2010年4月28日水曜日

「むずむず脚症候群」

ゲスト/つちだ消化器循環器内科 土田 敏之 医師

むずむず脚症候群について教えてください。
 文字通り脚がむずむずする、ピリピリする、ピクピクする、火照る、かゆい、じんじんする、虫がはっているような感覚、かきむしりたくなる衝動、電気が流れている感じなどが主な症状です。このような脚の不快感に耐えられず、脚を動かさずにはいられないという状態になってきます。夕方から夜間にかけて出やすく、ぐっすり眠れない、寝ていても途中で目が覚めてしまうことも多く、睡眠障害になったり、睡眠不足で疲れやすく、ストレスがたまり、生活の質が低下するおそれがあります。
 また、日中でもバス、電車、飛行機での移動中、講義や講演会、授業中、仕事中、病院の待合室など、脚を動かせずじっとせざるを得ない時に症状が起きやすくなります。

原因は? 治療方法はありますか
 じっとしている状態でも何かに熱中したり、立ち上がって動き始めると気にならなくなるものです。むずむず脚症候群は100人中2~5人いると推測されています。40代以降に多く、男性よりは女性に多いと思われます。原因はまだ、解明されていない部分が多い疾患ですが、有力な説として脳内の神経伝達物質の一つであるドーパミンの機能障害や、鉄不足が関係しているのではないかといわれています。
ドーパミンは、運動機能を円滑にするために欠かせない物質です。鉄はドーパミンを作る過程で必要とされます。鉄が不足するとドーパミンがうまく合成されず症状を引き起こすのではないかと考えられています。ほかに、腎臓病、妊娠、糖尿病、パーキンソン病、関節リウマチ、薬の副作用などが原因として考えられています。
 症状を軽減するには、コーヒーや緑茶など、睡眠の障害になるカフェインの摂取を控えます。アルコールやタバコも症状を悪化させます。鉄分を意識したバランスのよい食事を取ることも大切です。 また、ウオーキングなどの適度な運動、就寝前のストレッチやマッサージなど、筋肉をほぐしてから就寝するのもいいでしょう。
 それでも改善しないようでしたら、最近は効果が期待できる治療薬もあるので、症状がひどくなる前に医師に相談することをお勧めします。

2010年4月21日水曜日

「心房細動」

ゲスト/北海道大野病院附属駅前クリニック 古口 健一 医師

心房細動について教えてください。
 心房細動は不整脈の原因として多く見られます。通常、心臓は1分間に60〜70回という一定のリズムで動いていますが、心房細動では、心房が部分的に興奮収縮し、心室の収縮が不規則な間隔で起こるため、心房全体としての統制がとれず、1分間に350〜600回の無秩序な収縮が起きます。そのため、血液を送り出すポンプとしての心臓の機械的効率が低下し、心不全が起こりやすくなります。心房細動が続くと、めまいや動悸(どうき)、胸部の圧迫感などを感じるだけでなく、心房の中の血液がよどんで血栓ができ、脳梗塞(こうそく)などの原因となります。
 心房細動は加齢とともに多くなります。原因は大きく分けて二つあり、急に起こる発作性のものと、基礎疾患が原因のものがあります。基礎疾患には高血圧、糖尿病、虚血性心臓病、心臓弁膜症、甲状腺機能亢進(こうしん)症などがあります。

治療法を教えてください。
 心房細動は持続時間から三つに分類されます。7日以内に自然停止するものを発作性心房細動、7日以上1年以内持続するものを持続性心房細動、1年以上持続するものを慢性心房細動と呼びます。心房細動は慢性になると血栓ができ、脳梗塞などの危険因子となりますから、数カ月あるいは数年間不整脈に悩まされ、基礎疾患がある場合は特にリスクが高いと考えてください。慢性期の治療法は大きく分けて三つあります。1分間の心拍数を整える投薬治療(レートコントロール)、心拍数を変えずにリズムを調節する投薬治療(リズムコントロール)、血栓を予防する投薬治療です。もっとも一般的なのは血栓予防の投薬治療で、抗不整脈剤の投与や抗凝固療法を行います。抗凝固療法では、基礎疾患など危険因子がない場合はアスピリン、基礎疾患がある場合はワーファリンを投与することが多く、特にワーファリンには高い効果を認めるデータがあります。ワーファリン投薬は定期的に血液検査を行い凝血能を観察しながら適切な量に調節します。薬物療法以外では、不整脈の原因部分を切除するカテーテルアブレーションという手術療法もあります。

