宮の森スキンケア診療室 上林 淑人 院長
あせもについて教えてください
汗は汗腺という組織で分泌され、汗管という通路を通って皮膚の表面に出てきます。汗管を通ることのできる汗の量はある程度決まっており、通りきらない量の汗をかくと汗が詰まって皮膚内に取り残されます。皮膚のやや深い所(表皮内)で汗が詰まると、汗の刺激で炎症が起こり、強いかゆみを伴う赤い発疹が生じます。これを「紅色汗疹(こうしょくかんしん)」と言って、あせもの一種です。額や首の周り、胸、背中など汗をかきやすく、蒸れやすい部位に現れます。
汗の詰まりが皮膚の表面近く(角層)で起きると、直径数ミリの透明な水膨れがポツポツと現れます。これがいわゆるあせもで、正式には「水晶性汗疹」といいます。水晶性汗疹は、かゆみの症状がなく、数日で自然に消えてしまうことがほとんどで、特に治療の必要はありません。
あせもと聞くと、汗をかく機会が増える夏の病気だと思われがちですが、実は冬にも多い肌トラブルです。厳しい寒さやウォームビズの実施などで、冬場は厚着になりますが、暖房の効いた学校や職場、電車など意外と暖かくて汗をかいてしまうことが多いからです。
冬場のあせも対策と、治療について教えてください
汗を小まめに拭き取り、皮膚を清潔に保つことが大切です。汗を吸収・蒸発させやすい綿素材の肌着を着るのも効果的です。一方、熱を発生させる効果のある機能性肌着(ヒートインナー)は、場合によっては余計に汗をかき、また汗の吸収が悪く、肌と衣類との間が蒸れやすいので、汗をかきやすい人は避けた方がいいでしょう。
特に注意が必要なのは乳幼児です。乳幼児の肌は、乾燥しやすく、刺激に敏感で、汗をかきやすいという特徴があります。風邪をひかせないようにと暖房を強めに設定し、暖かい服をしっかりと着込ませることが、結果として、乾燥して敏感になっている赤ちゃんの肌に汗の刺激が加わりあせもが発症するケースが目立ちます。暑すぎない程度に暖房を抑え、必要以上に厚着・重ね着させないことが大切です。
あせもの治療は、ステロイド外用薬など炎症を抑える塗り薬が主体となります。かゆみを我慢できず、思わずかきむしってしまい重症化するなど、症状が長引くケースも多く見られます。たかがあせもと侮らず、症状の軽いうちに、しっかりと治療を行うことが重要です。