<アトピー性皮膚炎について教えてください>
アトピー性皮膚炎は、元来のアレルギーを起こしやすい体質と環境要因(花粉、乾燥、ストレスなど)が相まって肌のバリア機能が低下することで起こり、症状が良くなったり悪くなったりを繰り返す皮膚疾患です。
アトピー性皮膚炎は、元来のアレルギーを起こしやすい体質と環境要因(花粉、乾燥、ストレスなど)が相まって肌のバリア機能が低下することで起こり、症状が良くなったり悪くなったりを繰り返す皮膚疾患です。
気温が上がり、じめじめしてくると増える水虫。水虫は、白癬(はくせん)菌というカビの一種である真菌によって皮膚に起こる感染症のうち、足の皮膚や爪にできるものを指します。症状は、足の指の間がふやけて皮がむけたり、足の裏にかゆみを伴う小さな水膨れができたりするほか、足の裏全体が硬くなって、深いしわができたりひび割れたり、また、爪に感染すると爪が白濁して分厚くなったりすることもあります。
韓国やフランスなどでの大量発生が報道され、注目を集めているトコジラミ。社会問題となり、国を挙げて駆除対策に乗り出しているようです。
トコジラミは、実はシラミではなくカメムシの仲間です。南京虫(ナンキンムシ)とも呼ばれます。茶褐色で羽がなく、成虫は5ミリほどです。主に夜間に寝ている人の血を吸います。刺されると、激しいかゆみを伴う発疹を引き起こします。
<赤ら顔の原因について教えてください>
いわゆる赤ら顔にはいくつかの種類と原因があります。生来からの赤ら顔、顔の皮脂の多い部分に生じる「脂漏性皮膚炎」、アレルギー体質と皮膚のバリア機能低下などを伴い生じる「アトピー性皮膚炎」、「ニキビ〈尋常性ざ瘡(そう)〉」、「化粧品などによるかぶれ〈接触性皮膚〉」などが考えられます。
宮の森スキンケア診療室 上林 淑人 院長
「紫外線の怖さと紫外線対策について教えてください」
晴天の日は、日差しの強さを感じる季節になってきました。そこで、気になるのが紫外線です。日焼けや皮膚炎の原因となる紫外線は、波長の長さによってUV-AとUV-Bに分かれます。UV-Bは、皮膚の浅いところに作用し、赤く炎症を起こしたりシミの原因となったりします。長期的には皮膚がん発生のリスクを高めます。UV-Aは、皮膚を黒くし、皮膚の深く真皮にまで作用しシワやたるみの原因となります。
宮の森スキンケア診療室 上林 淑人 院長
あせもについて教えてください
汗は汗腺という組織で分泌され、汗管という通路を通って皮膚の表面に出てきます。汗管を通ることのできる汗の量はある程度決まっており、通りきらない量の汗をかくと汗が詰まって皮膚内に取り残されます。皮膚のやや深い所(表皮内)で汗が詰まると、汗の刺激で炎症が起こり、強いかゆみを伴う赤い発疹が生じます。これを「紅色汗疹(こうしょくかんしん)」と言って、あせもの一種です。額や首の周り、胸、背中など汗をかきやすく、蒸れやすい部位に現れます。
汗の詰まりが皮膚の表面近く(角層)で起きると、直径数ミリの透明な水膨れがポツポツと現れます。これがいわゆるあせもで、正式には「水晶性汗疹」といいます。水晶性汗疹は、かゆみの症状がなく、数日で自然に消えてしまうことがほとんどで、特に治療の必要はありません。
あせもと聞くと、汗をかく機会が増える夏の病気だと思われがちですが、実は冬にも多い肌トラブルです。厳しい寒さやウォームビズの実施などで、冬場は厚着になりますが、暖房の効いた学校や職場、電車など意外と暖かくて汗をかいてしまうことが多いからです。
冬場のあせも対策と、治療について教えてください
汗を小まめに拭き取り、皮膚を清潔に保つことが大切です。汗を吸収・蒸発させやすい綿素材の肌着を着るのも効果的です。一方、熱を発生させる効果のある機能性肌着(ヒートインナー)は、場合によっては余計に汗をかき、また汗の吸収が悪く、肌と衣類との間が蒸れやすいので、汗をかきやすい人は避けた方がいいでしょう。
