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2014年7月16日水曜日

更年期障害


ゲスト/札幌駅前アップルレディースクリニック 工藤 正史 院長

更年期障害について教えてください。
 更年期とは、閉経の前後約5年間の時期を指します。多くの女性は50歳前後で閉経を迎えることから、おおむね45〜55歳を更年期と呼んでいます。年齢を重ねるにつれて卵巣の働きが低下し、女性ホルモン(エストロゲン)が欠乏することでやがて訪れるのが更年期です。45歳を過ぎて、月経不順や不正出血がみられたり、出血量が違うと感じられたら要注意です。
 女性ホルモンの欠乏は、女性の生活の質を脅かします。女性ホルモンを失いつつある体は、イライラや不安、不眠、突然の発汗、ほてり、動悸(どうき)、頭痛などさまざまな症状に悩まされます。化粧ののりの悪さ、肌にハリがないといったことが気になる女性も多いでしょう。女性ホルモンを補充することは、これらの症状を改善するだけでなく、女性の若さと美しさを取り戻すアンチエイジングとしても期待されています。
 また、更年期に入った女性は骨粗しょう症にかかりやすいとされています。高齢者の寝たきりの原因は、脳血管障害に次いで、骨粗しょう症による骨折が第2位です。骨の老化は、薬や食事・運動療法である程度予防できますから、そのフォローはとても大切です。さらに、閉経後のコレステロールの上昇により血管の老化が進み、動脈硬化や認知症などのリスクも高くなります。その他、人には言いにくい性生活の悩みや、失禁、頻尿、残尿感などの問題が出てくるケースも少なくありません。

更年期を過ぎると安心なのですか。
 江戸時代(19世紀)の日本女性の平均寿命は、なんと36歳前後でした。大正時代でも43.2歳と今のほとんど半分ぐらいです。現在、日本女性の平均寿命は80歳を超えて長生きするようになり、更年期以降の人生も長くなっています。
 この長くなった人生の時間を「老年期」と呼ぶことがありますが、更年期の症状がその後の老年期の病気につながってしまうなど、更年期を過ぎても安心とはいえないのが女性の一生です。しかし、この老年期をセカンドライフと考え、前向きに心豊かに、健康的に過ごしてもらいたいと思います。女性のライフステージそれぞれの場面で問題に行き当たったとき、婦人科医は女性の心と体をよく知る専門家です。ぜひ、かかりつけ医を見つけてご相談ください。

2013年12月18日水曜日

婦人科クリニックでできること

ゲスト/札幌駅前アップルレディースクリニック 工藤 正史 院長

婦人科クリニックの診療内容について教えてください。
 婦人科クリニックで行う検査などについて簡単に説明します。施設によってはできない項目がありますので、受診前にご確認ください。
 検査には、子宮頸(けい)がん、子宮体がんの検査、子宮頸がんの原因とみられるHPV(ヒトパピローマウイルス)を持っているかのリスク検査、HPVの型判定の検査などがあります。また、子宮頸がん検診で異常所見が見られた場合、精密検査として組織診を行います。
 超音波検査は、子宮筋腫や卵巣の腫瘍の有無など多くの情報が分かる大事な検査です。膣(ちつ)おりもの検査では、一般細菌、性感染症の原因菌を調べます。近年、性感染症の中で増加しているのが尖圭(せんけい)コンジローマです。治療が非常に困難で、完治までに長い治療期間が必要となります。
 B型・C型肝炎、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、梅毒とヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)の感染は、血液検査で分かります。HTLV-1は、特に妊婦の方の母乳感染に注意が必要です。
 そのほか、妊娠判定と妊娠経過のフォロー、風疹の抗体検査、インフルエンザや子宮頸がんの予防接種なども行っています。また、膀胱(ぼうこう)炎の治療も婦人科で受けられます。

ピルの処方、不妊症治療などについて教えてください。
 緊急避妊用ピルと低容量ピルの処方があります。低容量ピルは、避妊効果だけでなく、月経痛の軽減や肌トラブルの改善などの目的でも効用を発揮するほか、旅行や試験などのスケジュールに合わせて月経の時期を調節できます。また、卵巣がんや子宮内膜症、骨粗しょう症などに対して予防効果があるとされています。
 不妊治療は、精液所見の異常などを調べ、排卵期を予測して性生活を持つタイミング療法や、人工授精、体外受精などの方法を取ります。また、血液検査(AMH:抗ミュラー管ホルモン)で卵巣年齢(卵の数)が分かります。
 思春期に多い月経困難症や月経不順は、血液検査によるホルモン検査の確認が必要な場合があります。また、更年期障害には、女性ホルモン補充療法や漢方療法などを行います。高齢者の寝たきりの原因の第2位は、骨粗しょう症による骨折です。健康な骨を維持するためにも定期的な骨密度検査の受診をお勧めします。女性には年代特有の病気、問題が数多くありますので、かかりつけの婦人科クリニックを見つけることが大切です。

