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2010年12月8日水曜日

「降圧剤と合剤」

ゲスト/北海道大野病院附属駅前クリニック 古口 健一 院長

降圧剤とはどのような薬ですか。
 降圧剤は血圧を下げる薬です。現在使われている降圧剤は数多くあり、血圧を下げる仕組みも作用の強弱も千差万別です。同一薬剤でも何種類もの働きを持つものがあり、また心臓や腎臓機能に対する作用もまちまちです。例えば、心臓が1回に送り出す血液量を減らして血圧を下げる薬に、β遮断薬や利尿剤があり、一方、末梢(まっしょう)神経を拡張させることで血圧を下げる薬に、ACE阻害薬やカルシウム拮抗薬があります。また、現在主流の一つであるARB(アンギオテンシン受容体拮抗薬)には心臓・腎臓の保護効果があります。
 血圧を調節するメカニズムは複雑です。また、1種類の薬だけでは使用量が増え、副作用が起こりやすいので、高血圧症の治療には作用機序の違う薬を組み合わせて使うことが多くなります。例えば、ARBと利尿剤。これらを1種類のみ使い、目標血圧まで下げようとすると副作用が出やすくなりますが、両方を少量ずつ使うことにより降圧効果も見込め、副作用の出現を抑えることができます。さらには組み合わせる種類によっては、副作用を打ち消し合うこともできます。

合剤について教えてください。
 何種類かの同じような薬効、あるいは異なる薬効を持った成分を一つの薬の中に配合した医薬品を合剤といいます。降圧剤においても、近年、次々と新しい合剤が登場しています。ARBに利尿剤を組み合わせた合剤やARBにカルシウム拮抗薬を組み合わせた合剤(降圧効果が強く、虚血性心疾患や脳血管障害にも使いやすい)が出ていますが、この他にカルシウム拮抗薬に高脂血症薬を組み合わせた血圧とコレステロールを同時に下げる薬も登場しています。
 合剤のメリットとして、患者さんにとっては、処方された複数の薬を服用するよりも、合剤は基本的に1日1回1錠で済むようになっていますから、手軽でQOL(生活の質)への影響も少なく、飲み忘れや服用比率のミスを防げる点で安全です。ただし、合剤はあらかじめ一定の割合に配合されているため、特定の成分のみ量を増やすことができません。医師にとっては投与量の微妙な調整がしにくいというデメリットもあります。
 今後もおそらく、合剤への流れは続くと思われますが、患者さん個々の症状によっては合剤の使用がすべてプラスに働くとは限りませんので、まずは専門医にご相談ください。

2010年4月21日水曜日

「心房細動」

ゲスト/北海道大野病院附属駅前クリニック 古口 健一 医師

心房細動について教えてください。
 心房細動は不整脈の原因として多く見られます。通常、心臓は1分間に60〜70回という一定のリズムで動いていますが、心房細動では、心房が部分的に興奮収縮し、心室の収縮が不規則な間隔で起こるため、心房全体としての統制がとれず、1分間に350〜600回の無秩序な収縮が起きます。そのため、血液を送り出すポンプとしての心臓の機械的効率が低下し、心不全が起こりやすくなります。心房細動が続くと、めまいや動悸(どうき)、胸部の圧迫感などを感じるだけでなく、心房の中の血液がよどんで血栓ができ、脳梗塞(こうそく)などの原因となります。
 心房細動は加齢とともに多くなります。原因は大きく分けて二つあり、急に起こる発作性のものと、基礎疾患が原因のものがあります。基礎疾患には高血圧、糖尿病、虚血性心臓病、心臓弁膜症、甲状腺機能亢進(こうしん)症などがあります。

治療法を教えてください。
 心房細動は持続時間から三つに分類されます。7日以内に自然停止するものを発作性心房細動、7日以上1年以内持続するものを持続性心房細動、1年以上持続するものを慢性心房細動と呼びます。心房細動は慢性になると血栓ができ、脳梗塞などの危険因子となりますから、数カ月あるいは数年間不整脈に悩まされ、基礎疾患がある場合は特にリスクが高いと考えてください。慢性期の治療法は大きく分けて三つあります。1分間の心拍数を整える投薬治療(レートコントロール)、心拍数を変えずにリズムを調節する投薬治療(リズムコントロール)、血栓を予防する投薬治療です。もっとも一般的なのは血栓予防の投薬治療で、抗不整脈剤の投与や抗凝固療法を行います。抗凝固療法では、基礎疾患など危険因子がない場合はアスピリン、基礎疾患がある場合はワーファリンを投与することが多く、特にワーファリンには高い効果を認めるデータがあります。ワーファリン投薬は定期的に血液検査を行い凝血能を観察しながら適切な量に調節します。薬物療法以外では、不整脈の原因部分を切除するカテーテルアブレーションという手術療法もあります。

