ラベル 麻酔科 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 麻酔科 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2008年8月13日水曜日

「顔面の痛み」について

ゲスト/札幌一条クリニック 後藤 康之 医師

顔面の痛みについて教えてください。

顔面痛を訴えて来院する人は、頭痛に比べると少ないのですが、耳鼻科、眼科、脳神経外科、歯科・口腔外科、神経内科、形成外科など各科にまたがる症状であり、また原因や痛みの複雑さは頭痛に比べてはるかに大きいといえます。
代表的なものとして、三叉(さんさ)神経痛があります。三叉神経は顔面や口の中の感覚をつかさどる神経で、脳から出てすぐに3本に分かれるので三叉神経という名前が付いています。三叉神経痛は、多くの場合は原因となる疾患がはっきりしない突発性の痛みであることが多く、片側でおこることがほとんどです。起床して間もなく痛みが生じ、歯みがき、洗顔、化粧、食事、会話など、日常生活に支障を来たすことも珍しくありません。痛みは鋭く、短い時間続き、何度か繰り返します。
治療法としては、神経ブロックをまず行います。感じた痛みを脳へ伝える神経の周囲に薬を注射して、痛みの伝達を遮断(ブロック)する方法です。また、脳の中で神経と血管がぶつかっていることもあり、このような場合は外科手術によって治療することもあります。投薬治療としては、抗てんかん薬が効果的な場合も多いのです。
続発性の顔面痛としては、脳腫瘍(しゅよう)や多発性硬化症、帯状疱疹(たいじょうほうしん)などがあります。三叉神経痛を疑うときは、必要な検査(MRI、CTなど)を行い、このような疾患ではないかを確かめます。

ほかに顔面痛の疾患はありますか。

三叉神経痛のように痛む部位や痛みの性質がはっきりしないものに、持続性突発性顔面痛があります。さまざまな疾患と原因を除外し、残った顔面痛で、原因が不明とされているものです。以前は非定型顔面痛という病名でした。症状としては、顔面を主体として鈍痛あるいは圧迫感がある痛みです。治療は、一般的に星状神経節ブロックを行います。通常の鎮痛剤は無効であることが多く、抗不安薬や抗うつ剤が効果を表すことが多いようです。
顔面の痛みは患者さんの負担が大きく、すっきりと改善しなかったり、繰り返すことが多いのですが、根気強く治療する必要があります。

2008年1月9日水曜日

「ペインクリニックの役割」について

ゲスト/札幌一条クリニック 後藤 康之 医師

痛みの治療について教えてください。

「痛み」は、原因、種類、経過が多様で、本人のみの体験であり、感受性にも個体差がある、ごく主観的なものです。だからこそ、心理状態の影響が大きいことも事実で、痛み自体が大きなストレスとなりさらに症状を悪化させることがあります。食欲や睡眠にも影響を与えます。また、古来「痛いくらいは我慢しなければ」と言われることも多く、鎮痛剤の服用が唯一の痛みの治療という考えもありました。しかし、効果が十分ではなかったり、量を増やして副作用を招くこともあり、痛みそのものを治療するという認識はなかなか得られませんでした。
痛みを発生するメカニズムは複雑で、十分に解明されていない部分もあります。アメリカでは各科と協力して「痛みがあれば緩和する医療」=ペインクリニックの存在が一般的です。日本でも1962年に東大に設置されて以来、痛みの治療は急速に進歩しました。しかし、患者の需要を満たすには程遠く、遠方からはるばる都心まで治療に通う人も多いのが実情です。

ペインクリニックの役割について教えてください。

ペインクリニックは「痛み」を伴う疾患(しっかん)の診断、治療を行うことが目的です。頭痛、片頭痛、顔面痛、顔面神経まひ、三叉(さんさ)神経痛、肩・腰・関節の痛み、ギックリ腰、帯状疱疹(ヘルペス)、坐骨(ざこつ)神経痛、がんによる痛み、心因性の痛みなど、痛み、しびれのある症状なら、すべて治療の対象になります。
具体的には、注射で局所麻酔薬などを神経周辺に入れ、痛みを遮断する神経ブロック療法が中心です。一度で痛みが取れる場合もあるし、何度か通ってもらうこともあります。治療を行うにあたっては、内科、神経内科、整形外科などの診療科と協力して行います。神経という繊細な部分を扱うため、高い技術や豊富な経験も必要となります。症状によっては、抗不安薬、抗うつ薬、漢方薬などを併用します。痛みは心身に大きなダメージを与えます。体と心の両方を診ることが、ペインクリニックの役割です。