2013年4月17日水曜日

骨粗鬆症


ゲスト/札幌駅前アップルレディースクリニック 工藤 正史 院長

骨粗鬆(しょう)症について教えてください。
 「骨が折れやすくなる」「骨がスカスカになる」という骨粗鬆症は、日本では男女合わせて約1300万人ほどになっています。骨が折れやすくなった場合、くしゃみやせきをしただけでも、あばら骨が折れたりすることもあります。昔は高齢になると骨がもろくなり折れやすくなるのは当たり前と考えられてきましたが、現在では生存期間の延長だけでなく生活の質の維持向上が求められます。従って骨折の予防は重要で、骨粗鬆症治療の意義はここにあります。
 女性は閉経に伴う女性ホルモンの低下を契機に骨量が急激に減少します。女性の発症率は男性に比べ3~4倍も高くなっています。骨粗鬆症は痛みなどの自覚症状がありませんので定期的な検査が重要です。特に閉経後や、卵巣機能不全のある方、腰痛を訴える方、骨粗鬆症の家族歴のある方、やせている方、副腎皮質ステロイド内服、甲状腺機能異常のある方は積極的な骨密度測定が必要です。最小限必要な血液検査は血清カルシウム、リン、アルカリフォスファターゼです。
 骨粗鬆症の診断は数種類ありますが、DXA法(デキサ法)による腰椎と大腿骨頸部(けいぶ)の骨密度測定が重要です。X線で脆弱性骨折(小さな外力によって発生する骨折)があれば骨粗鬆症、骨折がなくても骨密度が若年女性平均(YAM)の70%未満なら骨粗鬆症、70~80%なら骨量減少となります。
 骨粗鬆症と診断された場合は、薬物治療にて骨量低下を防止し骨折を予防します。さらに生活習慣や食事療法含めたライフスタイルの改善が必要です。1日800mgを目標にカルシウムを摂取しましょう。タバコやアルコールなどの多量摂取や高塩分食などは避けましょう。適度な運動の継続は骨量低下や骨折の防止に対しては有効で、散歩や水泳、体操などで背筋の強化運動もお勧めです。
 若い人も骨粗鬆症にならないために骨量をしっかり蓄積することが大切です。女性の骨量は20歳頃に最大値となり、その後40歳頃まではほぼ一定ですが、その後は徐々に減少するからです。成長期の方も無理なダイエットを避けバランスのよい食事と運動、いつの時代も大切なことは一緒です。
 転んで手をついただけで骨折にならないようしっかりと予防して下さい。

2012年10月10日水曜日

世界初:アミノ酸測定によるがんリスク予測検査(AICS:アミノインデックス)


ゲスト/札幌駅前アップルレディースクリニック 工藤 正史 院長

AICSとはどのような検査ですか。
 AICSとは、Amino Index Cancer Screening(アミノインデックスキャンサースクリーニング)の略で、血液中のアミノ酸濃度から健康状態や疾病の可能性を明らかにします。健康な状態ではアミノ酸濃度は一定に保たれますが、がんの人では各種アミノ酸濃度バランスが変化します。この変化から子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がん、乳がん、胃がん、肺がん、大腸がん、前立腺がんのリスクを予測します。一度の採血で複数のがんのリスクを同時に予測できます。ただし、子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がんは3種まとめて1種類の検査となります。
 現在、AICSは次の3種類で自費となります。①女性・5種(1.子宮・卵巣がん、2.乳がん、3.胃がん、4.肺がん、5.大腸がんのリスクを調べます。料金は2万円前後です)、②女性・2種(1.子宮・卵巣がん、2.乳がんのリスクを調べます。料金は1万円前後です)、③男性・4種(1.胃がん、2.肺がん、3.大腸がん、4.前立腺がんのリスクを調べます。料金は2万円前後です)。対象年齢は、子宮・卵巣がんは20〜80歳、前立腺がんは40〜90歳、胃がん・肺がん・大腸がん・乳がんは25〜90歳です。

検査の数値からどのようなことが分かりますか。
 AICS値は、0.0〜10.0の間の値を取り、がんである確率が高いほど、高い数値になり、ランクA・B・Cに判定されます。
 がんの有病率は約0.1%といわれています。例えば、1万人の中には10人の胃がん患者がいると考えられます。AICS値の分布からランクAには8000人中2.5人、ランクBには1500人中2.4人、ランクCには500人中5.1人胃がん患者がいると推測します。このようにランクA→B→Cの順番でがんリスクは高くなるといえます。ただし、あくまでもリスクの予想です。病気の診断ではありません。ランクCだからといって、がんと決まるわけではありません。考え方としてリスクが高いと判定されたら、しっかりと精密検査を受ける必要があるということです。
 AICSは、アミノ酸のサプリメント、スポーツ飲料、牛乳、ジュースなども控えて、食後8時間以上を空け、午前中に採血を行います。妊娠中は対象外です。

2012年5月9日水曜日

更年期障害について


ゲスト/札幌駅前アップルレディースクリニック 工藤 正史 院長


更年期障害とはどのような病気ですか。
 30代後半〜40代前半になると、卵巣機能が徐々に低下し始め、50歳前後に「閉経(1年以上の無月経の状態)」を迎えます。閉経年齢が早いか遅いかは個人差があります。閉経をはさんだ前後10年を「更年期」といい、女性ホルモンの分泌量が急激に減少するために、月経異常やのぼせ、火照り、目まい、疲労感、不眠、憂うつ感など、さまざまな症状が出ます。この中で日常に差し支えるようなものを「更年期障害」といいます。
 更年期の女性は骨粗鬆(しょう)症にもかかりやすいとされます。骨粗鬆症による骨折は、脳血管障害に次いで高齢者が寝たきり状態になる原因の第2位となっているので注意が必要です。また、閉経後のコレステロールの上昇が原因で、血管の老化が進み、狭心症や心筋梗塞、脳の血行障害を起こすケースもみられます。
 20〜30代といった若い年代の女性が、一見更年期障害と同じような症状を発症することがありますが、これは真の更年期障害とはいえず、多くの場合ストレッサーが隠されています。ストレッサーとはストレスを与える刺激のことです。


更年期障害の検査・治療について教えてください。
 更年期障害は、身体的要因だけでなく、対人関係、家族の問題などの社会的・環境的要因が複雑に絡み合って起こるとされているので、検査は問診が重要となります。血中のホルモン量を調べるための血液検査や超音波検査なども行います。
 治療は、漢方薬と女性ホルモンを補充する薬物療法が基本となります。加齢とともに減少した女性ホルモンを補い、不足することにより現れる症状を軽減するのがホルモンの補充療法です。閉経以降に起こりやすくなる生活習慣病や骨粗鬆症、予防医学としてのアンチエイジングへの効果も期待されています。
 閉経は女性のライフサイクルの中で必ず起こるイベントであり、更年期は避けては通れない大事な時期です。更年期障害とどう向き合い、改善していくか。まずは一人一人が更年期医学についての正しい知識や情報を身に付ける必要があります。例えば、女性ホルモンの補充療法をどう捉えるかは、その人の考え方や人生観にもよりますが、自分でもしっかり勉強し、ある程度理解した上で、専門医に問い掛けていく姿勢も大切です。

