ゲスト/佐川昭リウマチクリニック 古崎 章 副院長
バイオ医薬品とバイオシミラーについて教えてください。
関節リウマチでは、抗リウマチ薬を中心に、非ステロイド性抗炎症薬や副腎皮質ホルモンを使って炎症や骨破壊、疼痛などを抑える治療を行います。これら従来の薬は化学的に合成された低分子の医薬品です。一方、「バイオ医薬品(生物学的製剤)」は、生体が作る物質を使用した薬剤のこと。最先端のバイオテクノロジーで製剤され、高分子で構造が複雑な医薬品です。リウマチの治療においては、体内にある炎症や骨破壊を起こす物質に直接作用し、多くの患者さんに対して高い治療効果が期待できます。その反面、薬剤費は高いです。
低分子医薬品(従来の一般的な薬)は大きく2つに分けられます。先発医薬品と後発医薬品(ジェネリック医薬品)です。先発医薬品は製薬会社が大きな費用を投じて研究・開発した薬。開発後20年〜25年は特許で守られ、開発したメーカーだけが製造できます。この特許が切れた後に別のメーカーがつくるのが後発医薬品です。有効成分を同じ量含有していますが、開発コストが不要なため価格が安くなっています。先発医薬品の約2〜7割ほどといわれます。
一方、バイオ医薬品のジェネリック医薬品で、先行バイオ医薬品と同じように使えることが確認されているものを「バイオシミラー」と呼びます。
バイオシミラーの特徴を教えてください。
バイオ医薬品の特許が切れた有効成分を用い、抗体や遺伝子組み換え技術などを応用してつくられています。バイオ医薬品の場合、薬の分子構造を完全には再現できないためシミラー(類似)と呼びます。
先行バイオ医薬品と効果や安全性が同等かを比較するため、実際の患者さんに使用する臨床試験を行い、安全で有効な医薬品と確認された上で製造販売が承認されることになっています。
バイオ医薬品は治療効果の高い薬ですが、医療費が高額になってしまうのも事実です。その点、バイオシミラーは先発バイオ医薬品と比較して価格が6〜7割と安いため選択肢の一つになります。医療経済的にも今後必要性が高まってくると考えられます。
先発バイオ医薬品と比べ、バイオシミラーの有効性・安全性に差はないとしても、まったく同じものではありません。実際に使うかどうかは担当医とよく相談した上で選択することをお勧めします。
2019年6月26日水曜日
2019年6月19日水曜日
口唇ヘルペス
ゲスト/宮の森スキンケア診療室 上林 淑人 院長
口唇ヘルペスについて教えてください。
かぜをひいたり、疲れたりして免疫力が低下した時、くちびるやその周囲にピリピリとした痛みやかゆみを伴う、小さな水ぶくれができる病気です。水ぶくれは1〜2週間ほどで乾き始めて、かさぶたとなり治癒します。必ずくちびるにできるわけではなく、頬や鼻の下、目の周り、耳などにできることもあります。
口唇ヘルペスは、単純ヘルペスウイルスが原因で起こります。単純ヘルペスウイルスは、一度感染すると症状がなくなった後も体内に残り神経細胞にすみつく特徴を持っています。これを潜伏感染といいます。多くは子どものころに感染しますが、気付かない場合もあります。症状が出ていなくても単純ヘルペスウイルスが潜伏している人は多く、大人で50%以上とされ、年齢が高くなるにつれ、その感染率は高くなります。大人が初めて感染すると、発熱する場合もあり、症状が少し重くなる傾向があります。
普段は活発に活動せず、神経節にじっと潜伏し、症状を表すことのない単純ヘルペスウイルスですが、疲労やストレス、体調不良、かぜ、紫外線などの影響で体の免疫力や抵抗力が落ちると、ウイルスが再活性化します。増殖したウイルスは神経細胞を通って、主にくちびるやその周辺に移動し、発症します。
治療について教えてください。
現在のところ、体から単純ヘルペスウイルスを駆逐するのは難しいとされ、症状がひどくならないうちにウイルスの活動を抑え、早く治すのが治療の目的となります。
治療は抗ウイルス薬の内服が中心です。患部の乾燥や細菌感染を防ぐために外用薬を併用することもあります。体調や健康状態などにより、症状の程度は異なりますが、早期に対処すると治りが早く、悪化を防ぐことができます。くちびるに、ピリピリ、チクチクとした違和感や痛みを感じたり、水泡に気づいたり、ヘルペスを疑う症状がある場合はできるだけ早く対処しましょう。
