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2025年7月14日月曜日

手足のしびれに気付いたら〜脳神経外科の視点から〜

<手足のしびれについて教えてください>

 手足のしびれは、脳神経外科でよくみられる症状の一つです。医療機関を受診するべきかどうかですが、しびれが長く続く場合や、しびれが段々と強くなるようであれば受診したほうがよいでしょう。また、急にしびれが起こって、それが持続する場合は、脳や脊髄の病気も考えられるので、早急に受診する必要があります。

2025年1月10日金曜日

MCIと認知症

 <MCIと認知症について教えてください>


 「物忘れが増えたので、自分は認知症ではないか?」と心配して受診される方が増えています。脳ドックでも、以前は脳卒中の予防が主な受診動機でしたが、近年は認知症の予防や早期発見を目的とされる方が多くなっています。

2024年9月13日金曜日

慢性硬膜下血腫

 <慢性硬膜下血腫とはどんな病気ですか>

 転んで頭を打ったり、強くぶつけたりした時、頭の中に出血する場合があります。けがをしてすぐに出血が起きた場合は、「急性の出血」あるいは「血腫」などといいます。一方、けがをしてすぐの検査では異常がなかったのに、受傷してから1~2カ月ほどたってから徐々に頭の中に血がたまってくる病気があり、これを「慢性硬膜下血腫」といいます。

2024年3月9日土曜日

高齢者の目まい

 <目まいについて教えてください>


 脳神経外科の外来では、目まいを訴えて受診される患者さんが多くいらっしゃいます。初めて経験する目まいは、本人にとってはとても恐ろしく感じられるものです。「天井がぐるぐる回った」「後ろに倒れそうになった」「地震かと思った」「立ち上がったら目の前が暗くなった」といった症状を目まいと感じて受診されるケースが多いですが、その訴えからはさまざまな原因が考えられます。

2023年11月18日土曜日

隠れ脳梗塞(無症候性脳梗塞)

<隠れ脳梗塞について教えてください>

 脳ドックを受けたり、けがなどで脳の検査をしたりしたときに医師から、脳梗塞があると言われてドキっとした、という経験をされた方も多いのではないでしょうか。俗に「隠れ脳梗塞」というように、自分には思い当たるような症状がないのにもかかわらず、検査時に偶然見つかる脳梗塞をそう呼びます。正しくは「無症候性脳梗塞」といいます。

2023年7月27日木曜日

MCI(軽度認知障害)と認知症

[MCIと認知症について教えてください]

 一人で歩いて外来を受診される90歳代の患者さんも珍しくなく、高齢化社会を実感します。近年、「物忘れが増え、自分は認知症ではないか?」と心配して受診される方が増えています。脳ドックでも、以前は脳卒中の予防が主な受診動機でしたが、認知症の予防や早期発見を目的とされる方が多くなっています。

2023年2月2日木曜日

慢性硬膜下血腫

 西さっぽろ脳神経外科クリニック 笹森 孝道 院長


慢性硬膜下血腫とはどのような病気ですか


 転んで頭を打ったり、強くぶつけたりした時、頭の中に出血する場合があります。けがをしてすぐに出血が起きた場合は、「急性の出血」あるいは「血腫」などといいます。一方、けがをしてすぐの検査では異常がなかったのに、受傷してから1~2カ月ほどたってから徐々に頭の中に血がたまってくる病気があり、これを「慢性硬膜下血腫」といいます。

 慢性硬膜下血腫は、50歳以上の中高年に多い病気で、お酒をよく飲む方、肝臓の悪い方、病気治療でいわゆる「血液をサラサラにする薬」を服用している方がかかりやすいとされ、軽いけがの後でも発症することがあるので注意が必要です。冬季の北海道では、特に雪道の転倒事故に気を付けてください。

 慢性硬膜下血腫は、出血が少ない場合はほぼ無症状です。ある程度、血がたまってくると脳を圧迫し、さまざまな症状が出てきます。頭痛や頭の重だるい感じが代表的な症状です。治療前には自覚症状を訴えていなかった患者さんでも、治療後には「頭が軽くなった」という方が多いようです。

 圧迫が進むと、足元がおぼつかなくなるなど歩行障害が出ることも多いようです。物忘れや記憶障害、言語障害が出てくることもあり、高齢者の場合、認知症と間違われるケースもよくみられます。また。高齢者は圧迫による頭痛などの症状を自覚していない例もあり、そのまま寝込んでしまっていることもあるので、家族など周りの人が注意する必要があります。


治療について教えてください


 無症状であれば、よほど圧迫が強くない限りは経過観察をします。内服薬を使用して様子をみる場合もあります。ここ最近では、血腫の治癒を促進する効果のある漢方薬を使うケースも増えています。