2011年9月28日水曜日

生理痛の原因と子宮内膜症

札幌駅前アップルレディースクリニック 工藤 正史 院長

生理痛の原因について教えてください。

 生理痛の症状を訴える女性のうち、約5パーセントが日常生活を制限されるほどの生理痛を経験し、治療を必要とするといわれています。生理痛は、子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮内膜症や、クラミジアや淋菌(りんきん)感染などの後遺症による骨盤腹膜の癒着性病変など器質的疾患が認められる(病気が隠れている)場合と、原因となる病気のない機能的月経困難症とに分類されます。
 
最近、若い女性に増えている子宮内膜症とはどのような病気ですか。

 子宮内膜症は、子宮という名は付いていますが、子宮以外の部位に起こる病気です。卵巣、卵管、膀胱(ぼうこう)、腹膜、膣(ちつ)壁、直腸のほか、まれに肺に発症することもあります。
 子宮内膜とは、子宮の内側を覆っている粘膜です。妊娠が成立しないときは増殖した子宮内膜は不要となってはがれ落ち、血液などと一緒に体外へ排出されます。これが月経です。子宮内膜症は、本来であれば子宮の内側だけに存在するはずの子宮内膜組織が、子宮の内側以外のところで発生して増殖する病気です。子宮以外の場所には、不要となった子宮内膜が排出されるところがないため、出血した血液はその部分にたまってしまい、痛みを主に血尿などさまざまな症状を引き起こします。周囲の臓器と癒着して不妊症や子宮外妊娠の原因となるのも特徴です。
 治療は、対症療法と内分泌療法、外科療法になります。生理痛の痛みが強い女性は、子宮内膜からプロスタグランジンという物質が多く産生されており、これが痛みの原因となっています。プロスタグランジンの産生を阻害する薬を飲むことが対症療法で、出血が始まったらすぐに服用するのがコツです。鎮痛剤が効きにくい場合、低用量のピルを用いた内分泌療法を行います。ピルは経口避妊薬ですが、生理痛だけでなく、生理前の症状(イライラ・気分の落ち込みなど)や月経不順などの症状も改善します。また、鎮痛剤と異なり、子宮内膜症に対して治療的に働くなどのメリットもあります。薬やピルでは治療困難の場合には、外科療法が効果的で、現在は体にかかる負担の少ない腹腔(ふくくう)鏡で行う手術が主流です。
 痛みを我慢して過ごす時間は人生の大きな損失です。いたずらに怖がることなく、まずは専門医を受診することをお薦めします。

2011年3月16日水曜日

「尖圭コンジローマ(低リスク型HPV感染について)」

ゲスト/札幌駅前アップルレディースクリニック 工藤 正史 院長

尖圭(せんけい)コンジローマとはどのような病気ですか。
 HPV(ヒトパピローマウイルス)には、100種類以上のタイプがあり、そのうち約15種類が発がん性HPV(高リスク型)と呼ばれています。最近、子宮頸(けい)がんワクチンを接種することによって、HPVの高リスク型である16型と18型の2種類からの感染を予防できることが話題となっていますが、今回は、低リスク型HPVの感染が引き起こす「尖圭コンジローマ」という病気について説明します。
 近年、非常に増加している尖圭コンジローマ。これは特有なイボを形成する疾患で、HPVの低リスク型である6型と11型によって発症します。このHPV(6型と11型)は、主に性行為により、皮膚や粘膜にある小さな傷から侵入して感染します。コンドームの使用だけでは完全な予防はできません。潜伏期間は約3週間〜8カ月といわれています。
 尖圭コンジローマの症状は、性器や肛門の周囲にイボができます。女性の場合は、膣や子宮頸部など性器の内側にもイボが発生することがあります。イボの色は白、ピンク、褐色、黒色などで、イボの大きさも直径1〜3ミリ前後から数センチ大までさまざまです。イボは乳頭状のほか、ニワトリのとさかやカリフラワーのような状態になることもあります。
 
尖圭コンジローマの治療について教えてください。
 尖圭コンジローマは自覚症状がほとんどないため、気付かずに放置していると、大切なパートナーに感染させてしまう恐れがあります。さらに妊娠時に発症すると、出産時に産道で赤ちゃんにウイルスが感染してしまう可能性があるため、帝王切開による出産を選択することが多くなります。「もしかして?」と思ったら、くよくよ思い悩むよりまず、一日も早く専門医に相談してください。
 尖圭コンジローマの治療は、「薬を塗る治療法」と「外科的な治療法」の二つに大きく分かれます。ただし、外科的に切除しても再発するリスクが高いため、薬によってウイルス量を減らした後に切除するケースもあります。診断も治療も困難を伴うことが多く、再発率も高い厄介な病気ですが、根気よく病院に通い、治療を続けることが大切です。また、病院により、保険が適用されない場合もありますので、事前に確認するとよいでしょう。

