2004年12月22日水曜日

「透析」について

ゲスト/元町泌尿器科 西村 昌宏 医師

透析について教えてください。

 腎臓は、体の中のいらなくなったものや水分を体外に排出し、血液の塩分調整などを行うのが主な機能です。ホルモンの分泌やビタミンDの活性化にも関係しています。この腎臓の働きが何らかの原因によって落ちてくると、徐々に体の中に毒素がたまり尿も減少します。このような状態を慢性腎不全といい、全身倦怠(けんたい)感、食欲不振、嘔吐(おうと)などの症状が出ます。さらに体内水分の増加から、うっ血性心不全、肺水腫、浮腫など、尿毒症と呼ばれる症状があらわれます。慢性腎不全になると、人工透析を導入しなければ、いずれ生命の維持が難しくなります。透析は、血管に二本の針を刺し、血液を体外に導き人工腎臓を通して、きれいな血液にして体に戻す治療です。腎臓自体の機能を高めるわけではなく、腎臓の代わりに体内の毒素や不必要な水分を排出することが目的です。透析は、症状にもよりますが、週に2、3回程度、約3~4時間かけて行います。透析治療が導入された患者さんの場合、腎臓移植を行う以外は、生涯治療を続けることになります。

人工透析というと、大変な治療に思いますが。

 たしかに患者さんには負担の大きい治療法です。しかし、透析治療を受けている患者数は、日本で20万人以上に上り、年々増加しています。治療法としては確立しており、感染症などのリスクも低く、治療成績も安定しています。透析治療を受ける人が増えている背景には、腎不全の原疾患である糖尿病患者の増加が挙げられます。かつては、慢性糸球体腎炎から腎不全となり透析導入していた人が多かったのですが、1998年に糖尿病性腎炎が逆転しました。透析人口の増加によって、透析を行う施設も増え、夜間透析や旅行先での透析治療の連携など、生活の質を維持する環境も整ってきました。かつては、難しいと思われていた高齢者への透析導入も最近では一般的になりました。透析導入後の生存年数も、年々アップしています。透析導入を決心するのは大変な覚悟が必要ですが、早い段階に開始した方が、結果的には体への負担は軽くてすみます。

2004年12月15日水曜日

「皮膚・皮下腫瘍(しゅよう)」について

ゲスト/土田病院 日下 貴文 医師

皮膚・皮下の腫瘍について教えてください。

 皮膚は表皮、真皮、皮膚附属器から構成されます。皮下には脂肪組織、結合繊、血管、リンパ管などがあり、これらを発生母体として、さまざまな腫瘍が発生します。腫瘍とは自律性を持った過剰な発育をする病変で、良性と悪性があります。良性、悪性の違いは、腫瘍細胞の浸潤度、増殖速度、転移や再発の有無、宿主に対する悪影響の程度などの総合判定によって決まります。粉瘤(ふんりゅう)は、最も頻度の高い良性腫瘍で、皮下に皮膚成分を含んだ袋があり、中にはアカが入っています。治療は局所麻酔をして袋を残さず完全摘出します。菌が付きやすく化膿(かのう)してから受診する人が多いのですが、この場合は一度切開して炎症が治まってから根治手術します。ソフトボール大まで成長することもありますが、なるべく小さなうちに手術をしたほうが患者の負担も少なくてすみます。ほかに比較的多く見られる腫瘍としては、脂肪腫があります。脂肪組織から発生した良性の腫瘍で皮下の深い部分にあり、大きくなると筋肉や神経周囲に入り込んでくるため、場合によっては全身麻酔が必要になります。

そのほかにはどんな腫瘍がありますか。

 脂漏(しろう)性角化症は、別名老人性疣贅(ゆうぜい)といい、皮膚の老化現象の一つといえます。黒や褐色の扁平(へんぺい)または半球状の腫瘍で、多発するのが普通です。大きなものは単純に縫い詰めることができないので、周囲の皮膚をスライドさせてカバーします。一般にアザと呼ばれる母斑(ぼはん)は、レーザー治療の対象となります。目から頬(ほお)にかけての紫色の母斑は、太田母斑といい、かつては治療が困難でした。現代ではレーザーでかなりきれいに治療できます。一方でレーザーが効果の無い母斑もあり、これらは外科的に切除します。皮膚悪性腫瘍は、たちの良い基底細胞がん、悪性度が中程度の扁平上皮がん、最も悪性度の高い悪性黒色腫(しゅ)の三種があります。悪性ですから、治療は徹底する必要があります。気になる皮膚の変化があれば、早めに受診して下さい。

