2022年9月15日木曜日

高齢者の摂食嚥下障害

医療法人五風会 さっぽろ香雪病院 野田 順子 歯科医師


摂食嚥下障害とはどのような病気ですか。

 摂食とは食べること、嚥下とは飲み込むことを指します。摂食嚥下とは、食べ物を認識し、口腔内で咀嚼して飲み込み、咽頭や食道を経て胃へ送り込む過程をいいます。この無意識に行われる一連の動作が、何らかの原因で障害されることを摂食嚥下障害と呼びます。

 高齢になると、う蝕(しょく)=虫歯や歯周病の進行による歯の欠損、舌やのどの筋力低下、だ液水分量の不足などが原因で、食べ物を口の中で飲み込みやすい形にできなくなり、それをそのまま飲み込むことでむせたり、食道に流れ込むべきだ液や食物が誤って気管に入ってしまう誤嚥を起こしやすくなります。

 加齢に伴う摂食嚥下障害には個人差があり、高齢になっても問題がない場合もありま

すが、持病のある方では治療のために服用している薬剤が摂食嚥下障害に関係しているケースもみられます。また、高齢になると認知症を合併することも多く、認知症の進行とともに摂食嚥下障害は重症化していきます。

 まずは歯科を受診してう蝕・歯周病の治療や、必要があれば義歯を使うなど「食べられる口」をつくることが大切です。食べる楽しみが失われると、生活の質が低下することも大きな問題です。


注意すべきポイントを教えてください。

 摂食嚥下障害の症状は特に食事中に顕著に現れます。口から食べ物がこぼれる、むせることが多い、飲み込むまで時間がかかる、食べ物がのどに残っている感じがする、食後に痰が出やすいなどの症状がみられると、低栄養や脱水を引き起こしたり、食事や飲み物を誤嚥することで窒息や誤嚥性肺炎につながったりすることもあります。

 誤嚥性肺炎は特に高齢者に多い疾患で死亡者が増加傾向にあり、高齢化の進展に伴って今後もさらに増えることが懸念されています。誤嚥性肺炎の直接的な原因は、口腔内の常在菌であることが分かっています。歯の有無にかかわらず歯ブラシなどで口腔内を清掃することは、歯を健康に保つだけではなく口腔内の細菌数を減らし気道感染、誤嚥性肺炎を予防するためにも重要です。

 上記の症状のほかに体重の減少や夜間のせき、熱発を繰り返すなどの症状がある場合は摂食嚥下障害が疑われますので、歯科医に相談するなどして、摂食嚥下障害を専門的に診る医療機関を受診することをお勧めします。 

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