特に注意が必要なのは乳幼児です。乳幼児の肌は、乾燥しやすく、刺激に敏感で、汗をかきやすいという特徴があります。風邪をひかせないようにと暖房を強めに設定し、暖かい服をしっかりと着込ませることが、結果として、乾燥して敏感になっている赤ちゃんの肌に汗の刺激が加わりあせもが発症するケースが目立ちます。暑すぎない程度に暖房を抑え、必要以上に厚着・重ね着させないことが大切です。
あせもの治療は、ステロイド外用薬など炎症を抑える塗り薬が主体となります。かゆみを我慢できず、思わずかきむしってしまい重症化するなど、症状が長引くケースも多く見られます。たかがあせもと侮らず、症状の軽いうちに、しっかりと治療を行うことが重要です。
ゲスト/宮の森スキンケア診療室 上林 淑人 院長
脂漏性皮膚炎とはどのような病気ですか。
鼻や耳の周囲、おでこや頭皮など体の中で皮脂の多い場所(脂漏部位)に起こる皮膚炎です。皮膚が赤くかさついて剥がれたりかゆみを伴ったりします。頭皮ではフケが多くなり、かゆみを伴うことが多いです。
脂漏性皮膚炎の原因は単一的なものではなく、いろいろな要因が影響して発症、悪化すると考えられています。その要因の一つは、皮脂が皮膚に常在するマラセチア菌という真菌(カビの仲間)などに分解された結果、刺激物となりそれによって炎症が起こると言われています。その他、化粧品による肌への負担、洗顔不足や過剰な洗顔など間違った洗顔方法、睡眠不足や疲労、ストレスなどで皮脂分泌が増えること、偏った食生活や野菜(特に緑黄色野菜)不足などによるビタミン類の不足などさまざまです。体質的、遺伝的素因によることもあります。
診断と治療、予防について教えてください。
診断では似たような症状を伴うアトピー性皮膚炎や、鼻や頬の周囲など顔の赤みが特徴の「酒さ」との鑑別が重要です。
治療は炎症を抑える塗り薬が中心となります。必要に応じてマラセチア菌の増殖を抑える抗真菌薬や皮脂分泌を調整するビタミン剤、かゆみを抑える内服薬を処方することもあります。症状が消えたり再発したりを繰り返すのも特徴で、根気よく治療を続けることが大切です。
治療以外に大切なことは生活習慣の改善が非常に重要です。小まめな洗顔、洗髪、入浴で過剰な皮脂を落とし清潔に保つことが基本です。乾燥を防ごうと油分の多い基礎化粧品などを過剰に使用していると、皮脂を閉じ込め脂漏性皮膚炎を引き起こしてしまうことがあります。特に、クリームや美容オイルなどを重ねづけすると、肌表面の油分が多くなりすぎるので注意してください。
また、野菜や魚などを多く摂取してバランスの良い食生活を心掛けましょう。休息や睡眠を十分に取り、規則正しいリズムで生活し、ストレスや疲労をため込まないように気を付けてください。しぶとく再発しやすい皮膚炎ですが、気にならない程度にうまくコントロールできる皮膚疾患です。顔の赤みや頭のフケ、かゆみでお悩みの人は、自己判断せずに医療機関を受診してください。
ゲスト/宮の森スキンケア診療室 上林 淑人 院長
ニキビについて教えてください。
進学や就職、出会いや別れ…と、新生活がスタートする春は何かと心身にストレスを受けやすい季節でもあり、肌荒れ、特にニキビに悩む方が多く来院されます。また、コロナ禍のマスク生活が長引き、「マスクのところにニキビができて困っている」という相談も多いです。
ニキビは毛穴に皮脂が詰まり、そこにアクネ菌という細菌が感染して起こります。皮脂の分泌が盛んな部分に発症しますが、その原因は体質や肌質、学校や職場、家庭でのストレス、偏った食生活、睡眠不足などいろいろです。男性に比べ、化粧をする女性の方が悪化したり長引いたりしやすい傾向にあります。
ニキビの治療法と予防法を教えてください。
ニキビには「こうすれば必ず良くなる」と単純に行かないことが多く、その人に合った治療法を見つけ、それを継続することが大切です。思春期のニキビは、比較的治療効果が出やすく、塗り薬だけで改善されることが多いです。20〜30代に出る“大人のニキビ”は、塗り薬だけでは改善せず長引くケースも多く、ビタミン剤や抗生物質の服用が必要になることもあります。最近は保険適用の塗り薬が複数発売され、治療の選択肢が増えています。
