療期間も短くなり、より進化した次世代のブラケットといえます。
 「STb」の登場により、舌側矯正に踏み切れなかった人も気軽に、そして快適に矯正治療が受けられるようになったと思います。ぜひ一度、矯正歯科に相談してみてください。

2019年8月21日水曜日

先天欠如と過剰歯

ゲスト/E-line矯正歯科上野 拓郎 院長

先天欠如、過剰歯とはどのような状態をいいますか。
 乳歯が抜け、永久歯へと生え替わるのは成長の過程として当然、と思っていたはずが、お子さんになぜか抜けない乳歯があったり、乳歯が抜けても永久歯がなかなか生えてこなかったりすると、ちょっと不安になってしまいますよね。それはもしかすると、生まれつきの歯の形成異常の一種である「先天欠如」が原因かもしれません。一度かかりつけの矯正歯科に相談されるのがいいかと思います。
 先天欠如とは、永久歯がなんらかの原因で作られず、欠損している状態のことをいいます。国内では1本から数本の永久歯が生えてこない子どもが10人に1人程度いるとみられ、調査では下顎(かがく)の第2小臼歯の欠如率が高いとされています。
 永久歯が先天欠如すると、その部分の生え替わりが起こりません。乳歯がそのまま残っている間はいいのですが、その後どこかのタイミングで抜けてしまうことも多く、欠損部を放置していると周囲の歯が移動したり傾いたりして、歯並びやかみ合わせがどんどん悪くなります。
 先天欠如が見つかった場合に重要なのは、長期的な治療計画を立て、適切な時期に適切な治療を行うことです。残っている乳歯を大事にしながら、歯並びやかみ合わせに異常が生じないように管理を続け、しかるべきタイミングがきた時に矯正・補綴(ほてつ)治療を行います。6本以上の先天欠如であれば、矯正治療は保険適用となります。
 先天欠如とは逆に、正常な歯の数を超えてできた歯を過剰歯と呼びます。普通の歯と違い、きれいに生えてくることはあまりなく、多くの場合は顎の骨の中に埋まった状態か、正常な歯と歯の間に余分な歯が埋まっていたり、正常な歯と隣り合わせに生えてきたりします。放置していると歯並びやかみ合わせに悪影響を与えるのはもちろん、過剰歯の埋まっている場所が悪ければ、そのまま骨の中で成長すると永久歯の根元を溶かしてしまうことも。過剰歯が生える場所として最も多いのは、上顎の2本の前歯の間で、「前歯の間の隙間がふさがらない」「左右の前歯の生える時期が極端に違う」などの症状で気付くことが多いです。
 治療は、顎(あご)の骨の奥深くにあり、近くの歯に影響を与える心配がないときには抜かずに様子をみますが、将来的に悪影響が大きい場合は抜歯するのが基本。先天欠如と同様に、年齢に合わせて歯や顎の成長を予測、観察しながら長期的な治療プランが必要になります。

2019年4月24日水曜日

子どもの歯科矯正治療

ゲスト/宇治矯正歯科クリニック 宇治 正光 院長

子どもの矯正治療について教えてください。
 お子さんの歯並びに矯正が必要かどうか迷う人も多いのではないでしょうか。歯並びを確かめる方法の一つとして、お子さんの口元を顔の正面から観察してみてください。上下の前歯の真ん中の位置が一致していれば安心ですが、ずれている場合は、矯正の必要があると考えられます。出っ歯や受け口など、上下の顎が前後に大き過ぎたり小さ過ぎたりという骨格的な問題は、一般の方でも気付きやすいですが、左右のずれは発見しにくいものです。
 前後あるいは左右にずれが認められる場合は、顎骨(がっこつ)の成長コントロールが可能な9〜11歳までに矯正治療を行うのが理想的です。就寝時にバイオネーターと呼ばれる機能的顎(がく)矯正装置を装着し、寝ている間にずれた顎の骨を中央に移動させます。子どもの成長の力を利用して、無理なく自然にバランスのよい骨格をつくれます。痛みはほとんどなく、日中は装着の必要がありません。ずれの程度にもよりますが、装着期間は半年〜1年が平均で、経過観察のための通院は、1〜3カ月に一度が目安となります。
 ずれの原因はさまざまですが、歯そのものがずれているケースもあり、永久歯がはえそろってからでも治療は可能です。その場合、抜歯する可能性は高くなりますが、きれいに治療できるケースがほとんどです。矯正治療をいつ始めるべきかという判断は非常に難しいので、一度歯科医にご相談ください。

