2011年8月24日水曜日

ストレス性の腸の病気

ゲスト/つちだ消化器循環器内科 土田 敏之 院長

ストレス性の腸の病気について教えてください。

 大腸のぜん動運動は自律神経によってコントロールされていますが、強いストレスによって自律神経がバランスを崩すと、腸がけいれんのような強い動きをするようになります。その結果起こるのが、下痢や便秘などの便通異常です。腸の器官そのものの病気と違う点は、体重の減少といった症状が出ず、またレントゲンや内視鏡などの検査をしても身体的な異常は見られないことです。そのため、適切な治療が施されず、知らないうちに悪化するケースもあります。
 ストレス性の腸の病気の典型的なものが「過敏性腸症候群」です。大腸に原因となる病気がないにもかかわらず、腹痛を伴う下痢や便秘を繰り返すのが特徴です。便通異常以外に食欲不振や腹部膨満感、ガス(おなら)などを伴う場合があり、ガスがたまるとおなかがパンパンに張り、普段着ている服が入らなくなることもあります。休みの日にはあまり症状が出ず、午前中やストレスの多い時期になると症状が強くなる傾向にあります。
 過敏性腸症候群になるのは繊細できちょうめんな人に多く、おなかの調子が気になって外出できなくなるなど生活に支障をきたしているケースも少なくありません。

過敏性腸症候群の治療について教えてください。

 心の問題が身体の症状に出る病気だけに、医師との間に信頼関係を確立して治療を進め、心の持ち方や生活を改善することが大切です。
 治療の主軸となるのは、生活習慣と食事の改善です。十分な睡眠と適度な運動、暴飲暴食を避け、アルコールを摂取し過ぎないことを心掛けましょう。暑い季節に、水分の取り過ぎは要注意です。病気について心配し過ぎないようにし、規則正しい生活を送ることが治癒への近道です。
 病院では、内視鏡などで腸の機能面に問題がないことをまず確定し、その後は推定される原因に応じて、投薬を中心とした治療を進めていきます。下痢止めや腸のけいれんを抑える薬など対症療法的な薬だけではなく、必要に応じて抗不安薬、抗うつ薬を処方します。
 腹痛や便通障害などの症状がみられる場合は、過敏性腸症候群のほかに、大腸がんや大腸ポリープ、潰瘍性腸炎など深刻な病気が潜んでいる可能性がありますから、決して自己判断せずに、一度専門医を受診することをお勧めします。

2011年8月22日月曜日

内視鏡検査のすすめ

ゲスト/医療法人社団 いし胃腸科内科 石忠明副院長

胃の内視鏡検査について教えてください。

 胃の内視鏡検査は、胃がん、胃潰瘍、胃炎、十二指腸潰瘍、逆流性食道炎など上部消化管の病気の早期発見に有効な検査です。日本の胃がん死亡率は年々減少傾向にあり、早期発見・治療により治るがんといわれています。しかし、胃がんは初期段階ではほとんど自覚症状がありませんので、内視鏡検査による早期発見が重要です。
 以前から、胃の内視鏡検査はつらい検査の一つといわれてきました。しかし、機械の進歩は目覚ましく、細く飲みやすいカメラが開発され、検査の苦痛は少なくなっています。また、より苦しくない内視鏡検査として、鼻から挿入するカメラ(経鼻内視鏡)を使用している施設が増えています。従来の口から入れるカメラは挿入時、舌の付け根部分に触れるため、吐き気や痛みなど患者側の負担が大きかったのですが、鼻から入れると吐き気を催すこともなく、痛みもほとんど感じません。また、検査しながら会話ができますので、気になったことを互いにその場で確認することができます。
 胃がんの発生率は年齢とともに高まりますので、30歳以上の方は、積極的に胃の内視鏡検査を受けることをお勧めします。

大腸の内視鏡検査について教えてください。

 食生活の欧米化とともに急速に増加している大腸がんも、早期に発見できれば治癒する可能性が高いがんです。大腸がん検診では、まず便の潜血反応を調べます。陽性の場合は、便の中の血液が混じっており精密検査が必要です。精密検査では、通常大腸内視鏡検査を行います。大腸がんはもちろん、ポリープや腸炎など大腸の病気は分かります。
 大腸がんもつらい検査の一つといわれています。腸の長さには個人差があり、腸の長い方は検査時間もかかり苦しいことがあります。また、おなかの手術を受けたことのある方は、腸の癒着のため痛みを感じることもあります。しかし、器具や技術の進歩により、従来に比べて検査は楽になってきています。多少の圧迫感はあっても、まったく痛みを感じずに検査を終える方もいます。
 便秘気味、よくおなかが痛くなるなどの症状のある方、また、過去にポリープがあった方は、定期的な大腸内視鏡検査で、今の自分の腸の具合をしっかりと調べることをお勧めします。