 圧迫が強い時や症状が出ている時は、手術を行います。脳外科の手術というと大変怖いイメージを持っている方も多いと思いますが、硬膜下血腫の手術は局所麻酔で行うもので、心身への負担も少なく、高齢者でも受けることができます。過度に恐れる必要はありません。

 頭を打っても軽いけがであれば、慌てて病院に行かなくても問題のないケースがほとんどですが、1カ月以上経ってから頭痛や、先に挙げたような症状が出てきた時は、我慢しないで脳外科医を受診するようにしてください。

2022年9月8日木曜日

高齢者のめまい

西さっぽろ脳神経外科クリニック 笹森 孝道 院長


めまいについて教えてください。

 脳神経外科の外来では、めまいを訴えて受診される患者さんが多くいらっしゃいます。初めて経験するめまいは、患者さんにとっては恐ろしいものです。「天井がぐるぐる回った」「後ろに倒れそうになった」「地震かと思った」「立ち上がったら目の前が暗くなった」などの症状がみられますが、その訴えの中にはさまざまな原因が考えられます。

 頻度が高いものは、内耳障害によるめまいですが、脳の障害で起こる“怖いめまい”との鑑別が重要です。症状の強さだけで判断することは禁物で、めまいとともに言葉のもつれや手足の脱力・しびれが出ているようなら、脳の障害が疑われます。中には非常に鑑別の難しいめまいもあります。脳の障害によるめまいは極力早く診断し、治療に入る必要がありますが、その際にはMRIによる診断が有用です。


高齢者のめまいにはどのような特徴がありますか。

 高齢者は、加齢に伴い平衡感覚の衰えや血圧を調節する能力が衰えているので、めまいを起こしやすいです。高血圧や糖尿病などの持病を抱えていることも多く、それらの薬の副作用でめまいを起こすこともあります。

 高齢者のめまいには、原因を簡単に明らかにできないことも多いです。もともと耳鳴りや難聴がある場合のめまいは、必ずしも内耳に原因があるとはいえません。例えば「起立性低血圧」とは、座った状態から立ち上がった時に血圧が低下する状態をいい、若い方は顔が青ざめ冷や汗が出るなどし、失神してしまうケースもあります。高齢者はこのような激しい反応は起こりにくいとされていますが、一方で、加齢のため血圧を一定に保つ自律神経の働きが衰えているため、血圧が少し下がっただけでもめまいを起こしやすく、やはり立ち上がる際には注意が必要です。

 また、暑い時期は汗をかきやすいため、脱水からめまいを起こすこともあります。特に高齢者はのどの渇きを感じにくくなるため、脱水状態になりやすいです。夜間にトイレに行くのを減らそうと水分補給を控えることがありますが、脱水の予防を考えると好ましくありません。入浴や就寝前にはコップに1杯の水を飲むようにしましょう。

 漢方薬がめまいの症状に有効なことも多いです。長引くめまいの症状でお悩みの方は、ぜひ一度専門医にご相談ください。


2022年4月13日水曜日

手足のしびれ

 ゲスト/西さっぽろ脳神経外科クリニック 笹森 孝道 院長


手足のしびれについて教えてください。

 手足のしびれが気になり、脳神経外科の外来を受診する患者さんが増えています。「脳梗塞などの脳血管疾患の症状ではないか?」「どこか血流が悪くなっているのではないか?」と心配される方が多いようです。

 しびれが長く続く場合や、症状がだんだん悪くなるようであれば、すぐに医療機関、専門医を受診した方がいいでしょう。また、急にしびれが起こって持続する場合も、脳や脊髄の病気が考えられるので、早めに受診してください。

 脳の病気によるしびれには、脳梗塞などの脳血管疾患があります。急にしびれが起こって、その後しびれが持続するのが特徴です。片側の手と口周囲のしびれが同時に起こる場合もあります。これは「手口感覚症候群」といい、脳の中の視床という部位の病気で起こります。脳梗塞の好発部位でもあるので、手口感覚症候群がみられたら、手足のまひやろれつが回らないなどの症状がなくても、すぐに脳神経外科を受診してください。


手足のしびれは、ほかにどんな原因が考えられますか。

 頸椎症や椎間板ヘルニアなどによる頸髄性のしびれが考えられます。この場合には、しびれの部位が脊髄神経の分布に重なることが多いため、診察により障害部位を推定することができます。しびれだけにとどまらず、筋力の低下などがみられるようになると、手術による治療が必要なケースもあります。頸椎病変に対しては、従来のレントゲン撮影に加えて、CTやMRIなどによる画像検査で、椎間板の変形や神経の圧迫などが、より正確に診断できるようになってきました。