2007年9月5日水曜日

「季節の変わり目の体調不良とその原因」について

ゲスト/円山リラクリニック 森田 裕子 医師

季節の変わり目に体調を崩す人が多いと聞きますが。

 季節の変わり目、とくに夏から秋へと移る今の時季は、日中の残暑に比べて朝晩が冷え込み、一雨ごとに寒くなるなど不安定な天候になりがちです。そんな天候に体がついていかず、体調を崩す人が増えます。不眠、頭痛、腰痛、肩こり、うつ状態、胃腸の不調など、症状は人それぞれ。ヘルニアや変形性関節症など慢性の痛みを抱える方は、痛みが悪化することもあります。
 また、気候の変化に加えて、体調に大きな影響を与えると思われるのはストレスです。環境の変わる事が多い春の時季から夏にかけて我慢して乗り越えてきたものが、秋口の冷え込みや不安定な天候と重なり、体の症状となって現れてくる時季でもあるのでしょう。
 女医であるせいか、私の元へは20~30代の働く女性や家庭の主婦などが多く訪れますが、全体としては働き盛りの男性、中高年の方など、世代や性別に関わらずストレスを抱えている人が多いのが現状です。 季節の変わり目に体調不良を感じる場合は、このように複合的な要因があるケースが多いようです。したがって「数軒の病院を受診して異常なしと診断されたが、やはりつらい」、あるいは「どの病院へ行ったらよいか分からない」という声が多く聞かれます。

具体的な治療法について教えてください。

 みの治療については、神経ブロック治療、中国鍼(はり)を使用した鍼治療、体の内部まで温めて血行を促進することで痛みを和らげる光線治療などがあり、個々の症状や痛みの原因に合わせて行います。いずれも保険診療が可能です。安定剤や眠剤などによって痛みが緩和され、短期間で精神的に楽になる人も多く、心の痛みと体の痛みには密接な関係があることがわかります。最近体調がおかしいと感じたり、原因がはっきりしない痛みがある場合は、「痛みの治療」をするペインクリニックか、かかりつけの医師に相談することをお勧めします。一人で我慢せず、早めに治療することで、悪化を抑えることが重要です。

2007年4月18日水曜日

「肩こり」について

ゲスト/札幌一条クリニック 後藤 康之 医師

日本人には肩こりに悩む人が多いそうですね。

 約7000万人の日本人が、現在あるいは過去に肩こりに悩まされた経験があるという調査結果があります。男性よりも女性に若干多く、いわゆる働き盛りの年代に多いのですが、最近は塾通いやテレビゲームの影響で小・中学生が肩こりを訴えるケースも増えています。
 肩こりは、人類が直立二足歩行を始めたときからの宿命といわれています。特に、欧米人や日本人と同じアジア人である中国人より、日本人に肩こり症の人が多いのは、歴史や伝統が関係しているのではないかといわれています。「肩の荷を下ろす」「肩書き」など、日本語には肩のつく言葉が多くあり、日本人にとって「肩」は体の部位以上の意味を持つ存在です。明治の女流作家・樋口一葉が肩こりと頭痛に悩んでいたのは有名です。一葉は若くして家計を支え、文筆業を志して勉強もしていました。経済的、心理的にストレスの多い毎日の中で、当時の髪型や住環境、やせ型の体型なども影響して、しつこい肩こりに悩まされていたのではないでしょうか。

肩こりの予防や治療法はありますか。

 肩こりの症状は、頚部(けいぶ)・肩・上背部の不定の痛みで、疲労感やしびれを伴うこともあります。頚部の血流への影響が強く頭痛の原因ともなります。持続した動作、不自然な動作をしたとき、ストレスを強く受けたとき、精神的緊張が続くときに起こりやすく、几帳面(きちょうめん)な人や物事にこだわる人に発症しやすい傾向があります。
 肩こりは、筋肉の緊張によって血液の流れが悪くなり、疲労物質が蓄積することで起こります。軽い体操やマッサージ、入浴、ハリ治療など、自分にあった肩こり解消法を見つけるとよいでしょう。夜更かしや過労を避けたり、枕を変えるだけでも改善することがあります。それでもしつこく痛みがとれないときは、痛みの専門医である麻酔科を受診してみてください。人によって効果はさまざまですが、神経ブロックのほか、理学療法、安定剤などの処方によって、痛みを緩和できることが多くあります。