また、一般的なニキビ治療では改善がみられない場合、漢方薬による治療が効果的なことがあります。ニキビの性状と患者さんの体質や体力、ホルモンバランスなどを総合的にみて、一人ひとりに合った漢方薬を処方します。
できるだけストレスをためず、栄養バランスのとれた規則正しい食生活を送り、過労や寝不足、お酒の飲み過ぎを避けるなど生活習慣を改善していけば、ニキビの予防につながります。また、洗顔は大事ですが、洗いすぎは良くありません。洗顔料を十分に泡立て、やさしく洗い、しっかりとすすぐようにしましょう。間違ったスキンケアがニキビを悪化させているケースも多く見受けられます。ニキビ対策にはなるべく油分の少ない化粧品を選び、乳液や栄養クリームなどの使用は最小限にとどめましょう。
“マスクニキビ”の主な原因は、マスクによるこすれとマスクの着脱による蒸れや乾燥です。対策には、マスクを外したときには適宜、余分な皮脂や汗を拭き取って清潔を保ち、保湿剤を塗るようにしましょう。マスクを付ける前に保湿剤を使うのも有効です。
ゲスト/宮の森スキンケア診療室 上林 淑人 院長
乾燥肌について教えてください。
秋から冬にかけて寒い季節に、多くの人が悩まされる肌のトラブルといえば乾燥肌です。皮膚が乾燥して、カサカサした状態になり、ひどくなると白く粉をふいたり、ひび割れてうろこのようになったりします。ある程度乾燥すると、それだけでかゆみを伴い、かくとさらにかゆみが増すのでまたかく、という悪循環に陥りやすいです。中高年に多くみられますが、性別や年齢にかかわらず発症します。
皮膚表面を覆う脂分など、皮膚の潤い(水分量)を保つ成分が、加齢や疲労、ストレスなどにより不足することが原因です。また、外気・室内の乾燥、皮膚を強く洗いすぎる生活習慣なども外的な要因として挙げられます。
乾燥してカサカサした皮膚は、肌が本来持っている外部からの刺激を防ぐバリア機能が低下し、花粉やハウスダストなど、アレルギーの原因となっている物質に過敏に反応しやすくなります。また、乾燥肌をかくと肌に目に見えない細かな傷がたくさんできます。これらの傷から細菌などが入り込むと、湿疹や炎症などさらなる皮膚トラブルの原因となるので、早い時期から治療することが大切です。
乾燥肌の対策・治療について教えてください。
対策の基本は保湿剤を塗り、皮膚の潤いを保つこと。皮膚科でも保湿剤を処方しますが、市販のものでも構いません。保湿剤は軟こうやクリーム、ローションなどいろいろなタイプが用意されていますが、その保湿成分は皮膚の水分が逃げないようにふたをする「エモリエント」と、皮膚に水分を与える「モイスチャライザー」の2つに分類されます。自分の肌に合ったもの、使いやすいものを選んでください。1日2回は塗るよう心掛けてください。
そのほか、暖房で乾燥しがちな室内は、加湿器を使って一定の湿度を保ち、肌の水分の蒸散を防ぎましょう。入浴の際は“ごしごし洗い”ではなく、手で石けんを泡立てて、優しく洗うようにすると肌への負担は少ないです。
かゆみが強い場合や、すでにかいて炎症を起こしているときは、保湿剤だけでは皮膚の状態は改善しません。皮膚のダメージに応じて、かゆみや炎症を抑える塗り薬、飲み薬を処方してもらう必要があります。ただの乾燥肌と思っていたら別の皮膚の病気が隠れていたというケースもあるので、自己判断に頼らず、皮膚科医と相談の上で治療することをお勧めします。
ゲスト/宮の森スキンケア診療室 上林 淑人 院長
花粉が原因となる皮膚炎について教えてください。
本州の花粉症はスギ花粉が主な原因ですが、北海道の花粉症はシラカバ、ハンノキの花粉が主な原因で、ゴールデンウィーク前後からシラカバ花粉症が本格化します(札幌市内・北海道神宮境内に茂る木々にはスギの樹林もあり、円山や宮の森など周囲の地区ではスギ花粉にも注意が必要です)。さらに、ブナやマツ、クルミなどの樹木や、ヨモギやカモガヤなどイネ科の牧草による花粉症が9月ごろまで続きます。