2010年11月4日木曜日

「肺炎球菌とワクチン」

ゲスト/産科 婦人科 はしもとクリニック 橋本 昌樹 医師

肺炎球菌とはどのような菌ですか。
 肺炎球菌は細菌の一種で、その名の通り肺炎を引き起こす菌です。肺炎は高齢者に問題となっていますが、今回は子どもの病気についてお話します。生まれたばかりの赤ちゃんは、お母さんからもらった抗体による免疫で、さまざまな菌から身を守っていますが、肺炎球菌に対する抗体は生後3カ月程度でなくなってしまいます。その一方で、幼稚園・保育園で集団生活をしているほとんどの園児の、のどや鼻の粘膜から肺炎球菌が見つかっています。
 肺炎球菌が起こす病気には菌血症、肺炎、髄膜炎などがあり、また急性中耳炎の原因にもなっています。特に問題となるのは髄膜炎で、それは死に至ることのある疾患だからです。髄膜炎にかかると、発熱、授乳困難、嘔吐(おうと)、けいれんなどの症状が出ます。また大泉門(頭蓋(ずがい)骨の間にあるやわらかい部分)が炎症で隆起します。大人に比べて子どもでは症状の進行が早いため、とにかく速やかな治療が必要になってきます。
 治療には、細菌に有効な抗生物質を使います。しかし近年、耐性菌によって抗生物質が効かない菌も増えていますので、治療は難しくなっているのが現状です。

肺炎球菌の予防にはワクチンが効果的と聞きましたが。
 日本では毎年約1000人の子どもが細菌性の髄膜炎にかかるといわれており、肺炎球菌による髄膜炎の死亡率は10%、マヒや精神障害などの後遺症が残る率も30〜40%と非常に高くなっています。
 2007年に世界保健機構(WHO)は、肺炎球菌ワクチンの有効性と安全性を高く評価し、加盟各国に子どもたちへの定期接種を勧告しました。現在、世界100カ国以上でワクチンが承認され、45カ国以上で定期接種化されています。
 日本では、今年の2月に小児用の肺炎球菌ワクチンが初めて販売され、任意接種ですが使えるようになりました。このワクチンは、肺炎球菌の7種類のタイプに効果があることから「7価ワクチン」と呼ばれており、肺炎球菌の70〜80%に有効であるとされています。また、現在国内では、より多種類のタイプに効果のある新しいワクチンの開発も進んでいます。子どもたちにとって福音となる、これらのワクチンが社会に広く普及することが望まれます。

2010年9月1日水曜日

「生理痛の原因と子宮内膜症」

ゲスト/札幌駅前アップルレディースクリニック 工藤 正史 院長

生理痛の原因について教えてください。
 生理痛の症状を訴える女性のうち、約5パーセントが日常生活を制限されるほどの生理痛を経験し、治療を必要とするといわれています。生理痛は、子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮内膜症や、クラミジアや淋菌(りんきん)感染などの後遺症による骨盤腹膜の癒着性病変など器質的疾患が認められる(病気が隠れている)場合と、原因となる病気のない機能的月経困難症とに分類されます。
 
最近、若い女性に増えている子宮内膜症とはどのような病気ですか。
 子宮内膜症は、子宮という名は付いていますが、子宮以外の部位に起こる病気です。卵巣、卵管、膀胱(ぼうこう)、腹膜、膣(ちつ)壁、直腸のほか、まれに肺に発症することもあります。
 子宮内膜とは、子宮の内側を覆っている粘膜です。妊娠が成立しないときは増殖した子宮内膜は不要となってはがれ落ち、血液などと一緒に体外へ排出されます。これが月経です。子宮内膜症は、本来であれば子宮の内側だけに存在するはずの子宮内膜組織が、子宮の内側以外のところで発生して増殖する病気です。子宮以外の場所には、不要となった子宮内膜が排出されるところがないため、出血した血液はその部分にたまってしまい、痛みを主に血尿などさまざまな症状を引き起こします。周囲の臓器と癒着して不妊症や子宮外妊娠の原因となるのも特徴です。
 治療は、対症療法と内分泌療法、外科療法になります。生理痛の痛みが強い女性は、子宮内膜からプロスタグランジンという物質が多く産生されており、これが痛みの原因となっています。プロスタグランジンの産生を阻害する薬を飲むことが対症療法で、出血が始まったらすぐに服用するのがコツです。鎮痛剤が効きにくい場合、低用量のピルを用いた内分泌療法を行います。ピルは経口避妊薬ですが、生理痛だけでなく、生理前の症状(イライラ・気分の落ち込みなど)や月経不順などの症状も改善します。また、鎮痛剤と異なり、子宮内膜症に対して治療的に働くなどのメリットもあります。薬やピルでは治療困難の場合には、外科療法が効果的で、現在は体にかかる負担の少ない腹腔(ふくくう)鏡で行う手術が主流です。
 痛みを我慢して過ごす時間は人生の大きな損失です。いたずらに怖がることなく、まずは専門医を受診することをお薦めします。

2010年4月7日水曜日

「子宮頸がんの予防ワクチン」

ゲスト/札幌駅前アップルレディースクリニック 工藤 正史 医師

子宮頸がんの予防ワクチンについて教えてください。
 子宮頸がんがワクチンで予防できる時代になりました。子宮頸がんは初期の段階ではほとんど自覚症状がなく、しばしば発見が遅れます。20~30代で急増しているがんであり、日本人では年間約1万5000人が発症していると報告されています。
 子宮頸がんの原因となるのは、発がん性ヒトパピローマウイルス(HPV)です。HPVは性的接触で感染します。HPVの感染は一時的なもので、約90%は自然に体内から排除されますが、残りの約10%は感染が持続し、そのうちの約1%が子宮頸がんを発症します。このHPVは特別な人だけが感染するのでなく、多くの女性が一生のうちに一度は感染するありふれたウイルスです。子宮頸がんと関係あるHPVには15種類ほどのタイプがあり、その中でも16型、18型は子宮頸がん患者の約60~70%の感染率となっています。ワクチンは、この16型、18型の感染を防ぐものです。
 HPVに感染する可能性が低い10代前半にこの子宮頸がん予防ワクチンを接種することで、子宮頸がんの発症を約70%減らす効果があると考えられています。残りの約30%のがんを早期発見するためには、子宮頸がん検診の受診も必要です。公的な子宮頸がん検診は、20歳以上を対象として2年に1回の受診間隔で実施されています。 10代でワクチンを接種し、20歳を過ぎたら定期的な子宮頸がん検診を受けることが、効果的な予防・早期発見・治療のためには理想的です。
 また、40歳でも3~4割程度の効果がありますので、45歳くらいまではワクチン接種のメリットはあると考えられます。