 下肢のしびれには、腰椎疾患や下肢の閉塞性動脈硬化症があります。閉塞性動脈硬化症では、歩行時にしびれや痛みが起こり、しばらく休むと軽快します。これを「間欠性跛行(はこう)」といいます。血管の動脈硬化による病気なので、症状が進行すると血管外科での治療が必要になります。同じように間欠性跛行がみられる病気に腰部脊柱管狭窄症があります。腰部脊柱管狭窄症には立っている姿勢が辛く、前かがみになったりしゃがんだりすると症状が楽になるという特徴があります。

 頸椎や腰椎などが原因で起こる慢性的なしびれや疼痛に対しては、安静、薬物療法、マッサージなどの保存的治療も行われます。治療については、まずかかりつけの先生に相談されることをお勧めします。症状が悪化してくるようであれば、手術治療が必要になる場合もあるので脳神経外科専門医を受診してください。


2021年11月10日水曜日

慢性硬膜下血腫

 ゲスト/西さっぽろ脳神経外科クリニック 笹森 孝道 院長


慢性硬膜下血腫とはどのような病気ですか。

 転んで頭を打ったり、強くぶつけたりした時、頭の中に出血する場合があります。けがをしてすぐに出血が起きた場合は、「急性の出血」あるいは「血腫」などといいます。一方、けがをしてすぐの検査では異常がなかったのに、受傷してから1〜2カ月ほど経ってから徐々に頭の中に血が溜まってくる病気があり、これを「慢性硬膜下血腫」といいます。

 慢性硬膜下血腫は、50歳以上の中高年の方に多くみられ、お酒をよく飲む方、肝臓の悪い方、治療で血液をサラサラにする薬を服用している方もかかりやすいとされます。軽いけがの後でも発症することがあるので注意が必要です。冬季の北海道は、特に雪道の転倒事故に気を付けてください。

 慢性硬膜下血腫は、出血が少ない場合はほぼ無症状です。ある程度、血が溜まってくると脳を圧迫し、さまざまな症状が出てきます。頭痛や頭の重だるい感じが代表的な症状です。治療前には自覚症状を訴えていなかった患者さんでも、治療後に頭が軽くなったという方が少なくないです。圧迫が進むと、足元がおぼつかなくなるなどの歩行障害や手足のまひといった、脳梗塞などの脳血管障害と似た症状を示すことも多いです。高齢者の場合、認知症と間違われているケースもよくみられます。また。高齢者は圧迫による頭痛などの症状を自覚していない例もあり、そのまま寝込んでしまっていることもあるので、家族など周りの人が注意する必要があります。


治療について教えてください。

 無症状であれば、よほど圧迫が強くない限りは経過観察をします。内服薬を使用して様子をみる場合もあります。ここ最近では、血腫の治癒を促進する効果のある漢方薬を使うケースも増えています。

 圧迫が強い時や、先に挙げた症状が出ている時は、手術を行います。脳外科の手術というと大変怖いイメージを持っている方も多いと思いますが、硬膜下血腫の手術は局所麻酔で行うもので、体への負担も少なく、高齢者でも受けることができます。むやみに恐れる必要はありません。

 頭を打っても、軽いけがであれば、慌てて病院に行かなくても大丈夫です。しかし、1カ月以上経ってから、頭が痛くなってくるなどの症状が出てきた時は、我慢しないで脳外科医を受診するようにしてください。

2021年5月19日水曜日

かくれ脳梗塞(無症候性脳梗塞)

 ゲスト/西さっぽろ脳神経外科クリニック 笹森 孝道 院長


かくれ脳梗塞とはどのような病気ですか。

 脳ドックを受けたり、けがで脳の検査をしたりしたときに医師から、脳梗塞があると言われてドキっとした、という経験をされた方も多いのではないでしょうか。俗に「かくれ脳梗塞」というように、自分には思い当たるような症状がないのにもかかわらず、検査時に偶然見つかる脳梗塞をそう呼びます。正しくは「無症候性脳梗塞」といいます。

 脳梗塞と聞かされると驚かれると思いますが、すぐに大きな発作につながるケースは少ないので、必要以上に不安になる必要はありません。検査結果を伝える際に、医師の説明が十分でないために患者さんの不安が増している場合も多く、われわれ医療従事者も気を付けなくてはならないところです。「隠れ脳梗塞がありますよ」と言われた場合には、ご自身の持病や生活習慣などを見直すきっかけにしていただくのが得策ではないでしょうか。こういった機会に禁煙を決断される方もいらっしゃいます。