2006年12月13日水曜日

「冬期間の痛み」について

ゲスト/円山リラクリニック 森田 裕子 医師

冬期間に生じる「痛み」について教えてください。

 痛みの種類には、急性のものと、神経痛など慢性のものがありますが、どちらも冬期間は増える傾向にあります。まず急性の痛みの原因として多いのは、転倒による打撲やぎっくり腰などのほか、雪道を歩くことによって筋肉に緊張を強いられたり、滑って不自然な力が入るなどです。また、慢性的な痛みの原因としては、寒さによる冷えによって、もともと持っていた関節リウマチ、変形性関節症、神経痛、頭痛などの症状が悪くなることが考えられます。
 骨折などの外傷は整形外科の受診をお勧めしますが、筋肉の凝りやリンパ管や血行の不良、原因がはっきりしない痛みに関しては、「痛みの治療」をするペインクリニックを受診するか、かかりつけの医師に早めに相談することをお勧めします。早めに治療を始めることにより悪化を抑えることが重要です。

痛みの治療法について教えてください。

 神経ブロック治療や中国鍼(はり)を使用した鍼治療、鍼に低周波通電を行って刺激を与える鍼電極低周波治療、体の内部まで温めて血行を良くすることにより痛みを和らげる光線療法、漢方薬の処方などもあります。神経ブロックとは痛みの伝達に関係する知覚神経や交感神経の周辺に局所麻酔薬を注射する方法です。その注射により、痛みを一時的に遮断し、交感神経の緊張を緩めることで血流を改善し、局所にたまった老廃物の排せつを促して痛みを軽減させる治療法です。これらの治療を個々の症状や痛みの原因に合わせて行います。
 自身でできる痛みの緩和法としては、急性の痛みには冷やしたり湿布することなどがあり、慢性の痛みには蒸しタオルやカイロで温めることなどがあります。
 冬期間の外出では、滑らない靴をはく、つえを活用する、体を冷やさない服装をすることなども大切です。特に、冬に外出機会が減って筋力が低下してしまうと転倒することも多くなるので、軽いストレッチを行ったり、ショッピングモールなどの暖かい場所で多めに歩くなど、日常の中で適度に体を動かすことも効果的です。

2006年8月9日水曜日

「腰痛」について

ゲスト/札幌一条クリニック 後藤康之 医師

腰痛について教えてください。

 痛みを訴える人の中で、肩凝りと並んで多いのが腰痛です。日本人の約6割が生涯のうちに一度は経験するといわれています。
 発症には、脊椎(せきつい)、筋肉、内臓、精神などが関与し、姿勢や疲労、運動、栄養の偏り、ストレスなどがきっかけになります。最近の傾向としては、20~30代で筋・筋膜性腰痛を訴える人が多く、立ち仕事や長時間の運転、急激なスポーツ、長時間のデスクワークや会議など、心因性、社会性要因の腰痛です。高齢者では、脊椎の老化変性による腰痛がほとんどです。

