2012年8月22日水曜日

こむら返り


ゲスト/つちだ消化器循環器内科 土田 敏之 院長

こむら返りについて教えてください。
 こむらとは、ふくらはぎのことで、ふくらはぎや足の裏の筋肉が突然けいれんを起こし、強い痛みを伴うのが、こむら返りです。医学的には「骨格筋の不随意で激痛を伴う急激なけいれん」とされています。数分間という短時間の発作であることがほとんどで、痛みが鎮まった後も鈍痛が残る場合もあります。筋肉を収縮させる神経の刺激が持続的に起こることによるもので、その原因はよく分かっていません。
 こむら返りは、急に激しい運動をした時や、水泳などで冷たい水に入った時、就寝中に足を伸ばした時に起こりやすく、下痢、嘔吐(おうと)などによる脱水症状や熱中症の際にもみられます。筋肉に関わるナトリウム、カリウムなど電解質のバランスの崩れも原因となります。このほか、内分泌・代謝の異常、甲状腺機能の異常、糖尿病、腎不全、肝硬変、降圧剤の内服や血液透析などで起こるケースもあります。立ち仕事の多い人やお年寄り、妊婦に比較的多くみられ、ふくらはぎだけではなく足の指や太ももに起きる場合もあります。

こむら返りが起きた時にはどうしたらいいですか。
 まず、けいれんして硬くなっている筋肉を強く押さえてください。そして、もう一方の手で足の親指からつま先全体を頭側に引っ張ります。そうすると、けいれんが治まってきますので、筋肉を温めるようにマッサージを続けます。冷やすとすぐに再発するので注意が必要です。その後、消炎鎮痛軟こうの外用や湿布を貼付し、痛みが強ければ痛み止めを飲んでもかまいません。数日は無理な運動は避けましょう。
 運動前に十分にストレッチをすること、夏場は小まめに水分補給して脱水症状に気を付けること、冬場はできるだけ筋肉を冷やさないような工夫をすることなどが、こむら返りの予防策といえます。
 急にこむら返りが起きるようになったら、それは運動不足や偏った食事など生活の乱れのサインかもしれません。自分の生活を見直してみるのがいいでしょう。数カ月に一度程度なら経過をみてもいいですが、週に一度以上起き、それが長期間続いていたり、就寝中など安静時にも繰り返したりするようであれば、何か別な病気や原因が潜んでいる可能性も考えられますので、我慢せずに医師に相談してみましょう。

2012年8月15日水曜日

かぜとまぎらわしい病気「喉頭アレルギー」

ゲスト/琴似駅前内科クリニック 高柳 典弘 院長

喉頭アレルギーとはどのような病気ですか。

 せき、鼻水、喉の痛みなどの「風邪」に似た症状を来たし、風邪薬を服用してもよくならない、そのような患者さんが非常に増えています。一方、日本人の3人に1人が何らかのアレルギーを持っているとされており、アレルギーが原因で起こる病気も急増しています。その一つに風邪とまぎらわしい、アレルギーが原因で起こる「喉頭アレルギー」があり、近年注目されています。
 喉頭アレルギーは、急激に喉が腫れて空気の通り道が狭くなり、呼吸ができなくなる急性型(あるいはアナフィラキシー型)と、ぜんそくやアレルギー性鼻炎のように比較的緩やかな経過をたどる慢性型に分類されます。風邪と紛らわしいのは、慢性型の喉頭アレルギーで、さらに花粉など原因が明らかな季節性のものと、原因の特定が困難な通年性のものに分けられます。
 症状は、喉のかゆみ、イガイガ感、痰(たん)がからんだような感じ、ヒリヒリ、チクチクする感じの咽頭痛などの咽喉頭異常感と、喘鳴(ぜんめい)と呼ばれるゼーゼー、ヒューヒューという呼吸音を伴わない長引くせきというのが2大症状となります。花粉症のある方はその季節によっては、くしゃみ、鼻水、鼻づまりも伴います。

喉頭アレルギーの診断、治療について教えてください。
 診断は先に述べた症状に加えて、血液検査、胸部レントゲン検査、肺機能検査により明らかな炎症、感染症、腫瘍、異物を認めず、また内視鏡で胃・食道の逆流、鼻水が喉に流れていく症状(後鼻漏)が認められないことなどから診断されます。しかし、通年性の喉頭アレルギーは、せきぜんそくやアトピー咳嗽(がいそう)など症状の似た病気があるので、見分けるのが難しいこともあります。
 慢性型の喉頭アレルギーの治療は、アレルギーの原因が特定できれば、その原因抗原からの予防や除去が基本となります。温度差など気候の影響である場合や、原因が特定できない場合は、季節性、通年性を問わずアレルギー性鼻炎に準じた抗ヒスタミン薬やステロイド吸入などの治療が有効です。
 風邪と診断され、薬を内服してもよくならない場合、喉のかゆみや痰がからむような感じの症状が続いている場合は、喉頭アレルギーの可能性も考えられますので、専門の医療機関を受診することをお勧めします。

