2005年8月24日水曜日

「胃ポリープ」について

ゲスト/やまうち内科クリニック 山内 雅夫 医師

胃ポリープについて教えてください。

 胃ポリープとは胃内腔(ないくう)へ突出した隆起性病変の総称ですが、通常はがんを除いたものをいい、胃底線ポリープ、過形成ポリープ、胃腺腫の3種類に分類されます。
 胃底線ポリープは、胃の上部(食道側)から中部に見られる表面が平滑な小さな半球状のポリープで、正常な周囲の胃粘膜と同じ色調です。胃酸などを分泌する胃底線が増殖したもので、しばしば多発しますが、がん化することはありません。
 過形成ポリープは、半球または球形で、茎を有するものも見られます。赤色で、ときにはイチゴ状になることもあります。直径10mm以下のものが多いのですが、大きなもの、特に20mm以上のものになるとびらん、出血を伴い、まれにがん化していることがあります。
 胃腺腫はやや白っぽい扁平(へんぺい)隆起で、良性とがんの境界領域の病変です。大きいものでは腺腫の
一部ががん化していることがあり、注意が必要です。
 胃ポリープに特有の症状はありませんが、過形成ポリープと胃腺腫は、ヘリコバクター・ピロリ菌の感染による萎縮(いしゅく)性胃炎を有する胃粘膜にできるので、萎縮性胃炎の症状すなわち胃部不快感、腹満感などを伴うことがあります。萎縮性胃炎は、粘膜が薄くなり胃腺が働かなくなって粘膜が萎縮する疾患です。

胃ポリープの検査、治療について教えてください。

 胃内視鏡検査を行い、ポリープなどの病変の一部を採取することを生検といい、病変の全体を電気的に焼き切って採取することを内視鏡的ポリープ切除術(内視鏡的胃粘膜切除術)といいます。これらによって得られた検体を顕微鏡的に検索することによって、病変部の正確な診断が可能となります。一般的にはまず生検が行われ、その結果がんである、あるいはがんが疑わしいと診断された場合に、治療の意味合いも兼ねて内視鏡的ポリープ切除術が行われます。大きな過形成ポリープ、あるいは胃腺腫ではがん化の可能性がありますので、内視鏡的ポリープ切除術が望ましいと考えられています。胃ポリープに対し、薬物治療は通常行われていません。

2005年8月17日水曜日

「成人の歯科矯正治療」について

ゲスト/北大前矯正歯科クリニック 工藤 章修 歯科医師

成人の矯正治療について教えてください。

 現在、成人の矯正治療は少なくありません。噛(か)み合わせが悪い、骨がずれているなど、先天的な問題を抱えながら、子どものころに矯正治療を行う機会がなかった人もいます。また、歯槽膿漏(のうろう)、歯茎(ぐき)の炎症など、後天的な環境因子によって歯がずれる、顎(あご)がガタガタする、という問題を抱えることもあります。このような、機能的な問題を解消するために歯科矯正を行う人は、全体の2~3割。残りは、容貌(ようぼう)を整えたいという、審美的な面が動機になることが多いようです。
 矯正治療は、個人差はありますが、平均して2年から3年半の期間がかかりますから、期間や費用について、専門医と納得のいくまで話し合ってください。自分の歯の問題点と治療方法のほか、矯正後は顔の形が変わること(たいてい顔貌は改善します)もあるので、医学的見地から筋道を立てて説明してもらうのがよいでしょう。通院にかかる時間と仕事の両立、治療の継続が生活にどの程度影響するかなど、心配事をすべて解消してから、治療に臨むことをお勧めします。

矯正装置が目立つのではないかと心配なのですが。

 矯正装置は現在、装着時の違和感を与えないように、医療サイドからもさまざまな材質のものが提供されています。最も目立たないものは、インビジブル・ブレイス(舌側矯正装置)という、歯の裏側に装着する装置。しかし通常の装置に比べ、食べづらさ、話しづらさを訴える人もいます。歯の表側に装着するものでも、光の透過度が歯の色に近く、目立たない、審美的な矯正装置もあります。また、「見せて楽しもう」という逆転の発想で、カラフルな矯正装置を着ける人も増えています。数十色のパステルカラーから選べるものもあります。どの装置にも一長一短があるので、よく説明を受けたうえで、選ぶことが大切です。いずれの場合も、歯並びが良くなり、口元の美しさが出てくれば、矯正装置そのものは、それほど目立たなくなり、気にならなくなります。
 歯科矯正は、本人の満足感も大切です。歯並びで少しでも気になる点があれば、一度専門医に相談してみることをお勧めします。