くちびる以外に出る単純ヘルペスは、ほかの皮膚疾患と間違えられやすく、また初期の帯状疱疹と見分けにくいケースがあるので注意が必要です。
単純ヘルペスウイルスは、体内に潜み、何度も再活性を繰り返すことのある厄介なウイルスです。疲れ・ストレスをためる、紫外線を長時間浴びるなど、免疫力・抵抗力を弱めるような状況をできるだけ避け、症状が出たら速やかに医療機関を受診し治療を始めるのが大切です。
口唇ヘルペスについて教えてください。
かぜをひいたり、疲れたりして免疫力が低下した時、くちびるやその周囲にピリピリとした痛みやかゆみを伴う、小さな水ぶくれができる病気です。水ぶくれは1〜2週間ほどで乾き始めて、かさぶたとなり治癒します。必ずくちびるにできるわけではなく、頬や鼻の下、目の周り、耳などにできることもあります。
口唇ヘルペスは、単純ヘルペスウイルスが原因で起こります。単純ヘルペスウイルスは、一度感染すると症状がなくなった後も体内に残り神経細胞にすみつく特徴を持っています。これを潜伏感染といいます。多くは子どものころに感染しますが、気付かない場合もあります。症状が出ていなくても単純ヘルペスウイルスが潜伏している人は多く、大人で50%以上とされ、年齢が高くなるにつれ、その感染率は高くなります。大人が初めて感染すると、発熱する場合もあり、症状が少し重くなる傾向があります。
普段は活発に活動せず、神経節にじっと潜伏し、症状を表すことのない単純ヘルペスウイルスですが、疲労やストレス、体調不良、かぜ、紫外線などの影響で体の免疫力や抵抗力が落ちると、ウイルスが再活性化します。増殖したウイルスは神経細胞を通って、主にくちびるやその周辺に移動し、発症します。
治療について教えてください。
現在のところ、体から単純ヘルペスウイルスを駆逐するのは難しいとされ、症状がひどくならないうちにウイルスの活動を抑え、早く治すのが治療の目的となります。
治療は抗ウイルス薬の内服が中心です。患部の乾燥や細菌感染を防ぐために外用薬を併用することもあります。体調や健康状態などにより、症状の程度は異なりますが、早期に対処すると治りが早く、悪化を防ぐことができます。くちびるに、ピリピリ、チクチクとした違和感や痛みを感じたり、水泡に気づいたり、ヘルペスを疑う症状がある場合はできるだけ早く対処しましょう。
くちびる以外に出る単純ヘルペスは、ほかの皮膚疾患と間違えられやすく、また初期の帯状疱疹と見分けにくいケースがあるので注意が必要です。
単純ヘルペスウイルスは、体内に潜み、何度も再活性を繰り返すことのある厄介なウイルスです。疲れ・ストレスをためる、紫外線を長時間浴びるなど、免疫力・抵抗力を弱めるような状況をできるだけ避け、症状が出たら速やかに医療機関を受診し治療を始めるのが大切です。
2019年6月12日水曜日
抗不安薬について
ゲスト/医療法人社団 正心会 岡本病院 瀬川 隆之 医師
抗不安薬とはどのような薬ですか。
抗不安薬は、不安や恐怖を和らげる薬です。不安や恐怖を感じることは、それ自体は異常なことではありませんが、日常生活に支障をきたすほど強くなると治療の対象となります。
抗不安薬は簡単にいうと、脳の奥にある扁桃体と呼ばれる神経の集まりの興奮を抑えることなどにより効果をもたらします。抗不安薬の代表的なものとして、ベンゾジアゼピン系とその類似薬(BZ系薬)と選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)の2つがあります。
BZ系薬は効き目がはやく、不安や恐怖がとても強くて急を要する場合に欠かせない薬です。しかし、いったん飲み始めると薬をやめにくいという依存の問題や、眠気やふらつき、認知機能の低下といった副作用の問題があります。一方、SSRIは不安障害の治療の中心となる薬です。効果が現れるまで数週間を要しますが、BZ系薬と比較して依存性は高くありません。ただ、吐き気や眠気などの副作用が出現することがあります。また、急に薬をやめると吐き気、しびれ感などの中断症候群が出現する場合もあるので、薬を減らしたい時には主治医とよく相談してください。
