佐川昭リウマチクリニック 古崎 章 院長
テレビや雑誌などで目にすることが多くなった「マインドフルネス」という言葉。
関節リウマチの医療現場でもマインドフルネスが注目されていると聞きましたが。
関節リウマチなどのリウマチ性疾患は、関節を構成する滑膜という組織で炎症が起き、全身の関節に腫れやこわばり、痛みが生じる病気です。炎症が慢性化し、痛みがなかなか取れないと訴える患者さんも多いようです。痛みの経路は、記憶などに関連する脳のさまざまな部位から影響を受けることが分かってきており、ストレスなどの心理的問題で慢性痛が起きたり、慢性痛が増悪することがあるのは、このためだと考えられています。リウマチ性疾患には、痛みだけでなく全身倦怠感(けんたいかん)や睡眠障害、気分の落ち込みなどの症状もあり、普通の生活ができないことにストレスを感じることが多いようです。また、病気や将来への不安や悩みがストレスとなって痛みなど病気の症状を増悪させているケースも少なくありません。
ストレッチやヨガ、ピラティスなどでストレスを解消・軽減することが、心の不安や気分の落ち込みを改善したり、関節リウマチの慢性痛などの症状を緩和する場合があることが多数報告されています。ストレス解消・軽減法の一つとして最近注目されているのがマインドフルネスです。
マインドフルネスとは、瞑想(めいそう)などにより「今、この瞬間」だけに意識を向けた心の状態をつくる訓練や、その状態のことをいいます。いくつかのプログラムが開発されていますが、一般的なのが呼吸に集中しながらの瞑想です。座禅を組むなどして、呼吸に意識を集中させます。そのほかに、風や波の音に耳を澄ます瞑想や、全身から手や足先へ細かい感覚を意識するボディースキャン瞑想などがあり、いずれも自分の思考や状況を客観的に捉え「今、この瞬間」に集中する癖をつけるのが目的です。
マインドフルネスによる瞑想を実践している時の脳の状態は、脳神経科学者などによって研究が進められており、ストレス解消のほか医療現場でうつ病などの治療プログラムに取り入れられつつあります。また、リウマチ性疾患の痛み、睡眠障害、気分の落ち込みなどの症状が緩和・改善されたという海外の報告も増えてきています。
リウマチ性疾患に対しては炎症を取り除くための治療が第一ですが、炎症が落ち着いても痛みなどの症状が残っている場合に、ストレス解消法の一つとして日常生活にマインドフルネスを取り入れてみるのもよいかもしれません。