2009年1月28日水曜日

「急性冠症候群」について

ゲスト/北海道大野病院附属駅前クリニック 古口 健一 医師

急性冠症候群について教えてください

心臓は、全身の筋肉や臓器に血液を送るポンプの役割を果たしていますが、心臓自体も血液を必要としています。心臓の筋肉(心筋)への流入血液が減少し、ポンプ機能を担うために必要な酸素消費量をまかなえなくなって、引き起こされる病気を総称して虚血性心疾患と呼びます。
心臓を取り巻いている冠動脈が動脈硬化や痙攣(けいれん)のために狭くなり、酸素の需要・供給バランスがくずれた状態が狭心症で、血栓などで完全にふさがり心筋が壊死(えし)してしまった状態を心筋梗塞(こうそく)症といいます。
 最近では、心筋梗塞に移行しやすいと考えられる狭心症を「不安定狭心症」といい、進行して急性心筋梗塞へ、さらに心臓突然死に至る一連の病態を「急性冠症候群」と呼んでいます。

予防や治療方法について教えてください。

動脈硬化とは、血管が硬くなり内側に脂肪などがたまって血管が細くなってしまうものをいいます。原因は老化、体質、食生活などです。血管の内腔が狭くなるため、血液が流れにくくなり、硬化がさらに進み血栓ができてしまうと血管が詰まって一時的に流れが止まります。この現象が冠動脈で起きると虚血性心疾患、脳動脈で起きると脳卒中になります。
冠動脈疾患の危険因子としては、喫煙、高血圧症、高脂血症、糖尿病、肥満、ストレス、過労などが挙げられます。メタボリックシンドロームの予防、健康的な食生活、ストレスの軽減など、日常生活での取り組みが予防につながります。
急性冠症候群は一刻を争う事態なので、救急車などで直ちに救急病院へ入院し、治療を開始する必要があります。薬物療法としては、抗凝血薬、抗血小板薬、血管拡張薬の投与を行います。急性心筋梗塞の場合や、薬物投与の効果がない不安定狭心症の場合は、冠動脈造影を行い、冠動脈に高度の狭窄(きょうさく)を発見した場合は、カテーテルによる冠動脈形成術を行います。カテーテル治療には、経皮的冠動脈形成術(PTCA)や、ステント術(PCI)を行いますが、場合によっては、外科手術の冠動脈バイパス術を行います。

2002年4月24日水曜日

「虚血性心疾患~狭心症と心筋梗塞」について

ゲスト/朝日内科クリニック 富田文 医師

狭心症について教えてください。

 狭心症は、心臓の筋肉(心筋)に血液を送る冠動脈という血管が、動脈硬化などにより狭くなったり、詰まったりした結果、心筋に血液が不足して発症する病気です。狭心症には、歩行や階段を上るなどの運動時に発症する労作性狭心症と、安静時に起こる安静時狭心症があります。労作性狭心症は、労作(運動)により心臓の仕事量が増えた際、狭くなっていた血管から必要量の血液が供給されず、左前胸部の圧迫感や痛みなどの発作に襲われる症状をいいます。安静時狭心症は、冠動脈がけいれんする冠攣(れん)縮によって虚血となるもので、夜中や朝方に多く、動脈硬化が軽度であったり、特に危険因子のない場合でも起きることがあります。

心筋梗塞(こうそく)について教えてください。

 心筋梗塞は、冠動脈が完全に詰まって血液が供給されなくなり、心筋が部分的に壊死(えし)する病気です。発作は、狭心症が5分から、長くとも20分なのに対し、心筋梗塞は30分以上持続し、より激しい痛みや吐き気・嘔吐(おうと)などを伴います。発症後、時間の経過とともに心臓へのダメージが大きくなるので、早期の治療が大切です。治療には、詰まった冠動脈を広げて血流を再開させる再灌(かん)流療法があり、発作から6時間以内に行えば、壊死する範囲を狭めることが可能です。壊死した範囲が狭ければ、ほかの部位心筋が補うことにより心臓の機能低下を防ぎ、治療後の早い回復が望めます。

虚血性心疾患の治療と予防について教えてください。

 前述の再灌流療法には、冠動脈を風船で広げる風船療法や、静脈に薬剤を注射して血栓を溶かす方法があります。ほかの血管を使って迂回(うかい)路を作り、血液の流れを回復させる冠動脈バイパス手術も有効です。狭心症の場合、症状によっては薬物療法も考えられます。虚血性心疾患は生活習慣病の一つですので、予防や治療には食事や喫煙などの生活習慣の改善が大切です。糖尿病、高血圧など危険因子のある方で、日常生活で心臓に違和感や痛みを感じる場合は、専門医への相談をおすすめします。

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