2005年12月28日水曜日

「高血圧症」について

ゲスト/秀愛会内科・消化器科クリニック 高梨 良秀 医師

高血圧症について教えてください。

 血圧はさまざまな要因で変動するものです。病院の外来で測ると、高くて驚いたという経験のある人も多いことと思います。外出先であることや、医師や看護師の前で緊張してしまい、普段より血圧が高くなるのは当然です。正確な血圧を知るためには、家庭での血圧測定が必要です。家庭用血圧計の中では、指先や前腕部で測定するタイプのものより、上腕部で測定するものがより正確です。決まった時間に毎日2~3回測定し、その中間の値をとり、測定前の30~15分は安静にします。測定値は記録し、治療計画の判断材料として、かかりつけの医師に見せます。さらに正確な血圧を計る24時間血圧計もあります。1日を通して血圧の変動をモニターするので、時間ごとの薬の効果などを詳しく知ることができます。特に明け方は薬効が切れ、血圧が高くなりやすいので、一度は24時間計測してもらうと安心です。

適正な血圧値と治療、注意点を教えてください。

 以前は収縮期血圧(最大血圧)150ミリメートルHg、拡張期血圧(最小血圧)90ミリメートルHg以下であれば良いとされてきましたが、現在は、成人で最大血圧140ミリメートルHg、最小血圧90ミリメートルHg以下にすべきとされています。最大・最小血圧のどちらかが正常値より高ければ、高血圧と判断されます。頭が重いなど自覚症状がある場合もありますが、症状がないまま高血圧が進行している人も多いです。高血圧の人は、高脂血症や糖尿病などにもなりやすく、さまざまな生活習慣病の要因となります。血管や心臓に負担がかかり、動脈硬化が進行し、脳出血、脳梗塞(こうそく)、心筋梗塞、腎不全など重大な合併症を引き起こす可能性があります。高血圧であると診断されたら、医師の指示に従って薬の服用を続けてください。最近はいろいろなタイプの薬品が開発され、症状や生活習慣に合った薬が処方されます。
 日常生活では、塩分を控えた和食中心の食生活を心掛け、ストレスをため込まず、適度な運動を長く続けることが大切です。冬は、特に温度差が大きいことによって、一気に血圧が変動します。寝室と廊下やトイレ、脱衣所と浴室などの温度差を少なくしたり、外出するときは暖かい服装をするなどしましょう。

2005年12月21日水曜日

「前立腺肥大症の手術」について

ゲスト/芸術の森泌尿器科 斉藤誠一医師

前立腺肥大症について教えてください。

 前立腺肥大症は50歳を過ぎた男性ならいつかは覚悟しておかなければならない病気です。夜間、トイレに何度も起きるようになり、排尿に勢いがなくなったり、尿がなかなか出なくて、公衆トイレで後ろに人が並ぶようになったら、疑いが濃厚ですので受診してください。初期であれば、投薬で改善しますが、いずれ薬も効かなくなります。また、医療費負担は今後も増える一方ですから、いつまでも効果が少ない治療にお金をかけることも考えものです。
 日本のように、誰もが医療保険に入っているわけではない米国では、薬による治療は割高なため、手術を選ぶ人がほとんどです。
 かつては、薬で十分に改善しなければ電気メスによる内視鏡的手術しかありませんでした。しかし、現在はいろいろな治療法があり、患者さんの症状や状況に応じた治療を選ぶことができます。その中の一つに、入院せずに外来で簡単に受けられる高温度治療があります。体への負担が軽くて済むのですが、問題点は効果が長く続かないことです。

手術はどのようなものですか。

 一番確実な治療法は電気メスで前立腺を削り取り、尿の通りを改善します。しかし、数日の入院が必要で、また手術中はもちろんですが、退院してから大量に出血することがあります。
 電気メス以外で、前立腺を削り取ることができ、出血が少なく、入院期間を短縮できる方法として、ホルミウムレーザーによる手術があります。かつてのレーザーはやけどをつくって肥大部分を小さくしますが、尿を出すための管を数日入れておかなければなりませんでした。しかし、このホルミウムレーザーは、ほとんど出血なく前立腺を削り取ることができます。特に大きな前立腺には有効です。出血が少ないため、尿を出すための管を早く抜くことができ、早期の退院が可能になりました。順調であれば、2~3日の入院で済みます。また、電気メスによる手術と違い、手術中に水が体内に入って気分が悪くなったり、血圧が下がるなどのリスクもありません。削り取った前立腺の組織で、がんの検査もできます。
 前立腺肥大症の場合、血液検査でPSA値(前立腺から分泌される酵素たんぱくの血液中の量)が高いなど、がんの疑いがなく、自分自身が現在の尿の状態で困っていなければ、何も焦る必要はありせん。自分の都合に合わせた時期に、一番自分に合った治療法を選択されるといいでしょう。信頼できる医師に納得のいくまで相談して治療方針を決めてください。

