2023年2月23日木曜日

パニック障害

医療法人 耕仁会 札幌太田病院 斉藤 一朗 診療部長

パニック障害とはどのような病気ですか

 パニック障害は、心臓や血管などに特に異常がないのに、突然起きる動悸(どうき)や胸痛、息苦しさ、吐き気、発汗、手足の震えなどのパニック発作が繰り返される病気で、「このまま死んでしまうのではないか」という恐怖感を伴います。不安障害の一種で、国内の患者数は1996年に約3千人でしたが、2017年には8万3千人にまで増えています。

2023年2月16日木曜日

膝関節周囲骨切り術によるスポーツ復帰

 医療法人知仁会 八木整形外科病院 薮内 康史 医師


膝関節周囲骨切り術について教えてください


 中高年になると膝に痛みを感じる人が増えてきます。その多くは変形性膝関節症によるものです。膝の関節軟骨がすり減り、関節内に炎症が起きたり、関節が変形して痛みが生じます。症状が進むと、歩けば膝が痛く、正座や階段の上り下りが難しくなります。末期になると安静時にも痛みが取れず、歩行困難になるなど日常生活に支障を来します。

 鎮痛剤の服用や関節内注射などの保存的治療では痛みを軽減できても、病気の進行は食い止められません。一方、外科的治療は一度手術を受けて回復すれば、痛みをほとんど忘れて生活できる可能性が高いです。手術治療は膝の変形を矯正して痛みを解消する「骨切り術」があります。

 近年注目されている骨切り術とは、膝周囲の骨〈脛(けい)骨や大腿(だいたい)骨〉を矯正することで脚の並びを変えて、膝の傷んだ部分に負担のかからない脚へと矯正する手術です。例えば、日本人に多いO脚変形では膝の内側がすり減るため、自分の骨を切って変形を矯正することで、内側に偏っている荷重ストレスを外側に移動させ、軽度のX脚へと矯正します。いくつか術式がありますが、最近では、脛骨(すねの骨)の内側から骨を切って広げ、時間とともに骨に置き換わる人工骨を挿入し、金属プレートで固定する方法が多くなっています。


骨切り術のメリットについて教えてください


 最大の利点は、自分の関節を温存することができるため低侵襲で、他の手術法と比較して術後の日常生活に対する制限がほとんどないことです。回復すれば、術前の痛みが取れ、人工関節では制限のある「跳んだり走ったり」の激しいスポーツ活動も可能となります。自分の膝を残したい、まだまだマラソンや登山、スキー、テニス、ゴルフなどのスポーツを楽しみたい、という人に適した手術法です。膝が痛くてスポーツを諦めかけている方は、骨切り術で今後の人生が変わるかもしれません。漁業や酪農業のような身体を積極的に動かす職業の方にとっても良い手術になり得ます。

 また、人工関節は技術の進歩とともに耐久性は向上していますが、その寿命は一般的に20〜30年程度と考えられていますので、若い患者さんにも骨切り術が勧められます。

2023年2月9日木曜日

マインドフルネス〜関節リウマチの痛みやストレスを軽減するために〜

 佐川昭リウマチクリニック 古崎 章 院長


テレビや雑誌などで目にすることが多くなった「マインドフルネス」という言葉。
関節リウマチの医療現場でもマインドフルネスが注目されていると聞きましたが。

 

 関節リウマチなどのリウマチ性疾患は、関節を構成する滑膜という組織で炎症が起き、全身の関節に腫れやこわばり、痛みが生じる病気です。炎症が慢性化し、痛みがなかなか取れないと訴える患者さんも多いようです。痛みの経路は、記憶などに関連する脳のさまざまな部位から影響を受けることが分かってきており、ストレスなどの心理的問題で慢性痛が起きたり、慢性痛が増悪することがあるのは、このためだと考えられています。リウマチ性疾患には、痛みだけでなく全身倦怠感(けんたいかん)や睡眠障害、気分の落ち込みなどの症状もあり、普通の生活ができないことにストレスを感じることが多いようです。また、病気や将来への不安や悩みがストレスとなって痛みなど病気の症状を増悪させているケースも少なくありません。