具体的にワクチン接種はどのように行いますか。
 接種は、10歳以上の女性に3回、腕の筋肉に注射します。2回目は1カ月月後、3回目は初回の6カ月後です。主な副反応は、痛みとかゆみです。世界ではすでに96カ国で小学生や中学生の女子にワクチンを接種しています。課題は、ワクチンの値段が3回の接種で約5万円かかることです。ただし、このワクチンは3回の接種だけで長期(約20年以上)にわたって抗体価が維持され、予防効果が持続します。公費による補助が実現する可能性もありますが、おそらく年齢制限が設けられ、全額無料になるかは未定です。

2009年9月24日木曜日

「ピルについて」について

ゲスト/札幌駅前アップルレディースクリニック 工藤正史 医師

ピルについて教えてください。
 ピルには、エストロゲンとプロゲステロンというホルモンが低用量含まれています。このホルモンは通常、女性の卵巣から分泌されているホルモンで、ピルを服用することによって、体のホルモンバランスを妊娠しているときのような状態にさせて排卵を抑制します。ピルは1日1 錠を毎日飲みます。ピルと聞くと「副作用がある」と不安になる人がいますが、多くは何も症状がないか、飲み始めに軽い吐き気、頭痛、不正出血などが見られる程度です。また「ピルを飲むと太りますか?」と聞かれますが、飲んで太るのはホルモン量が多い中用量ピルのことで、低用量ピルで太ることはほとんどありません。
 ピルは避妊の作用以外にもさまざまなメリットがあります。まず、生理周期が規則正しくなり、生理量が減り貧血を軽減します。生理痛も軽くなり、生理前の落ち込みやいらいらなどの精神症状が緩和されます。また、子宮内膜症の進行にブレーキをかけ、ニキビや多毛症の改善にも役立ちます。特に注目されるのは、卵巣ガン、子宮体ガンの予防効果で、 50%もリスクが低くなるといわれています。さらに、良性の乳房疾患と大腸ガンの発生を抑制することは、あまり一般には知られていません。加えて、生理日をコントロールすることが可能です。赤ちゃんが欲しくなったら、ピルの服用を止めれば、3ヵ月以内に90%以上の確率で自然な排卵を回復します。
 ピル服用による効果は、避妊のみならず女性の生活の質を向上させる可能性が高いのです。また札幌市の人工妊娠中絶率はどの年代でも全国平均を大きく上回っているという統計があります。

避妊に失敗した時に飲むピルもあると聞きましたが?
 この方法は、望まない妊娠を避けるために、性交が行われてから72時間以内に中用量ピルを2錠服用し、その12時間後にさらに2錠追加し、服用するというものです。最初の服用が早い方が、避妊効果は高くなります。妊娠を回避できない確率は、10~数%程度といわれています。仮に回避できない場合でも、胎児に悪影響はありません。
 副作用は、悪心嘔吐や頭痛、乳房緊満感などです。ただし、長期に続くものではありません。しかし、これはあくまで緊急避難的な方法であって、常用するものではありません。

2009年2月18日水曜日

「不妊治療」について

ゲスト/札幌駅前アップルレディースクリニック 工藤 正史 医師

不妊について教えてください。

生殖機能が正常なカップルの場合、3カ月以内に約50%、6カ月以内に約70%、1年以内に90%近くが妊娠に至るとされています。不妊治療をいつ開始するかは、夫婦の年齢と妊娠を希望する程度によります。わが国では、2年以上経過しても妊娠が成立しない場合を不妊症と見なし、検査治療を開始することが一般的ですが、欧米では1年という見解が有力です。生殖医療が急速に進歩した現在においても依然として、多くの施設における最終的累積妊娠率(すべての初診患者で最終的に妊娠に至る率)は、50%程度です。残りの50%は、治療が中断されたことになります。不妊症は、ほかの疾患と異なり、治療しなくても本人への影響はありません。その意味では、不妊は病気とはいえないかもしれません。

不妊治療する場合の注意点を教えてください。

 不妊で悩むカップルは10組に1組と多く、2006年は、出生児の55.5人に1人(年間1万9587名)が体外受精・顕微授精などの高度不妊治療によって誕生しているのが現実です。
いつ不妊治療を開始するかは、個人差はありますが、35歳を過ぎると妊娠する能力は低下するので、なるべく早く始めた方が妊娠の確率が高くなるといえます。
治療後2年以内に妊娠する割合は、初診時の年齢が35歳未満で75%なのに対し、35歳以上では50%に低下するとされています。また、38歳を超えている場合は、体外受精胚移植における妊娠率も低下することから、できるだけ早期に治療を開始することが望ましいです。不妊治療を始めると、当然妊娠への期待が高まり、月経が来ると挫折感を感じるなど、心理的消耗を強く感じる場合があります。
人によっては治療期間が数年にわたる場合も少なくありません。さらに、治療の開始と同様に、いつまで治療をするかも難しい問題です。治療を開始する前に、いつまで、どこまでの治療を求めるかを考えておくことも大切です。
不妊治療は、努力をしても報われないかもしれないゴールの見えないマラソンに例えられます。しかし、このマラソンは決して競争ではありません。時には、コースを変更したり、少し休むことが必要です。大切なのは、自身とパートナーの気持ちだと思います。

