2004年4月28日水曜日

「糖尿病と生活習慣病」について

ゲスト/大通り内科クリニック 小森 克俊 医師

糖尿病と生活習慣病について教えてください。

 日本人の3大死因のうち、がんを除く、脳血管障害と心疾患は動脈硬化を基盤としている場合が多く、その原因となるのは、糖尿病、高血圧、高脂血症などの生活習慣病です。さらに喫煙やストレスなどの危険因子が加わると、生活習慣病の程度は軽くても、複合的に動脈硬化の危険性が高まります。中でも糖尿病患者はここ数年で急増し、1997年(平成9年)の調査では、糖尿病の疑いがある人は全国で690万人、糖尿病の可能性が否定できない人は680万人。2002年(平成14年)には、疑いがある人は740万人、可能性が否定できない人は880万人。予備軍を含めて患者数は5年間で250万人増えています。これは成人の6.3人に1人が糖尿病の危険を抱えている計算です。

予防法を紹介してください。

 糖尿病の主な原因は、食生活の欧米化による動物性脂肪の取り過ぎや運動不足です。健康維持には、糖質が60%程度、脂肪分とタンパク質がそれぞれ20~25%程度の食事が理想的ですが、これは米や野菜、魚を中心とした一般的な和食の数値です。昔からこのような食事を続けてきた日本人は、欧米人に比べてすい臓から分泌されるインスリンの量が少なく、元来糖尿病になりやすい体質を受け継いでいるといえます。肥満、高血圧、甘いもの、アルコール、高脂肪の食事を好む人は予備軍です。ただし、同じ生活をしても体質的に病気になる人とならない人がいるので、近親者に糖尿病患者がいる場合は要注意です。糖尿病を患うと、動脈硬化のほかに腎不全、網膜症、神経障害など合併症の危険もあります。アメリカでは、3千人の糖尿病予備軍に対するテストで、繊維質の多い食事と週に2.5時間の運動をした千人が、何もしなかった千人に比べて、糖尿病の発症率が50%以下だったという報告がなされています。薬を飲んだそのほかの千人の発症率はその中間の数値でした。健康で長生きするためには、まず自分が予備軍かどうかを知り、生活習慣を改善することが大切。40歳を過ぎたら、年に1度は専門医の検査を受けることをお勧めします。

2004年4月21日水曜日

「ドライアイ」について

ゲスト/大橋眼科 大橋勉 医師

ドライアイとは、どのような症状をいうのですか。

 文字通り「乾いた目」という意味で、目が乾くために生じるさまざまな症状の総称です。目が疲れやすい、乾いてしょぼしょぼする、日常的な目の痛みやかゆみなどがドライアイを原因とする場合もあります。また、症状が進行すると、乾いた目は刺激を受けやすくなり、風に吹かれただけでも痛くて涙が止まらないというケースもあります。重度になると、角膜の表面が傷ついて視力の低下を引き起こす危険もあります。はっきりとした原因はわかっていませんが、長時間にわたるコンピューターの利用でまばたきの回数が減ったこと、大気汚染や光化学スモッグが原因という説もあります。また、涙は副交感神経が優位の状態、つまりリラックスしている時に多く分泌されますが、ストレスで日常的に緊張状態を強いられ、リラックスできないことも、原因の1つと考えられています。さらに、現代人の涙の質が変化している、涙の量が少なくなったという報告もあります。涙の量を調べる「シルマーテスト」という検査では、100年前の正常値が15mmだったのに対し、現在は正常値が5mmまで減少しています。正常値を下回るとドライアイと診断されますが、現在、国内の推定患者は800万人ともいわれています。

予防法や治療法はありますか。

 まず、コンピューターの使用中は特に意識してまばたきの回数を増やすことが大切です。目が上向きにならないよう、コンピューターやテレビの画面を目線より少し下げたり、加湿器を常備するなど保湿を心掛けてください。また、目薬は防腐剤の入っているものと、入っていないものがあります。市販でも手に入りますので、薬局で相談してみるといいでしょう。症状が重く角膜障害を伴う場合は、涙の出口(涙点)にシリコン製のプラグを差し込んで、涙を目の表面にためる「涙点プラグ」という方法もあります。プラグ挿入に痛みは伴いません。また、涙の成分の大半が血液中に存在することを利用し、自分の血液から上澄み液を採取して点眼する「血清点眼」も、重度のドライアイに有効です。