治療や予防について教えてください。

 大きく次の3つの腰痛に分けてみます。
「筋・筋膜性腰痛」は、腰(背)の部分の筋肉や筋膜に分布する神経の枝が、何らかの原因で刺激されて起こります。局所の血流不良によって凝りを生じ痛みになったり、腰部のねんざや重量物を持ち上げる時などに急激に発症することが多く、安静と薬物、理学療法によって大部分は軽快しますが、往々にして慢性化することがあり、局所への薬剤注入も有効です。
 「椎間板(ついかんばん)ヘルニア」は、椎間板間のクッションの役目を果たすものがはみ出し、隣接する神経を刺激し腰痛となります。急に腰から下肢にかけて激痛が生じ、身動きができなくなります。しばしば座骨神経痛を伴い、下肢の知覚異常や脱力感を訴えることも。急性期には神経ブロックによる治療がもっとも有効です。1カ月以上たっても痛みが続くときや再発を繰り返す場合は、手術も考える必要があります。 
 「脊(せき)柱管狭窄(きょうさく)症」はしばしば難治性で手術や神経ブロックなどでも十分な効果が得られないこともあります。薬物も鎮痛薬ではなくて抗うつ薬や漢方薬をうまく使う必要があります。
 腰痛を予防するには、良い姿勢を保ち、歩く時は6m先の床あたりを見るようにします。腰椎(ようつい)を支える腹筋や背筋を鍛え、肥満を解消し、できれば週に1、2度は水泳や散歩で心身をリラックスさせるといいでしょう。いわゆる生活習慣病にならないことも必要です。上手に付き合えば、腰痛は怖くありません。

2005年11月30日水曜日

「帯状疱疹(たいじょうほうしん)後神経痛」について

ゲスト/札幌一条クリニック 後藤 康之 医師

帯状疱疹後神経痛について教えてください。

 帯状疱疹は、日本人の10~20%の人が、生涯に一度は罹患(りかん)するといわれています。子どもの頃にかかった水ぼうそうのウイルスが、完治後も体内に残り、病後や疲労時、ストレスを感じた時など、体力や免疫力が低下したときに活動をはじめ、発症します。神経に沿って胸から脇腹、背中、三叉(さんさ)神経沿いなどに赤い発疹(はっしん)とチクチクした痛みが現れます。化膿(かのう)するなど、よほど重症でなければ、発疹そのものは2~3週間程度で治りますが、痛みだけが残る場合も多く、これを帯状疱疹後神経痛といいます。服が触れても痛いという状態にまでなることもあり、また目に出ると失明するケースもあります。痛みが原因で、不眠や食欲不振などに陥り、体力低下を招くことも少なくありません。発症から3カ月を過ぎると、治療にも時間が掛かります。痛いと思ったら我慢せず、すぐに痛みの専門医を訪ねてください。

どのような治療をするのでしょうか。

 早期に抗ウイルス剤を点滴、または内服で投与します。これは内科や皮膚科でも日常行う治療です。痛みをとることを目的としたペインクリニックでは、注射で局所麻酔薬などを神経周辺に入れ、神経の働きを止める神経ブロック療法を行います。血流を促進し、痛みを発する物質を押し流すレーザー治療や、鎮痛剤、漢方薬などを併用することもあります。さらに、精神的なストレスが原因で発症した場合は、抗うつ剤、抗不安薬などを併用します。
 いずれにしてもある程度の治療期間が必要です。根気強く治療を続ければ、ほぼ完治するので、あきらめずに治療を続けてください。
 帯状疱疹の予防法は残念ながら今のところありませんが、体力や免疫力の低下が発症の引き金になっているので、なぜそうなったかを考えることも重要です。帯状疱疹をきっかけに検査で、ほかの病気が見つかることもあります。糖尿病など生活習慣病の予防に努め、体力低下を招かず、ストレスをうまく和らげる生活を心がけることも大切です。

2005年4月6日水曜日

「頭痛」について

ゲスト/札幌一条クリニック 後藤康之 医師

頭痛について教えてください。

 風邪をひいたときの頭痛は、時間がたてば必ず治る、いわば病気ともいえない頭痛です。極端に痛んだり、今まで経験したことがない頭痛は、脳内の出血や脳腫瘍(しゅよう)が原因である可能性もあるので、MRIやCTスキャンで検査を受けて、脳の疾患による頭痛か否かを診断します。この2種類の頭痛のほかに、繰り返し強い頭痛に悩まされ、脳の検査をしても異常が見つからない慢性頭痛があり、緊張型頭痛、片頭痛、群発頭痛などがあります。
 一般に多いのは、緊張型頭痛です。頭が重い、圧迫感がある、締め付けられるような鈍痛が続きます。原因は、肩や首の筋肉の緊張によるもので、頭の皮下の血流が悪くなって、痛みを生じます。肩こり人口の多い日本人に多い頭痛です。一日中痛みが続く場合もありますが、精神的なストレスや疲労が強い場合に痛むことも多く見られます。予防法としては、精神的、肉体的ストレスを趣味や運動などで上手に解消することが有効です。パソコンなどによる眼精疲労、枕の不具合などが原因のこともあります。

