2022年8月11日木曜日

苦痛の少ない内視鏡検査

やまうち内科クリニック 山内 雅夫 院長

―胃内視鏡検査、大腸内視鏡検査について教えてください。

 これまで、胃内視鏡検査は口から入れる経口内視鏡を用いるのが一般的でした。しかし、最近は「経鼻内視鏡検査」という鼻から挿入する方法で検査が行われることも増えてきました。経鼻内視鏡は以前からありましたが、近年は著しく性能が良くなり、導入する医療機関が急増しています。

 経鼻内視鏡は弾力性のあるしなやかなチューブで、直径は5mm台と一般的な経口内視鏡に比べて細く、スムーズに挿入することができます。画像もクリアな高画質で、視野が広く、ごく小さな病変も発見することが可能です。

 経口内視鏡は挿入時、舌の付け根の舌根という部分に内視鏡が触れることで、検査の最中に「オエッ」という吐き気をもよおすことがあるなど、患者さん の負担が大きかったのですが、経鼻内視鏡では鼻から挿入した内視鏡は鼻腔(びくう)を通って食道に入るため、嘔吐(おうと)感や痛みがほとんどありません。また、検査中に医師と会話できることも、患者さんと医師双方にとって大きなメリットになっています。

 大腸内視鏡というと、どうしても辛く苦しい検査を想像してしまう方が多いと思いますが、こちらも器具や技術の進歩により、従来に比べて検査は楽になってきています。多少の圧迫感はあっても、痛みを抑えて検査を終えることができます。また、鎮痛剤を用いることで、眠っている間に治療が終わるケースもあるようです。

―内視鏡検査を受けるべき年齢や頻度について教えてください。

 大腸がんのリスクが高くなる40代以上は、胃がんのリスクが高くなる年代でもあります。「検査が怖い」「以前すごくきつかった」など、大腸や胃の内視鏡検査を苦手とするために、がんなど重篤な病気の発見が遅れてしまう例も少なくありません。がんや潰瘍など、食道や胃、十二指腸、大腸、小腸などの疾患は、早期発見・早期治療が完治への近道です。そのためには、定期的な検査が重要です。

 それぞれの内視鏡検査を受けるのに適切な時期や間隔は、病歴・経過や家族や近親者の病歴などにより個人差はありますが、基本的には40歳になったら「まずは一度」、50歳代以降では1年〜数年ごとに検査されることをお勧めします。

2022年8月4日木曜日

新型コロナ感染・療養後の長引く咳(せき)について

 ゲスト/白石内科クリニック 干野 英明 院長


新型コロナウイルス感染症の療養後も咳(せき)症状が残っている場合、どのような病気が疑われますか。

 新型コロナウイルス感染症の症状は、咳のほか、発熱や倦怠感、咽頭(いんとう)痛などさまざまなものがあります。熱が下がり、のどの痛みなどもおさまり、体調が回復したと思っても、咳だけが残る場合があります。「コロナ後遺症」の可能性も考えられますが、コロナ感染・療養後に長引いている咳は、肺に通じる気道に炎症が起こる「ぜんそく」やその前段階とされる「咳ぜんそく」が疑われます。

 ぜんそくや咳ぜんそくの咳は、●季節の変わり目に咳が出る ●痰(たん)が少なく、乾いた咳が出る ●夜寝る前や早朝に咳が出る ●のどがイガイガしたりムズムズしたりする、といった特徴があります。ハウスダストや花粉、カビなどのアレルギー物質が原因となることが多く、小児ぜんそくの既往がある方やアレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎を持っている方がかかりやすいです。初期段階では、昼間は落ち着いていても、寝ている夜間や明け方に激しくせき込み、呼吸時に「ゼーゼー」「ヒューヒュー」といった音がする喘鳴(ぜんめい)が起こることが多いです。

 タバコを吸う方であれば、主に喫煙が原因で、気道が閉塞して呼吸機能が低下する「COPD(慢性閉塞性肺疾患)」も疑われます。


検査や治療について教えてください。

 咳が1週間以上続く場合、まず胸部レントゲン検査を行います。異常が認められると、精密検査として胸部CT検査を行うのが一般的です。ぜんそくやCOPDの診断には、息を思いっきり吸ったところから勢いよく吐き出し、その1秒間に吐いた量を評価する肺機能検査が有用ですが、息を吐き出す時に飛沫が飛ぶ可能性があるため、コロナ禍ではなかなか行いづらくなっています。そこで、肺機能検査に準ずるものとして、患者さんからの症状の聞き取りや患者さんに回答してもらう質問票が重要になります。