かくれ脳梗塞が見つかった場合、どう対応すればいいのですか。

 無症候性脳梗塞と診断された場合、差し迫った危険はないとはいえ、何も手を打たずに放っておいていいわけではありません。無症候性脳梗塞の方は、健常者に比べると脳梗塞や脳出血、あるいは認知症になる危険がやや高いことが分かっています。また、非常にわずかながら脳にダメージを与え続けている可能性があるという説も報告されています。つまり、自分が他の人より脳梗塞など脳の病気を発症するリスクが高いことを自覚して、その予防に積極的に取り組むことが大切です。

 だからといって、慌ててすぐに脳梗塞再発予防の薬を飲む必要性はありません。まずやるべきことは、脳梗塞の危険因子のチェックです。脳梗塞の発症に一番関係が深いのが「高血圧」の存在です。高血圧の方であれば、その後しっかり血圧を管理していくことがとても重要です。そのほかの危険因子には喫煙や糖尿病、脂質異常症などがあります。それぞれ医師の指導のもと適切に管理していく必要があります。

 脳神経外科の専門医では、さらに頸(けい)動脈の動脈硬化や脳血管のチェックなどを行って、リスクの高い方には内服薬を処方する場合もありますし、再発予防のための手術を勧める場合もあります。

2020年10月7日水曜日

脳神経外科で診るめまい

ゲスト/西さっぽろ脳神経外科クリニック 笹森 孝道 院長

めまいについて教えてください。

 脳神経外科の外来では、めまいを訴えて受診される患者さんが多くいらっしゃいます。初めて経験するめまいは、患者さんにとっては大変恐ろしく感じられるものです。「天井がぐるぐる回った」「後ろに倒れそうになった」「立ち上がったら目の前が暗くなった」「地震かと思った」といった症状がみられますが、多様な病気の原因が考えられます。

 頻度が高いものは、内耳障害によるめまいですが、脳の障害によって起こる“怖いめまい”との鑑別が重要です。症状の強さだけで判断することは禁物で、めまいとともに言葉のもつれや手足の脱力・しびれが出ているようであれば、脳の障害が疑われます。脳の障害によるめまいは極力早く診断し、治療に入る必要がありますが、その際にはMRIによる画像診断が有用です。

高齢者のめまいについて教えてください。

 高齢者は、加齢に伴う平衡感覚の衰えや血圧を調整する能力の衰えなどがあり、めまいを起こしやすいです。糖尿病や高血圧などの持病を抱えている人は、飲んでいる薬が多いため、その副作用などでめまいを起こすこともあります。もともと耳鳴りがあったり、以前から難聴があったりするケースも少なくありません。このような状況の下にめまいが起こっても、必ずしも内耳に障害があるとはいえず、高齢者のめまいは原因を明らかにできない場合もあります。

 「起立性低血圧」とは、座った状態から立ち上がる時に血圧が急激に低下する病態をいいます。若い人の場合、顔が青ざめ冷や汗が出るなどし、失神してしまうケースもあります。高齢者では若い人のような激しい反応は起こりにくいとされていますが、一方で、加齢のため血圧を一定に保つ自律神経の働きが衰えているため、血圧が少し下がっただけでもめまいを起こしやすく、やはり立ち上がる際には注意が必要です。

 暑い時期は汗をかきやすいため、脱水からめまいを起こすこともあります。特に高齢者はのどの渇きを感じにくいので、脱水が生じやすいです。夜間にトイレに行く回数を減らそうと水分補給を控えてしまうと脱水を起こしやすいので、入浴前後や就寝前にはコップ1杯の水を飲むようにしましょう。

 漢方薬がめまいの症状に有効なことも多いです。めまいの症状でお悩みの方は、ぜひ医療機関にご相談ください。

 

2020年4月1日水曜日

手足のしびれ

ゲスト/西さっぽろ脳神経外科クリニック 笹森 孝道 院長

手足のしびれについて教えてください。
 脳神経外科の外来で頻度の多い症状に手足のしびれがあります。医療機関や専門医を受診するべきかどうかですが、しびれが長く続く場合や、しびれが段々と強くなるようであれば受診した方がよいでしょう。また、急にしびれが起こって、それが持続する場合は、脳や脊髄の病気が考えられるので、早急に受診する必要があります。
 脳の病気によるしびれには、脳梗塞などの脳血管疾患があります。急にしびれが起こって、その後しびれが持続するのが特徴です。片側の手と口周囲のしびれが同時に起こる場合があります。これは「手口症候群」と呼ばれ、脳の中の視床という部位の病気で起こります。脳梗塞の好発部位でもあるので、手口症候群がみられたら、手足のまひやろれつが回らないなどの症状がなくても、すぐに脳神経外科を受診してください。