家庭でチェックするための別の方法はありますか。
 頬づえやかみ癖、就寝時の姿勢が左右どちらかに大幅に偏っている場合などは、左右のずれを引き起こす原因になることがあります。上下の前歯の位置を確認したら、次は鼻の先端を基準に、鼻の中央に前歯の中心が沿っているかを見てください。ずれの原因は一見して分かるものではなく、万が一、骨格のずれを歯のずれと勘違いして放っておくと、矯正に最適な成長時期を逃してしまうので注意が必要です。
 子どものうちの悪い歯並びやかみ合わせを放置していると、成長に伴い虫歯や歯周病の原因となったり、顎関節にも悪影響を及ぼす恐れがあります。また、大人になってから心理的なストレスの原因となる場合もあります。少しでもおかしいと感じたら、早めに歯科医に相談することをお勧めします。

2018年10月3日水曜日

舌側矯正

ゲスト/宇治矯正歯科クリニック 宇治 正光 院長

矯正に対する最近の傾向について教えてください。
 近年、歯のかみ合わせと全身の健康状態やQOL(生活の質)との関係が、注目されるようになりました。それに並行し、口もとの美しさや歯並びに対する関心が高まり、歯の矯正治療が広く認知されてきました。矯正治療は子どものものと思われがちですが、最近は大人になって行う人も増えています。
 先日、30代の女性から「長年、歯並びの悪さがコンプレックスで矯正治療を考えていますが、装置を表からにするか、裏からにするか迷っている」との相談を受けました。この女性に限らず、歯列のでこぼこや、上顎(がく)前突、下顎前突、さらにあごの左右のずれを気にする方は多く、よくこのような相談を受けます。
 咬合(こうごう)の大切さを認識し、歯列やあごの骨のずれを治す矯正治療を受けようとする前向きな姿勢を隠す必要はありませんが、人知れずに治療したいという気持ちも分かります。特に社会人で、接客業など人前で話をする機会の多い方はそう考えるでしょう。思春期のお子さんが矯正装置を気にする心情も理解できます。そういう場合は、着けていても目立たない舌側矯正を選ぶ方もいます。

舌側矯正について教えてください。
 舌側矯正は、歯の裏側に矯正装置を入れます。表からは装置が目に付かないので、見た目にはまったく違和感がありません。他の人に気付かれることなく治療を行うことができる「見えない矯正治療」といえます。ただし、内側にあることから、表側からの矯正(唇側矯正)と比較すると、装着時の違和感など劣る部分もありました。しかし、近年これらの問題点を改善した舌側矯正装置「STb」が普及しています。
 「STb」は、従来の裏側に用いていたブラケットと比べると装置が非常に薄く、そして小さくなりました。それにより「話しにくい」「食事しづらい」「舌が痛い」「歯が磨きにくい」といった今までの舌側矯正の不快感が飛躍的に改善されました。また、歯の痛みもほとんどなく、治療期間も短くなり、より進化した次世代のブラケットといえます。
 「STb」の登場により、舌側矯正に踏み切れなかった人も気軽に、そして快適に矯正治療が受けられるようになったと思います。ぜひ一度、矯正歯科に相談してみてください。

