西さっぽろ脳神経外科クリニック 笹森 孝道 院長
慢性硬膜下血腫とはどのような病気ですか
転んで頭を打ったり、強くぶつけたりした時、頭の中に出血する場合があります。けがをしてすぐに出血が起きた場合は、「急性の出血」あるいは「血腫」などといいます。一方、けがをしてすぐの検査では異常がなかったのに、受傷してから1~2カ月ほどたってから徐々に頭の中に血がたまってくる病気があり、これを「慢性硬膜下血腫」といいます。
慢性硬膜下血腫は、50歳以上の中高年に多い病気で、お酒をよく飲む方、肝臓の悪い方、病気治療でいわゆる「血液をサラサラにする薬」を服用している方がかかりやすいとされ、軽いけがの後でも発症することがあるので注意が必要です。冬季の北海道では、特に雪道の転倒事故に気を付けてください。
慢性硬膜下血腫は、出血が少ない場合はほぼ無症状です。ある程度、血がたまってくると脳を圧迫し、さまざまな症状が出てきます。頭痛や頭の重だるい感じが代表的な症状です。治療前には自覚症状を訴えていなかった患者さんでも、治療後には「頭が軽くなった」という方が多いようです。
圧迫が進むと、足元がおぼつかなくなるなど歩行障害が出ることも多いようです。物忘れや記憶障害、言語障害が出てくることもあり、高齢者の場合、認知症と間違われるケースもよくみられます。また。高齢者は圧迫による頭痛などの症状を自覚していない例もあり、そのまま寝込んでしまっていることもあるので、家族など周りの人が注意する必要があります。
治療について教えてください
無症状であれば、よほど圧迫が強くない限りは経過観察をします。内服薬を使用して様子をみる場合もあります。ここ最近では、血腫の治癒を促進する効果のある漢方薬を使うケースも増えています。
圧迫が強い時や症状が出ている時は、手術を行います。脳外科の手術というと大変怖いイメージを持っている方も多いと思いますが、硬膜下血腫の手術は局所麻酔で行うもので、心身への負担も少なく、高齢者でも受けることができます。過度に恐れる必要はありません。
頭を打っても軽いけがであれば、慌てて病院に行かなくても問題のないケースがほとんどですが、1カ月以上経ってから頭痛や、先に挙げたような症状が出てきた時は、我慢しないで脳外科医を受診するようにしてください。