手足のしびれは、ほかにどんな原因が考えられますか。
 頚椎症や椎間板ヘルニアなどによる、頸髄性のしびれが考えられます。この場合には、しびれの部位が脊髄神経の分布に重なることが多いため、診察により障害部位を推定することができます。しびれだけにとどまらず、筋力の低下などがみられるようになると、手術による治療が必要なケースもあります。
 頚椎病変に対しては、従来のレントゲン撮影に加えてCTやMRIなどによる画像検査で、椎間板の変形や神経の圧迫などが、より正確に診断できるようになってきました。
 下肢のしびれの原因としては、腰椎疾患や下肢の閉塞性動脈硬化症なども考えられます。閉塞性動脈硬化症では、歩行時にしびれや痛みが起こり、しばらく休むと軽快します。これを「間欠性破行(はこう)」といいます。血管の動脈硬化による病気なので、症状が進行、悪化すると血管外科での治療が必要になります。腰部脊柱管狭窄症も間欠性破行を症状とする病気ですが、立っている姿勢が辛く、前かがみになったりしゃがんだりすると症状が楽になるという特徴があります。
 頚椎、腰椎などが原因で起こる慢性的なしびれや疼痛に対しては、安静、薬物療法、ブロック注射、マッサージなどの保存的治療を行うのが一般的ですが、症状が悪化してくるようであれば手術治療が必要なケースもあります。治療に関しては、かかりつけの病院、先生と相談されることをお勧めします。

2019年10月23日水曜日

くも膜下出血

ゲスト/西さっぽろ脳神経外科クリニック 笹森 孝道 院長

くも膜下出血とはどのような病気ですか。
 くも膜下出血は、発症するとおよそ3分の1の方が亡くなり、3分の1の方が障害を残すといわれる重篤な病気です。しかし、残る3分の1の方は順調に経過して、元気に社会復帰しています。
 くも膜下出血は、脳動脈瘤(りゅう)と呼ばれる「血管のこぶ」の破裂により起こることがほとんどです。脳動脈瘤は、脳の表面を走る太い血管にできることが多いです。症状は頭痛が特徴的です。よく「激しい頭痛」と表現されますが、ごく軽い頭痛で発症するケースもみられます。痛みの強さよりも、「突然に発症した頭痛」であることが診断のポイントになります。出血した際に、頭の中の圧が高くなり、脳に血液が流れなくなることで意識障害を伴う場合もあります。
 初回の出血を切り抜けても、2回目の破裂による再出血で重篤な状態になる方も多く、治療の第一の目的は「再出血の防止」です。一般的な治療は、脳動脈瘤のくびれた部分をクリップではさむ「ネッククリッピング術」です。最近では、頭を切らずに、血管の中から治療する「コイル塞栓術」という方法も登場しています。再出血の予防がうまくいったら、その後は脳血管れん縮や全身の合併症の治療を行います。最初の手術と合併症の治療、この二つを乗り切ることが重要です。

くも膜下出血の原因となる脳動脈瘤について教えてください。
 脳動脈瘤は破裂する前にその兆候が分かる場合もあります。「動眼神経麻痺(まひ)」という片方のまぶたが下がってくる症状や、物が二重に見えるなどの症状です。これらは大きくなった動脈瘤が動眼神経を圧迫していることから生じる症状です。短期間で大きくなる動脈瘤は破裂の危険性が高いので、なるべく早く脳神経外科での検査・治療が必要になります。
 破裂していない脳動脈瘤は、脳ドックでの脳の血管を調べる検査(MRA検査)で見つかることがあります。また、脳梗塞などほかの病気の検査で偶然見つかる場合もあります。見つかった動脈瘤の大きさや形、患者さんの年齢や身体的な状況を考慮して、破裂する前に治療することをお勧めするケースもあります。通常、動脈瘤があるというだけでは、破裂の危険性が高いわけではないので、その判断は慎重に行う必要があります。複数の医師に相談し、ご自身でよく考えて十分に納得した上で治療に臨むことが大切です。

2019年5月15日水曜日

かくれ脳梗塞(無症候性脳梗塞)

ゲスト/西さっぽろ脳神経外科クリニック 笹森 孝道 院長

かくれ脳梗塞とはどのような病気ですか。
 脳ドックを受けたり、けがで脳の検査をしたときに医師から、脳梗塞があると言われてドキっとした、というような経験をされた方も多いのではないでしょうか。俗に「かくれ脳梗塞」というように、自分には思い当たるような症状がないのにもかかわらず、検査時に偶然見つかる脳梗塞をそう呼びます(正しくは無症候性脳梗塞といいます)。
 脳梗塞と聞かされると、驚いてしまいますが、即、大きな発作につながることは少ないと考えられますので、必要以上に不安になる必要はありません。検査結果を伝える際に、医師の説明が十分でないために不安が増している場合も多く、われわれ医療従事者も気を付けなくてはならないところです。「隠れ脳梗塞がありますよ」と言われた場合には、ご自身の持病や生活習慣などを見直すきっかけにしていただくのが得策ではないでしょうか。こういった機会に禁煙を決断される方もいらっしゃいます。