片頭痛はどのような症状でしょうか。

 症状としては、月に1~2回から週に1~2回、頭の片側、または両側にズキンズキンとした強い頭痛が起こります。痛みの継続時間は人によってさまざまで、数時間で治まる人もいれば、数日続く人もいます。男性よりも女性、特に30歳代の女性に多く、親子で遺伝する場合も多くみられます。血液中にある血管を収縮させる働きのあるセロトニンが関係していると考えられていますが、原因は特定されていません。食べ物が誘引する場合もあります。光をまぶしく感じたり、音をうるさく感じる場合も多いので、症状のある時に暗い部屋で安静に過ごすといいでしょう。
 緊張型頭痛、片頭痛の治療法としては、神経ブロックで痛む神経を遮断し、さらに鎮痛剤などを服用します。根本的な治療は難しいのですが、痛みを取り除いて、原因がストレスにあればカウンセリングなどを並行して受けることをおすすめします。

2004年10月6日水曜日

「治療が難しい筋肉の痛み」について

ゲスト/札幌一条クリニック 後藤 康之 医師

難治性の筋肉痛の疾患について教えてください。

 代表的なものとして、筋筋膜性疼痛(とうつう)症候群があります。肩から首にかけて、また腰から背中にかけて、いわゆる「凝った」状態で慢性的な痛みを伴います。なかなか原因が見つからず、湿布などの治療でも快癒しません。また、マッサージや鍼灸(しんきゅう)によって、一時的に楽になることがありますが、すぐに痛みが再発してしまいます。働き盛りの年代に多く、一日中パソコンに向かっているなど、姿勢や生活環境が原因のこともありますが、そのような原因が見当たらないこともあります。むしろ、心理的な要因が深くかかわっており、悩みや不安が痛みの引き金になっている場合が多いのです。心因性である場合は痛みの治療だけでなく、心理療法や投薬などを併せて行うことが必要です。痛みの治療としては、星状神経節ブロックやトリガーポイント注射(局所注入)などを行います。すぐに効く人、何度か行ううちに痛みがなくなる人、なかなか改善しない人など、人によって効果はさまざまです。

線維筋痛症について教えてください。

 慢性の全身疼痛症で、日本国内で認識されはじめたのはここ10年ほどです。さまざまな検査を行っても、これといった原因がなく、しかし患者は眠れないほどの痛みに悩まされるという難病です。医療機関での認知度も低く、診断名がつかずに苦しんでいる人が多くいると推測されます。主な症状としては、3カ月以上継続する全身の慢性的な疼痛、不眠、頭痛、疲労感、こわばり、口や目の乾燥、しびれ、便通異常などです。年代、性別はさまざまですが、特に40代、50代の女性に多く見られます。身体的所見が見つからないため周囲の理解が得られず、痛みで仕事や家庭生活に支障を来し、痛みと不安感から抑うつ状態に陥る人も多いのが実情です。リウマチや慢性疲労症候群を併発している症例も報告されています。現時点では治療法が確立されておらず、痛みを和らげ、不安を取り除く治療が試みられている状態です。原因不明の痛みに悩まされている人は、ぜひ一度、相談してください。

2004年4月14日水曜日

「帯状疱疹(ほうしん)による痛み」について

ゲスト/札幌一条クリニック 後藤 康之 医師

帯状疱疹による痛みについて教えてください

 帯状疱疹とは、以前かかった水ぼうそうのウイルスが体内に残り、体力や免疫力が低下したときに活動を始めて発症するものです。本体は神経痛で、それに伴って胸からわき腹、背中、顔などに赤い発疹(ほっしん)が現れ、ピリピリとした痛みを感じます。化膿(かのう)させるなど、よほどの重症でなければ、発疹そのものは2~3週間程度で治りますが、痛みだけが残る場合も多く、服が触れても痛いという状態にまで慢性化することもあります。発疹の出方はさまざまで、自己判断は難しく、痛みだけを感じて「運動による筋肉痛か」などと放っておくうちに悪化することもあります。背中など自分では見えにくい場所に出ることも多いので、注意が必要です。発疹が消えてから「いくら検査をしても悪い所が見つからない」「どんな病院を受診したらよいかわからない」と困惑している人も少なくありません。痛いと思ったら我慢せず、すぐに痛みの専門医を訪ねてください。発症から3カ月を過ぎると、治療にも時間が掛かります。

