2009年2月18日水曜日

「不妊治療」について

ゲスト/札幌駅前アップルレディースクリニック 工藤 正史 医師

不妊について教えてください。

生殖機能が正常なカップルの場合、3カ月以内に約50%、6カ月以内に約70%、1年以内に90%近くが妊娠に至るとされています。不妊治療をいつ開始するかは、夫婦の年齢と妊娠を希望する程度によります。わが国では、2年以上経過しても妊娠が成立しない場合を不妊症と見なし、検査治療を開始することが一般的ですが、欧米では1年という見解が有力です。生殖医療が急速に進歩した現在においても依然として、多くの施設における最終的累積妊娠率(すべての初診患者で最終的に妊娠に至る率)は、50%程度です。残りの50%は、治療が中断されたことになります。不妊症は、ほかの疾患と異なり、治療しなくても本人への影響はありません。その意味では、不妊は病気とはいえないかもしれません。

不妊治療する場合の注意点を教えてください。

 不妊で悩むカップルは10組に1組と多く、2006年は、出生児の55.5人に1人(年間1万9587名)が体外受精・顕微授精などの高度不妊治療によって誕生しているのが現実です。
いつ不妊治療を開始するかは、個人差はありますが、35歳を過ぎると妊娠する能力は低下するので、なるべく早く始めた方が妊娠の確率が高くなるといえます。
治療後2年以内に妊娠する割合は、初診時の年齢が35歳未満で75%なのに対し、35歳以上では50%に低下するとされています。また、38歳を超えている場合は、体外受精胚移植における妊娠率も低下することから、できるだけ早期に治療を開始することが望ましいです。不妊治療を始めると、当然妊娠への期待が高まり、月経が来ると挫折感を感じるなど、心理的消耗を強く感じる場合があります。
人によっては治療期間が数年にわたる場合も少なくありません。さらに、治療の開始と同様に、いつまで治療をするかも難しい問題です。治療を開始する前に、いつまで、どこまでの治療を求めるかを考えておくことも大切です。
不妊治療は、努力をしても報われないかもしれないゴールの見えないマラソンに例えられます。しかし、このマラソンは決して競争ではありません。時には、コースを変更したり、少し休むことが必要です。大切なのは、自身とパートナーの気持ちだと思います。

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