2008年8月20日水曜日

「~新しい小児用ワクチン~ヒブワクチンとロタワクチン」について

ゲスト/産科・婦人科 はしもとクリニック 橋本 昌樹 医師

ヒブワクチンについて教えてください。

ヒブ(Hib)は、ヘモフィルス属インフルエンザb型菌という細菌で、よく知られているインフルエンザウイルスとは、まったく別のものです。ヒブが血液や肺の中に侵入すると、髄膜炎や敗血症、急性喉頭(こうとう)蓋炎などの重い病気を引き起こします。日本では年間500~600人程度の乳幼児がヒブによる髄膜炎にかかっていると言われており、その死亡率は5%、後遺症が残る確率は20%程度です。諸外国ではすでにヒブワクチンを定期接種として採用しており、ヒブによる深刻な病気は100分の1程度に激減しています。WHO(世界保健機関)も乳児への定期接種を推奨する声明を出していますが、日本でもようやく認可され、今年の秋ごろには接種できる見通しです。接種の回数は3種混合と同じ4回で、3種混合ワクチンと同じ日に接種することができますが、ほかの日での接種も可能ですので、小児科の医師とよく相談してください。

ロタワクチンについて教えてください。

ロタ(Lota)は、乳幼児に見られる重症の下痢の主な原因となっているウイルスで、発展途上国を中心に世界中で年間60万人もの子どもの命を奪っています。先進国では、死に至ることはまれですが、毎年22万人の子どもたちが入院し、治療を受けています。日本でも小学校に上がるまでに2人に1人が外来を受診し、14~40人に1人が入院しているという報告もあります。ロタワクチンは、世界では100カ国以上の国々ですでに使用されており、定期予防接種に組み入れている国もあります。このロタワクチンは注射ではなく、口から接種できる点が良いところで、2回接種するタイプと3回接種するタイプの2種類があります。残念ながらいずれのワクチンも日本ではいまだに認可されていませんので、摂取することはできません。近い将来利用できることが期待されています。
日本の小児定期接種ワクチンはBCGをはじめ7種です。これに対し、アメリカでは16種と倍以上に及び、ヒブワクチン、ロタワクチンも組み込まれています。日本の子どもたちにも、早くこれらのワクチンが利用できるようになることが望まれます。

2008年7月16日水曜日

「尖圭(せんけい)コンジローマ」について

ゲスト/アップルレディースクリニック 工藤 正史 医師

尖圭コンジローマについて教えてください。

尖圭コンジローマとは、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染による性感染症のひとつで、性器や肛門周辺にたくさんのイボができます。HPVには良性型と悪性型があり、尖圭コンジローマは良性型が原因といわれていますが、まれに悪性型が見つかることがあり、悪性型は子宮頚(けい)がん、陰茎がんと関係が深いといわれています。HPVはほとんどの場合、性交や類似する行為によって感染します。コンドームを使用して皮膚や粘膜が触れ合うことを避けることで、多少は予防効果がありますが、広い範囲が感染している場合は、予防できません。手指、器具などを介して感染することもまれにあるようです。
一般に感染してからイボができるまで3週間から8カ月(平均2.8カ月)。潜伏期間が長い上、期間も人によってさまざまなので、症状が現れた時点で「誰から感染したのだろう」と考えても、パートナーが長期間一定していない場合は特定することが困難です。年代としては、20代の男女にもっとも多くみられます。尖圭コンジローマに限らず性感染症にかかったら、パートナーも検査・治療を受けないと、パートナーから再感染する「ピンポン感染」を防げません。

症状、治療法について教えてください。

尖圭コンジローマのイボは、乳頭状、カリフラワー、ニワトリのとさかのような、と表現され、巨大化することもあります。イボ以外にかゆみや痛みがないことから、病気に気付きづらく非常にやっかいです。女性の場合は子宮がん検診や産婦人科の検診で偶然発見されることがあります。
治療は、直接イボをとってしまう外科的療法と、塗り薬の処方が一般的です。手術によって目に見えるイボをとっても、周辺部まで感染が及んでいる場合は再発も考えられます。日本では、2007年12月に厚生労働省から認可された塗り薬があります。これは、週3回就寝前に塗布して、起床後に薬剤を石けん水または温水で流します。
治療は長期に及ぶことが多く、一度治療しても再発する場合があるので、定期的に診察を受ける必要があります。

2007年12月5日水曜日

「不正性器出血」について

ゲスト/アップルレディースクリニック 敦賀 律子 医師

不正性器出血について教えてください。

 不正性器出血と言っても原因はさまざまです。腫瘍(しゅよう)などが原因の器質性のもの、ホルモンバランスなどが原因の機能性のもの、そして妊娠性のものがあります。器質性のものとしては、子宮頸(けい)管ポリープ、子宮筋腫、子宮内膜ポリープ、子宮頸がん、子宮体がんなどがあります。  子宮頸管ポリープは子宮の入り口にあたる子宮頸部にできる良性腫瘍で、まれに悪性の細胞を含むことがあるので摘出して確認する必要があります。子宮筋腫、子宮内膜ポリープは超音波検査で診断します。子宮筋腫の場合、子宮の内側にできる粘膜下筋腫は小さくても出血の原因となり、貧血、大出血につながることもあるので手術を勧めます。子宮頸がんは子宮頸部にできる悪性腫瘍です。近年若い女性の子宮頸がんが増えており、市町村の検診対象年齢が2004年から20歳以上に引き下げられました。不正性器出血がある場合最も重要な検査です。子宮体がんは特に閉経後の出血があったときには検査の必要があります。一般に「子宮がん検診」といった場合、子宮頸部細胞診のみのことが多いので注意が必要です。

