2010年2月24日水曜日

「非結核性抗酸菌症」について

ゲスト/白石内科クリニック 干野 英明 医師

非結核性抗酸菌症について教えてください
 風邪やインフルエンザの咳や痰(たん)は、通常数日で改善します。しかし、半月以上続く場合は、何か別の病気が隠れている可能性があります。最近日本で増えているのが、非結核性抗酸菌症です。結核菌の仲間を抗酸菌と呼びますが、概して結核菌以外の抗酸菌で起きる病気で、非定型抗酸菌症とも呼ばれます。
 この菌は生活環境の中に広く分布し、土壌、粉塵(ふんじん)、川、風呂場、シャワーなどに存在します。毒性は弱く健康な人には感染しにくく、少量であれば肺の中に入っても発症することはほとんどありません。結核との大きな違いは、人から人へ感染しないため、発症した人と接触してもうつらないこと、毒力が弱く重症化しにくいこと、抗結核薬があまり効かないことなどです。

症状、治療について教えてください。
 非結核性抗酸菌は、自然界に約120種類あり、人間に感染するのは20種類ほどといわれています。日本で最も多いのはマック菌(アビウムコンプレックス菌)で、全体の7~8割、次はカンサシ菌で1~2割、その他の菌が約1割です。マック菌は高齢者や慢性の肺疾患を持つ人や、免疫が低下した時などに感染します。ところが最近は、基礎疾患がない健康な50~60歳代の女性に発症するケースが増えています。遺伝的な要因が疑われていますが、詳しいことはよく分かっていません。一方、カンサシ菌は若い男性の喫煙者に多いといわれています。この菌には抗結核薬が有効です。非結核性抗酸菌症は自覚症状に乏しいことが多いのですが、進行すると咳、痰、血痰、微熱などの症状が出てきます。
 診断には、胸部レントゲン写真やCT検査を行います。痰の培養検査から抗酸菌の存在を確認し、さらに詳しい検査によって菌の種類を明らかにします。治療は結核に準じた薬物療法が中心です。一般的に予後は良いとされていますが、単独で効く薬がないため、クラリスロマイシンという抗生物質と2、3種類の抗結核薬を組み合わせて投与します。しつこい菌なので1年程度は内服を続ける必要があります。病巣が限られている場合は外科的に切除することもあります。

2010年2月17日水曜日

「熱傷」について

ゲスト/たけだ皮膚科スキンケアクリニック 武田 修 医師

熱傷とはどのような症状ですか?
 一般的には「やけど」と呼ばれていますが、その中には火による「火傷(かしょう)」、化学薬品等による「化学熱傷」、熱湯や油はねなどの熱源によるいわゆる「熱傷」があります。熱傷には1~3度の分類があります。1度は皮膚の表面(表皮)のみの傷害で、軽い日焼けと同じ程度です。3度は皮下組織に達する深い傷害で、皮膚が壊死(えし)したり、植皮手術の必要や感染症が生じたりします。
 家庭で正しく判断していただきたいのは、患部に水ぶくれができる真皮に起きる2度の熱傷についてです。2度はさらに2段階に分かれ、やけどが達する皮膚が比較的浅いものをSDB(浅達性2度熱傷)、やや深いものの皮下組織までは達していないものをDDB(深達性2度熱傷)といいます。水ぶくれが2週間以内に乾くかどうかが大きな境目です。新しい皮膚が出来上がるまでに2週間以上かかるDDBは、「しみ」として色が残り続けたり、皮膚がひきつれケロイド状になるなど、あとが残る可能性があります。
 また、1度の熱傷や2度のSDBと思われても、上皮化後にヒリヒリしたり、触って違和感を覚えたら、早めに医師へ相談してください。時間がたってから症状が現れることもあります。

家庭でできる熱傷の対処法はありますか?
 低温熱傷はこの季節、湯たんぽやパネルヒーターなどに一定時間以上、皮膚をくっつけて圧力をかけた場合に起こり得ます。特に糖尿病などの基礎疾患により感覚が鈍くなっている高齢者は、就寝中に熱傷を負う危険性が高まります。熱傷を起こしたら、まず流水で20分程度は冷やしてください。氷や冷却シートを直接当てると水ぶくれを破る恐れがあります。また、患部が心臓より低い位置にあったり、手の熱傷の場合に手を激しく振ったりすると、患部につゆがたまり水ぶくれがさらに大きくなることがあります。足なら就寝時に座布団などで足元側を高く保つと良いでしょう。
 水ぶくれの処置としては、火で軽くあぶって殺菌した針で表面に数カ所小さな穴を開け、患部より大きなガーゼを厚めに当てて中のつゆが自然と出やすいようにします。薬局で熱傷の薬、皮膚に付着しづらいガーゼも購入できます。ティッシュペーパーや綿は患部に付着するので避けてください。
 熱傷は数日かけて症状が重くなることが多いので、おかしいなと思ったら早めに皮膚科医への受診をお薦めします。

