2006年10月25日水曜日

「口腔(こうくう)機能の老化予防」について

ゲスト/篠路病院 斉藤 巌 医師

老化予防について教えてください。

 加齢とともに、さまざまな機能が減退することを老化といいます。避けることはできませんが、日常生活の中のちょっとした努力で、老化を遅らせることができます(アンチエイジング)。例えば、歩くことで足腰が鍛錬され、考えることで脳の老化を予防する。みんなが知っていることですが、毎日実行しようと思うと、なかなか難しい。特に、病気やけが、体力低下などによって、家にこもりっきりになると、どんどん能力が減退し、外出が面倒になるという悪循環に陥ります。全身の老化予防というと、かなり広い範囲の話になってしまいます。ここでは、あまり知られていない口や舌を動かすことによる老化予防を紹介します。誰もが簡単に実行できる老化防止の対策です。高齢になると口や舌は食べること話すことから、食べる機能だけに退化しがちで、それさえもむせるなどして誤嚥(ごえん)性肺炎の原因になっていきます。脳神経系の老化変性による障害です。これを健全な方向に引き戻す練習として、シンプルな方法を患者さんに勧めています。

具体的な方法を教えてください。

 年を取ると人付き合いが減り、しゃべる機会が減ってしまいがちです。一人暮らしだと、さらにその傾向は顕著で1日中誰ともしゃべらないということも珍しくありません。口の開閉や発声を行わないと、会話に必要な発声筋がこわばり、筋力低下から舌足らず、スムーズに話すことができない構音障害になりやすくなります。また脳の血流が悪くなり、痴呆など全身の衰えにつながる可能性もあります。 
口腔機能の老化防止の方法としては、
(1)口を大きく開けたり閉じたりする
(2)舌を大きく出す、引く練習
(3)舌の形を細長くする、平べったくする。
(1)~(3)をいずれも10~20回行うという簡単な口の体操です。 

また、下顎(あご)からのどにかけてなでるようにマッサージするだけでも同様の効果があります。手が不自由な人には家族がやってあげるといいでしょう。顔全体をなでる自己マッサージも筋肉の緊張を解きほぐし、不安や抑うつ反応を和らげ、メンタルヘルスの自己コントロールになります。 充実した人生がより長く続くように、早めに老化予防に取り組みましょう。

2006年10月18日水曜日

「理想的な矯正治療の開始時期」について

ゲスト/宇治矯正歯科クリニック 宇治正光 歯科医師

歯の矯正治療には適正な開始時期というのがありますか。

 矯正治療の技術は躍進的に進歩しており、歯やその周りの歯周組織が健康であれば、年齢にかかわりなく、ほとんどの症例に対して治療可能であるといえます。骨格的偏位(ずれ)が前後左右的に大きい場合には、外科矯正やインプラント(人工歯根)矯正を併用することによって、きれいなかみ合わせにすることが可能です。

より理想的な矯正開始時期について教えてください。

 例えば、上顎(がく)前突(出っ歯)の場合、一般的に上あごが出ているように思われがちですが、下あごが小さいことが原因であることが多いのです。このまま放置して成人(あごの成長の望めない年齢)になると、抜歯や外科矯正になる可能性が高くなります。この場合の最適正時期は9~11歳です。バイオネーターなどの機能的顎矯正装置と呼ばれるものを夜間に寝るときだけ使用してもらうことで、下顎骨の前方成長を促し、バランスの取れた横顔にすることができます。横にも拡大することができるので、抜歯をしなくてはいけない確率も下げることになります。
すなわち、適正な時期に矯正治療を開始することで、骨格のコントロールを行い、上下顎をバランスの良い状態にして、抜歯率や外科矯正率を下げることができるのです。決して歯を抜く治療がいけない治療といっているのではなく、適正な時期に始めることにより選択肢が広がるということです。
また、下顎(がく)前突(受け口)の場合、一般的に下あごがより前方に成長するのを抑制したり、小さめの上あごが前方に成長するのを促進したりします。この場合、最適正時期は6~9歳です。乳歯列の時期に夜寝るときだけの装置で治療することもできます。
ご自分のお子さんが気になる場合は、いずれも、前歯だけを見ていたのでは判断が難しいので、左右的なずれも含めて、小学校低学年のうちに一度、専門医にご相談されることをお勧めします。