2004年4月14日水曜日

「帯状疱疹(ほうしん)による痛み」について

ゲスト/札幌一条クリニック 後藤 康之 医師

帯状疱疹による痛みについて教えてください

 帯状疱疹とは、以前かかった水ぼうそうのウイルスが体内に残り、体力や免疫力が低下したときに活動を始めて発症するものです。本体は神経痛で、それに伴って胸からわき腹、背中、顔などに赤い発疹(ほっしん)が現れ、ピリピリとした痛みを感じます。化膿(かのう)させるなど、よほどの重症でなければ、発疹そのものは2~3週間程度で治りますが、痛みだけが残る場合も多く、服が触れても痛いという状態にまで慢性化することもあります。発疹の出方はさまざまで、自己判断は難しく、痛みだけを感じて「運動による筋肉痛か」などと放っておくうちに悪化することもあります。背中など自分では見えにくい場所に出ることも多いので、注意が必要です。発疹が消えてから「いくら検査をしても悪い所が見つからない」「どんな病院を受診したらよいかわからない」と困惑している人も少なくありません。痛いと思ったら我慢せず、すぐに痛みの専門医を訪ねてください。発症から3カ月を過ぎると、治療にも時間が掛かります。

痛みをとるために、どのような治療をするのでしょう。

 まず、抗ウイルス剤を点滴あるいは薬で投与します。これは皮膚科や内科でも行われます。痛みが治まらない場合は、注射で局所麻酔薬などを神経周辺に入れて、神経の働きを止める神経ブロック療法を行います。血流を促進し、痛みを発する物質を押し流すレーザー治療や、鎮痛剤などを併用することもあります。ペインクリニックでは、痛みを緩和しながら、痛みの原因を探ることを重要視しています。帯状疱疹の場合は、体力や免疫力がなぜ低下したかを知ることが大切です。もともと糖尿病やがんなどで通院中という方もいますし、帯状疱疹をきっかけに検査をして、ほかの病気が見つかることもあります。また、精神的なストレスが原因ということも少なくありません。痛みは本人にとって大変つらいものです。痛くて食べられない、眠れないというストレスがいっそう体力を低下させます。ペインクリニックは、痛みを緩和し、患者の生活の質を上げるのが役割です。

2004年4月7日水曜日

「ピロリ菌」について

ゲスト/やまうち内科クリニック 山内雅夫 医師

ピロリ菌について教えてください。

 正式にはヘリコバクター・ピロリという胃粘膜に住む細菌です。胃酸により強い酸性となっている胃の中では、細菌が生存できないと考えられていたために発見が遅れ、1983年に初めて報告されました。ピロリ菌はアンモニアを産生し、胃酸を中和して胃の中で生存することができます。予防方法は明らかにされていませんが、感染経路は経口感染とされ、衛生状態の悪い国や地域で感染率が高いことがわかっています。日本では中高年層の感染率が高く、40歳以上の約80%が感染しています。ピロリ菌は胃・十二指腸潰瘍(かいよう)、慢性胃炎および胃がんの主な原因であることがわかっています。感染イコール胃潰瘍というわけではありませんが、ストレスや喫煙、アルコールやカフェインの過剰摂取、鎮痛剤の服用などさまざまな要因が重なると、胃・十二指腸潰瘍が発症する危険が高くなります。また、ほとんどの胃がんが、ピロリ菌によって引き起こされた高度の慢性胃炎を発生母地とすることも明らかになってきています。

ピロリ菌を除菌する方法はありますか。

 数年前まで胃・十二指腸潰瘍の治療は、胃酸の分泌を抑えるH2ブロッカーの投与が一般的でしたが、再発率が高く、そのたびに再治療が必要でした。しかし潰瘍の主な原因がピロリ菌と判明してからは、2種類の抗生剤を1週間内服し、さらにH2ブロッカーより強力に胃酸の分泌を抑えるプロトンポンプ・インヒビターを併用する除菌療法が行われるようになり、大部分の再発を防ぐことができるようになりました。もっともピロリ菌が関与していない胃・十二指腸潰瘍の場合は、除菌療法は対象外です。ピロリ菌感染の有無は、内視鏡検査で胃粘膜を採取して調べる方法のほか、尿素呼気試験、血清抗体測定、便中の抗原測定などがあり、比較的簡単にわかります。なお近年、胃・十二指腸潰瘍を有しない高度の慢性胃炎に対しても、胃がん予防の見地から除菌療法が必要という意見が有力になってきていますが、日本ではまだ保険診療が認められていません。

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