2022年9月8日木曜日

高齢者のめまい

西さっぽろ脳神経外科クリニック 笹森 孝道 院長


めまいについて教えてください。

 脳神経外科の外来では、めまいを訴えて受診される患者さんが多くいらっしゃいます。初めて経験するめまいは、患者さんにとっては恐ろしいものです。「天井がぐるぐる回った」「後ろに倒れそうになった」「地震かと思った」「立ち上がったら目の前が暗くなった」などの症状がみられますが、その訴えの中にはさまざまな原因が考えられます。

 頻度が高いものは、内耳障害によるめまいですが、脳の障害で起こる“怖いめまい”との鑑別が重要です。症状の強さだけで判断することは禁物で、めまいとともに言葉のもつれや手足の脱力・しびれが出ているようなら、脳の障害が疑われます。中には非常に鑑別の難しいめまいもあります。脳の障害によるめまいは極力早く診断し、治療に入る必要がありますが、その際にはMRIによる診断が有用です。


高齢者のめまいにはどのような特徴がありますか。

 高齢者は、加齢に伴い平衡感覚の衰えや血圧を調節する能力が衰えているので、めまいを起こしやすいです。高血圧や糖尿病などの持病を抱えていることも多く、それらの薬の副作用でめまいを起こすこともあります。

 高齢者のめまいには、原因を簡単に明らかにできないことも多いです。もともと耳鳴りや難聴がある場合のめまいは、必ずしも内耳に原因があるとはいえません。例えば「起立性低血圧」とは、座った状態から立ち上がった時に血圧が低下する状態をいい、若い方は顔が青ざめ冷や汗が出るなどし、失神してしまうケースもあります。高齢者はこのような激しい反応は起こりにくいとされていますが、一方で、加齢のため血圧を一定に保つ自律神経の働きが衰えているため、血圧が少し下がっただけでもめまいを起こしやすく、やはり立ち上がる際には注意が必要です。

 また、暑い時期は汗をかきやすいため、脱水からめまいを起こすこともあります。特に高齢者はのどの渇きを感じにくくなるため、脱水状態になりやすいです。夜間にトイレに行くのを減らそうと水分補給を控えることがありますが、脱水の予防を考えると好ましくありません。入浴や就寝前にはコップに1杯の水を飲むようにしましょう。

 漢方薬がめまいの症状に有効なことも多いです。長引くめまいの症状でお悩みの方は、ぜひ一度専門医にご相談ください。


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