2006年7月26日水曜日

「ジェネリック医薬品」について

ゲスト/北海道大野病院附属駅前クリニック 古口 健一 医師

ジェネリック医薬品とはどういうものですか。

 新薬として開発された医薬品は20~25年の特許期間が定められており、その期間内に実際の治療に数多く使われることで、有効性や安全性が十分に確認されます。特許期間を過ぎると、他社が同じ薬品を製造・販売できるようになります。この場合、新薬に比べて試験項目が少ない分、研究費もかからないため、低廉な価格で提供することが可能となります。この後発医薬品のことをジェネリック医薬品と呼び、新薬の2~7割という低価格で販売されています。
 日本では最近になって、知名度が高まりましたが、欧米では、すでに50%以上がジェネリック医薬品になっています。日本での普及率は16%程度です。ジェネリック医薬品の普及は、個人の負担が軽くなるだけでなく、国の医療費の軽減にもつながるため、日本でも2002年から使用促進が国の方針として取り入れられました。

ジェネリック医薬品のメリット・デメリットを教えてください。

 第一のメリットとしては、何といっても価格が安いことです。長期にわたって服用が必要な薬であれば、医療費負担がぐっと軽減されます。第二に薬の味や大きさなどが改善され、先発の医薬品を上回る製品も見られます。
 デメリットとしては、品質のばらつき、薬物動態(薬物の吸収・分布・代謝・排せつ)の多少の差などが認められます。主成分は同じでも、そのほかの構成成分が違うため、それによるアレルギー症状を引き起こす可能性もあります。
 先発医薬品に比べ、流通に難がある、情報提供が新薬メーカーほど密ではないなどの問題点も挙げられます。また、例えば小児向けの新薬開発に長年取り組んでいるメーカーは、子どもが飲みやすいように工夫を重ねますが、後発医薬品では、そういった点に劣ることがあります。ごく少量の差で効果が違うデリケートな薬品では、適切な処方が難しい場合もあります。
 ジェネリック医薬品を希望するときは、メリット、デメリットについて正しく理解することが肝心です。遠慮せずに主治医に相談して、納得できる医薬品を選ぶことをお勧めします。

2006年7月19日水曜日

「VDT症候群」について

ゲスト/札幌エルプラザ阿部眼科 阿部 法夫 医師

VDT症候群について教えてください

 最近、目の疲労感を訴えて来院する患者さんの中に、目の症状以外のイライラ、不安、抑うつ状態など心の症状や、肩や首の痛みなどを訴える人が増えています。特に、一日中パソコンに向かう職業に就いている人に多くみられます。
 このようなパソコン業務に伴う眼精疲労、心の症状、頚肩腕(けいけんわん)障害の3つがそろうと、「VDT症候群(「テクノストレス眼症」ともいう)」と呼ばれます。VDTとは「Visual display terminal(視覚的表示端末)」の略称で、具体的にはテレビ、テレビゲーム、コンピューター、ワープロ、携帯電話などの表示画面を持つ装置のことを指します。最近はブラウン管から液晶、プラズマ画面に変化し、チラつかないなど性能は大幅に向上しましたが、依然として、作業画面、作業環境には改善すべき点も多いようです。

症状や予防法などを教えてください。

 VDT作業は労働現場から家庭、学校へと広がっています。コンピューターネット社会は長時間のVDT作業を伴なうため、目の疲れから始まって、徐々に心の疲れ、ストレス、肩こり、頭痛など全身症状へ移行し、疲労の回復が困難となった状態と考えられます。
 VDT症候群は、眼科的症状が主訴ですが、心療内科をはじめ多方面に及んでいるため単科での治療に苦慮し、他科受診を勧める場合もあります。眼愁訴を年齢的にみると、若年者ではコンタクトレンズに関連した目の乾き、ドライアイの訴えが圧倒的に多く、中高年では老視に伴った調節障害の訴えが多いようです。作業時間としては、4時間以上のVDT作業者に多いようです。特に7時間以上に及ぶようなソフト開発者などには、40歳以上なら軽い近用部分の入った眼鏡を勧める場合もあります。そのほか、遠視や混合乱視、眼位異常、不同視、緑内障など眼疾患のある方では、それなりの対策や治療を要します。
 結局のところ、眼科的な特効薬があるわけではなく、作業にあたる一人一人が、常に目や心の不調に注意を払い、作業時間・環境を整え、個々の症状に応じた予防策や対策を講じることが重要です。VDT作業のためのガイドラインが作成されていますので、参考にしてください。