処方・服用のポイントについて教えてください。
BZ系薬、SSRIには、それぞれ長所・短所がありますので、不安や恐怖を主な症状とする精神疾患の治療においてはSSRIのみ、またはSSRIとBZ系薬の両方を使って治療を始め、BZ系薬を併用した場合にはSSRIの効果がみられ始める頃にBZ系薬を徐々に減らして中止するといった工夫が必要です。
実際には、BZ系薬のみで治療を行う場合もあり、症状が強い時だけ即効性の抗不安薬を内服するといった頓服使用で生活している患者さんもいます。BZ系薬が多剤や大量処方になっている場合や、本来は薬を中止できる状態にもかかわらず処方が継続されているケースの時は、依存や副作用について患者さんとよく話し合いながら、BZ系薬の減量を目指します。しかし、薬を減らすことへの不安を持つ患者さんも多く、減薬が難しいこともあります。BZ系薬は即効性という大きなメリットがあるため、医療者、患者さん双方に使い勝手のいい薬なのですが、依存や副作用の危険性についてはよく理解しておく必要があるでしょう。
抗不安薬とはどのような薬ですか。
抗不安薬は、不安や恐怖を和らげる薬です。不安や恐怖を感じることは、それ自体は異常なことではありませんが、日常生活に支障をきたすほど強くなると治療の対象となります。
抗不安薬は簡単にいうと、脳の奥にある扁桃体と呼ばれる神経の集まりの興奮を抑えることなどにより効果をもたらします。抗不安薬の代表的なものとして、ベンゾジアゼピン系とその類似薬(BZ系薬)と選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)の2つがあります。
BZ系薬は効き目がはやく、不安や恐怖がとても強くて急を要する場合に欠かせない薬です。しかし、いったん飲み始めると薬をやめにくいという依存の問題や、眠気やふらつき、認知機能の低下といった副作用の問題があります。一方、SSRIは不安障害の治療の中心となる薬です。効果が現れるまで数週間を要しますが、BZ系薬と比較して依存性は高くありません。ただ、吐き気や眠気などの副作用が出現することがあります。また、急に薬をやめると吐き気、しびれ感などの中断症候群が出現する場合もあるので、薬を減らしたい時には主治医とよく相談してください。
処方・服用のポイントについて教えてください。
BZ系薬、SSRIには、それぞれ長所・短所がありますので、不安や恐怖を主な症状とする精神疾患の治療においてはSSRIのみ、またはSSRIとBZ系薬の両方を使って治療を始め、BZ系薬を併用した場合にはSSRIの効果がみられ始める頃にBZ系薬を徐々に減らして中止するといった工夫が必要です。
実際には、BZ系薬のみで治療を行う場合もあり、症状が強い時だけ即効性の抗不安薬を内服するといった頓服使用で生活している患者さんもいます。BZ系薬が多剤や大量処方になっている場合や、本来は薬を中止できる状態にもかかわらず処方が継続されているケースの時は、依存や副作用について患者さんとよく話し合いながら、BZ系薬の減量を目指します。しかし、薬を減らすことへの不安を持つ患者さんも多く、減薬が難しいこともあります。BZ系薬は即効性という大きなメリットがあるため、医療者、患者さん双方に使い勝手のいい薬なのですが、依存や副作用の危険性についてはよく理解しておく必要があるでしょう。
2019年6月5日水曜日
難治性ぜんそく
ゲスト/白石内科クリニック 干野 英明 院長
難治性のぜんそくについて教えてください。
ぜんそくはせきや喘鳴(ぜんめい)、発作性の呼吸困難などを特徴とする気道の慢性炎症性疾患です。原因は遺伝的素因やアレルギー、感染などさまざまです。ぜんそくの有病率は6〜10%とされており、そのほとんどは標準的な薬によってコントロールできます。しかし、複数の長期管理薬を使ってもコントロールの難しい、いわゆる「難治性ぜんそく」の患者さんは、ぜんそく全体の5〜10%を占めています。