痛みをとるために、どのような治療をするのでしょう。

 まず、抗ウイルス剤を点滴あるいは薬で投与します。これは皮膚科や内科でも行われます。痛みが治まらない場合は、注射で局所麻酔薬などを神経周辺に入れて、神経の働きを止める神経ブロック療法を行います。血流を促進し、痛みを発する物質を押し流すレーザー治療や、鎮痛剤などを併用することもあります。ペインクリニックでは、痛みを緩和しながら、痛みの原因を探ることを重要視しています。帯状疱疹の場合は、体力や免疫力がなぜ低下したかを知ることが大切です。もともと糖尿病やがんなどで通院中という方もいますし、帯状疱疹をきっかけに検査をして、ほかの病気が見つかることもあります。また、精神的なストレスが原因ということも少なくありません。痛みは本人にとって大変つらいものです。痛くて食べられない、眠れないというストレスがいっそう体力を低下させます。ペインクリニックは、痛みを緩和し、患者の生活の質を上げるのが役割です。

2003年10月22日水曜日

「難治性の痛み」について

ゲスト/札幌一条クリニック 後藤康之 医師

難治性の痛みについて教えてください。

 打撲など、神経の末端に刺激が加わり、神経を伝わって「痛み」として脳に伝達された場合は、時間が経てば治る場合がほとんどです。鎮痛剤も効くし、きちんと治療さえしていれば完治する「治りやすい痛み」といえます。逆に「治りづらい痛み」、難治性の疼(とう)痛というものがあります。代表的なものとしては、痛みを伝達する神経自体に何らかの損傷が起きた場合です。帯状疱疹(たいじょうほうしん)を放置したために残った疼痛や、三叉(さんさ)神経痛、幻肢痛などで、これらの痛みを緩和するには、薬物投与、神経ブロック療法、理学療法など、各方面からのアプローチが必要になります。  また、背骨の変形によって脊椎(せきつい)が狭くなり、神経や脊髄(せきずい)を圧迫することによる痛みや、背骨のズレや骨粗しょう症による変形などの疼痛は、一般に高齢者の方が多く、痛みの緩和が困難です。硬膜外ブロック療法などペインクリニックによる疼痛の緩和も1度で痛みが取れるということはなく、他科と連携しながらの治療となります。さらに、心理的な要因による痛みは、その原因を取り除くことが根本的な治療となるため、治療が難しくなります。身近な難治性の痛みとしては、筋膜性疼痛症候群、いわゆる肩こりや首、背中、腰の痛みがあります。多く人が悩んでいますが、根本的な治療はやはり難しい場合もあります。

難治性の痛みに周囲はどのように対応すればよいですか。

 痛みのメカニズムが解明され始めたのは、20年程前からです。アメリカでは、疼痛治療は医師を目指すものにとって必修になっていますが、日本ではまだあまり重要視されていないのが現状です。痛みを完全にコントロールすることは、実際には難しいのです。しかし、「痛い」という事実は、当事者に大変なダメージとストレスを与えます。痛みの原因となる疾病を診断し、治療することは重要ですが、同時に今ある痛みを緩和し、患者の生活の質を上げることが必要です。周りの人も、「痛いはずがない」「痛くても当たり前」というようなとらえ方をせず、痛みのつらさを理解し、積極的に治療を受けさせてください。