機能性の出血について教えてください。

 機能性のものとしては、生理と生理の中間にあたる排卵期に起こる排卵期出血、黄体期(生理前の約10日間)の黄体機能不全による出血、更年期に起こる月経前後の長く続く出血などがあり、出血の時期に特徴があります。基礎体温表をつけていると診断の参考になるので受診の際には持参してください。自然経過観察することが多いですが、出血の程度によってはホルモン剤や止血剤を投与します。また、機能性出血と考えられる場合でも悪性の器質性疾患(しっかん)がないことを確認することが大切です。  妊娠のごく初期に出血が見られることがあります。この場合、正常妊娠の着床時出血のこともありますが、流産、胞状奇胎、子宮外妊娠などの異常妊娠の可能性もありますので注意が必要です。どの疾患かは婦人科を受診して検査してみないと分かりませんから、自己判断せずに早めに受診することをお勧めします。

2007年3月28日水曜日

「月経前症候群」について

ゲスト/アップルレディースクリニック 敦賀 律子 医師(非常勤)

月経前症候群について教えてください。

 月経が始まる前に、気分が落ち込む、イライラするなどの精神的症状や、頭痛やむくみ、腰痛などの体調不良を感じたことはありませんか。これは、月経前症候群(PMS)と呼ばれるもので、通常、月経の2週間から1週間ほど前から起こり、月経が開始すると、症状も消失します。排卵後に卵巣から分泌される黄体ホルモンという女性ホルモンによるのではないか、脳で分泌されるβーエンドルフィンという物質が月経前に急激に低下するためではないか、神経情報を伝達するセロトニンが低下するためではないかなど、いくつかの原因が考えられていますが、いずれも、確定はしていません。
 症状とその程度は人それぞれで、何となくだるい、胸が張る、肩が凝る、イライラするという程度の人から、朝、寝床から抜け出すことができない、ふさぎ込んで仕事へ行けない、落ち込んで泣き出してしまうという、日常生活に支障が出る人までさまざまです。

予防法や治療法はありますか。

 月経痛は、体のリズムからくる一時的なものとして受け入れている女性がほとんどです。しかし、月経前症候群は、当事者が原因に思い至らず、さまざまな症状に悩まされている場合が多いのが実情です。定期的に体調や精神面での変化を感じたら、手帳でもいいので、その時期を書き留めておくといいでしょう。「月経前のこの時期に現れる症状」と認識するだけで、体調的、精神的な不安から解放されます。症状がひどい場合は、専門医を受診してください。治療としては、頭痛、腰痛など痛みには鎮痛剤、イライラやうつ状態には安定剤や抑うつ剤など、対症療法が中心になります。あまり症状がひどい場合には低容量ピルによるホルモン療法を行う場合もあります。
 日常生活の中では、ストレスなく、ゆったりとした気持ちで過ごせる環境が大切です。カフェインは症状を悪化させる恐れがあるので、取り過ぎないようにしましょう。あまり神経質にならず、体のリズムとして受け入れ、やり過ごすことが肝心です。

2006年11月1日水曜日

「緊急避妊ピル」について

ゲスト/産科婦人科はしもとクリニック 桑原 道弥 医師

緊急避妊ピルについて教えてください。

 通常のピルは、低用量ピルを日々定期的に内服することによって排卵を抑制し、妊娠しないようにしますが、緊急避妊ピルは無防備な性交の後に中用量ピル(ドオルトンまたはプラノバール)を飲むことで妊娠しないようにします。無防備な性交とは避妊しなかった、避妊に失敗した、レイプされたなどです。モーニングアフターピルとも呼ばれ、性交の72時間以内にできるだけ早く中用量ピルを2錠内服し、その12時間後に再度同じ薬を2錠内服します。120時間までであれば避妊効果はあるようですが、その効果は減弱するようです。
 この避妊法は受精卵が着床してからでは効果はありませんから、避妊法として確実ではありません。無防備な性交の後に緊急避妊ピルを72時間以内に内服した場合の妊娠率は3%前後という報告があります。ただし、排卵周辺期(排卵5日前頃~排卵日)に限れば、妊娠の可能性を75%減らす程度との報告があります。

副作用はありますか?

 副作用として、最も多い症状が吐き気です。およそ半数の人に現れます。食後の内服や就寝時に牛乳などとともに内服することで発現率が減少します。そのほかに、倦怠(けんたい)感、下腹部痛、頭痛、嘔吐(おうと)、めまい、乳房緊満感などがあります。内服後2時間以内に嘔吐した場合は、できるだけ速やかにもう一度同量の薬を内服する必要があります。内服が困難な場合は膣内投与という方法もあります。2時間以上経過していれば薬は十分吸収されていますので、追加投与の必要はありません。
内服のタイミングによっては、排卵の遅延が起こることがあります。この場合、内服後に妊娠する可能性があります。避妊が成功した場合は、内服後早ければ3~4日、遅くても3週間以内に月経が起こりますので、それまでは他の方法で避妊をしてください。
内服後3週間たっても月経が来ない場合は、妊娠の可能性があります。妊娠してしまった場合に、緊急避妊ピルが胎児に悪影響を及ぼすという報告はありません。

2006年9月27日水曜日

「更年期障害」について

ゲスト/札幌南二条産科・婦人科 熊井 健得 医師

更年期障害について教えてください。

 WHO(世界保健機関)では閉経を「卵巣における卵胞の消失による永久的な月経の停止」と定義しています。平均年齢はおよそ50歳です。
更年期に明確な定義はなく、一般に閉経前・閉経期、閉経後の40~60歳の期間を指します。この期間は卵巣の機能低下に伴う女性ホルモンの減少、欠落により心身にさまざまな症状が、不定愁訴として現れます。更年期の不定愁訴を更年期障害といい、症状によっては治療が必要となる場合があります。
具体的な症状としては、機能性出血、ほてり、のぼせ、異常発汗、動悸(どうき)、めまいなどの血管運動神経症状、憂うつ、不眠、頭重感などの精神神経症状などが挙げられます。また、性交時疼痛(とうつう)症、尿失禁、骨粗しょう症、高血圧などを伴う場合もあります。
さらに、高脂血症など加齢による症状や、子どもの独立など環境の変化による心因的症状などが重なることも多く、女性の心身に大きな変化が現れる時期です。

