2006年11月22日水曜日

「インフルエンザ」について

ゲスト/秀愛会内科・消化器科クリニック 高梨 良秀 医師

インフルエンザと風邪の違いについて教えてください。

 風邪の場合は、のどの痛み、鼻汁、くしゃみや咳(せき)などが中心で、重症化することはめったにありません。インフルエンザの場合は、当然例外はありますが、代表的症状として38℃以上の発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛など全身に症状が現れ、さらにのどの痛み、鼻汁なども見られます。また、気管支炎、肺炎、熱性けいれんなどを併発し、重症化することがあるのも大きな特徴です。特に、乳幼児や高齢者など体力がない人、呼吸器や心臓などに慢性疾患を持つ人は重症化することが多いので、十分に注意する必要があります。
インフルエンザは流行性疾患で、例年11月~4月に流行しますが、昨年などは暖かくなってからも局地的に流行がありました。一度流行すると、健康な人から高齢者、乳幼児まで、瞬く間に感染が広まってしまうのも、インフルエンザの恐ろしいところです。

予防と治療について教えてください。

 インフルエンザ予防の基本は、流行前のワクチン接種です。特に、重症化しやすい高齢者や乳幼児、集団感染しやすい学生、休みづらい職場に勤務している人や受験生は、予防接種を受けておくといいでしょう。年末から1月~2月に流行することが多いので、年内に接種することをお勧めします。また、インフルエンザは、罹患(りかん)者の咳、くしゃみ、唾液(だえき)などの飛沫(ひまつ)とともに放出されたウイルスを、鼻腔(びくう)や気管など気道に吸入することによって感染します。インフルエンザの流行時には、高齢者や慢性疾患を持っている人は、混雑している所への外出を控えましょう。室内の空気を乾燥させないことも大切です。
 インフルエンザにかかったら、早めに医療機関を受診し、休養を充分とりましょう。インフルエンザウイルス治療薬の抗ウイルス薬は、症状が出はじめてからの時間や病状によって効果が異なりますので、医師の判断が必要です。発症から一般的に48時間以内に服用すると、通常、発熱期間は1~2日間に短縮され、ウイルス排せつ量も減少します。インフルエンザに罹患したら、家でゆっくり休むことが、周囲に感染を広めないためにも重要です。

2006年11月15日水曜日

「寝たきり防止は口腔(こうくう)機能向上で」について

ゲスト/石丸歯科 石丸 俊春 歯科医師

口腔機能と寝たきりの防止について教えてください。

 近ごろ、要介護になる原因として、「加齢に伴う生活機能の低下」が重要視されています。衰弱、転倒、骨折、認知症、関節疾患などの生活機能の低下を防ぐためには、「よくかめる歯や義歯を確保し、かむ筋肉を鍛える」「食べ物を好き嫌いなくバランス良く食べて体力を保つ」などの対策が必要です。今年の4月から65歳以上の高齢者を対象にした介護予防のサービスも受け付けられるようになりました。

生活機能改善策として、

1)運動器具による機能の向上
2)栄養改善
3)口腔機能改善
4)認知症、うつ、閉じこもり予防などが柱として挙げられています。
 ここでは、口腔機能改善について説明します。年齢にかかわらず、以下の点に心当たりのある人は注意が必要です。
1)最近硬いものが食べづらくなった。
2)お茶や汁物などでむせることがある。
3)口の渇きが気になる。
4)30秒間で唾液(だえき)を3回以上連続して飲み込めない(反復唾液嚥下(えんげ)テスト)。
5)急激な体重変動がある。

問題があった場合はどうしたら良いでしょう。

 65歳以上で生活機能の低下を感じる場合は、「地域包括支援センター」か「介護予防センター」で、「基本健康診査」を受け、介護予防サービスを受けることをお勧めします。

日常生活では以下の実行を。

1)口腔内を清潔に保つこと。これは上気道感染、肺炎の予防につながります。
具体的には、
a)歯磨き、義歯の手入れ、舌のブラッシング
b)ブクブクうがい、ガラガラうがい
c)ほお内側の粘膜のマッサージ、唾液腺のマッサージ
d)舌を上顎(あご)につけて、ポンと音を鳴らす(舌の動きを良くする)などです。
2)よくかむことを心がける。摂食や嚥下機能向上、認知症防止につながります。
3)会話、歌、笑いの機会を多くする。表情筋、呼吸機能が鍛えられます。

