2018年4月11日水曜日

摂食障害

ゲスト/特定医療法人北仁会  いしばし病院 畠上 大樹 医師

摂食障害とはどのような病気ですか。
 摂食障害はさまざまな心理的・社会的な要因から、体重や体型の変化に過度にこだわり、食行動に異常を起こす病気です。10〜20代の若い女性に増加傾向がある一方、中・高齢層にも拡大している現代社会が抱える病の一つです。
 大きく分けて、極端に食事を制限する「拒食症」と、過剰に食べる「過食症」があります。いずれも太ることへの恐怖感を持っており、拒食の反動から過食に変わるケース、拒食と過食を繰り返すケースなどさまざまです。
 摂食障害と同時にうつの症状や、感情、行動、人間関係が不安定になる「境界性人格障害」が現れることがあります。また、摂食障害を抱える女性が、無意識に食料品を万引きしてしまうなどの「病的窃盗」を併発している例も多いです。本人が隠したり、家族や周囲の人も病気に気付かなかったり、適切な治療を受けないまま重症化するケースが多く、摂食障害の死亡率は約5%(栄養失調による合併症など)と精神疾患の中で最も高い数値となっています。毎年、摂食障害が原因で亡くなる方は少なくないのです。

原因や治療について教えてください。
 患者さんのほとんどは、生まれつき繊細な性格・体質であり、自分のことを低く評価し、不安を抱えています。また、完璧主義で、融通の効かない優等生タイプが多いです。やせることを礼賛する社会の風潮も背景にあるでしょう。ただ、摂食障害の原因を特定することは非常に難しいため、原因を無理に探すのではなく、これからどうしていけばよいかを考えていくことが重要です。
 摂食障害の治療は、まず自分を苦しめているのは自分自身ではなく、「病気」であることを認識し、「気の持ちよう」や「本人の努力」だけでどうにかなるような病気ではないと知ることから始まります。周囲の助力と医療機関の助けが不可欠だと理解してもらうのです。
 治療に特効薬はありませんが、精神科や心療内科などの医師とのカウンセリングによる認知行動療法や、自助グループでの対話に効果が認められています。一般的に摂食障害の治療は時間を要することが多いです。一進一退を繰り返しながら徐々に良くなっていきます。回復への道は決して平坦ではありませんが、治る病気です。あせらず、あきらめず、ゆっくりと治療を続けることが第一です。

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