2006年10月11日水曜日

「子どもと大人の屈折異常」について

ゲスト/ふじた眼科クリニック 藤田 南都也 医師

子どもの屈折異常について教えてください

 屈折異常とは、近視や遠視、乱視などのことです。網膜より手前で焦点が結ばれてしまうのが近視、網膜より後ろに焦点がきてしまうのが遠視です。
 学童期の子どもで良く問題になるのが近視です。授業中に黒板の文字が見えづらくなったなどの症状が出たら、すぐに眼科を受診してください。近視には、いわゆる仮性近視の段階と、治らない近視があり、目薬の検査によってどちらか判明します。仮性近視の場合は、すぐにメガネを作らなくても、睡眠前の点眼や視能訓練などによって、ある程度改善が見込めます。近視の場合は、視力に合ったメガネをかけて、授業に遅れをとらないようにします。
 子どもで問題となるもう一つの屈折異常は遠視です。近くも遠くもはっきりと見えない状態なので、早めの視力矯正治療が必要です。遠視用メガネを日常的に使用しますが、「子どもにメガネはかわいそう」などといって、矯正を怠ると、脳の視力に関係する神経回路が育たず、そのまま成長し、弱視になってしまうことがあります。必ず治療は受けさせてください。強い乱視の場合も同様にメガネで矯正し、弱視予防の治療をします。いずれにしても遠視や乱視の治療は中学生になってからでは手遅れで、できれば小学校入学前の眼科受診が望ましいです。

大人の屈折異常について教えてください。

 加齢によって目の機能が衰えてきますが、代表的なものが老眼(老視)です。ピントを合わせる水晶体の厚さを調節する力が弱まり、近くや遠くのものが見えづらくなります。40歳以上で、最近ものが見づらくなったと感じたら老眼を疑ってください。こういう場合メガネをかけると見やすくなるだけではなく目も疲れにくくなります。さらに遠視の方の場合、目の中の圧力が高くなりやすく、緑内障になることもあります。緑内障を未然に予防するには、一度はきちんと検査を受けるといいでしょう。
一方、視力0.1以下の強い近視の人は、網膜はく離を起こしやすいので、眼底の散瞳検査をお勧めします。早いうちなら、レーザー治療が可能ですが、実際にはく離を起こしてしまうと、通常手術が必要になります。視界に黒い点や糸が浮遊する飛蚊(ひぶん)症が出てきたり、キラキラとした光を感じる光視症などの症状があったら、一度眼科の診察を受けてください。

2006年10月4日水曜日

「メタボリック・シンドロームと動脈硬化」について

ゲスト/大通り内科クリニック 小森克俊 医師

メタボリック・シンドロームとは何ですか。

 メタボリック・シンドロームは、2005年春に日本内科学会など8つの学会が合同で定義と診断基準を発表しました。欧米の診断基準との最大の違いは内臓脂肪の蓄積が必須条件となっていることです。ウエストまわり(一番細いところではなく、おヘソの部分)が、男性で85cm以上、女性で90cm以上。加えて、高中性脂肪血症、高血圧、糖尿病(予備軍を含む)のどれか2つ以上が当てはまれば、メタボリック・シンドロームと診断されます。糖尿病、高血圧、高脂血症などの生活習慣病は、それぞれの程度が軽くても、複数の症状が重なると動脈硬化の危険性が高まります。動脈硬化は、日本人の3大死因のうち、脳血管障害と心疾患をもたらす病因の一つとなっています。つまり、メタボリック・シンドロームと診断された場合は、動脈硬化となりうる可能性が高いということなのです。

メタボリック・シンドロームと診断された場合の注意点を教えてください。

 高脂血症、高血圧、糖尿病の中で、特に糖尿病は、ここ数年、日本で患者数が急増している生活習慣病です。糖尿病の主な原因は、食生活の欧米化による動物性脂肪の取り過ぎや運動不足です。健康維持には、糖質が60%程度、脂肪とタンパク質がそれぞれ20~25%程度の食事が理想的ですが、これは米や野菜、魚を中心とした一般的な和食の数値です。昔からこのような食事を続けてきた日本人は、欧米人に比べて膵臓(すいぞう)から分泌されるインスリンの量が少なく、元来糖尿病になりやすい体質を受け継いでいるといえます。肥満、高血圧の人、また、甘いもの、アルコール、高脂肪の食事を好む人は予備軍の可能性があります。ただし、体質も大きく関係しており、同じ生活をしても病気になる人とならない人がいます。近親者に糖尿病患者がいる場合は特に注意が必要です。40歳になったら年に1度は専門医の検診を受け、メタボリック・シンドロームと診断されたら、まずは食生活の改善と運動を心掛けましょう。健康で長生きするためには、まず自分が予備軍かどうかを知ることが大切です。

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