<保健所などに寄せられるトコジラミの被害や相談件数が増えていると聞きますが>
韓国やフランスなどでの大量発生が報道され、注目を集めているトコジラミ。社会問題となり、国を挙げて駆除対策に乗り出しているようです。
トコジラミは、実はシラミではなくカメムシの仲間です。南京虫(ナンキンムシ)とも呼ばれます。茶褐色で羽がなく、成虫は5ミリほどです。主に夜間に寝ている人の血を吸います。刺されると、激しいかゆみを伴う発疹を引き起こします。
1960年代ごろまでは日本でもよく被害が報告されていましたが、生活環境の変化や殺虫剤の使用により、一般家庭で見られることは少なくなりましたが、2000年代からじわじわと増えてきているようです。人や物の移動が活発になったことが要因で、海外旅行客の荷物や貨物に紛れ、侵入していると見られます。北海道にも生息しており、当院でもトコジラミの吸血被害と思われる発疹で受診される患者さんは珍しくありません。
最近では、従来の殺虫剤が効きにくい新しいタイプの「スーパートコジラミ」も登場し、専門家の間でも恐れられています。新型コロナ禍が落ち着き、海外旅行客がさらに増えると見込まれる中、北海道でもトコジラミの被害の拡大が懸念されています。
<治療や対策について教えてください>
治療は、炎症やかゆみを抑えるステロイド外用薬や飲み薬を使います。かくと悪化するので、放置せず早めに皮膚科を受診することが大切です。
トコジラミは、日中はベッド、ソファなどの隙間やカーペットの下などに潜んでいるので、素人ではなかなか見つけるのが難しいですが、血糞(けっぷん)と呼ばれるごま粒大の黒っぽい染みが点々と見つかります。その場合は、殺虫剤を使用する必要がありますが、困難な場合は専門の業者に相談すると良いでしょう。
海外旅行だけでなく国内旅行でもホテルなどで被害に合う場合があります。被害を避けるには、ベッドやソファの周辺が特に注意が必要で、虫やふんがないか確認しましょう。荷物は直接床に置かないで、ポリ袋などで包んで置きましょう。バスルームに置くのも有効です。トコジラミは明るいところを嫌がるので、アイマスクを着けて明かりをつけたまま寝るのも効果的です。旅行先から帰宅する際は、トコジラミを自宅に持ち込まないのが大切です。トコジラミは熱に弱い性質があり、持ち帰った衣類や布類を熱湯に浸すと虫は死滅します。スチームクリーナーも有効です。
上林 淑人 院長