2006年7月12日水曜日

「多毛症」について

ゲスト/アップルレディースクリニック 工藤正史 医師

多毛症について教えてください。

 多毛症とは、軟毛の硬毛化(軟らかい毛が硬くなること)のことをいうのであり、毛の本数自体が増えることではありません。女性や小児にみられる男性型の発毛状態をいいます。この男性型多毛症の90%は、PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)と特発性多毛症が原因です。女性であっても、男性ホルモン(アンドロゲン)を分泌していますが、過剰分泌すると体毛が硬毛化し、本来軟らかくて目立たない部位の体毛が、毛深く見えるようになります。アンドロゲンとは、男性化作用を持つホルモンの総称で、思春期以降に精巣、卵巣、副腎から分泌されます。80%は卵巣から分泌され、通常は分泌量が少量であるため、脇毛、陰毛にのみ硬毛化が見られますが、過剰に分泌する場合は、ヒゲや髪、胸毛、背中、四肢の毛が硬毛化し、「多毛症」となります。

PCOSと多毛症の治療について教えてください。

 PCOSは、卵巣が多嚢胞化・腫大し、月経異常、無排卵を招き、不妊の原因となる症候群で、さまざまな症状の一つが多毛です。原因は黄体化ホルモン(排卵を指示するホルモン)が過剰分泌することによって、男性ホルモンの過剰分泌を引き起こすと考えられています。ただし、日本人で多毛を示すことはそれほど多くはありません。
 すでに生じてしまった硬毛の治療は、電気凝固、脱毛クリーム、脱色法、レーザー脱毛などの美容的脱毛療法しか方法はありません。新たな硬毛化を抑えるためには、薬剤、外科的療法によりますが、全身的多毛治療としては、低用量ピルと利尿薬のスピロノラクトンの薬剤療法をお勧めします。
 低用量ピルは、卵巣からの男性ホルモンの分泌を抑えます。スピロノラクトンは卵巣からの男性ホルモンの分泌を減少させ、多毛症を改善します。スピロノラクトンは、高血圧の治療薬ですが、正常な血圧に影響を及ぼすことは通常ありません。副作用として、不正出血や月経回数が多くなることがありますが、低用量ピルと併用することによって、コントロールが可能です。ただし、臨床的効果が認められるまで6カ月程度は必要です。

2006年7月5日水曜日

「咽喉(いんこう)頭酸逆流症(LPRD)」について

ゲスト/琴似駅前内科クリニック 高柳典弘 医師

咽喉頭酸逆流症について教えてください。

 胃酸が食道に逆流することによって起きる、さまざまな症状を総称して「胃食道逆流症(GERD)」と呼んでいます。主に、「胸やけ」「げっぷ」などの食道症状と、「狭心痛」「持続するせき」「咽喉頭異常感」などの食道外症状に大きく分けられます。LPRDは食道外症状の中でも、「のどがイガイガする」「詰まった感じがする」「飲み込みにくいように感じる」などの咽喉頭異常感や、「声が出しづらい」「声がかすれる」などの発声障害を主な症状とする耳鼻咽喉頭領域の疾患です。
胃酸の逆流によって耳鼻咽喉頭領域に症状を生じるメカニズムとして、咽喉頭へ逆流した胃酸による「直接障害説」と、食道への逆流が迷走神経を介した反射を起こすことによる「反射障害説」がありますが、まだはっきりと解明されていません。

LPRDの診断と治療について教えてください。

 診断は、胃酸の逆流を証明するために食道の入り口付近に電極を置いてpHを測定する「24時間pHモニタリング」という方法がありますが、実際の診察では、内視鏡検査による咽喉頭を含めた食道粘膜の状態を観察する方法が多く用いられます。内視鏡検査で異常が認められず、しかしLPRDの可能性が否定しきれない場合は、胃酸の分泌を強力に抑えるプロトンポンプインビター(PPI)を服用してもらい、症状が改善すれば治療的診断とすることがあります。
 治療に関しては、胃から食道への逆流を予防するために、油っこいもの、甘いものを控え、食後すぐに横にならないようにするなどの食生活の改善、肥満の解消、腹圧がかかるような前かがみの姿勢にならないなど、生活習慣の改善を行います。薬物療法としては、PPIによる内服薬が中心となりますが、咽喉頭は酸への感受性が一般に高く、食道症状を訴える患者さんより治療が難しい場合が多いです。しかし、ほとんどの場合生活改善と薬物療法でコントロールが可能です。症状がなかなか消失しない患者さんの場合は、ストレスなど心因的な要素が加わっている場合も多いので、抗不安薬や漢方薬を併用するのも、一つの方法です。

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