 ぜんそく、咳ぜんそくの治療は、一般的な咳止めの薬では症状の改善がなかなか難しく、吸入ステロイドや気管支拡張剤などを使います。何よりも重要なのは、治療していく中で咳症状が落ち着いてきても、自己判断で治療を中断しないことです。気管支内の炎症は長く残ることが多いので、一定期間、決められた吸入回数で継続した治療を行うことが大切です。

 COPDと診断された場合も、狭くなった気管支を拡げて呼吸を楽にする吸入薬を使います。ぜんそく同様、継続的な治療が必要です。また、症状を悪化させないためにも禁煙が治療の前提となります。

2022年7月27日水曜日

噛(か)むことについて

 ゲスト/E-line矯正歯科 上野 拓郎 院長


近年、子どもたちの噛む力が弱くなっているといわれています。「よく噛むこと」はなぜ大事なのですか。

 噛まなければ飲み込めないような食べ物が多かった昔と違い、やわらかい食べ物があふれる現代。カレーライスやハンバーグ、麺類など、よく噛まなくてもすぐに咀嚼(そしゃく)でき、飲み込めるようなメニューが食生活の中心になり、子どもたちの噛む回数は減っています。

 診療で長年子どもの歯をみてきた実感として、乳歯の時期から「よく噛んで食べる」習慣が身に付けられていないため、歯や歯を支える歯肉、歯槽骨、歯根膜などの成長が滞ったり、また、顎(あご)の骨や口周りの筋肉が十分に発達せず、歯並びに悪影響を及ぼしてしまうケースが増えています。口腔の健全な発育には、幼少期から噛む力を鍛えることが非常に重要なのです。

 よく噛むことのメリットは驚くほど多いです。顎の骨や口周りの筋肉の正しい成長を促すことのほか、食べ物をよく噛むことで出るだ液は、消化を助けることはもちろん、口の中をきれいにする作用もあり、むし歯や歯周病、口臭の予防にもひと役買います。噛むことで脳の満腹中枢が刺激され、早食いや食べ過ぎを抑えて肥満予防にもつながります。ほかにも、近年さまざまな研究からよく噛むことで脳のいろいろな部分が刺激され、脳を活性化させることが分かってきています。


噛む力を鍛えるには、どうしたらいいですか。

 まず、きちんと噛めるかみ合わせであることが重要です。常に上下の前歯が開いている開咬(かいこう)では前歯で噛み切ることができませんし、極端な上顎(がく)前突(出っ歯)や下顎前突(受け口)でもスムーズに噛めません。

 日常生活の中では、食物繊維が豊富な歯ごたえのある食材を選ぶなど、かみごたえのある食べ物を意識してメニューを考えてください。食材を大きく切ったり、薄味にしたりするなど調理法を工夫することで、噛む回数を増やすことができます。また、食べ物が口の中に入っている時に水やお茶で流し込んでしまうと、噛む回数が極端に減ってしまうので注意が必要です。遊びながらやテレビを観ながらの「ながら食べ」は、噛まずに飲み込む要因にもなるのでお勧めできません。

 楽しく食事できる雰囲気づくりも大切です。家族で、ゆっくり味わいながら食事をし、楽しみながらよく噛む習慣を身に付けさせてあげてください。

2022年7月20日水曜日

スーパーセンチナリアン

 ゲスト/琴似駅前内科クリニック 髙柳 典弘 院長


「スーパーセンチナリアン」とは、どのような人たちを指す言葉ですか?

 100歳以上の長寿者を「百寿者(センチナリアン)」、110歳以上を「スーパーセンチナリアン」と呼び、その人たちの特徴を知ることが、老いにくく元気に生きる健康長寿のモデルやヒントになると注目されています。

 近年、世界的な長寿化を背景に、100歳以上の高齢者の人口は急速に増加しています。老人福祉法が制定された1963年当時、日本の百寿者は153人でしたが、2021年の統計では8万人を超え、51年連続で過去最多を更新しています。ただ、世界的な長寿国である日本においても、20年の国勢調査で日本のスーパーセンチナリアンは141人で、いまだ希少な存在です。19年の世界のスーパーセンチナリアンのランキングデータでは、上位34人がすべて女性で、驚くことにそのうち14人が日本人でした。


スーパーセンチナリアンは、どうして元気で長生きできるのでしょうか?