 ストレッチやヨガ、ピラティスなどでストレスを解消・軽減することが、心の不安や気分の落ち込みを改善したり、関節リウマチの慢性痛などの症状を緩和する場合があることが多数報告されています。ストレス解消・軽減法の一つとして最近注目されているのがマインドフルネスです。

 マインドフルネスとは、瞑想(めいそう)などにより「今、この瞬間」だけに意識を向けた心の状態をつくる訓練や、その状態のことをいいます。いくつかのプログラムが開発されていますが、一般的なのが呼吸に集中しながらの瞑想です。座禅を組むなどして、呼吸に意識を集中させます。そのほかに、風や波の音に耳を澄ます瞑想や、全身から手や足先へ細かい感覚を意識するボディースキャン瞑想などがあり、いずれも自分の思考や状況を客観的に捉え「今、この瞬間」に集中する癖をつけるのが目的です。

 マインドフルネスによる瞑想を実践している時の脳の状態は、脳神経科学者などによって研究が進められており、ストレス解消のほか医療現場でうつ病などの治療プログラムに取り入れられつつあります。また、リウマチ性疾患の痛み、睡眠障害、気分の落ち込みなどの症状が緩和・改善されたという海外の報告も増えてきています。

 リウマチ性疾患に対しては炎症を取り除くための治療が第一ですが、炎症が落ち着いても痛みなどの症状が残っている場合に、ストレス解消法の一つとして日常生活にマインドフルネスを取り入れてみるのもよいかもしれません。

2023年2月2日木曜日

慢性硬膜下血腫

 西さっぽろ脳神経外科クリニック 笹森 孝道 院長


慢性硬膜下血腫とはどのような病気ですか


 転んで頭を打ったり、強くぶつけたりした時、頭の中に出血する場合があります。けがをしてすぐに出血が起きた場合は、「急性の出血」あるいは「血腫」などといいます。一方、けがをしてすぐの検査では異常がなかったのに、受傷してから1~2カ月ほどたってから徐々に頭の中に血がたまってくる病気があり、これを「慢性硬膜下血腫」といいます。

 慢性硬膜下血腫は、50歳以上の中高年に多い病気で、お酒をよく飲む方、肝臓の悪い方、病気治療でいわゆる「血液をサラサラにする薬」を服用している方がかかりやすいとされ、軽いけがの後でも発症することがあるので注意が必要です。冬季の北海道では、特に雪道の転倒事故に気を付けてください。

 慢性硬膜下血腫は、出血が少ない場合はほぼ無症状です。ある程度、血がたまってくると脳を圧迫し、さまざまな症状が出てきます。頭痛や頭の重だるい感じが代表的な症状です。治療前には自覚症状を訴えていなかった患者さんでも、治療後には「頭が軽くなった」という方が多いようです。

 圧迫が進むと、足元がおぼつかなくなるなど歩行障害が出ることも多いようです。物忘れや記憶障害、言語障害が出てくることもあり、高齢者の場合、認知症と間違われるケースもよくみられます。また。高齢者は圧迫による頭痛などの症状を自覚していない例もあり、そのまま寝込んでしまっていることもあるので、家族など周りの人が注意する必要があります。


治療について教えてください


 無症状であれば、よほど圧迫が強くない限りは経過観察をします。内服薬を使用して様子をみる場合もあります。ここ最近では、血腫の治癒を促進する効果のある漢方薬を使うケースも増えています。

 圧迫が強い時や症状が出ている時は、手術を行います。脳外科の手術というと大変怖いイメージを持っている方も多いと思いますが、硬膜下血腫の手術は局所麻酔で行うもので、心身への負担も少なく、高齢者でも受けることができます。過度に恐れる必要はありません。

 頭を打っても軽いけがであれば、慌てて病院に行かなくても問題のないケースがほとんどですが、1カ月以上経ってから頭痛や、先に挙げたような症状が出てきた時は、我慢しないで脳外科医を受診するようにしてください。

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