2005年5月25日水曜日

「ストレス」について

ゲスト/五稜会病院  千丈 雅徳 医師

ストレスについて教えてください。

 精神的緊張のことをストレスといいますが、その度合いは性格や環境など個々人の要素によって異なります。ストレスはささいなことでも感じます。身近な例としては、暖かい屋内から戸外に出て、寒いと感じることもストレスです。また、昇進や進学など、一般的には良いことと思われるようなことでも、本人にとってはプレッシャーが強く、ストレスになることもあります。精いっぱい頑張ってきたのに、環境の変化などでその枠組みが変わることによって、不安を増加させるからです。ストレスを感じた場合、それをどう解消していくかが大きな問題です。うまく解消できれば深刻になることはないのですが、感情を抑え込む状態が続くと、心の病に発展する可能性があります。
 これといった原因がなく、身体がだるい、疲れがとれない、眠れない、いらいらするといった症状の多くは、ストレスが引き金となっており、主に身体症状の場合は「心身症」、精神症状の場合は「うつ」となります。代表的な身体症状は、高血圧、慢性胃炎、神経性皮膚炎などで、高血圧から不整脈、狭心症、心筋梗塞(こうそく)などの循環器疾患、胃炎から胃潰瘍(かいよう)や十二指腸潰瘍といった消化器疾患を引き起こしてしまうこともあります。うつの症状は悪化すると自殺に直結する可能性があります。

ストレスとどう付き合えばいいのでしょうか。

 日ごろからストレスを受けたときに、家族や友人など信頼できる人に相談することができれば、古典的ですがもっとも効果的な解消方法です。身近に本心をさらけだして素直に感情表現できる場があれば、心身症やうつに至ることは少ないでしょう。
 心身症やうつに陥りやすい人は、きまじめな人、体裁を気にする人で、逆にずぼらな人、いい加減な人はなりづらい傾向にあります。しかし、ストレス社会といわれる現代、心身症やうつになる可能性は誰にでもあります。うつかどうかを本人が見極めることは難しいのですが、職場に行きたくない、寝付けない、酒量が増えた、意欲が無くなったなどと感じるようになったら注意が必要です。周囲が本人より先に兆候に気付くこともあるでしょう。そのような場合は、気軽に精神科医や心療内科医を受診してください。風邪などの疾病と同様に早くに適切な治療を受ければ、回復も早くなります。

2005年5月18日水曜日

「親知らず」について

ゲスト/さとうのりゆき歯科クリニック 佐藤範幸 歯科医師

親知らずについて教えてください。

 親知らずは、一番奥に生える第三大臼(きゅう)歯のことで、だいたいは18~20歳ぐらいで生えます。上下左右各一本ずつの4本が基本ですが、最近は一部欠損している人も多くなっています。人間の進化の方向を考えると、歯の本数は減る傾向にあります。また、現代人の顎(あご)は、咀嚼(そしゃく)回数が減ったため、退化してだんだん小さくなってきています。実は歯自体も小さくなる傾向にあるのですが、顎が小さくなるスピードには追いついていません。結果として、親知らずが生えるには、顎のスペースが不足しているという状態です。そのため、親知らずが正常に生えることが難しくなっています。骨の中に埋まったままだったり、傾いて前の歯を押し付けるように生えたり、横に寝てしまって一部分のみ顔を出していたり、あるいは正常に生えても磨きづらいために虫歯になりやすいのです。

親知らずは抜いたほうが良いのでしょうか。

 親知らずを抜いたほうが良い場合は、次の通りです。
 (1)親知らずによって食べ物が歯間に詰まりやすい
 (2)親知らずと歯ぐきの間にばい菌が入り込み、歯ぐきが炎症を起こす。
 (3)磨きづらいために虫歯になる。また、隣の第二大臼歯まで
    親知らずの影響で虫歯になってしまう。
 このような場合は抜歯をお勧めします。もちろん正常に生え、きちんと磨けて虫歯になっていなければそのままで構いません。親知らずを正常に維持できれば、ほかの大臼歯が虫歯などによって抜歯しなければならなくなった場合、移植歯として利用できます。抜いた歯の位置に親知らずを入れる方法で、歯根膜がある状態で自家口腔(こうくう)内の移植であるため、治療後の経過が比較的良好です。また、健康保険が適用になるので、インプラントなどの施術よりも費用面での負担が軽くなります。治療が可能かどうかは、歯や口腔内の状況によりますので、かかりつけの歯科医によく相談しましょう。親知らずによるトラブルが発生した場合は、早めに歯科医で治療することをお勧めします。抜歯する場合でも少しでも若く体力のあるうちに行ったほうが、予後が良好です。

