2003年5月28日水曜日

「花粉症とせき」について

ゲスト/大道内科・呼吸器科クリニック 大道光秀 医師

花粉症とそれに続くせきについて教えてください

 スギ花粉が主な原因となる本州・四国・九州の花粉症は終息しましたが、北海道の「花粉症」は今がシーズンです。本道での今ごろの花粉症の原因は、主にシラカバ、ハンノキによるもので、花を付ける4月下旬からがシーズンです。さらに、カモガヤなどの牧草やヨモギによる花粉症が9月ごろまで続きます。主な症状は、しつこい鼻水、鼻づまり、くしゃみ、目のかゆみなどで、アレルギー体質の人ほど罹患(りかん)しやすいといえます。今まで花粉症ではなかった人がストレスや疲れ、寝不足などが引き金となって発症することもあります。シラカバ花粉症の人の中には、リンゴやモモ、サクランボやキウイなどの果物を摂取すると、口の中がかゆくなったり唇が腫れたり、のどがかゆくなったりする果物アレルギーの人も見られるので、注意が必要です。アレルギーを起こす原因物質は、血液検査で比較的容易にわかるので、一度検査を受けて、アレルギー物質を可能な限り避けるようにします。また、花粉症の体質の人では、感冒をきっかけとしてせきやぜんそく発作を起こすことがあります。この場合、夜間や早朝に多いせきが特徴です。感冒が長引いていると思って、風邪薬だけでごまかしていると、せきはさらにひどくなり、夜も眠れないほどのせきになります。

具体的な治療、予防方法について教えてください。

 根本的に治すなら、時間を掛けて体質を改善していくしかありません。今現在の症状を緩和するには、抗アレルギー剤の服用、点鼻薬、点眼薬などがあります。毎年のように発症する人は、原因の花粉が飛び始める2週間前くらいから、予防的に抗アレルギー剤を内服すると、シーズン中の症状が軽減されます。症状が出てしまってからでも、なるべく早くに服用すると重くならないので、早期の受診をお勧めします。予防法としては、花粉の飛散量が多い晴れた風の強い日は外出を控えたり、外出時にマスクを装着する。外出先から戻ったら、家に入る前に衣類や髪、持ち物に付いた花粉を払い、手洗い、うがいを行うといった基本的なことが効果的です。在宅中も、晴れた日には窓を開けない、掃除機をこまめにかける、フィルター付き空気清浄機の利用などで、花粉の影響を少なくすることができます。またせきのひどい人やゼイゼイする人は早めに呼吸器専門医を受診し、胸部写真をチェックしたり、肺機能検査を受けてぜんそくが無いかどうか調べ、適した治療を受けなければなりません。

2003年5月21日水曜日

「さまざまな痛みの治療法」について

ゲスト/十善クリニック 水柿 功 医師

どのような痛みでペインクリニックを受診する人が多いですか。

 一番多いのは腰痛です。ぎっくり腰と呼ばれる急性腰痛症、腰椎(ようつい)椎間板(ついかんばん)ヘルニア、脊(せき)柱管狭窄(きょうさく)症、腰椎手術後腰痛症など、腰の痛みに苦しんでいる人が多くいます。痛みが生じると血行が悪くなり、交感神経が緊張し発痛物質が産生され、さらなる痛みに苦しむことになります。「いろいろな治療を受けたが痛みが取れない」「年だから腰が痛いのは当たり前」とあきらめてしまう人もいます。しかし、出歩けなくなったり、気持ちが落ち込んだり、痛みは日常生活に大きな影響を与えます。神経ブロックの治療効果を知り、現在の痛みを取ることができるならと、ペインクリニックを受診する方が多いです。また、帯状疱疹(たいじょうほうしん)後の神経痛を訴える方も多いです。帯状疱疹は水痘(すいとう)ウィルスが原因です。高齢者やストレスや過労などで免疫機能が低下している人に多く発症します。激痛を伴うのが大きな特徴で、皮膚表面上の症状は改善されても、痛みが残る場合があります。

治療法について教えてください。

 ペインクリニックでは、神経ブロックといって、神経に局所麻酔薬を作用させ、痛みを遮断します。急性腰痛症や腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症などの治療には、硬膜外ブロックを行います。脊髄(せきずい)を含む硬い膜の外側に局所麻酔薬を注入します。痛みを取ることにより、血液が循環し、痛みの発痛物質の産生が抑制され、筋肉の緊張が緩和し、組織の修復を促します。帯状疱疹の場合は、早期に神経ブロックを行えば、帯状疱疹後神経痛に悩まされることはありません。帯状疱疹後神経痛になってからでは、完治が難しくなります。初期の皮膚症状が出た時点で、ぜひ神経ブロック療法を受けることをお勧めします。1度の治療で改善することもあれば、何度か治療することもあります。麻酔注射ということで躊躇する人もいますが、経験豊富な専門医であればまず危険はありません。痛みに悩んでいる人は、1度ペインクリニックを受診することをぜひご検討ください。

