<ぜんそくの検査で、呼気一酸化窒素測定とはどのようなものですか>
呼気一酸化窒素測定とは、専用の機械に向かって10秒間ほど息を吐いてもらい、その中の一酸化窒素(NO)の濃度を測定する検査です。
NOは「NO合成酵素」によって産生されます。NO合成酵素は神経細胞や血管内皮細胞などのほか、気道内にも存在します。気道内のNO合成酵素は、主に気道内にアレルギー性の炎症がある時に活性化し、NO合成酵素が活性化すると呼気中のNO濃度が高くなります。
アレルギー性のぜんそくでは、好酸球などの炎症細胞によって気道に炎症が引き起こされます。呼気中のNO濃度から、ぜんそくの可能性や状態を明らかにし、診断や治療に用いられるのが呼気一酸化窒素測定で、公的医療保険の適用となっています。ぜんそくの治療は、吸入ステロイドが中心となります。患者さんが一定期間、吸入ステロイドで治療した後にNO濃度を測定すると、治療前の値との比較によって治療効果の判定に役立ちます。また、ぜんそくの前段階であり、長引くせきが特徴であるせきぜんそくでも、呼気中のNO濃度が高くなるケースが多いので、例えば風邪やインフルエンザによるせきなのか、ぜんそくやせきぜんそくによるせきなのかを鑑別するのにも役立つ検査で、せきの症状で吸入ステロイドを処方するかどうかを判断する目安となる検査ともいえます。
ただし、測定結果の解釈には注意が必要です。一般的に、アレルギー性鼻炎やアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患がある方は、呼気中のNO濃度は高くなります。また、硝酸塩を多く含むホウレンソウ、レタスなどの食品を摂取した後にはNO濃度は高くなります。そのほか、ウイルス感染、例えば風邪をひいた後でも呼気中のNO濃度は高くなりますし、また普段タバコを吸っている方のNO濃度は低くなりやすいです。
日本人の健常者における呼気中のNO濃度の正常の上限値は、約37ppb(10億分の37)とされています。22ppb以上であればぜんそくの可能性があり、37ppb以上であればぜんそくの疑いが強いとされています。実際には、呼気中のNO濃度の値だけではなく、呼吸機能検査など他の検査結果にも注意を払います。
呼気NO濃度測定の有用性としては、ぜんそくやせきぜんそくなどの診断の精度を上げ、気道内の炎症の程度を把握し、また吸入ステロイドの有用性を予測したり効果を確認したりできる点にあります。
白石内科クリニック
干野 英明 院長