2024年5月10日金曜日

ストレスによる胃の症状〜機能性胃腸症(FD)について〜

<胃痛や胃もたれの原因としてどのような病気が多いですか?>


 胃痛や胃もたれなどの上腹部の症状は、日本人成人のおよそ10~15%が慢性的に自覚しているとされます。これらの症状で受診される患者さんは、胃がんや胃潰瘍を心配されていることが多いと思います。しかし、最も頻度の高い病気は「機能性胃腸症(FD)」です。

 FDは、内視鏡検査など各種検査で症状の原因になるような炎症や腫瘍などの異常が見つからないにもかかわらず、ストレスなどが原因となって胃痛や胃もたれなどが続く病気です。以前は「神経性胃炎」と呼ばれることが多かったのですが、専門的には「胃炎」という病名は、内視鏡検査などで確認される「器質的な」胃の炎症に用いるべきで、FDは胃炎ではなく、胃の動きや感じ方などの「機能的な」問題によって生じるとの考えから、機能性胃腸症という病名ができました。

 胃に炎症や腫瘍がないのに、どうして症状が生じるのでしょうか。まず、胃の運動が障害されることで胃もたれが生じ、胃壁の伸展や胃酸による刺激に対して過敏になり痛みを感じます。さらに不安や抑うつなど心理的要因、不規則な食事、高脂肪食、不眠などの要因が複合的に関わり、発症するものと考えられています。ウイルスや細菌による「感染性胃腸炎」の治癒後に発症することもあります。


<FDの診断と治療について教えてください>


  FDは生命に危険が及ぶ病気ではありませんが、不登校や休職の原因になるなど生活に大きな支障が出る場合もあります。適切に診断するために、必要に応じて胃内視鏡検査、ピロリ菌の検査、膵臓(すいぞう)や胆のうの病気を除外するためのエコー検査などを行います。

 発症には不安などの心理的要因が大きいため、内視鏡検査などを行って異常がないことが判明すると、約3分の1の患者さんは症状が軽減したという報告もあります。

 日常生活では、過度なストレスを避けて息抜きを大切にすること。バランスの取れた食事や適度な運動、十分な睡眠も重要です。治療は、胃酸を抑える薬や胃の動きを良くする薬、漢方薬などを処方します。これらで改善しない場合には、抗不安薬を使ったり、心療内科・精神科での治療をお勧めする場合もあります。

 早期診断と適切な治療の開始が何よりも大切です。症状を放置したり自己判断したりせず、できるだけ早く医療機関を受診してください。




福住内科クリニック
佐藤 康裕 院長

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