2005年8月10日水曜日

「子宮筋腫」について

ゲスト/札幌東豊病院 黒木 勝円 医師

子宮筋腫について教えてください。

 子宮筋腫とは平滑筋と呼ばれる子宮の筋肉組織から発生する良性の腫瘍(しゅよう)で、成熟女性の3、4人に1人の割合で出現する極めて高頻度な疾患です。年代的には40代以上に多いのですが、20代でも珍しくありません。症状としては、過多月経、不正出血、それらによる貧血、時に月経困難などがあります。特に過多月経は粘膜下筋腫に顕著です。子宮筋腫があると、不妊や不育症の原因になることもあります。発生のメカニズムは、いまだに不明ですが、女性ホルモン(エストロゲン)がその発育に関係しているといわれています。
 筋腫は発生部位によって、漿膜(しょうまく)下筋腫、筋層内筋腫、粘膜下筋腫の3つに分けられます。不妊や不育症の原因になりやすいのが、子宮内腔に突出する粘膜下筋腫です。診断は問診、内診、超音波診断、場合によってMRI(磁気共鳴画像)などの検査を行って確定します。子宮筋腫と鑑別の必要な疾患としては、子宮腺筋症(子宮内膜症の一種)、充実性卵巣腫瘍、頻度は非常にまれですが悪性度の高い子宮肉腫などがあります。

子宮筋腫の治療方法について教えてください。

 筋腫の場所、大きさ、症状の有無・程度などによって治療方法は異なります。筋腫が小さく、症状もなければ、そのまま経過観察をする場合もあります。症状が軽ければ、筋腫を成長させるエストロゲンを人工的に止め、偽閉経状態にするホルモン療法を用いることもあります。筋腫による症状があったり、筋腫が不妊や不育症の原因になっている場合は手術を行います。かつては、妊娠希望のない場合は腹式あるいは膣(ちつ)式による子宮全摘出術、妊娠希望のある場合は腹式による子宮筋腫核出術が一般的でした。最近はそれに加え医療機器の進歩により子宮鏡や腹腔鏡による手術も行われてきています。特に粘膜下筋腫には子宮全摘出が一般的でしたが、レゼクトスコープという内視鏡によって筋腫だけを切り取る手術が主流になってきています。子宮筋腫はがんなどと違い悪性ではない分、大きさ、症状、妊娠の希望、年齢など総合的に考えて、治療方針を決める必要があります。納得できるまで主治医に相談することをお勧めします。

2005年8月3日水曜日

「動脈硬化を予防するために」について

ゲスト/大通り内科クリニック 小森 克俊 医師

動脈硬化について教えてください。

 動脈硬化は、日本人の3大死因のうち、がんを除く、脳血管障害と心疾患をもたらす病因の一つとなっています。そして、動脈硬化を起こしやすくする要因となるのは、糖尿病、高血圧、高脂血症などの生活習慣病です。それぞれの生活習慣病の程度は軽くても、これらのリスクをたくさん持っていると動脈硬化の危険性が高まります。近年、このような状態をメタボリック・シンドロームと呼ぶようになりました。2005年春には、日本内科学会など8つの学会が合同で日本のメタボリック・シンドロームの定義と診断基準を発表しました。欧米の診断基準との最大の違いは内臓脂肪の蓄積が必須条件となっていることです。ウエスト回り(一番細いところではなく、おヘソの部分)が、男性で85cm以上、女性で90cm以上。加えて、高中性脂肪血症、高血圧、糖尿病(予備軍を含む)のどれか2つ以上が当てはまれば、メタボリック・シンドロームと診断されます。

メタボリック・シンドロームと診断されたら、どのような点に注意すればいいですか。

 高脂血症、高血圧、糖尿病の中で、特に糖尿病は、ここ数年、日本で患者数が急増しています。糖尿病の主な原因は、食生活の欧米化による動物性脂肪の取り過ぎや運動不足です。健康維持には、糖質が60%程度、脂肪とタンパク質がそれぞれ20~25%程度の食事が理想的ですが、これは米や野菜、魚を中心とした一般的な和食の数値です。昔からこのような食事を続けてきた日本人は、欧米人に比べてすい臓から分泌されるインスリンの量が少なく、元来糖尿病になりやすい体質を受け継いでいるといえます。肥満、高血圧、甘いもの、アルコール、高脂肪の食事を好む人は予備軍の可能性があります。ただし、同じ生活をしても体質的に病気になる人とならない人がいるので、近親者に糖尿病患者がいる場合は要注意です。健康で長生きするためには、まず自分が予備軍かどうかを知ることが大切です。40歳を過ぎたら、年に1度は専門医の検査を受け、メタボリック・シンドロームと診断されたら、まずは食生活の改善と運動を心掛けましょう。

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