鼻水やくしゃみ、鼻づまりが花粉症の主な症状ですが、実は花粉が皮膚に付着することで、まぶたがむくんだり、目の周りや頬、鼻、口の周り、首周りなどがかゆくなったり、赤くなってガサガサに荒れたりといった症状を引き起こすこともあります。これがアレルギー性皮膚炎の一種である「花粉症皮膚炎」です。これは正式な病名ではなく、花粉が皮膚に影響を及ぼす症状の総称です。
今年はコロナ禍でマスクを着用している時間が長いためか、鼻や口の周りは症状が軽く、まぶたや目の周りに症状が集中している印象があります。目の周りは皮膚が薄く、バリア機能が弱い部位なので、症状が強く現れやすいです。
花粉症皮膚炎の治療や予防について教えてください。
毎年決まった時期になると顔や首がかゆくなったり、赤みやむくみ、ブツブツ、湿疹ができたりするようであれば花粉症皮膚炎が疑われます。希望があれば病院で調べられますので、相談してください。治療は、炎症を抑える外用薬と抗アレルギー薬(内服薬)を使います。アレルギー反応によって肌にかゆみが起こると、つい触ったりかいたりして炎症を悪化させてしまい、症状が慢性化するという悪循環に陥りやすいです。症状が出たら、早めに皮膚科を受診し、かゆみや炎症を抑えることが大切です。
予防は、できるだけ花粉が肌に付着しないように心がけることです。新聞などの花粉飛散情報を常に注意し、特に風の強い日は外出を控え花粉を避けるようにしましょう。やむを得ず外出する際には必ず帽子や眼鏡、マスクを使って可能な限り花粉から身を守ること。普段コンタクトレンズを使っている人もこの時期は眼鏡の方がいいでしょう。また、外出先から帰ったら、まずは顔を洗って付着した花粉を水で流す習慣をつけてください。洗顔料を使わずに、水でやさしく洗い流すだけでも予防効果があります。
ゲスト/宮の森スキンケア診療室 上林 淑人 院長
マスクによる肌トラブルを訴える患者が急増していると聞きますが。
マスクを長時間着用する機会が増える中、「マスクのところにニキビができて困っている」という相談が特に増えています。
マスクの長時間着用は少なからず肌に負担をかけます。不織布は意外と硬いので、肌に摩擦を起こしやすく、その刺激は肌のバリア機能を低下させ、肌の乾燥やニキビ、湿疹の原因になります。また、マスクの内側は呼気によって湿度が高くなります。マスクの中が蒸れると、雑菌が繁殖しやすく、口まわりのニキビの発症・悪化の原因になります。さらに、口元が蒸れた状態でマスクを外すと、急激に肌の水分が蒸発し、一気に肌の乾燥が進みます。乾燥してカサカサした肌は、目に見えない細かな傷がたくさん付いた肌ともいえます。これらの傷からいろいろな刺激物が入り込んでかゆみを起こし、ニキビをはじめさまざまな肌トラブルの原因となります。
今後も外出時には常にマスク着用が求められる状況が続くと予想されます。加えて、大気が乾燥するこれからの季節は肌の乾燥も進みがちです。適切にケアをしながら、しっかり感染対策を行っていきましょう。
ニキビの治療と対策について教えてください。
ニキビには「こうすれば必ず良くなる」という治療法はなく、その人に合った方法を見つけ、それを継続することが大切です。外用剤の選択、抗生物質やビタミン剤の内服など、原因や症状によって治療に違いが出ます。またニキビが出やすい体質を改善する目的で、漢方薬が効果的なことが多くあります。
また、普段のスキンケアと正しい洗顔方法がニキビの予防と改善に重要です。マスクで口元に汗をかいた時はこまめに拭き取る習慣を付け、洗顔やクレンジング時にはできるだけ刺激を避けるなど、いつも以上にやさしいスキンケアを心掛けてください。洗顔のコツは「洗いすぎない」と「擦らない」。頻繁に洗うとバリアーを担う皮脂が取れ、それを補おうと皮脂が過剰に分泌されます。こすり洗いは、細胞と細胞の間にある潤い成分を流失させてしまいます。洗顔後は化粧水で水分を補い、乳液やクリームでしっかりと保湿ケアを行って、肌のバリア機能を守ってください。マスクを付ける前に保湿剤を使うのも有効です。
コロナ禍のさまざま不安や長い自粛生活の疲れが肌に出てしまう人も多いです。バランスの取れた食事や十分な睡眠でストレスを減らすことも大事です。