2005年5月11日水曜日

尿管結石」について

ゲスト/芸術の森泌尿器科 斎藤  誠一 医師

尿管結石について教えてください。

 腎臓にできる結石は、戦後日本で急増した病気の一つです。働き盛りの壮年期男性では、およそ10人に1人の割合で発症します。ほとんどの場合、腎臓の中で結石ができ、尿管に落ちてきて尿管結石となります。症状は腰がだるくなったり、腰および側腹部の激痛、吐き気、血尿などです。
 治療としては、まず投薬などで痛みを止めることが優先されます。結石が尿とともに自然に体の外に出てしまえば問題ないのですが、排石されない場合は、処置が必要になります。ESWL(体外衝撃波砕石装置)や、内視鏡を用いた砕石を行うのが一般的です。厄介なことに、一度できた人の2人に1人は5年以内に再発する場合が多いです。

予防法を教えてください。

 第一に水分を十分取ってください。特に食事中と汗をかいた時です。食事以外に1日2リットルの水分摂取を目標にしてください。ただし、清涼飲料水やアルコールはよくありません。水、麦茶、ほうじ茶が適しています。第二は適度な運動です。結石は結晶から始まるので、尿が腎臓の中で停滞しないこと、もしできても小さなうちに出してしまうことが大切です。第三は食事です。原則はバランスの取れた食生活を送ることです。夜の食事を食べ過ぎたり、夕食後にすぐ寝たりするのもよくありません。動物性タンパク質も取り過ぎないように注意しましょう。
 結石の成分で一番多いのはシュウ酸カルシウムを主としたものです。ホウレンソウ、ダイコン、タケノコ、チョコレートなどシュウ酸を多く含む食品も控え、またこれらを食べるときは、牛乳、小魚などのカルシウムを同時に取りましょう。カルシウムは腸の中でシュウ酸と結合し、吸収を抑制します。逆に脂肪はカルシウムと結合し、シュウ酸を吸収しやすくするので控えたほうがいいでしょう。炭水化物である穀物や食物繊維は、結石予防に有効です。
 二番目に多い結石の成分は尿酸です。尿酸は痛風の原因にもなりますが、腎臓の結石も作りやすくします。尿酸の多く含まれている食物の取り過ぎが原因となります。アルコール類のほとんどは、酸性で尿酸が多く含まれます。飲むなら、適量のワインなどアルカリ性のものにしましょう。また腎臓の働きの悪い人にもできやすくなります。尿酸結石のできやすい人は動物性タンパク質を控え、野菜を多く取り、アルカリイオン水などで体をアルカリ性にもっていくことが理想的です。

2005年5月6日金曜日

「高血圧」について

ゲスト/北海道大野病院付属駅前クリニック 古口 健一郎 医師

高血圧について教えてください。

 自身が高血圧かどうかを知るためには、まず正確な血圧を測定することが必要です。血圧は常に変動しています。病院で測ると高めになってしまうという経験を持つ人は多いと思います。家庭でリラックスした状態で測定するのが、もっとも正しい数値に近くなりますが、それでも寝不足時やトイレの後では高めになります。朝起きてから朝食までの間、夕食後就寝までの間の朝晩2回測るといいでしょう。日本高血圧学会のガイドラインでは、65歳以上の場合、収縮期血圧140mmHg以上、または拡張期血圧90mmHg以上が高血圧ということになります。
 高血圧なのに、生活習慣を変えず、治療をおろそかにすると、心筋梗塞(こうそく)、脳梗塞などの重篤な合併症を招く危険性が高くなります。糖尿病や高コレステロール血症、高脂血症など生活習慣病を併発すると、いっそうリスクが高まります。高血圧であれば、医学的、科学的にコントロールすべきでしょう。

高血圧の治療について教えてください。

 高血圧の程度、患者さんの年齢にもよりますが、薬の服用の前に医師の指導のもとで、数カ月生活習慣を修正してみましょう。それでも血圧が正常にならない場合には、薬物療法になります。また日本人の高血圧症の特徴は、塩分過多な食事に現れています。一日に6g未満を目標に減塩を心掛けましょう。野菜や果物も積極的に摂取し、コレステロールや飽和脂肪酸の摂取を控えます。肥満も合併症誘発の大きな要因になります。「BMI=体重(kg)÷身長(m)の2乗」で25を超えないことが大切です。心血管病変がない高血圧患者であれば、毎日30分以上の有酸素運動を心掛けましょう。アルコールは適量にとどめ、タバコはやめましょう。
 これらを実行し、高齢者で140/90mmHg未満、中年・若年者で130/85mmHg未満、糖尿病・腎障害患者で130/80mmHg未満を目標とします。
 最近はテレビや雑誌などで「健康に良い」という食材や健康食品が取り上げられると、わっと飛びつく傾向が目に付きます。もちろん、自身に合えばいいのですが、合わないこともあるし、服用している薬品の効果を妨げることもあります。極端に走らず、主治医に相談することをお勧めします。

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