2021年3月24日水曜日

最新の糖尿病治療

 ゲスト/医療法人社団 青木内科クリニック 青木 伸 院長


最新の糖尿病治療薬について教えてください。

 糖尿病治療薬の最近の進歩は目覚ましいものがあります。飲み薬では、高血糖の時にだけすい臓からインスリンを分泌させ、正常血糖値へ下げる「DPP-4阻害薬」があります。この薬は、理論的には低血糖を起こさず治療できる薬剤で、糖尿病の平均血糖の指標であるHbA1c値を1.0%前後下げます。この薬と同じ系統の注射薬も登場し、「GLP-1受容体作動薬」と呼ばれています。この注射薬はHbA1c値を1.6%前後下げます。1日1回の注射が必要ですが、現在は1週間に1回で済む注射薬も出ました。この系統の注射薬は、すい臓のインスリンを出す細胞を保護し、インスリンの分泌を弱らせない作用も持ち合わせているといわれています。従来まで体重を減少させる糖尿病薬がありませんでしたが、「SGLT-2阻害薬」が登場し、この薬剤は血糖値を下げると同時に体重も減らします。最近の研究データ結果によると、この種の薬剤は、心血管系の心不全の出現を抑える働きと糖尿病性腎臓病を良くする働きを持ち合わせていることが判明してきています。

 一方、インスリン注射に目を向けると、「持効型インスリン(1回の注射で24時間効果を持続する長時間作用型インスリン)」があります。飲み薬の治療が効かなくなる症例でも、飲み薬をそのまま服用しながら、1日1回の持効型インスリンの注射を加えると血糖値が改善する症例もあります。「混合型インスリン」は従来まで濁った製剤でしたが、透明な製剤が登場し、10回以上振って混合しなくても済むようになりました。

 さらに、持効型インスリンと前述したGLP-1受容体作動薬の配合剤が登場し、1回の注射で空腹時血糖と食後血糖を下げる効果があります。

糖尿病の治療について教えてください。

 糖尿病の治療状況が良好といえる目安は、HbA1cが7.0%以下になっている場合です。糖尿病の患者さんの約半数が、高血圧と脂質異常症(高脂血症)を合併しているといわれています。糖尿病を合併した高血圧の治療はとても重要で、血圧の治療目標値は125/75mmHg以下です。自宅で測定できる血圧計を治療に役立てる方法もあります。この場合使用する測定器は、指先や手首に巻くタイプのものではなく、上腕に巻くタイプのものをお勧めします。脂質異常症の治療目標値は、LDL-コレステロール(悪玉コレステロール)が120mg/dl以下です。糖尿病に重症の虚血性心疾患、腎疾患、脳梗塞、下肢動脈閉塞、メタボを合併している場合には、LDL-コレステロールは70mg/dl以下と治療の基準値が厳しくなりました。

 以上のようなさまざまな基準値を長期間保てると、眼底出血による失明、腎臓の悪化による透析、足の潰瘍・壊疽(えそ)による足の切断など、糖尿病に由来する重症の合併症にならなくて済みます。それ以外にも脳梗塞、心筋梗塞などの予防にもつながります。

2021年3月17日水曜日

白内障

 ゲスト/月寒すがわら眼科 菅原 敦史 院長


白内障とはどんな病気ですか。

 白内障は、目の中の水晶体という部分が白く濁って見えにくくなる病気です。水晶体を通る光が濁りによって妨げられて、物がかすんで見えたり、光をまぶしく感じたりします。症状は急に起こるのではなく、少しずつ見えづらくなっていくので、進行するまで気付かないことが多いです。

 白内障の原因の大半は加齢に伴うもので、早い人では40歳代に発症します。50歳、60歳と年代が上がるにつれ罹患率は増え、80歳代ではほぼ100%がかかるとされています。

治療について教えてください。

 初期の白内障は点眼薬で進行を遅らせることができますが、濁った水晶体を元に戻すことはできません。進行した白内障には手術が行われます。手術では眼球に2.4mm程度の極めて小さい切開を行い、超音波によって水晶体を細かく砕いて取り除きます。代わりに、人工の水晶体である「眼内レンズ」を挿入します。局所麻酔を使用するため手術中の痛みはほとんどありません。手術は10~15分で終了し、最近は日帰りでの手術が主流になっています。

 眼内レンズは1つの距離に焦点を合わせた「単焦点眼内レンズ」が使われていますが、近年では、遠距離と近距離の2点に焦点が合うように設計された「多焦点眼内レンズ(自費診療)」も一般的になってきました。それぞれのレンズの特徴をよく理解した上で、医師とじっくり相談しながら比較し、価格面も含め自身のライフスタイルに合わせて納得してから治療を受けることが大切です。

 70歳以上の方が運転免許を更新するには、その数か月前に高齢者講習を受講することが必要です。講習には視力検査を含む運転適性検査があります。講習の時点で視力が足りなくても直ちに免許証を取り上げられることはありませんが、その後の免許更新時の視力検査に合格できなければ、免許が取り消しになることもあります。超高齢化社会を迎えたわが国では、白内障に罹患する人口が激増しており、手術を希望されても1カ月〜数カ月待ちになる場合も少なくありません。白内障が原因で視力が落ちているときは、講習や更新に間に合うよう手術の予定を入れる必要があるので、早めに眼科を受診して自分の目の状態を把握しておくことが重要です。