診察と治療について教えてください。

 診察は、初診時に月経歴と症状が出た時期、程度について問診で確認します。さらに、心理的要因が大きい場合は、環境や心理状態を把握するために、十分に時間をかけて問診します。加齢によるほかの病気の可能性を除外するために、血液や尿の検査、生化学検査、内診、子宮膣(ちつ)部細胞診、子宮内膜細胞診、経膣超音波検査による子宮・卵巣の疾患の有無も確認します。
 治療としては、ホルモン補充療法、漢方療法のほか、鎮痛剤、抗不安薬、抗うつ薬などによる対処療法を行います。心理的要因が大きい場合は心理療法の併用が有用です。ホルモン補充療法では、卵巣からの分泌不全の場合は、エストロゲンとプロゲストロンを投与しますが、子宮がない場合はエストロゲン単独になります。エストロゲンの投与によって、乳がん、単独療法で子宮内膜がんの発症のリスクが懸念されますが、適切な治療と定期的な各種がん検査を行っていれば、過剰に心配することはありません。リスクも含めて、信頼のおける主治医とよく話し合い、納得のいく治療を受けましょう。

2006年7月12日水曜日

「多毛症」について

ゲスト/アップルレディースクリニック 工藤正史 医師

多毛症について教えてください。

 多毛症とは、軟毛の硬毛化(軟らかい毛が硬くなること)のことをいうのであり、毛の本数自体が増えることではありません。女性や小児にみられる男性型の発毛状態をいいます。この男性型多毛症の90%は、PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)と特発性多毛症が原因です。女性であっても、男性ホルモン(アンドロゲン)を分泌していますが、過剰分泌すると体毛が硬毛化し、本来軟らかくて目立たない部位の体毛が、毛深く見えるようになります。アンドロゲンとは、男性化作用を持つホルモンの総称で、思春期以降に精巣、卵巣、副腎から分泌されます。80%は卵巣から分泌され、通常は分泌量が少量であるため、脇毛、陰毛にのみ硬毛化が見られますが、過剰に分泌する場合は、ヒゲや髪、胸毛、背中、四肢の毛が硬毛化し、「多毛症」となります。

PCOSと多毛症の治療について教えてください。

 PCOSは、卵巣が多嚢胞化・腫大し、月経異常、無排卵を招き、不妊の原因となる症候群で、さまざまな症状の一つが多毛です。原因は黄体化ホルモン(排卵を指示するホルモン)が過剰分泌することによって、男性ホルモンの過剰分泌を引き起こすと考えられています。ただし、日本人で多毛を示すことはそれほど多くはありません。
 すでに生じてしまった硬毛の治療は、電気凝固、脱毛クリーム、脱色法、レーザー脱毛などの美容的脱毛療法しか方法はありません。新たな硬毛化を抑えるためには、薬剤、外科的療法によりますが、全身的多毛治療としては、低用量ピルと利尿薬のスピロノラクトンの薬剤療法をお勧めします。
 低用量ピルは、卵巣からの男性ホルモンの分泌を抑えます。スピロノラクトンは卵巣からの男性ホルモンの分泌を減少させ、多毛症を改善します。スピロノラクトンは、高血圧の治療薬ですが、正常な血圧に影響を及ぼすことは通常ありません。副作用として、不正出血や月経回数が多くなることがありますが、低用量ピルと併用することによって、コントロールが可能です。ただし、臨床的効果が認められるまで6カ月程度は必要です。

2006年4月5日水曜日

「更年期障害の薬物療法」について

ゲスト/はしもとクリニック 橋本 昌樹 医師

更年期障害の薬物療法について教えてください。

 主にホルモン補充療法と漢方療法があります。ホルモン補充療法(HRT)は、飲み薬と張り薬を中心に、エストロゲンというホルモンを補っていく治療法です。
 ほてり、のぼせ、動悸(どうき)、冷え、不眠、耳鳴り、肩こり、イライラといった症状が現れたら、まず、婦人科の専門医を受診しましょう。更年期障害であれば、診察と問診でおおよその見当がつきます。治療を始めると、早ければ1、2週間から1カ月ほどで、症状が劇的に改善されることも少なくありません。エストロゲンには骨の形成を促す作用があり、特に閉経後は急速に骨量が減りますので、ホルモン補充療法をすることにより、骨粗しょう症の予防にも大きな効果が期待できます。
 一方で、ホルモン治療に対しては、がんの発症を心配する人も少なくありません。米国の大規模臨床試験でホルモン補充療法を長期間(5~10年以上)続けると、乳がんや心臓病のリスクが高くなるという報告があります。6カ月から1年に一度の血液検査、子宮がん検査(頚部=けいぶ=、体部)、乳がん検査などが必要です。ホルモン補充療法には更年期のつらい症状を改善したり、骨粗しょう症の予防、さらに皮膚の若さを保つなどの効果もあります。薬の種類や組み合わせ、使用する期間などを考慮することにより副作用の少ない治療が可能です。

ホルモン治療を避けたい人は、どうしたら良いでしょうか。

 漢方治療は、ホルモン治療を希望しない方や、加齢の流れの中でつらい症状を一つずつゆっくり取り除きながらホルモンの減少に体を慣らしていきたいという方に向いている治療法です。漢方薬は幾つかの生薬を組み合わせて用いられ、体調や体質に合わせて様々な種類があります。例えば当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、加味逍遙散(かみしょうようさん)にはセリ科のトウキの根が入っていて、のぼせや発汗、冷えなどを改善する作用があります。病院、クリニックで処方する漢方薬はエキス剤(製薬会社が生薬をせんじて乾燥)が主で、健康保険が適用されています。

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