2003年5月21日水曜日

「さまざまな痛みの治療法」について

ゲスト/十善クリニック 水柿 功 医師

どのような痛みでペインクリニックを受診する人が多いですか。

 一番多いのは腰痛です。ぎっくり腰と呼ばれる急性腰痛症、腰椎(ようつい)椎間板(ついかんばん)ヘルニア、脊(せき)柱管狭窄(きょうさく)症、腰椎手術後腰痛症など、腰の痛みに苦しんでいる人が多くいます。痛みが生じると血行が悪くなり、交感神経が緊張し発痛物質が産生され、さらなる痛みに苦しむことになります。「いろいろな治療を受けたが痛みが取れない」「年だから腰が痛いのは当たり前」とあきらめてしまう人もいます。しかし、出歩けなくなったり、気持ちが落ち込んだり、痛みは日常生活に大きな影響を与えます。神経ブロックの治療効果を知り、現在の痛みを取ることができるならと、ペインクリニックを受診する方が多いです。また、帯状疱疹(たいじょうほうしん)後の神経痛を訴える方も多いです。帯状疱疹は水痘(すいとう)ウィルスが原因です。高齢者やストレスや過労などで免疫機能が低下している人に多く発症します。激痛を伴うのが大きな特徴で、皮膚表面上の症状は改善されても、痛みが残る場合があります。

治療法について教えてください。

 ペインクリニックでは、神経ブロックといって、神経に局所麻酔薬を作用させ、痛みを遮断します。急性腰痛症や腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症などの治療には、硬膜外ブロックを行います。脊髄(せきずい)を含む硬い膜の外側に局所麻酔薬を注入します。痛みを取ることにより、血液が循環し、痛みの発痛物質の産生が抑制され、筋肉の緊張が緩和し、組織の修復を促します。帯状疱疹の場合は、早期に神経ブロックを行えば、帯状疱疹後神経痛に悩まされることはありません。帯状疱疹後神経痛になってからでは、完治が難しくなります。初期の皮膚症状が出た時点で、ぜひ神経ブロック療法を受けることをお勧めします。1度の治療で改善することもあれば、何度か治療することもあります。麻酔注射ということで躊躇する人もいますが、経験豊富な専門医であればまず危険はありません。痛みに悩んでいる人は、1度ペインクリニックを受診することをぜひご検討ください。

2003年3月26日水曜日

「急性と慢性の痛みの違いと治療方法」について

ゲスト/札幌一条クリニック 後藤 康之 医師

急性と慢性の痛みの違いについて教えてください。

 多くの場合、痛みは体の変化を知らせる一種のサインです。「痛みがあったら病院へ」と体が警告を発していると考えてください。急性の痛みは、痛みの原因を取り除けば治まる場合がほとんどです。椎間板(ついかんばん)ヘルニア、帯状疱疹(ほうしん)、五十肩、坐骨神経痛、三叉(さんさ)神経痛などは、早期に痛みを取り除けば、早々に治癒しますが、放っておくと悪化したり、長引くことがあります。痛みが3カ月以上続く場合は、慢性痛と考えられます。ヒザが痛い、腰が痛い、極端な肩こりなどは、体の痛みによって日常生活に支障を来し、ストレスの原因になります。ストレスを感じることによって、さらに体の痛みが増幅するということも珍しくありません。また、心理面での悩みや、不安感が痛みを誘発している場合も多く、本人さえ痛みの原因に思い当たらず、医療機関で原因不明と診断されることもあります。特に、現代は景気や社会情勢、家族間の問題など、ストレスに感じることが多く、体の痛みを増幅する原因になっています。

痛みの治療方法を教えてください。

 ぺインクリニックは、痛みを取り除く専門の病院です。人間が「痛い」と感じるのは、痛みを受けた部分の刺激が知覚神経によって脳に伝達されるためです。その際に交感神経なども興奮し、血管の収縮、筋肉の緊張などを招き、患部に痛み物質がたまり、さらに痛みを増す結果となります。この悪循環を断ち切るのが「神経ブロック療法」で、麻酔薬を注射することによって神経の働きを一時的に抑えます。痛みを抑えることで血流が良くなり、痛み物質が流れて麻酔が切れても痛みが戻らない治療です。症状や個人によって効果は違うので、1回で治ることも、数回またはそれ以上繰り返し治療することもあります。急性の痛みは治療が比較的簡単ですが、慢性疼(とう)痛に関しては複雑な背景などがあり、ペインクリニックだけでは治療しきれない場合もあります。症状によっては心療内科医などと協力して治療にあたることも必要になります。