2018年9月12日水曜日

子どもの矯正〜前期治療の必要性と効果〜

ゲスト/E-line矯正歯科上野 拓郎 院長

子どもの矯正治療は、早期から始めてもあまり効果がなく、永久歯が生えそろうまでは行わない方がいいという話を聞きました。本当にそうでしょうか。
 子どもの矯正治療は、永久歯が生えそろう以前の、乳歯と永久歯が混在する時期に行う「前期(早期)治療」と、その後、永久歯が生えそろってから始める「後期治療」に分かれています。後期治療は、大人の矯正治療と同様に、一本一本の歯にブラケットを装着する治療のことです。一方、前期治療は乳歯から永久歯が生えそろうまでの期間に、大人にはない成長の力を利用してあごのバランスを整えたり、歯の生え変わりを誘導したりするものです。上あごと下あごの正しい成長を促し、永久歯がスムーズに生えてくるように土台づくりをすることが目的です。
 成長期にある子どもの矯正治療では、いつ治療を開始すれば最も効果的かは一概には言えません。お子さんによって歯の生え具合やあごの発達具合は違いますので、早く矯正を始めた方がいいケースもあれば、全部の歯が永久歯に生え変わるのを待ってからの方がいいケースもあるからです。年齢が同じだからといって矯正を始める時期や治療の手法が同じとは限らないのです。
 お子さんの矯正治療を始める時期は「永久歯が生えてから」と考えている親御さんもいらっしゃると思いますが、それでは子どもならではのメリットである「あごの成長を利用した治療」のタイミングを逃してしまう場合があります。永久歯が生えそろうのを待つのではなく、気になった時点で矯正歯科にご相談いただき、前期治療が必要かどうかの判定を受けていただくと安心かと思います。
 お子さんの口の状態によっては、前期治療を行うことで、後期治療の際に抜歯をする必要がなくなったり、治療期間が短くなる可能性が高くなります。後期治療そのものがいらなくなるケースも多いです。また、かみ合わせが悪くなるのを予防することが期待でき、あごや顔のゆがみなど将来的なリスクや負担の軽減にもつながります。歯並びが悪いことを気にして、お子さんがコンプレックスを持つ場合もあります。お子さんにとって歯並びやかみ合わせの悪さが心理的な負担になっているのであれば、早めの矯正によってそのマイナス要因を取り除いてあげることも大事でしょう。
 子どもの矯正の開始時期は、矯正歯科でお子さん一人一人の症状や生活背景、心理的側面なども見極めて、慎重に判断する必要があります。十分な検査、診断、説明を受け、どのような処置が最も良いと考えられるか、納得した上で治療を受けてください。

2018年4月25日水曜日

子どもの歯科矯正治療

ゲスト/宇治矯正歯科クリニック 宇治 正光 院長

子どもの矯正治療について教えてください。
 お子さんの歯並びに矯正が必要かどうか迷う人も多いのではないでしょうか。歯並びを確かめる方法の一つとして、お子さんの口元を顔の正面から観察してみてください。上下の前歯の真ん中の位置が一致していれば安心ですが、ずれている場合は、矯正の必要があると考えられます。出っ歯や受け口など、上下の顎が前後に大き過ぎたり小さ過ぎたりという骨格的な問題は、一般の方でも気付きやすいですが、左右のずれは発見しにくいものです。
 前後あるいは左右にずれが認められる場合は、顎骨(がっこつ)の成長コントロールが可能な9〜11歳までに矯正治療を行うのが理想的です。就寝時にバイオネーターと呼ばれる機能的顎(がく)矯正装置を装着し、寝ている間にずれた顎の骨を中央に移動させます。子どもの成長の力を利用して、無理なく自然にバランスのよい骨格をつくれます。痛みはほとんどなく、日中は装着の必要がありません。ずれの程度にもよりますが、装着期間は半年〜1年が平均で、経過観察のための通院は、1〜3カ月に一度が目安となります。
 ずれの原因はさまざまですが、歯そのものがずれているケースもあり、永久歯がはえそろってからでも治療は可能です。その場合、抜歯する可能性は高くなりますが、きれいに治療できるケースがほとんどです。矯正治療をいつ始めるべきかという判断は非常に難しいので、一度専門医にご相談ください。

家庭でチェックするための別の方法はありますか。
 頬づえやかみ癖、就寝時の姿勢が左右どちらかに大幅に偏っている場合などは、左右のずれを引き起こす原因になることがあります。上下の前歯の位置を確認したら、次は鼻の先端を基準に、鼻の中央に前歯の中心が沿っているかを見てください。ずれの原因は一見して分かるものではなく、万が一、骨格のずれを歯のずれと勘違いして放っておくと、矯正に最適な成長時期を逃してしまうので注意が必要です。
 子どものうちの悪い歯並びやかみ合わせを放置していると、成長に伴い虫歯や歯周病の原因となったり、顎関節にも悪影響を及ぼす恐れがあります。また、大人になってから心理的なストレスの原因となる場合もあります。少しでもおかしいと感じたら、早めに専門医に相談することをお勧めします。