2021年3月10日水曜日

コロナ禍のメンタルヘルス

 ゲスト/医療法人北仁会 いしばし病院 内田 啓仁 医師


コロナ禍でメンタルヘルス(心の健康)不調やうつ病は増加しましたか。

 新型コロナウイルスの感染拡大が問題となる中、外出自粛や休校、在宅勤務などによって社会環境は大きく変わりました。こうした変化と感染に対する不安にストレスを感じている人も少なくないと思います。実際に「コロナうつ」という言葉が生まれるなど、世界でメンタルヘルスの不調やうつ病の兆候を示す人が増えています。

 また、通常時でも秋から冬にかけては気分が落ち込む人が増えます。日照時間が短くなる季節に繰り返して生じるうつ症状の一種で、「冬季うつ病」「季節性感情障害」と呼ばれています。新型コロナの影響が長期化しているので、今まで持ちこたえていた人が息切れしてしまう懸念もあります。


心の不調を防いだり、「コロナうつ」に備えたりするにはどうしたらいいですか。

 まず、新型コロナに対しては「正しく恐れる」心構えを持つことです。徐々に対策や治療方法が明らかになっています。手洗いやうがいをすること、三密を避けることなどの対策によって感染リスクを下げられます。重症化するケースはしないケースよりはるかに少ないことも理解しておきましょう。

 身体的健康は、心の健康に直結します。規則正しい生活を送ることが何よりも重要です。食事、睡眠などの生活リズムを整え、少しでも運動をすることが大事です。毎日、同じ時刻に起きて窓際などで日光を浴びましょう。朝食を食べ、しっかりと目を覚ましてください。日中も意識して体を動かしましょう。自宅でのストレッチや体操、人混みを避けての散歩やウォーキングをお勧めします。また、心身をリラックスさせるのに有効なのが「腹式呼吸」です。背筋を伸ばして胸を軽く開き、鼻からゆっくりと息を吐いていきましょう。お腹の中の空気をすべて出すイメージで、おなかがへこむまで吐き切ります。非日常の生活に対応していくためには、心身を整える時間を意識的に持つよう心掛けることが大切です。孤独もストレスや心の不調の原因の一つです。友人や大切な人と電話、メール、SNSを利用して連絡を取り合ったり、オンラインでの集まりなど、“人とのつながり”を保ち、“笑う時間”や“楽しい時間”をつくることも考えましょう。

 日常生活に支障が出るほどの辛さ、苦しさを感じたり、不眠症状が現れたりする時は、精神科・心療内科を受診して相談してみてください。


2021年3月3日水曜日

肩こり

 ゲスト/医療法人社団 二樹会 足立外科・整形外科クリニック 加谷 光規 副院長


肩こりについて教えてください。

 肩こりに悩む人は多く、厚労省の国民生活基礎調査によれば、女性の不調の第1位、男性の第2位を占めています。肩こりの症状は肩や首筋の凝りや張り、痛みだけではありません。頭痛やめまい、吐き気、目の疲れ、手や腕のしびれなどの多様な症状も起こります。

  肩こりを起こす最大の原因は、悪い姿勢や体を動かさないこと、また、不自然な体の動かし方や使い方などによる筋肉の緊張です。首から肩、背中にかけての筋肉が強く緊張して血流が悪くなり、疲労物質がたまって攣縮(れんしゅく=ひきつり縮まること)した状態と考えられます。例えば、仕事や家事をしているときの姿勢がよくないなど、日々の暮らしの中で無意識のうちに肩こりの原因をつくり出しているのかもしれません。

 肩こりには、頸椎ヘルニアや心筋梗塞、がんなどの病気が潜むこともあります。運動時や労作時に痛くなる、徐々に症状がひどくなる、手足がしびれるなどがあれば、整形外科できちんと診察を受けることが大切です。


肩こりの治療について教えてください。

 診察では、まずは整形外科的な原因なのか、内科など他科の原因の可能性が高いのかを慎重に見極め、それぞれに応じた治療を選択します。

 治療は、消炎鎮痛剤などの投薬治療、牽引機器や温熱機器などを使う物理療法、姿勢矯正用のベルトなどを用いる装具療法があります。症状が強い場合や即効性を期待する場合、各種の「神経ブロック」や、超音波検査機器を用いて肩甲骨周囲の筋肉の間の筋膜部分に、生理食塩水などを注射し、筋膜間の滑りをよくして症状を改善する「筋膜リリース」という注射療法を行うこともあります。また、理学療法士が、患者さん一人ひとりの肩の状態に合わせて、肩周囲に対する筋トレ、リラックス・ストレッチ法などを指導する運動療法も重要です。

 肩こりの原因は多岐にわたります。肩周囲だけではなく、全身を診て、正しい姿勢を身に付けたり、首や肩の筋肉への負担を減らしたりするなど、凝りや痛みの原因となっている(予想される)根本の部分を治していく必要があります。

 筋肉の緊張による疲労、攣縮は、肩こりだけでなく、背中や腰、肘、臀部の痛みや違和感の原因となっているケースも少なくないので、慢性的な痛みが取れず悩んでいる方は一度、専門医にご相談ください。