2010年2月10日水曜日

「目立たない矯正器具」について

ゲスト/宇治矯正歯科クリニック  宇治 正光  歯科医師

矯正に対する最近の傾向について教えてください。
 全身の健康やQOL(生活の質)にとって、咬(か)み合わせが重要な役割を果たしていることが一般の方々にも認知されるようになりました。
 それによって歯列の凸凹や、上顎(がく)前突、下顎前突、さらにあごの左右のズレを気にする方が増えてきました。先日、30代の女性から「上顎前歯が出て、下顎の凸凹しているのがコンプレックス。現在矯正治療を考えていますが、装置を裏からにするか、表からにするか迷っています」と相談されました。矯正治療は決して恥ずかしいものではありません。むしろ、「大人になってからよく決断したな」と思われるのではないでしょうか。
 咬合(こうごう)の大切さを認識し、矯正治療を受けようとする前向きな姿勢を隠す必要はありませんが、人知れずに治療したいという気持ちも分かります。特に社会人で、接客業など日常的に多くの人に接する職業の人はそう考えるでしょう。また、思春期のお子さんが矯正装置を気にする心情も理解できます。そういう場合は、舌側矯正をお勧めしています。

舌側矯正について教えてください。
 歯の裏側、つまり舌側に矯正装置を入れます。表からは装置が目に付かないので、見た目にはまったく違和感がありません。ただし、内側にあることから、表側からの矯正(唇側矯正)と比較すると、発音が不明瞭(めいりょう)、歯磨きや食事がしづらいという問題がありました。しかし、最近これらの問題点を改善した舌側矯正装置「STb」が開発されました。従来のものと比べて、非常に薄く、小さくなっています。話しづらい、食事がしにくい、舌が痛いといった、舌側矯正ならではの不快な点が、飛躍的に改善されました。人と話すことが多い職業の人や、違和感に対する不安などが理由で、今まで舌側矯正へ踏み切れなかった人にもお勧めできます。矯正治療の期間は、裏側でも表側でもそんなに違いはありません。
 歯並びをコンプレックスに感じている人は、成人でも意外に多いのではないでしょうか。心と体の健康のためにも、自身の歯並びに気になることがあったら、ぜひ一度矯正歯科医または経験豊富な歯科医に相談してください。

2010年2月3日水曜日

「リウマチ治療の今」について

ゲスト/佐川昭リウマチクリニック 佐川 昭 医師

リウマチについて教えてください。
 自己免疫疾患である膠原(こうげん)病の一つが関節リウマチです。40代をピークとして20~60代の女性に多く発症します。初期症状としては手のこわばり、関節痛などが代表的で、特に起床時の痛み、こわばりが何日も続くようなら、関節リウマチの可能性があります。専門医を受診した場合は、まず問診で症状の経過と現在の状態を確認します。続いて、関節の痛みや腫れ、熱感、屈曲など患部診察を行い、採血やレントゲン写真、超音波診断(関節エコー)やMRI(磁気共鳴画像装置)などで総合的に診断します。リウマチも他の疾病と同様に、早期に発見し、治療を開始することが、その後の症状改善に役立ちます。

治療と日常生活の注意点について教えてください。
 関節リウマチの場合は、患者さん本人によく理解してもらうことが重要です。悪化したきっかけとして思い当たることを聞くと、正月や法事などで多忙だったり、床掃除、除雪、引越しなどの家事労働、また運動や旅行、看病など、何気ない日常生活が挙げられました。過度の家事労働やストレスをためないことも大切です。そのほか、低気圧の接近や雨天、肥満など天候や健康状態による症状の悪化もあります。
初期治療としては、関節破壊を予防するために、抗リウマチ薬を処方します。さらに、消炎鎮痛剤、少量のステロイドも考慮します。同時に理学療法、作業療法を用いたリハビリテーションを進めます。このような治療を3カ月以上行っても、痛みや腫れが持続し、炎症反応が見られる場合は、次の段階として、抗リウマチ薬のメトトレキサート製剤による治療を行います。それでも十分に効果が得られないようであれば、生物学的製剤による治療を行います。生物学的製剤は近年導入された新薬で、リウマチ治療に大きな効果をあげています。薬の種類・タイプも増え、選択肢が広がっています。ただし、感染症にかかりやすくなる、高価であるなどの問題点もあります。リウマチは完治の難しい病気ですが、治療薬も日々進歩しています。あきらめずに上手に付き合っていくという心構えを持つことが肝心です。

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