女性の痔(じ)と直腸ポケット

ゲスト/札幌いしやま病院 川村 麻衣子 医師

女性の痔について教えてください。

 痔は男性に多い病気と思われがちですが、実は女性こそ痔を招く原因を抱えています。例えば、便秘症。便が硬くなり、無理に排便しようと肛門を傷付けることがあります。妊娠や出産も痔の原因の一つ。妊娠すると便秘を起こしやすく、また肛門周辺がうっ血しやすくなります。出産時の息みも、肛門に大きな負担をかけます。このように女性の場合、痔の原因は女性特有の身体機能が関連していることが多いのです。痔は「痔核(いぼ痔)」「裂肛(切れ痔)」「痔ろう(あな痔)」の3種類に分けられますが、女性に最も多くみられるのは裂肛です。排便時の痛みや出血、排便後にじんとした痛みが続くなどの症状があります。
 痔は女性にとっては医師にも相談しにくい病気です。しかし「恥ずかしい」と思って受診をためらっていると、症状は進行してつらくなるばかりです。また、お尻からの出血は大腸がんなどの病気が隠れている場合もあります。お尻に出血や痛みなどの症状があらわれたら、自己判断せずに専門医を受診することをお勧めします。

直腸ポケットとはどのような病気ですか。

 直腸に起因する女性特有の排便障害で、直腸膣壁弛緩(しかん)症とも呼ばれます。排便時に息むと、直腸と膣の間の壁(膣壁)が、膣方向へポケット状に膨らみ、便が引っ掛かって通りが悪くなります。症状は、肛門の直前で便が止まってしまう、肛門の周りを指で圧迫しないと便がでない、残便感があるなどで、ひどい便秘の人は直腸ポケットの疑いがあります。生まれつき膣壁が薄い、出産による膣壁の広がりや加齢による筋肉の衰えなど、先天的、後天的、両方の原因が考えられます。治療は、まず食生活や生活習慣の改善によって便秘を解消することです。便が柔らかくなれば排便がしやすくなります。それでも改善しなければ、下剤を服用する方法もあります。
 ポケットが大きいと、通常の便秘治療では排便障害が改善されません。その場合は、手術によってポケットを縫い縮める方法も有効です。ポケットそのものは良性疾患ですが、習慣的に下剤に頼っていると、大腸がんなどの病気を見落とす危険もあります。便秘で悩んでいる人は、原因を知るためにも、一度専門医に相談することをお勧めします。

2011年8月3日水曜日

骨粗しょう症

ゲスト/医療法人社団 中野整形外科医院 中野 達 院長

骨粗しょう症とはどのような病気ですか。
 骨粗しょう症とは、骨の量が減り、質も劣化して骨の強度が低下し、骨折を起こしやすくなった状態です。骨の中では、古くなった骨が吸収され新しい骨が形成されますが、その繰り返しの中で、骨の吸収が骨の形成よりも活発になると、骨がすき間だらけの麩(ふ)菓子のようになる場合があります。
 骨粗しょう症は、女性に多くみられる疾患です。その理由として最も大きなものは、閉経後にホルモンバランスが崩れることと考えられています。そのほか、加齢や体質、極端なダイエットや偏食、喫煙、過度の飲酒などが原因として挙げられます。また、甲状腺機能亢進(こうしん)症や関節リウマチなどの病気、ステロイド剤の長期服用など、特定の病気や薬剤によって起こる骨粗しょう症もあります。
 骨粗しょう症は、一般的に痛みがありません。しかし、ちょっとした衝撃や転倒のはずみで、手首や太ももの付け根の骨を折るなどの危険が生じます。また、高齢の方にみられる「円背(えんぱい)」という背中がまるくなる症状は、背骨がつぶれた際に起こるもので、悪くなると足がしびれたり、歩くのが困難になったりすることがあります。

骨粗しょう症の予防について教えてください。
 骨粗しょう症の予防には、食生活の見直しと適度な運動が重要です。カルシウム、ビタミンD、ビタミンK、タンパク質など、丈夫な骨を作るために必要不可欠な栄養素を十分に取るようにしましょう。また、食べ物から摂取した栄養素を骨に蓄え、骨量を増やすには、体を動かすことも大切です。散歩などを習慣にすることをお勧めします。予防していたにもかかわらず、残念ながら骨粗しょう症と診断された場合は、骨吸収抑制剤や骨形成促進剤、ホルモン剤、各種ビタミン剤などそれぞれの病状に合わせた薬剤を選択し、治療を始めます。
 骨粗しょう症では予防がなにより大切です。そして、早期の治療で骨折などのリスクを回避しなければなりません。当院では「FRAX(フラックス)」という今後10年間の骨折リスクを予測する検査が無料で受診でき、また、骨の人間ドックのような、より詳しい検査も保険適応で受けることができます。もしかしたらと思う前に一度検査を受けて、早い段階から行動を起こすことが、本当の「転ばぬ先の杖」といえるのではないでしょうか。

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