2002年11月20日水曜日

「痛みの治療」について

ゲスト/十善クリニック 水柿功 医師

痛みの治療について教えてください。

 「痛み」を専門に治療するペインクリニックでは、主として神経ブロックで治療します。対象となる疾患は、腰痛症、腰椎(ようつい)椎間板(ついかんばん)ヘルニア、脊(せき)柱管狭窄(きょうさく)症、腰椎手術後腰痛症、五十肩、肩こり、頭痛、変形性膝(しつ)関節症などがあります。薬物療法やさまざまな理学療法を行ったのにもかかわらず残っている痛みは、多くの場合神経ブロックを行うことで改善されます。突然起きる「ギックリ腰」は、洗顔が出来ない、靴下をはけない、歩くのも苦痛などの症状がありますが、1回の神経ブロック治療で痛みが取れてしまう場合もあります。また高齢者の方で「年だから、腰が痛くなるのは仕方の無いこと」といわれ、自分自身で諦めている方でも改善の余地はあります。さらに手術などが必要な回復力が乏しい場合でも、神経ブロックの回数を増やすことで改善が期待できます。痛みを我慢するということは、人体の自然治癒能力を大きく妨げることになります。神経ブロックの治療は、人の持つ本来の自然治癒能力を促すことにあるのです。

具体的な治療方法をご紹介ください。

 神経ブロック「硬膜外ブロック」について説明しますと、このブロックは、ギックリ腰や腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症などの治療に行われます。脊髄(せきずい)を含む硬い膜の外側を硬膜外腔(くう)といいますが、ここに局所麻酔薬を注入すると痛みを遮断し、血液の流れを改善します。腰痛に対する硬膜外ブロック療法は、腰痛の原因のいかんにかかわらず効果を発揮します。また、痛みを引き起こしている部位が特定される場合は、直接局所麻酔薬を注入して痛みを取る場合もあります。肩こり、五十肩にも優れた治療効果があります。また、帯状疱疹(たいじょうほうしん)の場合には、早期に神経ブロックを行えば、治癒した後から発症する帯状疱疹後神経痛に悩まされることはありません。「痛み」は我慢すれば慢性化し自然治癒力が低下します。そうなる前にペインクリニックの専門医に診てもらうことをお勧めします。

2002年7月3日水曜日

「ペインクリニック」について

ゲスト/札幌一条クリニック 後藤康之 医師

どのような時、ペインクリニックを受診すればいいのですか。

 痛みを伴う疾患の診断、治療を行うのがペインクリニックです。頭痛、片頭痛、顔面痛、顔面神経麻痺、三叉(さんさ)神経痛、肩・腰・関節の痛み、ギックリ腰、帯状疱疹(ヘルペス)、座骨(ざこつ)神経痛、ガンによる痛み、心因性の痛みなど、痛み、しびれのある症状なら、すべて治療の対象になります。痛みがあれば緩和するというのは、アメリカでは一般的なことで、各診療科目と協力して行っている場合が多いのですが、日本ではまだ数が少ないのが現状です。「痛いくらい我慢しなければ」「手術したんだから痛くても当たり前」というような「我慢すべきこと」として痛みがとらえられているからです。しかし、痛みというのは、当事者にとって大きなストレスになり、さらにストレスによって痛みが増幅することも多いのです。痛くて眠れない、食べられないということもあります。痛みを緩和し、患者の生活の質を上げることが、痛みの緩和治療、ペインクリニックの仕事です。また、最近増えているのが、心因性の痛みです。大きな悩みやストレスが体の痛みにつながっているわけですが、患者自身にも原因がわからないため、「どんな病院を受診すべきか」「いくら検査しても悪い所が無いが、確かに痛い」と困惑している人も多いのです。このような場合も、ペインクリニックでは、治療とともに、原因を探るためにじっくり時間をかけて診断します。

具体的にはどのように痛みを緩和するのでしょうか。

 神経ブロック療法といって、注射で局所麻酔薬などを神経周辺に入れ、痛みを遮断します。一度で痛みがとれる場合もあるし、何度か通ってもらうこともあります。痛みの原因は何らかの疾患によることが多いので、治療を行うにあたっては、内科、神経内科、整形外科などいくつもの診療科との協力を得ることも肝心です。治療では神経という繊細な部分を扱うため、高い技術や豊富な経験も必要となります。痛みがあったら我慢せず、ぜひ専門医を訪ねてください。

人気の投稿

このブログを検索