2004年12月8日水曜日

「矯正器具の選択肢」について

ゲスト/宇治矯正歯科クリニック 宇治 正光 医師

歯科矯正の矯正器具が気になるという人は多いと思いますが。

 歯列矯正をするための主な器具としては、部分的に歯を動かしたり、顎(あご)を広げたりするのに使うプレート装置、上顎骨(がっこつ)が前に出てくるのを抑えたり、第一大臼(きゅう)歯が前に出るのを防ぐヘッドギア、そして、すべての歯にブラケット(装置)をつけてワイヤーをはめ、永久歯を移動させるマルチブラケットがあります。マルチブラケットは矯正治療においては不可欠な装置ですが、長期に渡り装着するため目に付きやすく、審美面で気にする人もいます。かつては金属製のブラケットしかありませんでしたが、最近ではクリアタイプや歯の色に合わせた、プラスチックやセラミックのブラケットが開発されています。しかし、プラスチック製は金属製に比べ強度で劣り、逆にセラミック製は硬すぎて歯を傷つける可能性があります。また、リンガルブラケットという、歯の裏側から矯正する装置もあります。他人には見えないので、審美的な面でこだわりのある人には好評ですが、話しづらい、食べづらいという欠点があります。いずれにしても、当初は違和感があったり、口内炎ができたりすることもありますが、微調整や慣れとともに、気にならなくなることがほとんどです。

違和感の少ないブラケットとしてどんなものがありますか。

 最近、開発されたもので「フリクションフリー(摩擦ゼロ)」のブラケットがあります。ブラケットとワイヤーの間に生じる摩擦を、ワイヤーが自由に動くシステムを採用することによって、ごくわずかな摩擦に軽減したものです。痛みや違和感が少なく、さらに矯正治療期間も短縮できる優れたブラケットです。しかし、金属製しかなかったために、目立たないものを望む人には不評でした。ごく最近、金属部分が従来の3分の1に縮小されたものが開発され、注目を集めています。
 矯正器具にはさまざまな種類があり、一長一短があります。価格も違いますから、矯正専門医とよく相談して、自分に合った器具を選びましょう。

2004年12月1日水曜日

「COPD(慢性閉塞=へいそく=性肺疾患)」について

ゲスト/大道内科・呼吸器科クリニック 大道 光秀 医師

COPDとはどんな病気ですか。

 「慢性気管支炎」と「肺気腫(しゅ)」を合わせてCOPD(慢性閉塞性肺疾患)と呼んでいます。いずれにしても、気管支内の空気の流れが悪くなる病気で、現在の日本では肺気腫の場合が圧倒的に多いです。呼吸によって取り入れた酸素は、肺を構成する肺胞を経て血液中に酸素として送られますが、肺気腫は、肺胞と肺胞を仕切っている壁が壊れる病気です。肺胞壁が壊れると隣り合う肺胞が一つの気腔になり、それを繰り返して徐々に気腔が広がります。肺胞を取り巻く壁にはガス交換をする血管が走っていますが、肺胞壁が壊れると血管も壊れてしまうため、ガス交換効率が悪くなります。さらに、肺胞が壊れると気管支を広げる力が弱くなり、気管支が閉塞します。結果として、体を動かすと息切れしたり、息苦しくなったりという症状が現れます。進行すると、安静にしていても呼吸困難を生じるようになります。

診断や治療法について教えてください。

 ゆっくりと進行する病気なので、息苦しさなどの自覚症状が出るころには、相当病状が進行しています。風邪やインフルエンザなどの感染症が発端で症状が現れることがあります。感染症治癒後も身体の異常が続くときは、呼吸器の専門医を受診することをおすすめします。肺気腫の診断は、肺機能検査が重要です。吸った空気を全力で吐いて、1秒間にどれくらい吐き出せるかの検査をして、70%以上を1秒間に吐き出せないと閉塞性障害があると診断します。また肺機能検査で分からないような微細な変化は、CT検査により分かる場合もあります。肺気腫の場合、壊れた肺胞は二度と元に戻りませんから、進行を止めることが主な治療となります。肺気腫の原因はほぼタバコと考えられます。喫煙者はもちろん、喫煙者の近くにいる非喫煙者が副流煙によって発病することもあります。治療のスタートは禁煙ですが、すぐに進行が止まるわけではありません。気管支拡張剤を使って呼吸を楽にしたり、病状が進んでいる場合は酸素を吸入する在宅酸素療法を行います。COPDを疑われたり、診断された人は、インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンを接種し、予防に努め、発症や進行を防ぎましょう。

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