 スーパーセンチナリアンの最大の特徴は、100歳時点でも日常生活の自立が保たれており、百寿者の中でも特に健康寿命が長いことにあります。一般的に、老化に伴って免疫力が低下してくると、がんや感染症などのリスクが高まりますが、スーパーセンチナリアンは免疫システムの司令塔役「T細胞」の構成が50~80歳と比べて大きく変化しており、がん細胞などを殺す「CD8陽性キラーT細胞」が多く含まれ、また、通常は血液中に数%しか存在しない「CD4陽性キラーT細胞」が高い割合で含まれていることが明らかになっています。なぜ多いのかや、どのような働きをしているか詳細はまだ不明ですが、免疫と老化、長寿の関係が分かれば、健康寿命を延ばすことに貢献できると研究が進められています。

 また、血液バイオマーカーを調べた結果、「NT-proBNP(神経内分泌因子)」の血中濃度が低いほどスーパーセンチナリアンに到達する可能性が高いことも分かっています。NT-proBNPは心不全の診断にも使われるもので、心臓の働きが悪くなると数値が上がってきます。つまり、スーパーセンチナリアンは心臓や血管の老化が遅いのも特徴です。ランニングや水泳などの運動を継続することがNT-proBNPを低く抑え、心機能の維持につながることが分かっています。意識して適度な運動を日常生活に取り入れることで健康長寿を期待できることは確実です。

2022年7月13日水曜日

胸部健診・肺がん検診の精密検査について

 ゲスト/医療法人社団 大道内科・呼吸器科クリニック 北田 順也 副院長


胸部レントゲン検査で異常を指摘されましたが、どうしたらいいですか。

 健康診断や肺がん検診の胸部レントゲン検査で「要精密検査」の判定を受け、いったい何が起こっているのか、自分はどうなってしまうのかと不安な気持ちになった方もいらっしゃると思います。

 レントゲン検査は立体的な人間の体を1枚の平面画像として写します。正常であれば左右の肺の部分が黒く写り、背骨や鎖骨、肋骨、血管や皮膚が白く写ります。このような黒と白のコントラストから病気の有無を判定していきますが(専門的には読影(どくえい)と言います)、肺の中の白い影が病気によるものか、正常の骨や皮膚による影なのか判断が難しいケースも出てきます。

 健診やがん検診で最も避けなければならないのは、病気があるのに見逃すということです。そのため、レントゲン写真で少しでも異常と思われる所見があれば、基本的には「要精密検査」と判定します。したがって、実際に精密検査を受けて詳しく調べた結果、最終的に「異常なし」と診断されるケースも多くあります。また、実際に病気が見つかることもありますが、健診やがん検診の段階で発見される場合、たとえ肺がんであっても治癒が見込める“早期”の可能性も十分にあります。

 精密検査が必要とされた方の中には、多忙を理由にしたり、恐怖心から受診をしない方もいらっしゃいますが、絶対に放置しないでください。過度な心配は必要ありませんが、ためらわず、できるだけ早く受診してほしいと思います。


精密検査では、どのような検査が行われますか。

 精密検査では病変や異常の有無の確度を高めるため、多くは胸部レントゲン写真の再検査のほか、「胸部CT検査」を行います。

 胸部CT検査は、体を細かく輪切りにして撮影する検査で、肺の断面図を見ることができます。断面図なので、レントゲン写真で見えた肺の中の白い影が、骨や血管などによる影なのか、病気による異常な影なのかを、ほぼ確実に見分けることができます。胸部レントゲン検査に比べ、病気を発見する精度は胸部CT検査の方が高いです。一方、CT検査はレントゲン検査に比べると用いる放射線の量は多くなります。被ばく量を考慮し、CT検査を躊躇する方も少なくないと思いますが、最近は被ばく量を抑えた「低線量CT」で検査を行っているところも増えているので、心配な方は医療機関に直接問い合わせてください。