かくれ脳梗塞が見つかった場合、どう対応すればいいのですか。
 無症候性脳梗塞と診断された場合、差し迫った危険はないとはいえ、何も手を打たずに放っておいていいわけではありません。無症候性脳梗塞の方は、健常者に比べると脳梗塞や脳出血、あるいは認知症になる危険がやや高いことが分かっています。また、非常にわずかながら脳にダメージを与えているのではないかとする説もあります。つまり、自分が他の人より脳梗塞など脳の病気を発症するリスクが高いことを自覚して、その予防に積極的に取り組むことが大切です。
 だからといって、慌ててすぐに脳梗塞再発予防の薬を飲む必要性はありません。まずやるべきことは、脳梗塞の危険因子のチェックです。脳梗塞の発症に一番関係が深いのが「高血圧」の存在です。高血圧があれば、その後しっかり血圧を管理していくことがとても大切です。そのほかの危険因子では喫煙や糖尿病、脂質異常症などがあります。それぞれ医師の指導のもと適切に管理していく必要があります。
 脳神経外科の専門医では、さらに頸(けい)動脈の動脈硬化や脳血管のチェックなどを行って、リスクの高い方には内服薬を処方する場合もありますし、再発予防のための手術を勧める場合もあります。

2018年12月5日水曜日

慢性硬膜下血腫

ゲスト/西さっぽろ脳神経外科クリニック 笹森 孝道 院長

慢性硬膜下血腫とはどのような病気ですか。
 転んで頭を打ったり、強くぶつけたりした時、頭の中に出血することがあります。けがをしてすぐに出血が起きた場合は、急性の出血あるいは血腫などといいます。一方で、ケガをしてすぐの検査で異常がなかったのに、受傷してから1〜2カ月ほど経ってから徐々に頭の中に血が溜まってくる病気があり、これを「慢性硬膜下血腫」といいます。
 慢性硬膜下血腫は、50歳以上の中高年に多くみられ、酒飲みの人、肝臓の悪い人、治療のために血液をサラサラにする薬を服用している人は、この病気になりやすいとされています。このような人の場合、軽いケガの後でも発症することがあるので注意が必要です。北海道ではこの季節、特に雪道での転倒事故に気を付けてください。
 慢性硬膜下血腫は、出血が少ない場合はほぼ無症状です。ある程度、血が溜まってくると脳を圧迫し、さまざまな症状が出てきます。代表的なものに頭痛や頭の重だるい感じが挙げられます。手術前に訴えのなかった患者さんでも、術後に頭が軽くなったという人も多いです。放置すると圧迫が進み、足元がおぼつかなくなるなどの歩行障害や手足のまひを起こしたり、脳梗塞などの脳血管障害と似た症状を示したりするケースも多いです。高齢者の場合、認知症と間違われていることも少なくありません。また、高齢者は圧迫があっても症状を自覚していない例もあり、そのまま寝込んでしまっていることもあるので、家族など周りの人が注意する必要があります。

治療について教えてください。
 無症状であれば、よほど圧迫が強くない限りはそのまま経過観察をします。内服薬を使用して様子をみることもあります。ここ最近では、血腫の治癒を促進する効果のある漢方薬を使うケースも増えています。
 圧迫が強い場合や、症状が出ているものは手術を行います。脳外科の手術というと恐ろしいイメージを持っている方も多いと思いますが、慢性硬膜下血腫の手術は局所麻酔で行い、高齢者でも受けることができます。
 頭を打っても、軽いケガであれば慌てて病院に行く必要はありません。しかし、1カ月以上経ってから頭が痛くなってきたり、先に挙げた症状が出てきたりした時は、我慢しないで専門医を受診するようにしてください。

2018年6月20日水曜日

高齢者のめまい

ゲスト/西さっぽろ脳神経外科クリニック 笹森 孝道 院長

高齢者のめまいについて教えてください。
 「天井がぐるぐる回った」「後ろに倒れそうになった」「立ち上がったら目の前が暗くなった」など「めまい」に悩む高齢者は少なくありません。年齢とともにめまいは起こりやすくなりますが、いくつも原因が考えられ、背後に恐ろしい病気が潜んでいる場合もあるため、「年のせいだから仕方ない」と軽く見てはいけません。
 頻度が高いものは内耳障害によるめまいですが、脳の障害によって起こる“怖いめまい”との鑑別が重要です。症状の強さだけで判断することは禁物で、めまいとともに舌のもつれや手足の脱力、しびれが出ているようであれば脳の障害が疑われます。脳の障害によるめまいは極力早く診断し治療に入る必要がありますが、その際にはMRIによる画像診断が有用です。