難治性につながる因子の一つが「肥満」です。肥満があるとぜんそくになりやすく、ぜんそくの人が肥満になると症状が重症化しやすく、薬が効きにくいという特徴があります。そのため、治療ととともに減量指導が重要になります。
「副鼻腔炎」を合併したぜんそくも難治性になりやすく、両疾患を総合的に治療することが重要です。特に、白血球の中の好酸球が関与するタイプの副鼻腔炎は、難治性のぜんそくを合併しやすいといわれています。
「アスピリン不耐症」も因子の一つです。アスピリンぜんそくともいわれており、アスピリンや非ステロイド性抗炎症薬を服用後にぜんそく発作などを起こすもので、成人ぜんそくの約10%にみられます。好酸球性の鼻ポリープを合併しやすく、それに対する治療も必要となります。
そのほか、喫煙、受動喫煙、ペットなどの持続的なアレルゲンの暴露、PM2.5などの大気汚染も難治性につながる因子として挙げられます。
難治性ぜんそくの治療について教えてください。
ぜんそくの治療は「吸入ステロイド薬」から開始し、重症度に応じて「ロイコトリエン受容体拮抗薬」「テオフィリン徐放製剤」「長時間作用性β2刺激薬」、「長時間作用性抗コリン薬」などを追加し、組み合わせて使います。
近年、症状悪化の原因となる分子を選択的に阻害する「分子標的薬」と呼ばれる薬剤の開発が進んでいます。分子標的薬は作用が強力で副作用が少なく、難治性の場合に使用される全身ステロイド薬を減量または中止できる可能性があります。ただし、ぜんそくにはいくつかのタイプがあり、分子標的薬はすべての難治性ぜんそくに有効とは限りません。また、非常に高額であり、適応を見極めた上で投与する必要があります。1カ月に1〜2回の皮下注射をし、数カ月から1年位を目安に効果の判定をして、その後も継続するかどうかを決めます。
難治性のぜんそくについて教えてください。
ぜんそくはせきや喘鳴(ぜんめい)、発作性の呼吸困難などを特徴とする気道の慢性炎症性疾患です。原因は遺伝的素因やアレルギー、感染などさまざまです。ぜんそくの有病率は6〜10%とされており、そのほとんどは標準的な薬によってコントロールできます。しかし、複数の長期管理薬を使ってもコントロールの難しい、いわゆる「難治性ぜんそく」の患者さんは、ぜんそく全体の5〜10%を占めています。
難治性につながる因子の一つが「肥満」です。肥満があるとぜんそくになりやすく、ぜんそくの人が肥満になると症状が重症化しやすく、薬が効きにくいという特徴があります。そのため、治療ととともに減量指導が重要になります。
「副鼻腔炎」を合併したぜんそくも難治性になりやすく、両疾患を総合的に治療することが重要です。特に、白血球の中の好酸球が関与するタイプの副鼻腔炎は、難治性のぜんそくを合併しやすいといわれています。
「アスピリン不耐症」も因子の一つです。アスピリンぜんそくともいわれており、アスピリンや非ステロイド性抗炎症薬を服用後にぜんそく発作などを起こすもので、成人ぜんそくの約10%にみられます。好酸球性の鼻ポリープを合併しやすく、それに対する治療も必要となります。
そのほか、喫煙、受動喫煙、ペットなどの持続的なアレルゲンの暴露、PM2.5などの大気汚染も難治性につながる因子として挙げられます。
難治性ぜんそくの治療について教えてください。
ぜんそくの治療は「吸入ステロイド薬」から開始し、重症度に応じて「ロイコトリエン受容体拮抗薬」「テオフィリン徐放製剤」「長時間作用性β2刺激薬」、「長時間作用性抗コリン薬」などを追加し、組み合わせて使います。
近年、症状悪化の原因となる分子を選択的に阻害する「分子標的薬」と呼ばれる薬剤の開発が進んでいます。分子標的薬は作用が強力で副作用が少なく、難治性の場合に使用される全身ステロイド薬を減量または中止できる可能性があります。ただし、ぜんそくにはいくつかのタイプがあり、分子標的薬はすべての難治性ぜんそくに有効とは限りません。また、非常に高額であり、適応を見極めた上で投与する必要があります。1カ月に1〜2回の皮下注射をし、数カ月から1年位を目安に効果の判定をして、その後も継続するかどうかを決めます。
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