医療法人 耕仁会 札幌太田病院 斉藤 一朗 診療部長
パニック障害とはどのような病気ですか
パニック障害は、心臓や血管などに特に異常がないのに、突然起きる動悸(どうき)や胸痛、息苦しさ、吐き気、発汗、手足の震えなどのパニック発作が繰り返される病気で、「このまま死んでしまうのではないか」という恐怖感を伴います。不安障害の一種で、国内の患者数は1996年に約3千人でしたが、2017年には8万3千人にまで増えています。
パニック障害は<甘え>や<メンタルが弱い>ために起こるのではなく、脳内の不安に関する神経系の機能異常により、セロトニンなどの神経伝達物質がアンバランスになることで生じる脳の病気です。若い世代や女性に多いという報告もありますが、年齢や性別に関係なく、誰にでも起こる可能性があります。パニック発作は、思いがけない時に突然出ますが、その後は時間の経過とともに徐々に治まっていくことが特徴であり、この発作で死に至ることはありません。しかし、症状が強烈なため、同じような状況になると「また発作が起きるのでは」と不安に陥り、乗り物に乗ることや、一人で外出することが困難になる人も少なくありません。発作を恐れて、不登校や出社拒否、ひきこもりになり、うつ病など他の精神疾患を併発するケースもあります。
治療について教えてください
治療では薬物療法で発作を起きにくくすることが柱となります。選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)と呼ばれる抗うつ薬を用います。効果が出るまで2~4週間ほどかかるため、根気よく服薬を続けることが大切です。症状改善後には、減量、中止も可能です。発作が起きた時は、即効性のあるベンゾジアゼピン系の抗不安薬が役立ちますが、この薬には依存性もあるので、効き目を確かめながら慎重に使い、いざという時のお守り代わりにしたいものです。
発作への不安により狭まった活動範囲を広げることも大事な治療目標となります。不安を軽減するため、思考パターンを楽観的な方向に導いたり、不安が生まれる状況にあえて飛び込んで段階的に身を慣らし、不安に対する耐性を高める心理療法や行動療法も有効です。
パニック障害は適切な治療で回復が期待できる病気です。パニック障害が疑われる発作を繰り返すなら、専門医に早めに相談してほしいと思います。