<回復期リハビリテーション病棟について教えてください>
大腿(だいたい)骨骨折や膝関節・股関節の損傷、脳梗塞などの脳血管疾患による後遺症を抱えた患者さんが、寝たきりになるのを防ぎ、住み慣れた家庭で日常生活を送れるよう、集中的にリハビリを施す専門病棟のことです。退院後の「在宅生活というゴール」に向けて、患者さん一人一人の症状・状態に合わせたプログラムを作り、起床、洗面、着替え、食事、入浴、自立歩行など日常生活に必要な動作ができるように訓練や治療を行います。
リハビリ医、看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、管理栄養士、薬剤師、医療ソーシャルワーカーといった専門職がチームで患者さんを支えます。救急や重症患者を対象にした急性期病院での入院期間は症状が安定するまでですが、急性期病院と在宅生活の「橋渡し役」を担う回復期リハビリ病棟では(疾患によって異なりますが)60〜180日と、長期入院が可能です。けがや病気をした場合、この時期のリハビリが運動機能、食べ物をかんで飲み込む摂食嚥下機能、言語・記憶・理解・判断などの認知機能の回復に効果的で、回復期リハビリは「その人らしい生活」を再び送るために欠かせないものです。
病棟では、リハビリと並行して患者さんの「栄養管理」に取り組むことが非常に重要です。急性期病院から転院されてくる患者さんの中には、筋肉量や筋力が低下した状態「サルコペニア」や心身の働きが弱くなった状態「フレイル」、過度の安静などによって起きられなかったり歩けなかったりと身体の機能が衰えた「廃用症候群」になっている方も少なくないです。そうした体力が低下してしまっている患者さんの場合、リハビリに励んでも十分な効果が得られません。それどころか低栄養のまま運動をすると、筋肉量がさらに減るなど逆効果にもなりかねません。患者さんの栄養状態を改善させるには、個々の病状にもよりますが、たんぱく質の補充が基本になります。
リハビリと栄養管理は両輪です。具体的には、言語聴覚士により、そしゃく機能を評価して食形態をととのえ、管理栄養士が栄養素や摂取カロリーを観察することで、その効果が最大限に発揮されるのです。
患者さんが退院後も安心して暮らせるよう、ご家族への介護指導やサポート、ケアマネジャーとの連携した各種の介護サービスの調整など、在宅復帰後のフォローアップもわれわれの大切な役割です。
医療法人 知仁会
八木整形外科病院
田中 明美 診療部長