 口腔機能というと口の中の問題と考えがちですが、運動機能、栄養摂取、会話などと深く関係する大切な機能です。「元気な口腔機能」は健康で幸せな人生の大切な条件です。

2006年11月8日水曜日

「長引く咳(せき)とマイコプラズマ肺炎」について

ゲスト/大道内科・呼吸器科クリニック 大道 光秀 医師

激しい咳が長引く疾患について教えてください。

 長引く咳の原因としては、結核や気管支喘息(ぜんそく)、アトピー咳嗽(がいそう)のほかに、百日咳、マイコプラズマ肺炎、クラミジア肺炎などが考えられます。夜中や朝方に咳が多いのは、咳喘息やアトピー咳嗽、百日咳である可能性が強く、マイコプラズマ肺炎、クラミジア肺炎の場合は、通常1日中咳が出ます。
 百日咳は、通常2歳以下の幼児に頻発する病気ですが、最近、大人での急性あるいは長引く咳の原因として注目を集めています。夜中に多く、発作性で激しい連続性の咳に引き続き、吸気時にヒューと音がしたり、嘔吐(おうと)したりします。大人から子どもへの感染も懸念されます。
 クラミジア肺炎は、微生物であるクラミジア・ニューモニアに感染することによって発症します。発熱後に激しい咳が3~4週間続きます。
 どちらもきちんと治療すれば、予後は良好ですが、治癒するまで数週間かかります。また、体力のないお年寄りや乳幼児は重症化することもあるので、入院治療が必要になる場合もあります。百日咳、クラミジア肺炎の流行性は、そう大きくありません。

マイコプラズマ肺炎はどうですか。

 最近になって、感染者が増えているのはマイコプラズマ肺炎です。微生物であるマイコプラズマ・ニューモニアに感染することによって発症します。かつては4年ごとのオリンピックの年に流行するといわれていましたが、最近では毎年のように流行しています。発熱後に激しい咳が長く持続します。
レントゲンで、陰影が出る場合は、マイコプラズマ肺炎を推定できますが、出ない場合はマイコプラズマ感染による咳と咳喘息やアトピー咳嗽との鑑別が必要となります。血液検査でマイコプラズマ抗体が陽性であれば診断できますが、抗体が陽性化するのに1~2週間かかりますので、初診時には推定のみとなります。一般的な細菌性肺炎は、体力のない高齢者や乳幼児がかかりやすいのですが、マイコプラズマ肺炎は、健康な大人でも罹患(りかん)します。多くの細菌に有効で、頻用されているセフェム系抗生剤が無効で、マクロライド系やテトラサイクリン系、ニューキノロン系抗菌剤が有効です。
家庭内で子どもと大人、職場などで大人と大人間の感染が見られますので、「子どもの病気」「大人はかからない」と思い込まず、乾いた咳が長く続く場合は専門医を受診してください。一度治癒しても、再感染することがありますから、流行期には、手洗い、うがいを徹底しましょう。

2006年11月1日水曜日

「緊急避妊ピル」について

ゲスト/産科婦人科はしもとクリニック 桑原 道弥 医師

緊急避妊ピルについて教えてください。

 通常のピルは、低用量ピルを日々定期的に内服することによって排卵を抑制し、妊娠しないようにしますが、緊急避妊ピルは無防備な性交の後に中用量ピル(ドオルトンまたはプラノバール)を飲むことで妊娠しないようにします。無防備な性交とは避妊しなかった、避妊に失敗した、レイプされたなどです。モーニングアフターピルとも呼ばれ、性交の72時間以内にできるだけ早く中用量ピルを2錠内服し、その12時間後に再度同じ薬を2錠内服します。120時間までであれば避妊効果はあるようですが、その効果は減弱するようです。
 この避妊法は受精卵が着床してからでは効果はありませんから、避妊法として確実ではありません。無防備な性交の後に緊急避妊ピルを72時間以内に内服した場合の妊娠率は3%前後という報告があります。ただし、排卵周辺期(排卵5日前頃~排卵日)に限れば、妊娠の可能性を75%減らす程度との報告があります。

副作用はありますか?

 副作用として、最も多い症状が吐き気です。およそ半数の人に現れます。食後の内服や就寝時に牛乳などとともに内服することで発現率が減少します。そのほかに、倦怠(けんたい)感、下腹部痛、頭痛、嘔吐(おうと)、めまい、乳房緊満感などがあります。内服後2時間以内に嘔吐した場合は、できるだけ速やかにもう一度同量の薬を内服する必要があります。内服が困難な場合は膣内投与という方法もあります。2時間以上経過していれば薬は十分吸収されていますので、追加投与の必要はありません。
内服のタイミングによっては、排卵の遅延が起こることがあります。この場合、内服後に妊娠する可能性があります。避妊が成功した場合は、内服後早ければ3~4日、遅くても3週間以内に月経が起こりますので、それまでは他の方法で避妊をしてください。
内服後3週間たっても月経が来ない場合は、妊娠の可能性があります。妊娠してしまった場合に、緊急避妊ピルが胎児に悪影響を及ぼすという報告はありません。

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