2018年4月25日水曜日

子どもの歯科矯正治療

ゲスト/宇治矯正歯科クリニック 宇治 正光 院長

子どもの矯正治療について教えてください。
 お子さんの歯並びに矯正が必要かどうか迷う人も多いのではないでしょうか。歯並びを確かめる方法の一つとして、お子さんの口元を顔の正面から観察してみてください。上下の前歯の真ん中の位置が一致していれば安心ですが、ずれている場合は、矯正の必要があると考えられます。出っ歯や受け口など、上下の顎が前後に大き過ぎたり小さ過ぎたりという骨格的な問題は、一般の方でも気付きやすいですが、左右のずれは発見しにくいものです。
 前後あるいは左右にずれが認められる場合は、顎骨(がっこつ)の成長コントロールが可能な9〜11歳までに矯正治療を行うのが理想的です。就寝時にバイオネーターと呼ばれる機能的顎(がく)矯正装置を装着し、寝ている間にずれた顎の骨を中央に移動させます。子どもの成長の力を利用して、無理なく自然にバランスのよい骨格をつくれます。痛みはほとんどなく、日中は装着の必要がありません。ずれの程度にもよりますが、装着期間は半年〜1年が平均で、経過観察のための通院は、1〜3カ月に一度が目安となります。
 ずれの原因はさまざまですが、歯そのものがずれているケースもあり、永久歯がはえそろってからでも治療は可能です。その場合、抜歯する可能性は高くなりますが、きれいに治療できるケースがほとんどです。矯正治療をいつ始めるべきかという判断は非常に難しいので、一度専門医にご相談ください。

家庭でチェックするための別の方法はありますか。
 頬づえやかみ癖、就寝時の姿勢が左右どちらかに大幅に偏っている場合などは、左右のずれを引き起こす原因になることがあります。上下の前歯の位置を確認したら、次は鼻の先端を基準に、鼻の中央に前歯の中心が沿っているかを見てください。ずれの原因は一見して分かるものではなく、万が一、骨格のずれを歯のずれと勘違いして放っておくと、矯正に最適な成長時期を逃してしまうので注意が必要です。
 子どものうちの悪い歯並びやかみ合わせを放置していると、成長に伴い虫歯や歯周病の原因となったり、顎関節にも悪影響を及ぼす恐れがあります。また、大人になってから心理的なストレスの原因となる場合もあります。少しでもおかしいと感じたら、早めに専門医に相談することをお勧めします。

2018年4月11日水曜日

摂食障害

ゲスト/特定医療法人北仁会  いしばし病院 畠上 大樹 医師

摂食障害とはどのような病気ですか。
 摂食障害はさまざまな心理的・社会的な要因から、体重や体型の変化に過度にこだわり、食行動に異常を起こす病気です。10〜20代の若い女性に増加傾向がある一方、中・高齢層にも拡大している現代社会が抱える病の一つです。
 大きく分けて、極端に食事を制限する「拒食症」と、過剰に食べる「過食症」があります。いずれも太ることへの恐怖感を持っており、拒食の反動から過食に変わるケース、拒食と過食を繰り返すケースなどさまざまです。
 摂食障害と同時にうつの症状や、感情、行動、人間関係が不安定になる「境界性人格障害」が現れることがあります。また、摂食障害を抱える女性が、無意識に食料品を万引きしてしまうなどの「病的窃盗」を併発している例も多いです。本人が隠したり、家族や周囲の人も病気に気付かなかったり、適切な治療を受けないまま重症化するケースが多く、摂食障害の死亡率は約5%(栄養失調による合併症など)と精神疾患の中で最も高い数値となっています。毎年、摂食障害が原因で亡くなる方は少なくないのです。

原因や治療について教えてください。
 患者さんのほとんどは、生まれつき繊細な性格・体質であり、自分のことを低く評価し、不安を抱えています。また、完璧主義で、融通の効かない優等生タイプが多いです。やせることを礼賛する社会の風潮も背景にあるでしょう。ただ、摂食障害の原因を特定することは非常に難しいため、原因を無理に探すのではなく、これからどうしていけばよいかを考えていくことが重要です。
 摂食障害の治療は、まず自分を苦しめているのは自分自身ではなく、「病気」であることを認識し、「気の持ちよう」や「本人の努力」だけでどうにかなるような病気ではないと知ることから始まります。周囲の助力と医療機関の助けが不可欠だと理解してもらうのです。
 治療に特効薬はありませんが、精神科や心療内科などの医師とのカウンセリングによる認知行動療法や、自助グループでの対話に効果が認められています。一般的に摂食障害の治療は時間を要することが多いです。一進一退を繰り返しながら徐々に良くなっていきます。回復への道は決して平坦ではありませんが、治る病気です。あせらず、あきらめず、ゆっくりと治療を続けることが第一です。

2018年4月4日水曜日

加齢黄斑変性症

ゲスト/大橋眼科 大橋 勉 院長

加齢黄斑変性症とはどのような病気ですか。
 人間の眼は、角膜、水晶体、硝子体(しょうしたい)を通って、網膜の上に像を結んで物を見ます。その中心部は黄斑部と呼ばれ、物を見るために最も重要な部分です。この黄斑部に異常な老化現象が起こり、視力が低下する病気が加齢黄斑変性症です。欧米先進国では50歳以上の失明の主因とされ、日本でも患者数が増加しています。視野の中央がよく見えない、暗く見える、ゆがむといった症状が現れたら、加齢黄斑変性症が疑われます。
 この病気は、網膜に栄養や酸素を供給している脈絡膜から発生する新生血管の有無によって「浸出(しんしゅつ)型」と「萎縮型」とに分けられます。浸出型は、新生血管が発生し、出血などにより網膜が障害されて起こるタイプで、進行が早く、急激に視力が低下していきます。萎縮型は、網膜の細胞が加齢により徐々に萎縮していきます。日本では進行の早い浸出型が多く、急な失明の危険性もあるため、有効な治療法が求められてきました。

治療法について教えてください。
 これまで国内では、光に対する感受性を持つ光感受性物質(ベルテポルフィリン)を、ひじから注射し、新生血管に到達した時、非熱性の半導体レーザーを当てて化学反応を起こさせる「光線力学療法」が、浸出型の治療の中心的役割を果たしてきました。しかし、日本でも新生血管の成長を活発にする物質である血管内皮増殖因子(VEGF)の働きを抑える治療薬が登場し、薬物療法が広がり始めており、いくつかの種類の抗VEGFがあります。
 これは「抗VEGF療法」といい、薬を眼球の硝子体に注射することで、新生血管の増殖や成長を抑えます。基本的には月1回の注射を1~3ヶ月行い、その後症状が悪化するようであれば、再度注射を追加して治療を行っております。抗VEGF療法は視力の維持だけでなく改善効果も期待でき、画期的といえます。ただ一旦大出血を起こし網膜に強い障害が起きた場合は、回復しない事も多いです。薬は保険適用されているものの価格が比較的高く、10回以上も注射をすることが希にあります。また、まれに感染、視力低下、眼痛、出血などの合併症が起こる可能性もあり、費用やリスクも含め、医師と話し合って納得してから治療を受けるようにしましょう。
 いずれにしても、早い時期に治療することが大切です。視界に異変を感じたら、すぐに眼科専門医を受診してください。

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