2012年8月8日水曜日

甲状腺の病気


ゲスト/やまうち内科クリニック 山内 雅夫 院長


甲状腺の病気について教えてください。
 甲状腺は、首の前面、喉仏の下にあるチョウの羽を広げたような形の器官で、甲状腺ホルモンを分泌する役割を果たしています。甲状腺ホルモンは、人間の体の新陳代謝や成長をつかさどる大切なホルモンの一つ。甲状腺ホルモンが多くなったり、少なくなったりすることで、全身にさまざまな異常をもたらします。甲状腺疾患を患う患者さんは、女性に多く、日本全体では700万人ともいわれていますが、その内500万人は病気であることに気付いていないと推定されています。
 主な甲状腺の病気として、甲状腺ホルモンの過不足によるものと甲状腺腫瘍があります。
 甲状腺ホルモンの分泌異常は、大部分が甲状腺に対する自己抗体が関与しているもので、誰にでも起こり得る病気ですが、遺伝的な要因が大きいとされています。

甲状腺の病気の中で、代表的なものについて教えてください。
 最もよく知られている病気が「バセドー病」です。甲状腺ホルモンが過剰に産生されるため、動悸(どうき)、頻脈、多汗、手指のふるえ、易疲労感、体重減少、食欲亢進(こうしん)などの甲状腺機能亢進症状が現れ、甲状腺の腫脹(しゅちょう)、眼球突出なども見られます。
 しっかり食べているのに体重が減少する、健康診断でコレステロール値が低下し、アルカリフォスファターゼが上昇しているなどの異常所見が診断の糸口となることもあります。
 逆に甲状腺ホルモンが不足し、甲状腺機能低下症を呈するものの代表が「橋本病(慢性甲状腺炎)」です。寒がり、無気力、易疲労感、体重増加、甲状腺腫大などの症状が現れ、進行すると記憶力低下、眼瞼浮腫なども起こります。中年以降の女性で物忘れなどが有る場合には注意する必要があります。
 甲状腺腫瘍は甲状腺超音波検査で比較的容易に発見することができるようになりました。90%が良性、10%が悪性とされており、吸引細胞診などで確定診断をする必要があります。
 症状が多岐にわたり、更年期障害など、ほかの病気と間違われやすいのが甲状腺の病気です。頻度が高いわりに、症状が軽いことも多いため、見逃されたり、放置されたりしているケースが多くみられます。血液検査、甲状腺超音波検査など診断の技術は進歩しており、各種の治療法も確立されていますので、症状が進んでしまう前に早めに治療を受けることが何よりも大切です。

2012年8月1日水曜日

歯周病


ゲスト/まるやまファミリー歯科 小川 拡成 院長


歯周病について教えてください。
 患者さんの口から歯垢(プラーク)の小さな塊を取って、「この白い物は何でしょう?」と尋ねると、ほとんどの人は「食べかす」だと答えます。でも実はプラークの正体は、食べかすではなく、食べかすに含まれる糖分を餌にして繁殖する細菌の塊なのです。位相差顕微鏡を使ってプラークを拡大して見てみると、その場でウヨウヨと活発に動く数十種類の細菌を目にすることができます。歯周病の多くは、このプラークが原因によって起こります。
 私は学生時代、当時歯周病治療・研究の日本の第一人者であった北大名誉教授のI先生に次のようなお話を伺いました。「ばい菌が気持ちよく暮らし、繁殖していくためには、温度と水分と栄養が欠かせない。私たちの口腔内は、ばい菌にとって最高級のマンションといえるもの。年中摂氏37度に保たれ、3度の食事のほか、甘いお菓子や飲み物も付いている。ただし、マンションにはトイレがないという欠陥があり、酸性のおしっこをいつも掛けられれば虫歯になるし、毒性の強い排泄物が垂れ流されれば、歯肉に慢性の炎症が起こってしまう。マンションに掃除を担当する雇い人はいないので、クリーニングはオーナーである自分自身の役割。もし面倒くさがり、掃除をサボれば、最高級のマンションもあばら屋になってしまう」。私もよく患者さんにこの話をするのですが、この話を聞いた皆さんは、食事の後や寝る前の歯磨き(ブラッシング)に励むようになります。

歯周病の治療と予防について教えてください。
 歯周病の治療と予防の鍵を握っているのは、口腔内のプラークの清掃責任者、つまり患者さん自身にほかなりません。歯科医だけがどんなに治療に張り切ったところでムダなことです。毎日のブラッシングが十分でなければ、全ての歯を失う危険性があることや、天然歯を1本でも多く残すことは、総義歯になるのと比べて雲泥の差があることなども、よく理解していただきたいと思います。
 若い時に、歯茎の中に入ったばい菌を放置しておくと、気付かないうちに骨が溶けて、結果的に歯を失うことになりかねません。もし気になる症状があれば、今すぐ歯科医院を受診して、ブラッシング指導を受け、プラーク・歯石をしっかり取ってもらうことをお勧めします。

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