2005年12月14日水曜日

「痔核(じかく)の手術」について

ゲスト/土田病院 平池 則雄 医師

排便時の出血について教えてください。

 可能性としては、大腸がん、大腸ポリープ、大腸憩室出血、潰瘍(かいよう)性大腸炎、クローン病などが上げられます。しかし、もっとも確率が高いのが痔です。痔は大きく分けて痔核(イボ痔)、裂肛(切れ痔)、痔ろう(あな痔)の3つに分けることができます。この中で、もっとも患者数が多いのが、痔核です。排便時の力みによって、肛門粘膜が引っ張られ、伸びてしまったのが痔核になります。便秘の人やトイレが長い人、ドライバーやオペレーターなど一日中座っている人、出産経験のある女性にも多く見られます。
 痔核には、直腸粘膜の部分にできる内痔核と、外の皮膚の部分にできる外痔核があります。内痔核の場合、初期では痔核が肛門から飛び出ることはありません。しかし、排便時に出血したり、痛みや違和感を覚えることがあります。内痔核の症状が進むと、痔核が大きくなり、肛門から出てきます。指で押し込むと戻りますが、さら進むと痛みが強く、指で戻せなくなり、長時間立ったり、スポーツをしているだけで飛び出すようになることもあります。

治療法について教えてください。

 便秘や下痢を解消するために食生活に注意を払い、入浴で患部を清潔にすることによって、肛門の負担を減らす生活療法や、出血や痛みを緩和する坐(ざ)剤、軟膏などの外用薬、血流改善を目的とした内服薬も症状に合わせて処方します。
 これらの治療で改善しない場合は、手術を行います。痔核の手術法としては、痔核部分を切除して血管をしばる結さく切除術が一般的ですが、5~6年ほど前に日本に導入されたPPH法という術式があります。特殊な器械を肛門から挿入し、緩んだ粘膜の切除と縫合を同時に行います。痛みや入院日数の面で、患者の負担が極端に少なくなる画期的な手法です。しかし、導入している病院が限られており、また重症化している場合は用いることができません。まずは、病院に相談してください。

2005年12月7日水曜日

「加齢黄斑変性」について

ゲスト/札幌エルプラザ阿部眼科 阿部 法夫 医師

加齢黄斑変性について教えてください。

 加齢黄斑変性は50歳ころから始まり、特に日本では男性に多い目の難病です。従来は欧米に多い眼疾患でした。ところが、1998年から福岡県久山町で行われた調査報告によると、累積5年発症率は0.8%とアメリカ、オーストラリアでの結果と同程度で、日本において増加傾向にある疾患と推定されています。この結果から、日本での50歳以上の人口の、30~40万人の患者数が見込まれています。
 黄斑とは眼底の中心部のことで、特に文字を読んだりするのに大事な場所です。眼球の中でも強い光を常に受け、最も新陳代謝が活発に行われています。加齢によって老廃物の処理能力が落ち、黄白色の塊(ドルーゼン)となって黄斑部にたまることから、この病気がはじまります。進行すると、さらに色素沈着や脱色素が起き、最後には出血によって文字が読めなくなってしまいます。加齢黄斑変性は、早期の軽症例(A:ドルーゼン・B:色素沈着や脱色素)と末期の重症例(出血を含む)に分けられます。久山町の調査結果によるとそれぞれ12.8%(A:9.6%、B:3.2%)、0.87%と報告されています。男女比は早期では差はないものの、末期では男性の方が3~4倍多いとの報告でした。以上の調査から、加齢黄斑変性の予備軍は10人に1人、重症例の有病率は100人に1人程度となります。

診察や治療法を教えてください。

 最近の蛍光眼底撮影や断層撮影の進歩によって、日本人の場合、出血の原因の30~50%はポリープ状の新生血管であることが特定されるようになりました。レーザーや手術、薬物による治療も、著しい進歩がみられるようになりました。また、これらの病変の進行防止には禁煙とビタンC・E、ベータカロチン、ルテイン、酸化亜鉛などの適度なサプリメントが有効という報告もされています。目の難病ではありますが、進行防止のためには早期の発見が重要となります。初期は見ようとする中心部が見えにくかったり、ゆがみがあったり、暗かったりしますが、片目から始まることが多く気が付きにくいようです。「老眼だろう」と決め付けず、見づらくなったら、眼科専門医で精密眼底検査を受け、確認することをお勧めします。

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