2018年3月30日金曜日

子どもの矯正治療の基本のきほん

ゲスト/E-line矯正歯科上野 拓郎 院長

子どもの歯科矯正治療についていろいろ教えてください。
 子どもは成長過程にあるため、矯正治療を始める適切な時期があります。成長する力を利用することで、正しくかめるように骨格を誘導し、スムーズに歯並びやかみ合わせを改善できるからです。矯正歯科に相談する時期は「永久歯が生えてから」と思っている親御さんがいらっしゃるかもしれませんが、それではタイミングを逃してしまう場合があるので、お子さんの就学時にまず一度は受診してみることをお勧めします。この時期にかみ合わせを見ると将来の歯並びが予測できます。はっきりと外見から分かる症例だけでなく、今後おこりうる不正咬合(こうごう)も予測できます。また、適切な時期の治療は、使用できる矯正装置の選択肢が豊富で、一人ひとりに合った治療法を選べるというメリットもあります。
 矯正治療の流れを簡単に紹介します。最初に行うカウンセリングでは、治療方法、期間、費用等についてご説明します。納得し、治療を開始されると決まれば、あらためて必要な検査を行います。この検査の中で最も重要なのは、「頭部X線規格写真」という矯正専用のレントゲン写真です。これを撮る事によってはじめて、正確な矯正治療の診断や方針が立つとも言える大切な検査です。このような検査の後、診断、治療方針を決定し治療開始となります。
 子どもの歯並びやかみ合わせは、成長とともに変化していきます。計画に沿って治療を進めていくのはもちろんですが、そういった口の中に現れるさまざまな変化を捉え、的確な対応をしていくのも矯正治療の重要な役割です。歯やあごの状態によっては、治療を始めるまで数年待つ場合もあります。「治療期間はどれくらいかかりますか?」という質問をよく受けますが、子どもの矯正は大人の矯正と違って、成長に合わせて時間をかけて行うものですから、「長い付き合い」になるものとお考えください。大まかな目安としては、永久歯が生え揃う中学生ぐらいを一つのゴールと考えることができます。
 小さなお子さんが、自分から「歯並びがおかしい」と感じて「治したい」と訴えるケースはまれです。お子さんの人生を考え、矯正治療に一歩を踏み出すのは親御さんの役割です。矯正治療をして歯並びがきれいになることは、一生にわたってお子さんの健康的な笑顔を支える大切な財産となるはずです。

2017年11月15日水曜日

舌側矯正


宇治矯正歯科クリニック 宇治 正光 院長

矯正に対する最近の傾向について教えてください。
 全身の健康やQOL(生活の質)にとって、咬(か)み合わせが重要な役割を果たしていることが一般の方々にも認知されるようになりました。それによって歯列のでこぼこや、上顎(がく)前突、下顎前突、さらに顎の左右のズレを気にする方が増えてきました。
 先日、30代の女性から「長年、でごぼこの歯並びがコンプレックスです。矯正治療を考えていますが、装置を裏からにするか、表からにするか迷っています」と相談を受けました。この女性に限らず、同様の悩みを持つ人は多く、よくこのような相談を受けます。
 咬合(こうごう)の大切さを認識し、矯正治療を受けようとする前向きな姿勢を隠す必要はありませんが、人知れずに治療したいという気持ちも分かります。特に社会人で、接客業など日常的に多くの人に接する職業の人はそう考えるでしょう。また、思春期のお子さんが矯正装置を気にする心情も理解できます。そういう場合は、舌側矯正をお勧めしています。