高齢者のめまいは、ほかにどんな特徴がありますか。
 加齢に伴って平衡感覚の衰えや、血圧を調整する能力の衰えが進むため、高齢者はめまいを起こしやすくなります。また、糖尿病や高血圧などの持病を抱えている人は服用する薬が多くなり、その副作用などからめまいを起こすこともあります。そのほか、もともと耳鳴りがあったり、以前から難聴があったりするケースもあり、複数の原因が重なっていることも多いです。このため、高齢者のめまいは原因を簡単に明らかにできないこともあります。
  「起立性低血圧」とは、座った状態から立ち上がる時に血圧が急激に低下する病態をいいます。若い人は起立性低血圧により顔が青ざめ冷や汗が出るなどし、失神してしまうケースもあります。高齢者では若い人のような激しい反応は起こりにくいとされていますが、一方で、加齢のため血圧が少し下がっただけでもめまいを起こしやすくなっているため、やはり立ち上がる際には注意が必要です。
 暑い時期は汗をかきやすいため、脱水からめまいを起こすこともあります。特に高齢者はのどの渇きを感じにくいので脱水が生じやすいです。夜間にトイレに行くのを減らそうと水分補給を控えてしまうと脱水を起こしやすくなってしまうので、入浴前後や就寝前にはコップ1杯の水を飲むようにしましょう。

2018年3月22日木曜日

脳卒中の手がかりとなる症状

ゲスト/札幌宮の沢脳神経外科病院  井上 道夫 医師

脳卒中について教えてください。
 日本人の死因の第4位を占める脳卒中。脳の血管が破れたり(脳出血、くも膜下出血)、詰まる(脳梗塞)ことで、脳が障害を受ける病気です。後遺症も深刻で、高齢者の寝たきりや介護が必要になる原因で最も多いものです。血管は加齢で傷みやすい臓器なので、基本的には年を取るほどかかりやすくなる疾患といえます。
 脳卒中の症状は多岐にわたります。片側の手足にまひやしびれが起こる、ろれつが回らない、言葉が出ない、他人の言うことが理解しにくい、歩けない、ふらふらする、物が2つに見える、視野が大きく欠ける、今まで経験したことのない激しい頭痛がするといった症状です。

自分や周囲の人にそれらの症状が出た時はどうすればいいですか。
 脳卒中は前兆がなく、ある日突然起こり、一刻も早い治療が必要な病気です。脳卒中が疑われる症状が出現したら、発症時刻を確認して急いで救急車を呼んでください。脳卒中のほとんどは血管が詰まる脳梗塞で発症しますが、脳梗塞の症状には特徴があります。手足と言葉の症状が出やすいことです。つまり、突然に、左右どちらかの手足の力が抜ける片麻痺と、言葉がうまくしゃべれなかったりする場合は、脳卒中になった可能性が高いので様子を見たりせずにすぐに救急車を呼ぶことです。「症状は大したことがないので、急がなくてもいい」と自己判断し、受診を翌日に持ち越してしまったため完全に手遅れになってしまうケースも少なくありません。とにかく「速やかに」です。脳卒中の症状は自然によくなることはほとんどなく、むしろ数日のうちに進行することが多いのです。医療が進歩しても脳卒中を完全に治すのは難しいのですが、早い段階で適切な診断・治療につなげれば、点滴治療やリハビリテーションを超早期から行うことにより、後遺症を最小限に抑えることができます。
もちろん、脳卒中の症状は手足のまひと言葉の障害だけでなく、先ほど語ったように多岐にわたり判断が難しいことも多いので、脳卒中を疑ったら医療機関に直接連絡を取るのも一つの手です。脳卒中の専門的な治療を行う医療機関は、各都道府県がリストを作成し、ホームページなどで公表しています。こうした資料にも目を通し、自分が暮らす地域ではどこの医療機関がその役割を担っているのか、24時間体制で相談や受け入れにあたっているかなどについて、健康な時に前もって知っておくことが大切です。
 また、札幌市では24時間365日、市民からの救急医療相談に看護師が対応する電話による相談窓口「救急安心センターさっぽろ」を運営しています。急に具合が悪くなった時など、救急車を呼んだ方がいいのか、様子を見た方がいいのか判断に迷ったら相談してみるとよいでしょう。

