<秋には、長引くせきに苦しむ患者さんが増えると聞きますが、
なぜなのでしょうか?>
暑さが落ち着き、朝晩の寒暖の差が出てくるこれからの季節─秋口は、ぜんそくや花粉症など呼吸器の不調で来院される方が多くなる時期です。
季節によって症状が変動しやすい(季節性のある)呼吸器疾患の一つが「ぜんそく」です。夏場は調子が良かったため治ったと思い、定期の吸入治療を中断し、秋口に入り急に症状が悪化し始めたと訴える患者さんが増えてきます。
これは夏に比べて気温や気圧の変化が激しいからです。〈台風が近づくとぜんそくがひどくなる〉と昔から言われてきましたが、気圧差や寒暖差が激しいと自律神経が変調をきたし症状が悪化しやすくなります。また、高温多湿な夏に増殖したダニが、秋に死骸となってほこりと一緒に飛び散ることも要因です。ダニは死骸でもアレルギーを引き起こします。さらに、最近多いのが秋の花粉症です。北海道では春にシラカバ、初夏にイネ科(カモガヤなど)による花粉症やぜんそくの悪化がありますが、晩夏から秋にもキク科(ブタクサ、ヨモギなど)の植物の花粉が飛びます。そもそもぜんそくは、慢性的に気道に炎症が起きている病気ですが、発作時以外は意外と自覚症状がありません。何らかのきっかけで気道の炎症が悪化すると、ぜんそく発作として症状が現れます。その原因・誘発因子が秋口から増え始めるというわけです。「たかがせき」と思わずに、気道や気管支からの危険信号と捉え、原因を特定し、それに合った治療を受けてください。
補足ですが、一般的に夏は天候や気温、湿度が比較的安定している時期のため、調子を崩す患者さんが少ない季節です。ただ、記録的な猛暑となった今夏は、エアコンの長時間使用が原因となり、ぜんそく症状が悪化して受診される患者さんが非常に多く、例外的な夏となりました。
繰り返しになりますが、ぜんそくは季節や過労、ストレスなどで悪化する変動性のある病気です。夏、症状がしばらく落ち着いている時期や、治ったと思うぐらい体調のいい時期があっても、秋から冬にかけて症状が一気に悪くなることがあると再確認し、要注意時期と考えてください。ぜんそく患者さんにとって最もリスクになりうることは、治療を中断し、病気・症状をコントロールできていない状態です。「調子がいいから」といって、自己判断で服薬などの治療を中断するのではなく、適切な治療を継続することが何よりも重要です。
医療法人社団 大空会
大道内科・呼吸器科クリニック
大道 光秀 院長