舌側矯正について教えてください。
 舌側矯正は、歯の裏側に矯正装置を入れます。表からは装置が目に付かないので、見た目にはまったく違和感がありません。ただし、内側にあることから、表側からの矯正(唇側矯正)と比較すると装着の違和感などで劣る部分もありました。しかし、近年これらの問題点を改善した舌側矯正装置「STb」が普及してきました。
 「STb」は、「ST」が大文字、「b」が小文字で表記されるのが正しく、「ST」は考案者2人の頭文字、「b」はブラケット(歯に付ける器具)の略です。「STb」は、従来の裏側に用いていたブラケットと比べると装置が非常に薄く、そして小さくなりました。それにより「話しにくい」「食事がしづらい」「舌が痛い」「歯が磨きにくい」といった今までの舌側矯正の不快感が飛躍的に改善されました。また、歯の痛みもほとんどなく、歯が早く動くともいわれており、より進化した次世代ブラケットといえます。
 「STb」の登場により、話すことが多い職業の人や舌の違和感に対する不安などの理由で、舌側矯正に踏み切れなかった人も気軽に、そして快適に矯正治療が受けられるようになったと思います。ぜひ一度、専門医に相談してみてください。

2017年10月18日水曜日

歯科矯正治療の基本のきほん


ゲスト/E-line矯正歯科 上野 拓郎 院長

歯科矯正治療のことをいろいろ教えてください。
 反対咬合(受け口)、上顎前突(出っ歯)、開咬(歯がかみ合わない)、叢生(乱ぐい歯・凸凹)などの歯のふぞろいや、上下の顎の歯並びがかみ合わない状態を専門的には「不正咬合」といいます。
 不正咬合により、食べ物がよくかめない、虫歯や歯周病になりやすい、顎関節に負担がかかる、発音が不明瞭になる、肩こりや頭痛、腰痛といった体の症状を引き起こすなどの問題が生じてきます。また、こうした健康面での影響のほかに、歯並びが悪いことを気にして、心理的なコンプレックスを持つ場合もあります。
 矯正歯科は歯並びをきれいに治すところというイメージがあるかもしれませんが、矯正治療の本来の目的は、このような不正咬合を正しいかみ合わせに治して、健康な心身を取り戻すことにあります。歯並びの美しさはかむ機能を追求した結果、得られるものだということを、皆さんにはまず知ってもらいたいです。
 矯正治療の開始年齢は、お子さんの場合は顎の骨の成長を利用した治療ができるので、年齢の低い方が有利な場合が多いです。開始年齢が早いと治療法の選択肢も広がります。早く治療をした方がいいケースと最適な時期を待っていても大丈夫なケースがあるので、やみくもに早く始める必要はありません。ただ、矯正歯科に相談する時期は「永久歯が生えてから」と思っている親御さんがいらっしゃるかもしれませんが、それではタイミングを逃してしまう場合があるので、お子さんの就学時にまず一度は受診してみることをお勧めします。
 すでに成長が止まった成人でも矯正治療は十分に可能です。子どもの矯正と比べ、治療の選択肢は狭まりますが、どんな方でも何歳になってもできます(若くても虫歯や歯周病など歯の状態が悪ければできないこともあります)。遅すぎるということはありません。歯並びやかみ合わせがよくなって人生観が変わり、元気になっていく方を私は何人も見ています。大人の矯正は「治したい」と思った時がチャンスだと考えてもらいたいです。
 矯正治療を専門とする開業医らでつくる日本臨床矯正歯科医会の調査で、転院や再治療で来院する小児患者の約56%が、前医院で納得のいく治療を受けられなかったという報告がありました。矯正治療は、期間が長くかかることもあり、患者さんの中には、複数の歯科医院で相談された上で治療先を決められる方も珍しくありません。大きなところでの違いはありませんが、まずは矯正相談に行かれて、その医院の治療方針や治療方法について納得のいく医院で治療されることが良いと思います。