2018年2月28日水曜日

慢性頭痛

ゲスト/西さっぽろ脳神経外科クリニック 笹森 孝道 院長

頭痛の原因について教えてください。
 頭痛に悩み、「頭の痛みの原因は何なのか?」「何か悪い病気が隠れているのではないか?」と心配され、病院を訪れる方が増えています。不安は痛みを増強させますので、頭痛に対する正しい理解を得ることが重要です。
 頭痛にはさまざまな種類がありますが、大まかに「怖い頭痛」と「怖くない頭痛」に分けることができます。怖いのは、例えば「くも膜下出血」や「脳腫瘍」といった命にかかわる病気の症状としての頭痛です。われわれ医師は、頭痛の患者さんを診るときは、まず他の重篤な病気が隠れていないかを調べるのに時間をかけます。
 頭痛持ちと呼ばれる方の多くは、怖くない頭痛のケースが大半で、脳に病気がないのに繰り返し症状が起こる「慢性頭痛」と考えられます。先ほどの「怖い頭痛」とは違い、コンピューター断層撮影装置(CT)や磁気共鳴画像装置(MRI)などの画像検査でも異常は出ません。国内では4人に1人が慢性頭痛を患っているとされます。痛みの程度は人それぞれですが、寝込んでしまうほどの痛みなど、日常生活に支障を来す場合もあります。日本では、慢性頭痛が病気であるという認識が薄いため、周囲の理解が得られず、患者さんの苦しみがより大きくなることもあります。

慢性頭痛について教えてください。
 慢性頭痛もまたいくつかに分類されますが、その7〜8割を占め、男女差なく最も多く認められるのが「緊張型頭痛」です。人間の頭は大きく重く、それを支える骨や筋肉には大きな負担がかかります。長時間同じ姿勢でいることや運動不足に加えて、精神的なストレスが引き起こす、背中から肩、首にかけての筋肉のこわばりによる頭痛です。ストレッチ体操やヨガなどで筋肉を和らげることが治療にも予防にも効果的です。
 「片頭痛」も慢性頭痛の一つです。目の奥や側頭部、後頭部などがズキンズキンと痛みます。頭がギューっと締め付けられるように感じたり、吐き気を伴ったりするなど、辛い頭痛の代表といえます。視界にキラキラ光るものが見えるなど、特徴的な前兆を伴うケースもあります。鎮痛剤が効かないほどの痛みに悩まされることも多く厄介ではありますが、それが「いつもの痛み方」であれば、怖くはない(命には別状がない)頭痛です。片頭痛専用の良い薬があり、適切なタイミングで使うと非常に有効です。

2017年10月25日水曜日

認知症の早期診断・治療の重要性


ゲスト/札幌宮の沢脳神経外科病院  丹羽 潤 先生

ほかの病気と同じように、認知症も早期診断・治療は重要ですか。
 認知症についても早期受診、早期診断、早期治療は非常に重要です。
 認知症と分類される病気は70以上あるといわれ、代表的なものはアルツハイマー病、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症、血管性認知症の4つです。頻度は少ないですが、正常圧水頭症、慢性硬膜下血腫、甲状腺機能低下など、適切な治療をすれば「治る認知症」もあります。ただし、治すためには早期発見が大原則となります。
 認知症で最も多いアルツハイマー病は少しずつ進行していきますが、早い時期に薬を使い始めれば、良い状態を長く維持することができます。本人が病気を理解できる時点で受診することで、将来自分はこうしたいという意思を示すことができるのも、早期診断の意義です。 
 病院では、問診、神経心理検査、MRI(磁気共鳴画像装置)やCT(コンピューター断層撮影)、脳血流を調べるSPECTなどの画像検査を行い、認知症か正常の生理的な老化か、治る認知症か否か、原因の病気は何かなどを調べます。アルツハイマー病は、アミロイドβやタウたんぱくという物質が脳に蓄積していき、脳を萎縮させることで起こります。最近は、アミロイドβやタウたんぱくを検出できるPET検査も登場しています。これらの検査法が確立されれば、今よりもっと早期の診断が可能になります。

認知症予備軍の増加も問題になっていますね。
 専門用語では軽度認知障害(MCI)といいます。MCIは1年間に十数%の割合で認知症に移行し、6年で約80%が認知症に至ると報告されています。つまりMCIにはアルツハイマー病へ移行するタイプと移行しないタイプが存在するのです。
 現時点で両者を明確に鑑別する簡便な基準はありませんが、神経心理検査(コグニスタット認知機能検査)と脳血流SPECT検査により移行の予測因子を探る臨床研究を進めている病院もあります。今後は、アルツハイマー病へ移行するMCIか否かを早期に診断し、移行が推測される場合には早期から治療を開始するといった対策も必要でしょう。
 診断が早期であればあるほど治療は有効です。物事への興味や意欲の低下、手の込んだ料理を作れないなど、今までとは違う「変化」があったり、「もしかして…」と思ったら、躊躇(ちゅうちょ)せず身近な医療機関(脳外科、神経内科、精神科など)に相談することが大切です。

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