2010年4月14日水曜日

「矯正治療のタイミング」

ゲスト/E-line矯正歯科 上野 拓郎 歯科医師
矯正を始めるタイミングについて教えてください。
 最近は、歯並びに対する意識が高まり、3〜4歳児を連れて来院する方も増えています。しかし、乳歯の段階では極端な受け口のようなはっきりとした咬合(こうごう)異常でない限り、治療を急ぐ必要はありません。仮に早くに治療をスタートさせたとしても、3、4歳で装置を受け入れてくれるかは疑問です。矯正治療は、一般的に永久歯が生え始める7歳前後がスタート時期になります。ただ、最近みられるのが、乳歯の段階でのデコボコした乱ぐい歯(叢生・そうせい)です。本来、乳歯は一本一本の間に空間のある「すきっ歯」が正常な状態です。ぴったり並んだ、一見「歯並びが良い」状態では、永久歯に生え変わった時に乱ぐい歯になる可能性があります。まして、乳歯の段階で乱ぐい歯では、あごが極端に小さく、永久歯が正常な歯並びになるのは難しいと思われます。子どもの口の中を見てこのような感じでしたら、一度矯正専門医に診察してもらうといいでしょう。すぐに治療を始めなくても、適切な治療開始時期についてアドバイスしてもらえるでしょう。

就学時はどのような点に注意すればいいですか。
 乱ぐい歯(叢生)、出っ歯(上顎前突)、受け口(下顎前突)を中心とした基本的な歯並び、噛(か)み合わせの状態を見ます。反対咬合はもともとの骨格が影響している場合が多く、成長とともに悪化するためあごの成長を抑える必要があり、長い場合は成長のピークが過ぎる時期までの継続的な矯正治療が必要となります。逆に上顎前突は成長を利用します。いずれの場合も早期からの治療によって、より美しく自然な噛み合わせになる可能性が高いです。
 中学生では、基本的に大人に準じた治療となりますが、まだ成長期なので子どもと同じ治療ができる可能性もあります。思春期なので矯正装置を嫌がる場合も多いのですが、最近は歯の裏側から治療することもできるので、矯正を受ける人も多くなってきました。
 極端に下顎が突出していたり逆に引っ込んでいるなど、外科治療が必要な場合は、成長のピークが過ぎた高校生以降の治療になります。
 いずれにしても、時期によって的確な治療法があります。また、いくつになっても「もう遅い」ということはありません。

2010年4月7日水曜日

「子宮頸がんの予防ワクチン」

ゲスト/札幌駅前アップルレディースクリニック 工藤 正史 医師

子宮頸がんの予防ワクチンについて教えてください。
 子宮頸がんがワクチンで予防できる時代になりました。子宮頸がんは初期の段階ではほとんど自覚症状がなく、しばしば発見が遅れます。20~30代で急増しているがんであり、日本人では年間約1万5000人が発症していると報告されています。
 子宮頸がんの原因となるのは、発がん性ヒトパピローマウイルス(HPV)です。HPVは性的接触で感染します。HPVの感染は一時的なもので、約90%は自然に体内から排除されますが、残りの約10%は感染が持続し、そのうちの約1%が子宮頸がんを発症します。このHPVは特別な人だけが感染するのでなく、多くの女性が一生のうちに一度は感染するありふれたウイルスです。子宮頸がんと関係あるHPVには15種類ほどのタイプがあり、その中でも16型、18型は子宮頸がん患者の約60~70%の感染率となっています。ワクチンは、この16型、18型の感染を防ぐものです。
 HPVに感染する可能性が低い10代前半にこの子宮頸がん予防ワクチンを接種することで、子宮頸がんの発症を約70%減らす効果があると考えられています。残りの約30%のがんを早期発見するためには、子宮頸がん検診の受診も必要です。公的な子宮頸がん検診は、20歳以上を対象として2年に1回の受診間隔で実施されています。 10代でワクチンを接種し、20歳を過ぎたら定期的な子宮頸がん検診を受けることが、効果的な予防・早期発見・治療のためには理想的です。
 また、40歳でも3~4割程度の効果がありますので、45歳くらいまではワクチン接種のメリットはあると考えられます。

具体的にワクチン接種はどのように行いますか。
 接種は、10歳以上の女性に3回、腕の筋肉に注射します。2回目は1カ月月後、3回目は初回の6カ月後です。主な副反応は、痛みとかゆみです。世界ではすでに96カ国で小学生や中学生の女子にワクチンを接種しています。課題は、ワクチンの値段が3回の接種で約5万円かかることです。ただし、このワクチンは3回の接種だけで長期(約20年以上)にわたって抗体価が維持され、予防効果が持続します。公費による補助が実現する可能性もありますが、おそらく年齢制限が設けられ、全額無料になるかは未定です。

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