2017年6月7日水曜日

子どもの歯科矯正治療


ゲスト/宇治矯正歯科クリニック 宇治 正光 院長

子どもの矯正治療について教えてください。
 お子さんの歯並びに矯正が必要かどうか迷う人も多いのではないでしょうか。歯並びを確かめる方法の一つとして、お子さんの口元を顔の正面から観察してみてください。上下の前歯の真ん中の位置が一致していれば安心ですが、ずれている場合は、矯正の必要があると考えられます。出っ歯や受け口など、上下の顎が前後に大き過ぎたり小さ過ぎたりという骨格的な問題は、一般の方でも気付きやすいですが、左右のずれは発見しにくいものです。
 前後あるいは左右にずれが認められる場合は、顎骨(がっこつ)の成長コントロールが可能な9〜11歳までに矯正治療を行うのが理想的です。就寝時にバイオネーターと呼ばれる機能的顎(がく)矯正装置を装着し、寝ている間にずれた顎の骨を中央に移動させます。子どもの成長の力を利用して、無理なく自然にバランスのよい骨格をつくれます。痛みはほとんどなく、日中は装着の必要がありません。ずれの程度にもよりますが、装着期間は半年〜1年が平均で、経過観察のための通院は、1〜3カ月に一度が目安となります。
 ずれの原因はさまざまですが、歯そのものがずれているケースもあり、永久歯がはえそろってからでも治療は可能です。その場合、抜歯する可能性は高くなりますが、きれいに治療できるケースがほとんどです。矯正治療をいつ始めるべきかという判断は非常に難しいので、一度専門医にご相談ください。

家庭でチェックするための別の方法はありますか。
 頬づえやかみ癖、就寝時の姿勢が左右どちらかに大幅に偏っている場合などは、左右のずれを引き起こす原因になることがあります。上下の前歯の位置を確認したら、次は鼻の先端を基準に、鼻の中央に前歯の中心が沿っているかを見てください。ずれの原因は一見して分かるものではなく、万が一、骨格のずれを歯のずれと勘違いして放っておくと、矯正に最適な成長時期を逃してしまうので注意が必要です。
 子どものうちの悪い歯並びやかみ合わせを放置していると、成長に伴い虫歯や歯周病の原因となったり、顎関節にも悪影響を及ぼす恐れがあります。また、大人になってから心理的なストレスの原因となる場合もあります。少しでもおかしいと感じたら、早めに専門医に相談することをお勧めします。

2017年4月26日水曜日

矯正治療と部活動との両立


ゲスト/E-line矯正歯科 上野 拓郎 院長

子どもの矯正治療は、いつ頃から始めるのがいいのですか。
 子どもは成長過程にあるため、矯正治療を始める適切な時期があります。成長する力を利用することで、正しくかめるように骨格を誘導し、スムーズに歯並びやかみ合わせを改善できるからです。早く治療した方がいいケース、最適な時期を待った方がいいケースなど、“最適な時期”は人それぞれ違うので、永久歯が生える小学校入学時、大人の顔つきに変わる中学校入学時など、節目ごとに矯正専門医の診察を受け、歯並びやかみ合わせの点検をしてもらいたいと思います。適切な時期の治療は、使用できる矯正装置の選択肢が豊富で、一人一人に合った治療法を選べるというメリットもあります。

矯正治療と学校の部活動を両立させることは可能ですか。
 球技でボールが顔に当たったりするなどして、矯正装置がずれたり、壊れたり、矯正装置が口の中を傷つけたりしないか、スポーツでの衝撃を心配されているケースが多いです。端的にいって、ほとんどの部活動において不都合はありません。野球、サッカーなど多くのプロスポーツ選手が矯正装置を付けながらプレーしていることからも問題はないといえるでしょう。ただ、極端にボディーコンタクトの激しいスポーツ、例えば柔道やボクシングなどの格闘技では、マウスピースを装着するなど注意が必要です。
 前歯がいわゆる出っ歯の状態だと、スポーツ時の外傷リスクは高くなりますが、矯正装置を付けていたために、スポーツ中の外傷から歯を守れたというケースもあります。矯正装置があったばかりにケガがひどくなるというのはまれです。正しい歯並びでしっかりかめるようになることで、集中力や持続力、筋力や動体視力の向上につながることが、さまざまな研究で明らかになっている現在、スポーツをする上では、矯正治療を進めた方が良い場合が多いです。
 気を付けなければならないのは、実は運動系ではなく、吹奏楽部の場合です。矯正装置を付けていることで、まったく吹けなくなるということはないのですが、音に影響が出るからと矯正治療をあまりすすめない学校もあるので、事前に確認が必要です。矯正治療との両立を選択するなら、例えば、取り外しのできる矯正装置を使うなど、少しでも演奏に負担がかからないような治療方針を検討することも可能なのでご相談ください。

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