2003年5月14日水曜日

「大人のニキビ」について

ゲスト/宮の森スキンケア診療室 上林 淑人 医師

ニキビについて教えてください。

 正式には尋常性座瘡(じんじょうせいざそう)といい、アクネ菌の感染が関係する化膿性の皮膚疾患です。中学・高校生のニキビはホルモンの影響を多く受けています。この時期のニキビは、完全に無くそうとは思わず、少しでも減らし悪化させないことを目標にすべきです。それには、薬を塗るだけでなく、バランスのとれた食生活、規則正しい生活などが大切です。問題は大人のニキビです。中学・高校生のニキビのように原因が単純ではありません。ホルモンのバランスに加え、生活習慣、ストレス、疲労などが関係し、塗り薬だけでは治らない場合がほとんどです。悪化すると痛みやかゆみを伴い、またニキビ跡が肌にデコボコを作ったり、赤く残ったり、特に女性にとっては大きな悩みの一つになっています。さらに、ニキビを隠そうとファンデーションを厚く塗ることによって、悪化させるという悪循環に陥っている人も多いのです。

大人のニキビの治療法と予防について教えてください。

 経過を見ながらその人に合った治療法を見つけていかなくてはなりません。外用剤の選択、抗生物質やビタミン剤の内服など、原因や症状によって治療に違いが出ます。またニキビが出やすい体質を改善する目的で、漢方薬が効果的なことが多くあります。ニキビのタイプ、体力や体調、血の巡り、ホルモンバランスの乱れなど、総合的に判断し、その人に合った漢方薬を処方します。日常生活の中で、ニキビ予防を心掛けることも大切です。和食を中心にする、ストレスを貯(た)めず、お酒の飲み過ぎ、過労、寝不足を避けるなど、生活習慣を改善していけば、ニキビの予防につながります。また、正しい洗顔方法がニキビの予防と改善に重要です。クレンジングしてから洗顔するダブル洗顔を心掛け、洗い過ぎによる皮脂の落とし過ぎを避け、少し突っ張るくらいの洗い上がりを目標にしましょう。乳液、クリームなどの油分を多く含んだ化粧品は、使い過ぎるとニキビを悪化させることがありますので注意しましょう。ニキビ跡を残さないためには、早め早めに治すことが肝心ですので、気になったら専門医を訪ねてください。

2003年5月7日水曜日

「動脈硬化症と糖尿病」について

ゲスト/青木内科クリニック 青木伸 医師

動脈硬化症について教えてください。

 動脈は本来弾力性があるものですが、動脈壁に脂肪などが沈着したり、動脈壁の筋肉に弾力の無い繊維が増えたりすると硬くなります。血管の内側に粥(じゅく)状の塊(かたまり)ができ、血管が狭くなり本来の働きが悪くなります。また、塊を覆う繊維性皮膜が破れると、中の粥状のものが血管に流れ出て、血栓となって血液の流れを止めてしまいます。脳の血管が詰(つ)まると脳梗塞(こうそく)、心臓では心筋梗塞、足では壊疽(えそ)になります。これらは生命に関わる重大な病気ですから、動脈硬化症は早期に診断、治療を行う必要があります。動脈硬化症による重篤な症状を避けるには、粥状の内容物を減らすことと、内容物を覆っている繊維性皮膜を丈夫にすることが肝心です。

予防方法を教えてください。

 動脈硬化症は、主に生活習慣病の合併症として現れます。危険因子である糖尿病、高脂血症、高血圧症をきちんと治療し、管理していくことが大切です。日本には非常に多くの糖尿病患者、そして予備軍がいます。かなり悪化するまで自覚症状が無いため、健康診断などで「血糖値が高い」といわれても放置している人が多いのですが、動脈硬化症から、脳梗塞、心筋梗塞に至ることや、高血糖が原因で数年後から十数年後に腎不全(透析)、失明など重篤な症状に発展する場合があります。手遅れになる前に、専門医の治療を受けてください。治療は主に投薬と日常生活の中での数値管理です。過去1~2カ月間の平均血糖値を表すHbA1cの正常値は5.8%以下ですが、糖尿病患者の場合、この値を6.5%以下にしておくと血管の余病は出ません。また、糖尿病患者の約半数は高脂血症や高血圧症を合併しています。コレステロール値や中性脂肪値などにも注意を払うことが必要です。定期的な通院を続け、適切な投薬と数値管理を行えば、日常生活には支障ありません。生活習慣病は遺伝的要素も強く、家族に糖尿病や高脂血症の人がいる場合は、注意が必要です。子どもや若者も例外ではありません。また、欧米型の肉や脂肪が多い食事を、野菜中心の和食にするなど、日常生活を見直してみてください。

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